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第五十二話 幼馴染に告白した伸七郎
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その翌日、俺は屋上で伸七郎といつものように昼食を食べ始めた。
すると、伸七郎は、
「ありがとな、海定。お前のおかげだぜ」
と喜びに包まれた表情で言った。
「何のことだい? 俺はお前にそんな感謝されることはしていないぜ?」
「何言ってるんだ。お前、俺に舞居子ちゃんのことでアドバイスをしてもらったじゃないか」
「それはしたけど」
「お前のおかげで、舞居子ちゃんに告白ができたんだ」
「告白?」
俺は驚いた。
昨日の調子だと、この数日中にはするだろうとは思っていた。
しかし、その後、すぐにしていたなんて……。
すごいやつだと思う。
「告白したんだな? それでどうだったんだ?」
「そのことをこれから話したいと思っているんだ。話をしてもいいか?」
「もちろんだ」
伸七郎の喜んでいる表情からすると、告白は成功したのだろう。
俺としてもうれしい。
でもどういう状況だったのだろう?
内容が気になる。
「昨日の放課後、部活が始まるまでのわずかな時間に、俺は舞居子ちゃんを部室のそばに呼び出したんだ。それで俺は、単刀直入に、『俺と付き合ってほしい』と言って頭を下げた」
「いきなりだな」
「こういう話の切り出し方ができるのは、幼馴染だからこそだ。普通はできないかもしれないと思う」
「でも初林さんは驚いたんじゃないの?」
「とても驚いていた」
伸七郎は初林さんとのやり取りについて、話を続けていく。
俺、井登伸七郎は、初林舞居子ちゃんに、
「俺と付き合ってほしい」
とお願いした。
舞居子ちゃんに対する告白だった。
胸のドキドキが大きくなってつらかったが、なんとか告白することができた。
舞居子ちゃんは、とても驚いていた。
そして、
「久しぶりに話すと思ったら、冗談を言うなんて。わたしたちって、ずっと疎遠だったじゃない。それなのに、付き合ってほしい、と言うのは、信じられない」
と言った。
それほど俺の言うことは意外だったようだ。
俺は、
「いや、舞居子ちゃんのことは幼い頃から好きだった。でも、幼馴染だったせいか、その気持ちが上手く伝えられなかったのだと思う。好きだという気持ちを言葉にしなくても、舞居子ちゃんには通じていると思っていたところもあった、そして、その気持ちが恋に発展していけばよかったのだと思う。しかし、今までの俺は、そういう形での発展はしてこなかった。どうしても、幼馴染として好きだという気持ちを乗り越えることはできなかった。恋にまで発展したら、幼馴染としての関係が壊れるのでは、とも思った。その方が俺は嫌だと思っていた。俺がそう思っている内に、俺たちはどんどん疎遠になっていってしまった。俺がもう少し舞居子ちゃんのことを大切にしていれば、ここまで疎遠にはなっていなかったのに、と思っているんだ」
と言った。
こうした話を舞居子ちゃんにするのは、すごく恥ずかしいものがあった。
我ながらよく言えたと思う。
舞居子ちゃんも恥ずかしそうに、
「伸七郎ちゃんがわたしのこと、そんな風に思っていたなんて、知らなかった。わたしも伸七郎ちゃんが好きだったの。でも、伸七郎ちゃん、どんどんかっこよくなっていくし、サッカーで活躍して、人気が上がっているから。もう中学校に入った頃は、わたしの手のとどかない人になっていた。それほどの人になっていた。わたしはいつしか伸七郎ちゃんのことを好きになってはいけないと思い出していたの」
と言った。
すると、伸七郎は、
「ありがとな、海定。お前のおかげだぜ」
と喜びに包まれた表情で言った。
「何のことだい? 俺はお前にそんな感謝されることはしていないぜ?」
「何言ってるんだ。お前、俺に舞居子ちゃんのことでアドバイスをしてもらったじゃないか」
「それはしたけど」
「お前のおかげで、舞居子ちゃんに告白ができたんだ」
「告白?」
俺は驚いた。
昨日の調子だと、この数日中にはするだろうとは思っていた。
しかし、その後、すぐにしていたなんて……。
すごいやつだと思う。
「告白したんだな? それでどうだったんだ?」
「そのことをこれから話したいと思っているんだ。話をしてもいいか?」
「もちろんだ」
伸七郎の喜んでいる表情からすると、告白は成功したのだろう。
俺としてもうれしい。
でもどういう状況だったのだろう?
内容が気になる。
「昨日の放課後、部活が始まるまでのわずかな時間に、俺は舞居子ちゃんを部室のそばに呼び出したんだ。それで俺は、単刀直入に、『俺と付き合ってほしい』と言って頭を下げた」
「いきなりだな」
「こういう話の切り出し方ができるのは、幼馴染だからこそだ。普通はできないかもしれないと思う」
「でも初林さんは驚いたんじゃないの?」
「とても驚いていた」
伸七郎は初林さんとのやり取りについて、話を続けていく。
俺、井登伸七郎は、初林舞居子ちゃんに、
「俺と付き合ってほしい」
とお願いした。
舞居子ちゃんに対する告白だった。
胸のドキドキが大きくなってつらかったが、なんとか告白することができた。
舞居子ちゃんは、とても驚いていた。
そして、
「久しぶりに話すと思ったら、冗談を言うなんて。わたしたちって、ずっと疎遠だったじゃない。それなのに、付き合ってほしい、と言うのは、信じられない」
と言った。
それほど俺の言うことは意外だったようだ。
俺は、
「いや、舞居子ちゃんのことは幼い頃から好きだった。でも、幼馴染だったせいか、その気持ちが上手く伝えられなかったのだと思う。好きだという気持ちを言葉にしなくても、舞居子ちゃんには通じていると思っていたところもあった、そして、その気持ちが恋に発展していけばよかったのだと思う。しかし、今までの俺は、そういう形での発展はしてこなかった。どうしても、幼馴染として好きだという気持ちを乗り越えることはできなかった。恋にまで発展したら、幼馴染としての関係が壊れるのでは、とも思った。その方が俺は嫌だと思っていた。俺がそう思っている内に、俺たちはどんどん疎遠になっていってしまった。俺がもう少し舞居子ちゃんのことを大切にしていれば、ここまで疎遠にはなっていなかったのに、と思っているんだ」
と言った。
こうした話を舞居子ちゃんにするのは、すごく恥ずかしいものがあった。
我ながらよく言えたと思う。
舞居子ちゃんも恥ずかしそうに、
「伸七郎ちゃんがわたしのこと、そんな風に思っていたなんて、知らなかった。わたしも伸七郎ちゃんが好きだったの。でも、伸七郎ちゃん、どんどんかっこよくなっていくし、サッカーで活躍して、人気が上がっているから。もう中学校に入った頃は、わたしの手のとどかない人になっていた。それほどの人になっていた。わたしはいつしか伸七郎ちゃんのことを好きになってはいけないと思い出していたの」
と言った。
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