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第二十二話 理想の女性

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 高校二年生の始業式の日がやってきた。

 この地にも春がきて、桜が満開になってきている。

 俺は理想の女性に会えるという希望を持って、校舎に入り、教室に向かっていた。

 すると、だんだん、そういう女性に会えなかったらどうしょう、という気持ちが湧いてきた。

 今までは、会えることを前提にいろいろなことを思ってきたのだったが……。

 会うことができれば、そこからは恋ということを軸にいろいろ悩むことになるだろう。

 しかし、会えなかったとすれば、今度は、

「なぜ会うことができないんだ!」

 というところで悩み苦しむことになる。

 どちらの方が苦しいだろうか?

 どちらも苦しいことには違いない。

 しかし、どちらがより苦しいかと言われれば、会えないことの方だろう。

 会うことさえできれば、これから仲良くなるチャンスはあるが、会えなければそのチャンスもない。

 チャンスがないということは、努力しても無駄という気持ちになってしまう。

 それは、今まで努力してきた俺にとっては、とてもつらいことだ。

 今思ってもしょうがないことではあるが、俺は会えることを願って歩いていった。

 そして、教室に入る。

 すると……。

 前世と同じく、外を眺めている美少女がいた。

 少しロング気味のきれいなストレートヘア。

 キスしたくなるような小さくかわいい唇。

 きめが細かく、柔らかそうなきれいな肌。

 清楚で、整った容姿。

 思いやりがあって、やさしそうな微笑み。

 その姿は、前世と同じ、いや、前世以上の素敵なものだった。

 俺の理想の女性だ。

 俺はしばらくの間、うっとりしていた。

 そして、

 この女性は瑳百合さんの生まれ変わりだ!

 という思いが、心の底から湧いてきた。

 うれしくなるとともに、すぐに仲良くなりたいという気持ちが強くなってくる。

 それにはまずあいさつをしなければならない。

 そして、俺の名前を教えると同時に向こうの名前を聞く。

 ルインの交換ができれば一番いい。

 俺は彼女の方に向かって歩いていこうとする。

 しかし……。

 彼女が瑳百合さんの生まれ変わりなのは間違いなさそうだが、彼女の方は俺が前世の喜康であることを、ここで会ったからといってすぐに理解することができるのだろうか?

 前世で俺に恋をしていたならばともかく、好意をもっていたぐらいでは、前世の俺だと理解することは難しそうな気がする。

 いきなりあいさつをするのは、迷惑になってしまうのでは?

 そう思った俺は、足を止めてしまう。

 もう少し時間が経ってからの方がいいだろうか?

 しかし、そんなことをしていたら、いつまで経っても仲良くなれない。

 そういう俺の躊躇が、前世で仲良くなれなかった要因ではなかったのだろうか?

 せめて今日、あいさつをしたい。

 そうすれば、仲良くなれる第一歩を歩み出すことができる。

 前世とは違った人生を歩んでいけるかもしれない。

 でも、やっぱり迷惑になるかもしれないと思うと、足が進んでいかない。

 俺が悩み苦しんでいると、彼女がこちらを向いた。

 そして、俺に向かって、恥ずかしそうに微笑んでいる気がする。

 俺を呼んでいるのだろうか?

 彼女が前世のことを思い出しているとは思わない。

 それは難しいことだと理解はしている。

 しかし、無意識の内に呼んでいる気がする。

 俺がただ思い込んでいるかもしれない。

 いや、思い込んでいるだけでもいい。

 俺は彼女のそばに行く。

 行って、彼女にあいさつだけでもしたい!

 そして、これを機に彼女と仲良くなっていきたい!

 そう思った俺は、彼女の方に向かって再び歩いていくことにした。

 前世とは違い、素敵な人生にしていきたい!

 その思いは強かった。
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