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第二十一話 始業式前日

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 高校二年生の始業式前日の夜。

 俺はベッドで横になっていた。

 今までの努力で、かなり改善が進んできたと思う。

 もう今は、嫌味を言ってきたり嘲笑したりする人はいない。

 しかし、理想の人とつり合うところまでは、性格のところでまだ到達していない。

 到達していないどころか、まだ努力の最中だ。

「ありがとう」

 という、親切な人に対する感謝の言葉。

 それは、少しの親切に対しても素直に出てくるようになった。

 しかし、困っている人たちを助けるというところまではいっていない。

 どうしても、相手に迷惑になってしまうのでは、と思ってしまう。

 こういうところを自然にできていたところが、瑳百合さんのすごいところだったと思う。

 まだまだ努力をしていく必要がある。

 こうして自分を磨いていった俺。

 今、瑳百合さんのような女性が現れたとして、声をかけたい気持ちはある。

 しかし、声をかけることはまだ難しい気がする。

 前世と同じ歩みであれば、高校二年生で同じクラスになるはずだ。

 もう明日にも出会うことになる。

 俺はもともと一人ぼっちだったので、他人にはあまり関心をもってこなかった。

 同じクラスの中でもそうだった。

 それ以外のクラスの人のことは、ほとんど知らなかったし、関心もなかった。

 性格を改善しようと思って以降は、同じクラスの人たちのことについては知るようになったが、それ以外の人たちとは、接することがほとんどないので、知ることは難しかった。

 俺は高校一年生の時も、理想の人と会いたいと思ったことはある。

 他のクラスに行けば、その女性がいるということは把握できたかもしれない。

 しかし、俺はそれをしなかった。

 我慢をし続けた。

 もしいることを把握としても、その時点での俺は、今以上につり合いのとれない状態。

 声をかけることなど、今以上にできなかったに違いない。

 とはいっても、現状でも声をかけるのは難しいと思わざるをえない。

 前世のようなことは繰り返したくなかったのに……。

 そう思うが、どうにもならない。

 時間がもうなくなってきている。

 明日の朝のことだ。

 俺は今の状態で、そういう女性に声をかけることができるのだろうか?

 俺は思い悩み続けた。

 すると、心に瑳百合さんの微笑みが浮かんでくる。

 力を与えてくれる微笑み。

 この微笑みに俺は応えていきたい。

 ところで、もし明日出会うとして、その女性は、瑳百合さんの生まれ変わりなのだろうか?

 それとも瑳百合さんと同じタイプなのだろうか?

 今までは深く考えることはなかったことだ。

 しかし、今は違う。

 そのことについても考えざるをえない。

 瑳百合さんの生まれ変わりだとすると、前世の記憶を持っているかもしれない。

 持っていれば、俺も彼女と話しをしやすいし、仲良くなるのにそれほど時間がかからないかもしれない。

 彼女は、前世で、

「喜康くんとおしゃべりがしたかった」

 と言っていたという。

 この言葉は、俺への好意から出ているのでは、と瑳百合さんの親友も言っていた。

 瑳百合さんが、今世で俺と初めて会う時も、俺に対する前世からの好意を少しでも持ち続けていれば、それが恋へと変化していく可能性もあると思う。

 瑳百合さんの生まれ変わりでない場合は、まず話しかけることが難しい。

 もし話ができたとしても、好意がないところからのスタートになるので、仲良くなっていくのには時間がかかるだろう。

 それでも俺は仲良くなっていきたいと思っている。

 これから出会うのは、瑳百合さんではなくても、俺の理想の女性と思われるからだ。

 俺の理想の人と出会ったというのに、そばに近づくこともできないまま苦しみ続けた前世のようなことにはなりたくない。

 とはいっても、できれば瑳百合さんの生まれ変わりの女性であるといいなあ、と思っていた。

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