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第七話 俺の前世・小学校六年生まで

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 俺の意識はだんだん遠くなっていき、これでもうこの世を去るのだと思っていた。

 しかし……。

 そう思っていた俺の心に前世の記憶が流れ込んできて、前世のことを思い出し始めた。



 俺の前世の名前は倉森喜康(くらもりよしやす)。

 普通の家庭に生まれ、ごく平凡な人生を歩んでいくはずの男だった。

 はずだったのだけど……。

 俺が幼稚園の頃から、両親の仲は悪くなっていく。

 いわゆる「性格の不一致」というものだが、詳細についてはわからない。

 最初は、ケンカを繰り返していたが、俺が小学校低学年の頃になると、よほどのことがない限りは、お互い口をきくこともなくなっていた。

 食事も、母親と俺は一緒にとっていたが、父親は一人でとるようになっていった。

 母親と一緒にとるといっても、母親はいつも難しい表情をしていて、会話というものはほとんどない。

 それだけならいいが、些細なことで俺に対して怒ることが多くなった。

 本人はしつけだと言っていたが、父親に対する不満が貯まりすぎて、俺の方にも矛先を向けているとしか思えなかった。

 冷たくて、重くて、暗い雰囲気の俺の家。

 今世の俺の家も冷たい雰囲気だったが、それ以上のものだった。

 小学校高学年になると、そういう雰囲気が嫌になってきた。

 父親とは、既に話をすることが少なくなってきていて、疎遠になる方向に進んでいたが、母親とも疎遠になる方向に進みたかった。

 もちろん一緒に住んでいる以上、全く関わらないわけにはいかないが、最小限にしたいと思っていた。

 そこで、一人で食事をとるようにしたり、極力話をしないようにして、母親とも疎遠になっていくよう努力をしていった。

 家庭が暗かったから、ということを言い訳にはしたくはないが、幼稚園の頃から既に陰気だった俺。

 友達ができるわけもなく、幼稚園の頃から一人ぼっちだった。

 小学生になると、その傾向はますます拍車がかかり、幼稚園の頃はまだ話しかけてくる人は結構いたのだが、そういう人さえも少なくなっていた。

 小学校高学年になると、少しずつカップルというものができ始めてくる。

 一人ぼっちの俺でも、カップルで仲良くしている人たちの姿は、嫌でも目に入ってきた。

 カップルというわけではなくても、仲良くしている男女の姿も目に入ってくる。

 俺は、最初の内はそこまで気にしていなかった。

 しかし、小学校五年生の夏が過ぎ、九月になると、次第にそうした人たちがうらやましくなってきた。

 仲睦まじさを見せつけられると、腹立たしささえ覚えるようになった。

 多分、その頃に思春期を迎えたのだと思う。

 俺も次第に、女の子とお付き合いがしたいと思うようになってきた。

 家に帰れば、毎日両親の対立でつらく苦しい毎日。

 そうした俺を癒してくれる存在がほしかった。

 とはいうものの、男の友達すらいない俺。

 まして、異性と付き合うとなると、それは果てしなくハードルの高いものだった。

 好意をもった女の子がいなかったわけではない。

 しかし、そういった女の子に対して、勇気を振り絞り、

「付き合っている人、いる?」

 と聞くのだが、

「もう既に他の男の子と付き合っている」

 と言われるパターンばかりだった。

 そういう女の子しか好意を持てなかった方もどうかしていたのかもしれないが……。

 俺の心はますます沈んでいく。

 そんな時に出会ったのが冬沼土(ふゆぬまつち)るやのさん。

 今世で、俺が失恋したすのなさんと同じタイプ。

 俺の理想の人が現れたと思った。

 今世のすのなさんと同様、小学校六年生の時、同じクラスになったのだ。

 その頃から美少女だった。

 俺は、出会った時から彼女に好意を持った。

 そして、付き合いたいと思った。

 しかし、その想いは今までとは違っていた。

 今までは、「ガールフレンド」として付き合いと思っていたのだけど、るやのさんとは、恋人として付き合いと思った。

 とはいうものの、その頃の俺に、告白するだけの力はなかった。

 告白どころか、そばに行くこともできないまま、月日は過ぎていく。

 そんな俺を癒してくれたのは、アニメとアニソンとギャルゲーだった。

 特にギャルゲーはプレイをする度に俺を癒してくれる。

 今の俺もギャルゲーが大好きだが、前世の俺も、たちまちの内にギャルゲーが大好きになり、はまっていった。

 家でも学校でも恵まれない俺の、唯一の楽しみだった。
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