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第五十話 デートの始まり

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今日はデートの日。

いつもより起きるのは遅くなってしまった。まだ少し眠い。

外はいい天気。朝ではあるが、少し暑さを感じる。

俺は、まだ頭がボーッとしているところはあったが、いつものように朝食を作り、食べ終える。

時間がそれほどあるわけではないので、全部屋はできないが、主要なところのそうじも行った。

その後、少し休憩する。

俺は彼女に、

「家に迎えに行くよ」

と言ったのだが、

「わたしがおにいちゃんの家に行きますので」

と彼女が言ったので、彼女が来るのを待つことになった。

紗緒里ちゃんは、デ-トの時、恋人を迎えに行くのが、あこがれだったと言っていた。

うん? 恋人?

そうだ。

もう紗緒里ちゃんにとっては、俺は恋人という存在なんだ。

俺は彼女のことを恋人と思っていいのだろうか。

それは、今日の告白がきちんとできるかどうかだろう。

俺は紗緒里ちゃんに告白することに決めた。

紗緒里ちゃんの一途さに、俺は応えていかなくてはいけない。

しかし、今度は告白の仕方について悩み始め、なかなか眠ることができなかった。

その為、ちょっと起きるのがいつもより遅くなってしまい、午前九時起きになってしまった。

午前十一時に彼女は家に来るので、まだ少し時間はあるが、まだ心はフワフワしているところがある。

いくら幼い頃から知っているとは言っても、告白となると話を別だ。

きちんと好きという気持ちを伝えることができるのだろうか。

その時になると、恥ずかしくなって、何も言えなくなってしまうのではないだろうか。

普段の時でさえ、彼女がかわいすぎて。言葉が出なくなる時があるくらいだ。

彼女の方から告白するのを待つという方法もある。

俺から言い出さなければ、彼女の方から言い出すかもしれない。

いや、その可能性は大いにあるだろう。

でもそれでいいのだろうか。

これから恋人どうしとしてうまくやっていくには、俺がリードするくらいにならないといけないと思う。

俺の方も、紗緒里ちゃんと同じ、いやそれ以上に想いを熱くしなければ、恋は続かないだろう。そして、その先にある婚約、結婚にもつながっていかないと思う。

もう迷いは捨てなければならない。

間もなく彼女は家に来る。

今日は、彼女に心ゆくまでデートを楽しんでもらおう。

そして、俺から告白し、恋人どうしになる。

俺は、シャワーを浴び、よく体を洗った。

身だしなみを整え、出かける準備も整えた。後は○○ちゃんが来るのを待つだけだ。

ピンポーン!

俺は玄関に向かった。

扉を開けるとそこには……。

かわいくて、素敵な子がそこにいた。

薄い水色のワンピース。清楚。

いつもいい匂いをしている彼女だが、今日は一段といい匂いがする。

「紗緒里ちゃん、今日は一段とかわいい」

「まあ、おにいちゃんたら。恥ずかしくなってきます」

顔を赤らめる紗緒里ちゃん。

このまま彼女の姿を眺めて、うっとりしていたかったが、そういうわけにもいかない。

「じゃあ、行こう」

「はい」

紗緒里ちゃんはにっこり笑った。



家を出ると、紗緒里ちゃんが申し出る。

「おにいちゃん、今日はずっと手をつないでいきましょう」

「今日ずっと?」

「そうです」

甘い声で俺にささやいてくる紗緒里ちゃん。

今までは、それほど長い時間手をつないでいることはなかった。

それが今日は、一日ずっとしていたいと言う。

さすがに今日ずっとというのは恥ずかしい気がする。

でも俺は、告白という、もっと恥ずかしいことをしようとしている。

それに比べれば、手をつなぐということは、経験はしているので、それが一日ずっとということであっても、受け入れることはできるだろうと思う。

とはいうものの、彼女の手を握ると、心は熱くなってくる。

これは、再会して初めて手を握った時から変わっていない。

次第に慣れてくるものだと思ったのだが、全くそういうことはない。それどころか、熱さは増す一方だ。

それだけ彼女のことが好きになっていっているということなんだろう。

「いいですよね。デートですもの」

俺は彼女の申し出を受けることに決めた。

「いいよ」

「ありがとうございます」

うれしそうな紗緒里ちゃん。

「おにいちゃん。それでは」

紗緒里ちゃんは、顔を赤くしながら、俺の手を握る。

その瞬間、俺の心は一挙に熱くなった。



駅までの通り道に公園がある。木々が青々としている。

風がさわやかで気持ちいい。

その中を俺達は駅まで歩いて行く。

「おにいちゃん、わたし、これだけでも今日はよかったと思っています。今まではちょっとしか手を握れなくて、寂しい思いをしていたんですけど、こんなにいい天気で、さわやかな休日に、おにいちゃんと手をつないで歩けるんですから」

恥ずかしそうに言うその姿がまたかわいい。

「俺も紗緒里ちゃんとこうして歩けてうれしいと思っているけど、まだ今日は始まったばかりだよ。これから二人でもっと楽しい時間を過ごしていこう」

俺は恥ずかしい気持ちになりながらそう言った。

今までの俺には言えなかった言葉。

俺は彼女にこういう言葉を自然と言えるようになってきていると思う。

こういう調子でいけば、今日、告白はできると思うんだけど……。

「そうですね。これからデートをしていくんですものね。おにいちゃん、好きです。好きです。今日いっぱい言いますね」

そう言うと、紗緒里ちゃんは微笑んだ。
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