46 / 53
第四十六話 想いを伝え続けたい夏森さん
しおりを挟む
夏森さんの、俺のことを想う気持ち、それは理解したいと思う。
その気持ちに少し応えたい気持ちが湧いてくる。
彼女が言う通り、友達なんだから、お茶ぐらいはいいと思うのだけど……。
夏森さんの申し出を受ければ、いくらお茶だけでも、もしかしたら紗緒里ちゃんが悲しむかもしれない。
逆に、もし夏森さんの申し出を断れば、夏森さんの悲しむ顔を見なければならないだろう。
どちらも俺にとってはつらい決断になる。
どうしたらいいんだろう……。
俺は悩んだ。
しばしの間、二人とも黙り込んでいた。
やがて、
「ごめん。わたし、急ぎすぎちゃったね。今日のところはあきらめる」
と夏森さんは残念そうに言った。
「なんと言っていいかわからないけど……」
「いいのよ。一緒に出かけるのはハードルが高いと思ったんだけど、どうしてもお誘いしたかったの。これは、わたしも難しいな、とは思っていたんだけど、やっぱり断られちゃった。まあ、これは断られてもしょうがないな、と思った。でもお茶するのもハードルが高かったということなのね。わたしの方は、もうそろそろお茶ぐらいはしてもいいかな、と思っていたんだけど。結構海春くんと最近、楽しく話せている気がしたから。それだけ彼女のことを大切に想っているということなのね。今日はもうこれ以上お願いはしない。でも、それでもわたしは、これくらいじゃあきらめない。だって、幼馴染なんですもの」
彼女は一旦言葉を切る。
そして、もじもじして顔を赤くしながら、
「わたし、海春くんのことが好きなの。好きで、好きでいつも海春くんのことを想っているの。この気持ちがいつか通じて、恋人どうしになりたいと思っている」
と小さめの声で言った、
俺はここまで彼女に想われている。
しかし、この気持ちに応えることのできない自分。
つらい気持ちになるが、ここはグッと我慢するしかない。
「海春くん。改めてお願いがあるの」
なんだろうか。
もう一回、お出かけしたいと言われても、お茶したいと言われても、困惑するしかないところなんだけど……。
「わたし、今日、なんか無理なお願いをしちゃった気がするんだけど、それで嫌いにならないでほしい」
「そんなことで嫌いになるはずないじゃないか」
俺はまた同じことを言われるんじゃないかと思っていたので、ちょっとホッとした。
「いや、さっきも言ったけど、急ぎすぎちゃったと思う。わたしって、こういうところがあるから、それで嫌いになっちゃうかもしれないと思って」
「まあ強引なところはあると思うけど、嫌いじゃないから」
「そう言ってくれるとうれしい。わたし、まだ相思相愛になれないのはつらいけど、海春くんに嫌われるのが一番つらいから」
「夏森さん、俺のことをこんなにも想ってくれるんだ。嫌いになるはずがない」
「ありがとう」
少し涙声になっている夏森さん。
俺も胸が熱くなってくる。
「仲の良い友達としては、これからもよろしくお願いしたいと思っている」
「友達、なんだよね……」
残念そうな表情になる夏森さん。しかし、それは一瞬で、すぐ気を取り直し、
「ルインも教室でのおしゃべりも、今まで通りでいい? 『好き』って言葉を送信するし、毎日直接『好き』って言うけど、それでいい?」
ともじもじしながら言ってきた。
「うーん、そう送ってこられても、俺としては返事が難しいから、なんとも言えないけど。後、直接言われても、難しいんだよな。何と言っていいかわからないっていうところがあって」
「ルインの返事は最初に言った通り、もらえるとは思ってないので、それでいいよ。わたしが直接『好き』っていうのも、返事を期待しているわけじゃない」
彼女は、さらに顔を赤くしながら続ける。
「ただわたしとしては、海春くんにこの想いを伝え続けたいから、『好き』って書きまくりたいし、言いまくりたい。迷惑かもしれないと思っている。でもこの熱い気持ち、抑えることが難しいの。それが少しでも伝わってほしいと思っているの」
そう言った後、
「海春くん、これって言うのはすごく恥ずかしいことなのよ」
と言ってうつむく夏森さん。
俺もなんだか恥ずかしい気持ちになってきた。
俺はもともと彼女のことがは幼馴染としては好きだ。少しずつ、まだ恋ではないが、好きだという気持ちは強くなってきている。
そういう気持ちなのに、「好き」だと送信してきたり、言ってくるのを拒絶するのは至難の技だ。
俺は、
「まあ、これまで通り、返事をしないでいいのなら……」
と言うしかなかった。
「ではこれからも、想いを伝えさせてもらうね。ありがとう」
と言って彼女は微笑んだ。
夏森さんは、もともとはおとなしい方だった。それが、恋ということになると強引なところが多くなっている。それだけ俺のことを想ってくれているのだろう。その気持ちは理解していきたい。
笑顔は素敵だ。かわいい。
「好き」と送信されたり、直接言われたりするのは、これからも困惑するだろう。
でも、それ以外のところでの、友達としてのやり取りならば、してもいいのではないかと思う。
とにかく紗緒里ちゃんが第一というところをきちんと守って対応していこう。
「これからもよろしく」
「うん」
そうこうしているうちに、昼休みも終わりに近づいてきた。
「じゃあ、そろそろ教室に戻った方がいいわね」
「そうだな」
「海春くん、いや、今だけは名前で呼ばせて。夢海ちゃん、好き」
夏森さんの甘い声。
俺はこの声の魅力に染まり始めている気がする。
俺達は、教室に戻っていった。
その気持ちに少し応えたい気持ちが湧いてくる。
彼女が言う通り、友達なんだから、お茶ぐらいはいいと思うのだけど……。
夏森さんの申し出を受ければ、いくらお茶だけでも、もしかしたら紗緒里ちゃんが悲しむかもしれない。
逆に、もし夏森さんの申し出を断れば、夏森さんの悲しむ顔を見なければならないだろう。
どちらも俺にとってはつらい決断になる。
どうしたらいいんだろう……。
俺は悩んだ。
しばしの間、二人とも黙り込んでいた。
やがて、
「ごめん。わたし、急ぎすぎちゃったね。今日のところはあきらめる」
と夏森さんは残念そうに言った。
「なんと言っていいかわからないけど……」
「いいのよ。一緒に出かけるのはハードルが高いと思ったんだけど、どうしてもお誘いしたかったの。これは、わたしも難しいな、とは思っていたんだけど、やっぱり断られちゃった。まあ、これは断られてもしょうがないな、と思った。でもお茶するのもハードルが高かったということなのね。わたしの方は、もうそろそろお茶ぐらいはしてもいいかな、と思っていたんだけど。結構海春くんと最近、楽しく話せている気がしたから。それだけ彼女のことを大切に想っているということなのね。今日はもうこれ以上お願いはしない。でも、それでもわたしは、これくらいじゃあきらめない。だって、幼馴染なんですもの」
彼女は一旦言葉を切る。
そして、もじもじして顔を赤くしながら、
「わたし、海春くんのことが好きなの。好きで、好きでいつも海春くんのことを想っているの。この気持ちがいつか通じて、恋人どうしになりたいと思っている」
と小さめの声で言った、
俺はここまで彼女に想われている。
しかし、この気持ちに応えることのできない自分。
つらい気持ちになるが、ここはグッと我慢するしかない。
「海春くん。改めてお願いがあるの」
なんだろうか。
もう一回、お出かけしたいと言われても、お茶したいと言われても、困惑するしかないところなんだけど……。
「わたし、今日、なんか無理なお願いをしちゃった気がするんだけど、それで嫌いにならないでほしい」
「そんなことで嫌いになるはずないじゃないか」
俺はまた同じことを言われるんじゃないかと思っていたので、ちょっとホッとした。
「いや、さっきも言ったけど、急ぎすぎちゃったと思う。わたしって、こういうところがあるから、それで嫌いになっちゃうかもしれないと思って」
「まあ強引なところはあると思うけど、嫌いじゃないから」
「そう言ってくれるとうれしい。わたし、まだ相思相愛になれないのはつらいけど、海春くんに嫌われるのが一番つらいから」
「夏森さん、俺のことをこんなにも想ってくれるんだ。嫌いになるはずがない」
「ありがとう」
少し涙声になっている夏森さん。
俺も胸が熱くなってくる。
「仲の良い友達としては、これからもよろしくお願いしたいと思っている」
「友達、なんだよね……」
残念そうな表情になる夏森さん。しかし、それは一瞬で、すぐ気を取り直し、
「ルインも教室でのおしゃべりも、今まで通りでいい? 『好き』って言葉を送信するし、毎日直接『好き』って言うけど、それでいい?」
ともじもじしながら言ってきた。
「うーん、そう送ってこられても、俺としては返事が難しいから、なんとも言えないけど。後、直接言われても、難しいんだよな。何と言っていいかわからないっていうところがあって」
「ルインの返事は最初に言った通り、もらえるとは思ってないので、それでいいよ。わたしが直接『好き』っていうのも、返事を期待しているわけじゃない」
彼女は、さらに顔を赤くしながら続ける。
「ただわたしとしては、海春くんにこの想いを伝え続けたいから、『好き』って書きまくりたいし、言いまくりたい。迷惑かもしれないと思っている。でもこの熱い気持ち、抑えることが難しいの。それが少しでも伝わってほしいと思っているの」
そう言った後、
「海春くん、これって言うのはすごく恥ずかしいことなのよ」
と言ってうつむく夏森さん。
俺もなんだか恥ずかしい気持ちになってきた。
俺はもともと彼女のことがは幼馴染としては好きだ。少しずつ、まだ恋ではないが、好きだという気持ちは強くなってきている。
そういう気持ちなのに、「好き」だと送信してきたり、言ってくるのを拒絶するのは至難の技だ。
俺は、
「まあ、これまで通り、返事をしないでいいのなら……」
と言うしかなかった。
「ではこれからも、想いを伝えさせてもらうね。ありがとう」
と言って彼女は微笑んだ。
夏森さんは、もともとはおとなしい方だった。それが、恋ということになると強引なところが多くなっている。それだけ俺のことを想ってくれているのだろう。その気持ちは理解していきたい。
笑顔は素敵だ。かわいい。
「好き」と送信されたり、直接言われたりするのは、これからも困惑するだろう。
でも、それ以外のところでの、友達としてのやり取りならば、してもいいのではないかと思う。
とにかく紗緒里ちゃんが第一というところをきちんと守って対応していこう。
「これからもよろしく」
「うん」
そうこうしているうちに、昼休みも終わりに近づいてきた。
「じゃあ、そろそろ教室に戻った方がいいわね」
「そうだな」
「海春くん、いや、今だけは名前で呼ばせて。夢海ちゃん、好き」
夏森さんの甘い声。
俺はこの声の魅力に染まり始めている気がする。
俺達は、教室に戻っていった。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
俺にはロシア人ハーフの許嫁がいるらしい。
夜兎ましろ
青春
高校入学から約半年が経ったある日。
俺たちのクラスに転入生がやってきたのだが、その転入生は俺――雪村翔(ゆきむら しょう)が幼い頃に結婚を誓い合ったロシア人ハーフの美少女だった……!?
俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。
ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。
※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる