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第四十一話 連休前の予定
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俺は紗緒里ちゃんと恋人どうしになるべきか悩んでいる。
彼女も望んでいると思うので、後は俺次第ではあるのだけど……。
紗緒里ちゃんのことが好きになればなるほど、彼女と付き合っていいものか、という気持ちも少しずつではあるが強くなってくる。
こんなに素敵な人なんだ。好きだからこそ、俺よりもっと素晴らしい人に託すべきなのではないかと。
こういう弱気な気持ちがどうしてもある。
しかし、紗緒里ちゃんは俺のことが好きなんだ。俺が紗緒里ちゃんのことを幸せにしなければならない。
もっと強い気持ちになっていかなければ。
一方で、俺は、夏森さんのことを少しずつ好きになり始めていた。
幼馴染としてではない。恋の対象として。
毎日ルインでその想いを送付してくる。そして教室では直接その想いを伝えてくる。
俺もその熱意に応えたいという気持ちはある。
ただ紗緒里ちゃんのことを想うと、夏森さんに心を動かすこと自体、してはいけない気がする。
とはいっても、夏森さんも魅力的だし……。
今は紗緒里ちゃんと恋人どうしになるかどうかで悩んでいるが、夏森さんの存在が俺の中で大きくなってくると、夏森さんとの関係をどうするか、ということでも悩むことになると思う。
「おう、お前、ゴールデンウイークの予定はもう立てているのか?」
康一郎が俺にそう言ってくる。
ゴールデンウイークまで一週間前になった放課後のこと。
部活へ行く前の時間、俺と康一郎は、グラウンドの前のベンチで、いつものように話をしていた。
「うーん、まだだな」
「もうまもなくだぞ。紗緒里ちゃんとどこかに出かけたりしないのか?」
「そう言うお前はどうなんだ? 鈴乃ちゃんとデートをしないのか?」
「デート?」
康一郎は顔を赤らめ始めた。
「デートぐらいするだろう? お前達恋人どうしなんだし」
「そ、そりゃあ、そうだけど」
何だかもじもじしている康一郎。
鈴乃ちゃんとは幼馴染だし、恋人どうしと付き合ってからも結構長い時間が経っている。
本人のいる前では、恋人として付き合う前も後も、たいしてその対応に変化があるようには思えない。
しかし、俺と二人でいる時に、鈴乃ちゃんの話をすると、恥ずかしくなるようだ。
俺が幼い頃からの友達だからだと思う。
康一郎は、少しずつ普通の状態に戻っていく。
「部活でほとんど埋まっているんだ。一日くらいしか休みがない」
「大変だなあ」
体力を相当使うだろあろう。好きなこととはいうものの、かなり疲れるのではないかと思う。
「まあその休みの日に、一緒にどこかへ行きたいとは思っているんだけどなあ。疲れているとは思うけど、鈴乃ちゃんとの思い出は作りたいからなあ……」
普段はよくケンカをしている二人。
特に鈴乃ちゃんの方は、気が短いせいか、頭から湯気が出るくらいの勢いで怒ることが多い。幼い頃からそうで、その点が、鈴乃ちゃんのことをなるべく敬遠したくなった大きな理由だ。
もちろん、彼女が優しいところがあるのも知ってはいるし、これからも幼馴染としての関係は維持していきたい。
まあ、どちらにしても、俺達が一緒に遊んでいた頃から、彼女は康一郎のことしか想っていなかった。
康一郎も多分同じだろう。
二人の心の中は通じ合っている。
それが、毎日のように康一郎が鈴乃ちゃんから怒られても平気な理由なんだろうと思う。
「ただ、デートの時、必ず一回以上鈴乃ちゃんには怒られちゃうんだ。それがなければもっといんだけど」
「なんだ、お前、のろけているのか?」
俺は少し笑う。
「いや、のろけているんじゃなくて、この間のデート中、俺がちょっと鈴乃ちゃんに、『今日はかわいい子が多いなあ』って言っただけで、『また浮気して。もう今日は許さない』と言って怒り出しちゃって、その後三十分口をきいてくれなかったんだ。これはちょっとひどいと思うけど、結構こういうことが多いんだ」
「そりゃあ、デートしているんだから、他の女の子の方に興味が行く方がよくないと思う」
「でもつらい話だと思わないか?」
「なんで?」
「だって、かわいい子がいたら、その子のことをかわいいって言わないのは、逆に失礼じゃないか。そう思わない?」
「そうかもしれないけど、恋人の前でそれを言っちゃいけないと思う」
「別に好きになったわけじゃないんだからいいと思うんだけど」
「まあ二人の話だから、俺はそれ以上は言わないけど」
康一郎はちょっと軽いところがあり、鈴乃ちゃんはやきもちのやき方がすごい。
よくこれで恋人としてやって行けているなとも思うが、意外とこの方がうまくいくのかもしれない。
「俺の方はともかく、お前の方はどうするんだ?」
「そうだなあ……」
「お前、だいぶ紗緒里ちゃんに心が傾いてきたんだろう? もうここでデートして、その時に告白をして、恋人どうしになった方がいい。紗緒里ちゃんだって、デートしたいと思っているし、お前の恋人になりたいと思っている」
康一郎の言う通り、俺は紗緒里ちゃんに恋し始めている。紗緒里ちゃんは俺に恋してくれている。恋人どうしになるのであれば、このゴールデンウイークでのデートが一番いいだろうと思う。
彼女も望んでいると思うので、後は俺次第ではあるのだけど……。
紗緒里ちゃんのことが好きになればなるほど、彼女と付き合っていいものか、という気持ちも少しずつではあるが強くなってくる。
こんなに素敵な人なんだ。好きだからこそ、俺よりもっと素晴らしい人に託すべきなのではないかと。
こういう弱気な気持ちがどうしてもある。
しかし、紗緒里ちゃんは俺のことが好きなんだ。俺が紗緒里ちゃんのことを幸せにしなければならない。
もっと強い気持ちになっていかなければ。
一方で、俺は、夏森さんのことを少しずつ好きになり始めていた。
幼馴染としてではない。恋の対象として。
毎日ルインでその想いを送付してくる。そして教室では直接その想いを伝えてくる。
俺もその熱意に応えたいという気持ちはある。
ただ紗緒里ちゃんのことを想うと、夏森さんに心を動かすこと自体、してはいけない気がする。
とはいっても、夏森さんも魅力的だし……。
今は紗緒里ちゃんと恋人どうしになるかどうかで悩んでいるが、夏森さんの存在が俺の中で大きくなってくると、夏森さんとの関係をどうするか、ということでも悩むことになると思う。
「おう、お前、ゴールデンウイークの予定はもう立てているのか?」
康一郎が俺にそう言ってくる。
ゴールデンウイークまで一週間前になった放課後のこと。
部活へ行く前の時間、俺と康一郎は、グラウンドの前のベンチで、いつものように話をしていた。
「うーん、まだだな」
「もうまもなくだぞ。紗緒里ちゃんとどこかに出かけたりしないのか?」
「そう言うお前はどうなんだ? 鈴乃ちゃんとデートをしないのか?」
「デート?」
康一郎は顔を赤らめ始めた。
「デートぐらいするだろう? お前達恋人どうしなんだし」
「そ、そりゃあ、そうだけど」
何だかもじもじしている康一郎。
鈴乃ちゃんとは幼馴染だし、恋人どうしと付き合ってからも結構長い時間が経っている。
本人のいる前では、恋人として付き合う前も後も、たいしてその対応に変化があるようには思えない。
しかし、俺と二人でいる時に、鈴乃ちゃんの話をすると、恥ずかしくなるようだ。
俺が幼い頃からの友達だからだと思う。
康一郎は、少しずつ普通の状態に戻っていく。
「部活でほとんど埋まっているんだ。一日くらいしか休みがない」
「大変だなあ」
体力を相当使うだろあろう。好きなこととはいうものの、かなり疲れるのではないかと思う。
「まあその休みの日に、一緒にどこかへ行きたいとは思っているんだけどなあ。疲れているとは思うけど、鈴乃ちゃんとの思い出は作りたいからなあ……」
普段はよくケンカをしている二人。
特に鈴乃ちゃんの方は、気が短いせいか、頭から湯気が出るくらいの勢いで怒ることが多い。幼い頃からそうで、その点が、鈴乃ちゃんのことをなるべく敬遠したくなった大きな理由だ。
もちろん、彼女が優しいところがあるのも知ってはいるし、これからも幼馴染としての関係は維持していきたい。
まあ、どちらにしても、俺達が一緒に遊んでいた頃から、彼女は康一郎のことしか想っていなかった。
康一郎も多分同じだろう。
二人の心の中は通じ合っている。
それが、毎日のように康一郎が鈴乃ちゃんから怒られても平気な理由なんだろうと思う。
「ただ、デートの時、必ず一回以上鈴乃ちゃんには怒られちゃうんだ。それがなければもっといんだけど」
「なんだ、お前、のろけているのか?」
俺は少し笑う。
「いや、のろけているんじゃなくて、この間のデート中、俺がちょっと鈴乃ちゃんに、『今日はかわいい子が多いなあ』って言っただけで、『また浮気して。もう今日は許さない』と言って怒り出しちゃって、その後三十分口をきいてくれなかったんだ。これはちょっとひどいと思うけど、結構こういうことが多いんだ」
「そりゃあ、デートしているんだから、他の女の子の方に興味が行く方がよくないと思う」
「でもつらい話だと思わないか?」
「なんで?」
「だって、かわいい子がいたら、その子のことをかわいいって言わないのは、逆に失礼じゃないか。そう思わない?」
「そうかもしれないけど、恋人の前でそれを言っちゃいけないと思う」
「別に好きになったわけじゃないんだからいいと思うんだけど」
「まあ二人の話だから、俺はそれ以上は言わないけど」
康一郎はちょっと軽いところがあり、鈴乃ちゃんはやきもちのやき方がすごい。
よくこれで恋人としてやって行けているなとも思うが、意外とこの方がうまくいくのかもしれない。
「俺の方はともかく、お前の方はどうするんだ?」
「そうだなあ……」
「お前、だいぶ紗緒里ちゃんに心が傾いてきたんだろう? もうここでデートして、その時に告白をして、恋人どうしになった方がいい。紗緒里ちゃんだって、デートしたいと思っているし、お前の恋人になりたいと思っている」
康一郎の言う通り、俺は紗緒里ちゃんに恋し始めている。紗緒里ちゃんは俺に恋してくれている。恋人どうしになるのであれば、このゴールデンウイークでのデートが一番いいだろうと思う。
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