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第三十四話 海春くんへの想い (寿々子サイド)
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ただ海春くんと疎遠になって長い年月が経っていた。
中学校三年生になっても、相変わらずあいさつ程度しかできない。。
思い切ってわたしから告白しようか、と思う。
海春くんに恋人はいないようだ。
告白するなら今がチャンスだと思う。
でも告白して断られたら、それこそ心の打撃は大きい。幼い頃の思い出がそれで全部壊れてしまう可能性がある。
それを思うと、何もできない。
その間に、わたしに告白する男の子が何人か現れた。
好きな人と疎遠になって、告白もできないわたしに、なんで告白してくるんだろうと思う。
気持ちはうれしかった。
しかし、誰とも付き合う気にはなれなかった。
どうしても、幼い頃の海春くんのことを思い出す。
告白してきた男の子には申し訳ないが、全部断った。
みんな残念そうな顔をしていたが、仕方がない。
わたしは、海春くんのことを想っていきたいと思った。
そして、わたしは、海春くんと同じ高校に入り、同じクラスになった。
小学校三年生で別々のクラスになってから、ようやく一緒のクラスになったのだ。
わたしはうれしかった。
これで、海春くんと親しくなれるのでは、と思った。
しかし、状況は変わらない。
海春くんは、星好くんとは時々笑顔で話をしたりしているが、それ以外は気難しい態度をしていることが多い。
わたしも、あいさつは何とかするのだが、それ以上話をすることはできない。
せっかく同じクラスになったのに、と思うが、どうにもならない日が続いた。
そんな時、相談相手になってくれたのは、林池りなこさんだった。
彼女とは高校に入ってからの友達。同じクラスで席が近く、それで話をしているうちに、次第に仲良くなっていった。
彼女は、クラスメイトと恋人どうしになっていて、恋については先輩だ。
二学期になると、時々林池さんと学校の帰りにお茶をするようになっていた。
親しくなってくると、下の名前で呼び合うようになっていった。
高校一年生の九月中旬。
わたし達は、喫茶店でおしゃべりをしていた。
「そういえば寿々子ちゃんって、誰か好きな人がいるの?」
りなこちゃんがそう言ってくる。
「す、好きな人?」
わたしは胸がドキドキした。
「な、なんで?」
「いや、寿々子ちゃん、告白されてもみんな断ってきたって言うじゃない。その中にはいいと思う人もいたんじゃないの?」
「うーん、なんていうか、わたしと気が合いそうな人と出会っていないというか」
「そうすると、やっぱり好きな人がいるってことよね」
「どうなんだろう……」
「やっぱり海春くんのことが好きなの?」
「ど、どうして?」
「だって、海春くんのことを話題にしている時、うれしそうにしていたり寂しそうにしていたりしていたもの。他のことを話題にしている時とは全然表情が違うもの」
そう言うと、りなこちゃんは微笑んだ。
「でも今は、前にも話をした通り、疎遠になっちゃっているから……」
「ここは、寿々子ちゃんから、告白すべきね」
「こ、告白?」
「そうよ」
「でも告白って、男の人からするもんじゃないの?」
「寿々子ちゃん、そういうことを言っていると、いつまで経っても海春くんと恋人どうしになれないわよ。彼の方から来ないんだったら、自分の方から行かないと」
「さすがに恥ずかしい……」
「わたしだって、彼が奥手だったから、わたしの方から告白したのよ」
「りなこちゃんの方から?」
これを初めて聞く話だ。
「そうよ。彼、恥ずかしがり屋なのか、全然『好き』とか言ってくれないの。そして、『俺の恋人になってほしい』と言うことも言ってくれないの。毎日学校でも親しくしているし、ルインでもやり取りしているのにね。それで、わたしの方が耐えられなくなちゃった。それだけ彼のことが好きだったから。それで、思い切って告白したの。とても恥ずかしくて、胸がものすごくドキドキしたけど、なんとか想いを伝えられたわ」
「それで彼は付き合うことをOKしたの?」
「最初は戸惑っていたようだった。彼もわたしのことは好きだったけど、恋というところまではいっていなかったのかもしれない。でも一生懸命想いを伝えたらOKしてくれた、とてもうれしかったわ」
「そうだったんだ」
「だから、寿々子ちゃんも海春くんに想いを伝えるべきだと思う」
「りなこちゃんは、彼への想いが強かったからうまくいたんだと思う。わたし、海春くんのことは好きだけど、恋かどうかと言われるとまだまだだし……」
「何を言っているの。寿々子ちゃん、海春くんに恋し始めていると思う、ただの幼馴染としてではなくてね。そういう気持ちを伝えないと」
「でもわたしが告白をしたとしても、海春くんの方がそれをOKしてくれないような気がするし……。もし海春くんに好きな人がいたらどうしょうと思うこともある」
「そんな弱気じゃだめ。海春くんへの想いをもっと熱いものにしなくちゃ。それにここで告白しないでいると、他の人に取られちゃうかもしれない。そうなる前に、寿々子ちゃんが海春くんに熱い想いを伝えて、相思相愛になるのよ」
りなこちゃんは、力強く言った。
中学校三年生になっても、相変わらずあいさつ程度しかできない。。
思い切ってわたしから告白しようか、と思う。
海春くんに恋人はいないようだ。
告白するなら今がチャンスだと思う。
でも告白して断られたら、それこそ心の打撃は大きい。幼い頃の思い出がそれで全部壊れてしまう可能性がある。
それを思うと、何もできない。
その間に、わたしに告白する男の子が何人か現れた。
好きな人と疎遠になって、告白もできないわたしに、なんで告白してくるんだろうと思う。
気持ちはうれしかった。
しかし、誰とも付き合う気にはなれなかった。
どうしても、幼い頃の海春くんのことを思い出す。
告白してきた男の子には申し訳ないが、全部断った。
みんな残念そうな顔をしていたが、仕方がない。
わたしは、海春くんのことを想っていきたいと思った。
そして、わたしは、海春くんと同じ高校に入り、同じクラスになった。
小学校三年生で別々のクラスになってから、ようやく一緒のクラスになったのだ。
わたしはうれしかった。
これで、海春くんと親しくなれるのでは、と思った。
しかし、状況は変わらない。
海春くんは、星好くんとは時々笑顔で話をしたりしているが、それ以外は気難しい態度をしていることが多い。
わたしも、あいさつは何とかするのだが、それ以上話をすることはできない。
せっかく同じクラスになったのに、と思うが、どうにもならない日が続いた。
そんな時、相談相手になってくれたのは、林池りなこさんだった。
彼女とは高校に入ってからの友達。同じクラスで席が近く、それで話をしているうちに、次第に仲良くなっていった。
彼女は、クラスメイトと恋人どうしになっていて、恋については先輩だ。
二学期になると、時々林池さんと学校の帰りにお茶をするようになっていた。
親しくなってくると、下の名前で呼び合うようになっていった。
高校一年生の九月中旬。
わたし達は、喫茶店でおしゃべりをしていた。
「そういえば寿々子ちゃんって、誰か好きな人がいるの?」
りなこちゃんがそう言ってくる。
「す、好きな人?」
わたしは胸がドキドキした。
「な、なんで?」
「いや、寿々子ちゃん、告白されてもみんな断ってきたって言うじゃない。その中にはいいと思う人もいたんじゃないの?」
「うーん、なんていうか、わたしと気が合いそうな人と出会っていないというか」
「そうすると、やっぱり好きな人がいるってことよね」
「どうなんだろう……」
「やっぱり海春くんのことが好きなの?」
「ど、どうして?」
「だって、海春くんのことを話題にしている時、うれしそうにしていたり寂しそうにしていたりしていたもの。他のことを話題にしている時とは全然表情が違うもの」
そう言うと、りなこちゃんは微笑んだ。
「でも今は、前にも話をした通り、疎遠になっちゃっているから……」
「ここは、寿々子ちゃんから、告白すべきね」
「こ、告白?」
「そうよ」
「でも告白って、男の人からするもんじゃないの?」
「寿々子ちゃん、そういうことを言っていると、いつまで経っても海春くんと恋人どうしになれないわよ。彼の方から来ないんだったら、自分の方から行かないと」
「さすがに恥ずかしい……」
「わたしだって、彼が奥手だったから、わたしの方から告白したのよ」
「りなこちゃんの方から?」
これを初めて聞く話だ。
「そうよ。彼、恥ずかしがり屋なのか、全然『好き』とか言ってくれないの。そして、『俺の恋人になってほしい』と言うことも言ってくれないの。毎日学校でも親しくしているし、ルインでもやり取りしているのにね。それで、わたしの方が耐えられなくなちゃった。それだけ彼のことが好きだったから。それで、思い切って告白したの。とても恥ずかしくて、胸がものすごくドキドキしたけど、なんとか想いを伝えられたわ」
「それで彼は付き合うことをOKしたの?」
「最初は戸惑っていたようだった。彼もわたしのことは好きだったけど、恋というところまではいっていなかったのかもしれない。でも一生懸命想いを伝えたらOKしてくれた、とてもうれしかったわ」
「そうだったんだ」
「だから、寿々子ちゃんも海春くんに想いを伝えるべきだと思う」
「りなこちゃんは、彼への想いが強かったからうまくいたんだと思う。わたし、海春くんのことは好きだけど、恋かどうかと言われるとまだまだだし……」
「何を言っているの。寿々子ちゃん、海春くんに恋し始めていると思う、ただの幼馴染としてではなくてね。そういう気持ちを伝えないと」
「でもわたしが告白をしたとしても、海春くんの方がそれをOKしてくれないような気がするし……。もし海春くんに好きな人がいたらどうしょうと思うこともある」
「そんな弱気じゃだめ。海春くんへの想いをもっと熱いものにしなくちゃ。それにここで告白しないでいると、他の人に取られちゃうかもしれない。そうなる前に、寿々子ちゃんが海春くんに熱い想いを伝えて、相思相愛になるのよ」
りなこちゃんは、力強く言った。
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