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第三十二話 のずのさんは、何で振ってしまったんだろうと言ってくる
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俺は今、学校のグラウンドの端にいる。
朝、登校した俺は、のずのさんに呼び出されたのだ。
俺は、今さら何の用だろうと思った。
俺のことを振ったのずのさん。
彼女は、俺ではなく、他の男性を選んだ。
振られた当時は、食欲もなくなるくらい傷つき、落ち込んだ。あの苦しみは、そう簡単に忘れられるものではない。
その心の傷は、紗緒里ちゃんによって癒されてきて、ようやく治ってきたところ。
もう俺は、彼女のことは忘れたいと思っている。
俺には、紗緒里ちゃんという、まだ恋人ではないが、大事に想っている人がいる。
しかし、そんな時に彼女は俺に話しかけてきた。
ただ話しかけてきたのであれば、あいさつはしようと思っていた。それ以上話をする気はなかったのだけど、彼女は思いつめた表情をしていた。
何か困ったことがあったのか、それとも悩みごとができたのか。
悩みごとだとしたら、彼氏とケンカでもしたのだろうか。
でもそんな話をされても困る。彼女だって他に友達はいるだろう。その人に話せばいいのではないか。
そう思い、
「俺に話すことなんてないと思いますけど」
と言ったのだけど、
「どうしても海春くんに話したいことがあるの」
と彼女が言ったので、仕方がなく一緒にやってきたのだった。
しかし、屋上に着いても、のずのさんは、なかなか話し出さない。
「それで、話ってなんですか?」
仕方がないので、俺の方から話を切り出すことにした。
「あ、あの……」
彼女はもじもじしていた。
「俺は冬土先輩に振られた男なんです。今さら話なんてないと思うんですけど」
「いや、そんなことはなくて」
「冬土先輩には、付き合っている人がいるじゃないんですか。その人と話をすればいいと思います」
すると、のずのさんは、
「わたし、彼とは別れたの」
と小さな声で言った。
「別れた?」
俺はとても驚いた。
「わたし、彼はイケメンで素敵な人だと思っていた。それで彼の告白もOKしたの。そうして付き合ってみたら、彼って全然イメージと違っていた。デートの時、わたしが彼より来るのを遅れたぐらいで怒り出すし、ゴ-ジャスな服装をしていないって言うし、話をしてもつまらないって言うのよ。優しさがないのね。それで、彼に嫌われちゃって、別れることになったの。わたしだって、一生懸命努力したっていうのに……」
のずのさんと付き合っていたイケメンの彼がそんなことになっていたとは……。
それにしても彼は、彼女が言うように優しさがないように思う。
「わたし、間違っていた。彼の告白なんて受けなければよかったと思っている。あの時のわたし、どうかしていたんだわ……」
のずのさんと彼が別れたという話は理解した。
結局、二人の性格が合わなかったということだろう。
それにしても、もう関係がないはずの俺に、なんでこのような話をするんだろう。
ただ振られたという話をするだけで、わざわざ屋上に呼び出す意味はあるのだろうか。
そう思っていると。
「わたし、彼に振られて、初めて海春くんのいいところに気がついたの。それで、なんで海春くんを振ってしまったんだろう、と思ったの。海春くんは、彼と違って優しい。思いやりがある。どうしてわたし、そういう大事なことに気がつかなかったんだろうと思って」
のずのさんは、もじもじしながら言う。
彼女が俺に好意を持ち始めたということだろうか。
「それで、わたし、海春くんのことが好きになってきたの」
一旦のずのさんは言葉を切り、深呼吸をする。
そして、
「もし、海春くんがまだわたしのことを好きなら、付き合ってもいいと思っている」
と言った。
俺は予想をしていなかった展開に戸惑う。
あんなに俺のことを厳しく振ったのずのさんが……。
「ど、どうかしら……」
もう間に合わないと思う。
当時ならともかく、もう俺の心の中では、紗緒里ちゃんが大きな存在になってきている。
俺は、
「ごめんなさい。付き合うことはできません」
と言った。
「ど、どうして……。わたしが、きつい言葉を言って振ったから?」
「そうではないです。振られた時は傷つきましたけど、もうそれは過去のことだし、俺としてはもう気にしないようにしたいと思っています」
「じゃあ、なぜ? あのいつも一緒にいる女の子が好きだから?」
「そうです。俺は彼女のことが好きです。大切な存在です」
俺は力強くそう言った。
紗緒里ちゃんは、あともう少しで恋人になる大切な存在。
「そ、そんなあ……」
ガックリとするのずのさん。
そう、俺は紗緒里ちゃんと仲を深めることだけを思っていくべきなんだ。
のずのさんは、しばらくの間うなだれていた。
やがて、のずのさんは、
「海春くん、わたしのこと、好きじゃなくなっちゃったの? 魅力的だと思わなくなったの?」
と言ってきた。
「きれいだと思うし、魅力的な女性だと思っています」
振られた後の今でも、先輩は魅力的だと思う。
しかし、それと先輩に恋し続けることは違う。
「だったら、わたしと付き合ってくれてもいいんじゃないかと思うんだけど……」
「いや、魅力的だとは思いますけど、恋とかそういう意識はもうないです」
「そう言うということは、わたしたち、恋人にはなれないのね……」
ため息をつくのずのさん。
「わたしがあの時、海春くんのことを振らなければ……」
のずのさんは、力なくつぶやいた。
朝、登校した俺は、のずのさんに呼び出されたのだ。
俺は、今さら何の用だろうと思った。
俺のことを振ったのずのさん。
彼女は、俺ではなく、他の男性を選んだ。
振られた当時は、食欲もなくなるくらい傷つき、落ち込んだ。あの苦しみは、そう簡単に忘れられるものではない。
その心の傷は、紗緒里ちゃんによって癒されてきて、ようやく治ってきたところ。
もう俺は、彼女のことは忘れたいと思っている。
俺には、紗緒里ちゃんという、まだ恋人ではないが、大事に想っている人がいる。
しかし、そんな時に彼女は俺に話しかけてきた。
ただ話しかけてきたのであれば、あいさつはしようと思っていた。それ以上話をする気はなかったのだけど、彼女は思いつめた表情をしていた。
何か困ったことがあったのか、それとも悩みごとができたのか。
悩みごとだとしたら、彼氏とケンカでもしたのだろうか。
でもそんな話をされても困る。彼女だって他に友達はいるだろう。その人に話せばいいのではないか。
そう思い、
「俺に話すことなんてないと思いますけど」
と言ったのだけど、
「どうしても海春くんに話したいことがあるの」
と彼女が言ったので、仕方がなく一緒にやってきたのだった。
しかし、屋上に着いても、のずのさんは、なかなか話し出さない。
「それで、話ってなんですか?」
仕方がないので、俺の方から話を切り出すことにした。
「あ、あの……」
彼女はもじもじしていた。
「俺は冬土先輩に振られた男なんです。今さら話なんてないと思うんですけど」
「いや、そんなことはなくて」
「冬土先輩には、付き合っている人がいるじゃないんですか。その人と話をすればいいと思います」
すると、のずのさんは、
「わたし、彼とは別れたの」
と小さな声で言った。
「別れた?」
俺はとても驚いた。
「わたし、彼はイケメンで素敵な人だと思っていた。それで彼の告白もOKしたの。そうして付き合ってみたら、彼って全然イメージと違っていた。デートの時、わたしが彼より来るのを遅れたぐらいで怒り出すし、ゴ-ジャスな服装をしていないって言うし、話をしてもつまらないって言うのよ。優しさがないのね。それで、彼に嫌われちゃって、別れることになったの。わたしだって、一生懸命努力したっていうのに……」
のずのさんと付き合っていたイケメンの彼がそんなことになっていたとは……。
それにしても彼は、彼女が言うように優しさがないように思う。
「わたし、間違っていた。彼の告白なんて受けなければよかったと思っている。あの時のわたし、どうかしていたんだわ……」
のずのさんと彼が別れたという話は理解した。
結局、二人の性格が合わなかったということだろう。
それにしても、もう関係がないはずの俺に、なんでこのような話をするんだろう。
ただ振られたという話をするだけで、わざわざ屋上に呼び出す意味はあるのだろうか。
そう思っていると。
「わたし、彼に振られて、初めて海春くんのいいところに気がついたの。それで、なんで海春くんを振ってしまったんだろう、と思ったの。海春くんは、彼と違って優しい。思いやりがある。どうしてわたし、そういう大事なことに気がつかなかったんだろうと思って」
のずのさんは、もじもじしながら言う。
彼女が俺に好意を持ち始めたということだろうか。
「それで、わたし、海春くんのことが好きになってきたの」
一旦のずのさんは言葉を切り、深呼吸をする。
そして、
「もし、海春くんがまだわたしのことを好きなら、付き合ってもいいと思っている」
と言った。
俺は予想をしていなかった展開に戸惑う。
あんなに俺のことを厳しく振ったのずのさんが……。
「ど、どうかしら……」
もう間に合わないと思う。
当時ならともかく、もう俺の心の中では、紗緒里ちゃんが大きな存在になってきている。
俺は、
「ごめんなさい。付き合うことはできません」
と言った。
「ど、どうして……。わたしが、きつい言葉を言って振ったから?」
「そうではないです。振られた時は傷つきましたけど、もうそれは過去のことだし、俺としてはもう気にしないようにしたいと思っています」
「じゃあ、なぜ? あのいつも一緒にいる女の子が好きだから?」
「そうです。俺は彼女のことが好きです。大切な存在です」
俺は力強くそう言った。
紗緒里ちゃんは、あともう少しで恋人になる大切な存在。
「そ、そんなあ……」
ガックリとするのずのさん。
そう、俺は紗緒里ちゃんと仲を深めることだけを思っていくべきなんだ。
のずのさんは、しばらくの間うなだれていた。
やがて、のずのさんは、
「海春くん、わたしのこと、好きじゃなくなっちゃったの? 魅力的だと思わなくなったの?」
と言ってきた。
「きれいだと思うし、魅力的な女性だと思っています」
振られた後の今でも、先輩は魅力的だと思う。
しかし、それと先輩に恋し続けることは違う。
「だったら、わたしと付き合ってくれてもいいんじゃないかと思うんだけど……」
「いや、魅力的だとは思いますけど、恋とかそういう意識はもうないです」
「そう言うということは、わたしたち、恋人にはなれないのね……」
ため息をつくのずのさん。
「わたしがあの時、海春くんのことを振らなければ……」
のずのさんは、力なくつぶやいた。
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