【カクヨムに移行】【火、木以外毎日更新】ヴァンパイア・エンパイア英雄譚~吸血族は悪じゃない~

クラプト/松浜神ヰ

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王国騎士団篇

第9話 再会

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私――幸那ユキナ――は、この女王が姉さんと何かの形で接触があったことを確信した。この結界魔術『戯場アソビバ・レソト』も姉さんが生み出して錬成して、誰にも使わせないとまで言っていたあの前日サキジツ魔法だ。この国は神撫カナデちゃんに酷いことをしたとは聞いてたけど、まさか姉さんにまで酷いことをしたなんて…。

「貴様、夕葵ユウキ戦ヶ原イクサガハラという女を聞いたことはあるか?」
「…」
「答えろよ!何で答えてくれないんだよ!?」
「…。『阻害アウト・サンダー』」
「これって…。やっぱり貴様、姉さんと何かあったな!?もういい!こっちから本気で行かせてもらう。『この身燃え尽きようともフレイムオブアビス』!」

この姿になるのも久しい。前に姉さんと本気で実力をぶつけ合ったあの日以来だ。
久しく体にまとわりつく炎があの日のことを思い出させた。

「姉さんには負けたけど、姉さんの魔法を奪った貴様には負けない!」

そして私と女王は激しく激突した。かなりの威力を互いにぶつけ合った証明にか、本来強固なはずの結界の地面は大きくひび割れ、互いに飛び退いて距離を取った。しかし、そこで姉さんが使っている時には起こらなかった現象が起きた。
結界の最果ての宮殿に、魔道具『絶対者の玉座アブソリュート・トゥローネ』を設置し、そこに座っていた。
『絶対者の玉座』は好戦的な将軍や団長の率いる軍が使うもので、相手を直接殺す、相手を拷問する以外なら攻撃も回復もできる禁忌の魔道具の1つだ。なぜそんな物を?

「そっちがその気なら、先手を打つまでだよ。『持て、爆ぜる覚悟ディスフェイト・バーンブラッド』!」

私は体内の血を機動力に変えて最果てまで駆けた。が、向こうも一筋縄では行かないようで、魔力で砲弾を生成しては飛ばしてくる。このままだとすぐには着けない。
が、想定外の攻撃が来た。足場に魔法陣が展開され…

煉獄の柱が結界の最果てに届くほど高く伸び、私の周りでたくさんの爆破が巻き起こった。
…が、女王はそこが災いした。

私がこの状態のうちは炎やそれに近い攻撃は一切聞かない上に、爆破に便乗できる。だから、私はそのままの勢いで女王のもとまで行き、殴りかかった。

しかし、私は攻撃を外した。正確には攻撃をずらしてしまった。女王は、母が作り、形見として姉さんに渡した青い蝶のピアスをしていたのだ。

「まさか、姉さん…?」

しかし、言い切る前に顔を殴られ、私は遠くに吹っ飛んだ。
吹っ飛んだ先には、結界の中だというのに無名がいた。

「すまない、幸那殿。助太刀が遅れてしまった」
「む、無名!?他の敵兵はどうしたの?」
「マグネが任せてくれと言うものだから任せて来てしまった。しかしこの結界、付喪神つくもがみである拙者でも入れるほどに脆いのか。あの仮面、もしや魔力を抑える何らかの効用があるやも知れん」
「それってまさか!?」
「仮面を破壊すれば命は無いかもしれん。拙者も幸那殿も。とりあえず、この結界の中ではいつまでもあやつが有利だ。拙者が引き付けている間に背後から渾身の一撃を食らわせてくれ」
「オッケー!それじゃあ、行くよ!」

そして無名は女王に正面から向かっていき、互角にる合った。
私は、私の出せる最大威力の技で…。

「『我、死近きこと悟り、今は黄昏の野にふけり、前は東雲の天にふけりしこと愚かしくも愛おしき。百戦錬磨のわざも無く、唯一無二の天性も無し。我が人生、在り処途絶えし者救うことが存在意義レーゾンデートルの証明。今、炎蛇族サラマンダーの誇り高き人生をここで断ち、誰かへの糧となりしことほっさん!――」
「幸那殿、結界の解除に成功しました!」

すると、結界は消え去り、もとの地上へ戻っていた。しかし、女王には純白の翼が生え、更に魔力を発していた。

「――【既に灰がちにてわろしbrent i hjel og løpende】』!!」

初めて使ったが、見た目の怪人化が進み、右目からは青白い炎が上がっていた。

「勝負だ、姉さん!」

体内の血を燃やし尽くした影響だろうか?とても体が軽い。飛んだ勢いで女王に一撃加えたところ、女王は吹っ飛んで住宅に突っ込んでしまった。しかし、これがなかったら私は死んでいただろう。

「『暴徒 前進阻止アヴァンブロックオ』」

その時、視界が真っ白になり、一瞬何が起こったか分からなかったが、すぐに気づいた。なぜなら、町中が燃え盛っていたからだ。

「無名、私が正面から突っ込むから無名は後ろからみねうちして欲しいんだけど、いい?」
「なぜ敵を生かしておく必要がある?」
「私の姉さんかもしれないの。だから」
「分かった」

私は正面から突撃し、女王の武装を燃やそうとしているのを装った。計画通り、無名が女王の首元にみねうちを入れ、私の戦いは終わった。

「よ、よかった…。やっと、終わった…」
「ゆ、幸那殿ー!?」



私が目を覚ましたのはどれくらい後だろうか。聞きなじみのある子守歌を聞きながら目を覚ました私は、目の前に行方不明だったはずの姉さんがいた。

「ごめんね幸那、迷惑かけちゃって。どうやら私、この国の王に催眠術をかけられてたみたいで、この人にみねうちしてもらったおかげで催眠が解けたみたいなの」
「姉さん…。心配したんだよ?」
「私も不用心だったわ。この国がどんな国かも知らずに王の言葉を鵜呑みにした私が悪いんだから」
「姉さん、生きててくれてよかった」
「幸那にそう言ってもらえて嬉しいわ」

こうして、私たち姉妹は再開を果たしたのだった。

続く 次回、王と神撫の決着が!?
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