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吸血連合篇(前編)
第3話 吸血連合・最悪の吸血族の復活
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シドラとアオイは、しばらく周辺の猛獣を狩り、それを調理して生活した。が、むやみに猛獣を倒すと、『案件が挑戦者によって達成されない』という問題が発生した。
「おい泥棒ども、俺たちの町からもっと離れろ!」
「これでも10kmほどは離れているはずですが。」
「10kmじゃ足りねぇ!もっと離れやがれ!このあたりの獲物は俺たちのモノだ!」
「ここはどの町や国の領地でもないはずですが。」
「俺たちの町がこのあたりに一番近いんだよ!だからだ、俺たちの町が拠点じゃないならもっと離れろ。」
「…しょうがないですね、分かりました。」
このように、2人は屁理屈をつけられて日に日に町から遠ざけられていた。
だが、そのおかげで2人は異変に気付くことができた。
空気中の魔力濃度が濃くなりつつある。
しかもそれは、吸血族特有のものであり、不穏な気配は感じていた。が、奴らが復活するとまでは考えていなかった。
翌日――。
「ねぇ、空が紫色だけど、何か起こるのかな?」
「分からない。でも、一回あの町へ行こう。」
*
2人が町に着くと、南関所とその周辺は、血の海と化していた。
そこには、強力な覇気とおぞましい程の魔力を放つ2柱の魔神がいた。
「おや、君たちはこの雑魚どもの仲間?それとも、僕たちの仲間?吸血族は大歓迎だよ。」
「敵ならブッ飛ばす。」
「待てよエルゼベル。この雑魚どもよりは強いから、もっと強くなってもらってから殺した方が楽しいじゃん。」
「しかしだジル、オレは早くあの栄光を…」
「エルゼベルとジルって、まさか…」
「ああ、あの<青髭>のジルと<生娘殺し>のエルゼベルだ。」
「よく知ってるね。さすがは同胞…、いや、君たちは熾天使の方の吸血族か。知ってるとは思うけど、今一度自己紹介するよ。僕はジル=ルガティックだ。君たちとは仲良くしたいな。」
「オレはエルゼベル=カーリアだ。オレはお前らとつるむ気なんざ更々ねぇぞ。」
「ご丁寧にどうも。でも、あいにく僕らはお前たちとは仲良くできない。」
「そうか。残念だ。ならば質問しよう。大切な君主が火炙りにされた時、君ならどうする?」
「僕なら、火炙りにされる前に救出するが。」
「君も吸血族だから分かるだろう?人間がどこまでも愚かな生き物だって。僕たちの最初の存在意義は、汚れた心の人間の血を吸ってその心を浄化することだったよ。僕は原初の吸血族の1人だからね。でも、人間の心が汚れすぎて使命を果たすには老若男女問わず血を吸う必要があった。なのに、誰かが吸血族も悪魔だと言い出したよ。僕らには昔から翼がなかった。血は少量でよかったのに吸われることに抵抗を覚え始めた人間がまた1人また1人と、この嘘を信じだしたさ。人間以外は信じなかったのに。人間は天使と悪魔を見分ける審美眼がなかったらしい。そのうえ、当時の吸血族君主のリベセント様は人間に嵌められ、猛毒を飲まされて火炙りにされてしまった…。それからだったよ。人間滅亡派と使命保守派に別れたのは。で、僕たち人間滅亡派が作った今の伝承にもある<Tepes・army>。人間の少年少女を標的にして鮮血を吸いたいだけ吸えたあの頃はよかったよ、本当に。僕たちは、人間を滅ぼしたかったよ。でもある日、大精霊ロキに世界樹の50階層に封印されてしまった。それから、何千年という気が遠くなるほどの時間、あの瞬間を待った。そしたら、昨日遂に解放されたんだよ!だから、まずは子供の気配が多い町から潰していこうと思ったのさ。僕たちがここに着いた時にはもう雑魚が群れを成していたよ。滑稽だと思わないか?その雑魚たちをクイッと軽く捻ったら、この有り様。で、今ってワケ。どう?改めて人間は愚かだとは思わなかったか?」
「…悔しいけど、そうかもしれない。」
「じゃあ、吸血連合で一緒に人間の滅亡を目指そうよ。」
「そんなことはしない。」
「君も今まで人間に虐げられてきたでしょう。なのに復讐しないって、君は吸血族もどきなの?そういえば、君肌の血色が異常に人間っぽいけど本物の吸血族もどき?」
「人間には自分たちが熾天使だと伝えて和解するつもりだ、いつか必ず。」
「もし君たちが僕たちの敵なら、その夢が実現する前に人類を滅ぼしてあげる。じゃあ、せいぜい足掻くといいさ。」
そんなことを言って、2柱の魔神は滲んで消えた。
「お兄ちゃん、私たちでどうにかできる?」
「どうするも何も、もう1回封印するしかないだろ。」
「封印する、って、まさか…」
「僕たちで世界樹に行って、大精霊ロキに封印してもらう。もう、残された手段はこれしかない。」
「…わかった。私たちで吸血連合を封印して、またお兄ちゃんとデートしよ。」
「分かった。約束だ。」
続く 次回、王国へ
「おい泥棒ども、俺たちの町からもっと離れろ!」
「これでも10kmほどは離れているはずですが。」
「10kmじゃ足りねぇ!もっと離れやがれ!このあたりの獲物は俺たちのモノだ!」
「ここはどの町や国の領地でもないはずですが。」
「俺たちの町がこのあたりに一番近いんだよ!だからだ、俺たちの町が拠点じゃないならもっと離れろ。」
「…しょうがないですね、分かりました。」
このように、2人は屁理屈をつけられて日に日に町から遠ざけられていた。
だが、そのおかげで2人は異変に気付くことができた。
空気中の魔力濃度が濃くなりつつある。
しかもそれは、吸血族特有のものであり、不穏な気配は感じていた。が、奴らが復活するとまでは考えていなかった。
翌日――。
「ねぇ、空が紫色だけど、何か起こるのかな?」
「分からない。でも、一回あの町へ行こう。」
*
2人が町に着くと、南関所とその周辺は、血の海と化していた。
そこには、強力な覇気とおぞましい程の魔力を放つ2柱の魔神がいた。
「おや、君たちはこの雑魚どもの仲間?それとも、僕たちの仲間?吸血族は大歓迎だよ。」
「敵ならブッ飛ばす。」
「待てよエルゼベル。この雑魚どもよりは強いから、もっと強くなってもらってから殺した方が楽しいじゃん。」
「しかしだジル、オレは早くあの栄光を…」
「エルゼベルとジルって、まさか…」
「ああ、あの<青髭>のジルと<生娘殺し>のエルゼベルだ。」
「よく知ってるね。さすがは同胞…、いや、君たちは熾天使の方の吸血族か。知ってるとは思うけど、今一度自己紹介するよ。僕はジル=ルガティックだ。君たちとは仲良くしたいな。」
「オレはエルゼベル=カーリアだ。オレはお前らとつるむ気なんざ更々ねぇぞ。」
「ご丁寧にどうも。でも、あいにく僕らはお前たちとは仲良くできない。」
「そうか。残念だ。ならば質問しよう。大切な君主が火炙りにされた時、君ならどうする?」
「僕なら、火炙りにされる前に救出するが。」
「君も吸血族だから分かるだろう?人間がどこまでも愚かな生き物だって。僕たちの最初の存在意義は、汚れた心の人間の血を吸ってその心を浄化することだったよ。僕は原初の吸血族の1人だからね。でも、人間の心が汚れすぎて使命を果たすには老若男女問わず血を吸う必要があった。なのに、誰かが吸血族も悪魔だと言い出したよ。僕らには昔から翼がなかった。血は少量でよかったのに吸われることに抵抗を覚え始めた人間がまた1人また1人と、この嘘を信じだしたさ。人間以外は信じなかったのに。人間は天使と悪魔を見分ける審美眼がなかったらしい。そのうえ、当時の吸血族君主のリベセント様は人間に嵌められ、猛毒を飲まされて火炙りにされてしまった…。それからだったよ。人間滅亡派と使命保守派に別れたのは。で、僕たち人間滅亡派が作った今の伝承にもある<Tepes・army>。人間の少年少女を標的にして鮮血を吸いたいだけ吸えたあの頃はよかったよ、本当に。僕たちは、人間を滅ぼしたかったよ。でもある日、大精霊ロキに世界樹の50階層に封印されてしまった。それから、何千年という気が遠くなるほどの時間、あの瞬間を待った。そしたら、昨日遂に解放されたんだよ!だから、まずは子供の気配が多い町から潰していこうと思ったのさ。僕たちがここに着いた時にはもう雑魚が群れを成していたよ。滑稽だと思わないか?その雑魚たちをクイッと軽く捻ったら、この有り様。で、今ってワケ。どう?改めて人間は愚かだとは思わなかったか?」
「…悔しいけど、そうかもしれない。」
「じゃあ、吸血連合で一緒に人間の滅亡を目指そうよ。」
「そんなことはしない。」
「君も今まで人間に虐げられてきたでしょう。なのに復讐しないって、君は吸血族もどきなの?そういえば、君肌の血色が異常に人間っぽいけど本物の吸血族もどき?」
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そんなことを言って、2柱の魔神は滲んで消えた。
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「僕たちで世界樹に行って、大精霊ロキに封印してもらう。もう、残された手段はこれしかない。」
「…わかった。私たちで吸血連合を封印して、またお兄ちゃんとデートしよ。」
「分かった。約束だ。」
続く 次回、王国へ
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