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第3話 二股野郎
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レインを逃がし、レミア中佐からいきなりの告白があってから1日。軍の中にはいつも面白いことに飢えている連中も少なくはないが、昨日の夜から話題はこれで持ち切りだった。
「ソル・クランベルは二股野郎」
誰がそんな噂を立てたのかは言うまでもない。そこまでして俺をレインから引きはがしたいのは分かるけど、噂される側のこともしっかり考えてもらいたかった。
「レミア中佐、こんな噂立ててでも俺をレインから引きはがすつもりですか?」
「え?何の話?」
「とぼけないでください。こんな噂作るなんてレミア中佐くらいしかいないじゃないですか」
「いくら私でも君に汚名を着せるようなことは絶対にしないよ」
「え?じゃ、じゃあ、もう一回確認ですが、『ソル・クランベルは二股野郎』っていう噂を作ったのは…」
「何それ?どうしてそうなったか知らないけど、とりあえず私じゃないよ」
「そ、そうですか」
「もしかして、私が強制的にソル兵長の運命を引き裂こうとしてるとでも思ったの?そんなにあの娘のことが好きなのかぁ。でも、もし終戦の時にあの娘が生きてなかったり行方不明だったりしたら私と結婚してよね。…じゃない、私、諦めてないからね!?」
「分かりました」
あの噂の発端がレミア中佐じゃないなら一体誰が?
「あの、先輩。ちょっとお話いいです?」
「どうしたエッデル?」
「苗字じゃなくて名前の方で呼んでくださいよ!」
「分かったよ。で、トニ。話って何だ?」
「実はですね…、新兵器を先行で買えそうなんですよ!」
「お、エッデル重工はまたどんなアイテムを造ったんだ?」
トニ・エッデル。黒髪でくせ毛ロング、アホ毛と2つの爆弾が目立つ。俺の傘下で入団たった2ヶ月、俺と1カ月違いだが、コイツもコイツで上等兵だ。
服のサイズは合ってないし少しだらしなく見えるけど、俺の昇格はコイツ無しでは不可能だっただろうし、本当に心強い部下だ。国内有数の兵器開発を行っているエッデル重工の長女で、工場長である祖父に頼めばいつでも最新の兵器が手に入る。それに、コイツはその関係で色々あり、実際プライベートに関してはレインのことよりも知っている。
「今回はですね、蓋が開けやすい使用の手榴弾を…」
「それ、何かの衝撃で簡単に爆破したりしないな?」
「大丈夫ですよ。実は、ここに1つだけこっそり持ってきてるんですよ。使ってみます?」
「ならば是非とも…」
*
「いやぁ、バカみたいな威力でしたねぇ」
「でも危なかっただろ?破片当たったあの人が温厚な人じゃなかったりしたら…。もし人が死んでたら始末書書くだけじゃ済まなかったぞ」
「そもそもあの始末書って意味あるんですかねぇ。…もう日沈みそうですし、始末書書いてた所為でお昼ご飯食べれてないですし、兵器提供の報酬で奢ってくださいよ」
「またか…。本当にそれでいいのか?」
「いいじゃないですか。まだ市場価格は分かってないですけど、この手榴弾できるだけ提供するんで」
「…分かった」
俺はトニといつもの店へ行った。
「まさかだけど俺が二股野郎呼ばわりされてるのって…」
「どうかしました?」
「いや、最近どうも俺が二股野郎だ、っていう噂が立ってるらしいんだ。何か知ってるか?」
「…特には知りませんね。それで、何かに気づいたみたいですが、一体何を?」
「お前とこうやって飯食いに来てるのを誰かがデートだと勘違いした上に…」
そして、昨日のレミア中佐との会話をレインのことに触れずに少しごまかして話した。すると、目がガチになった。そして言葉はマシンガンのように乱射された。
「それって私は候補から完全除外っていうことですか!?私、先輩の昇格に一番協力しましたよね?それなのにどうしてですか?まさか、本当にレミア中佐が好きなんですか?それとも、他の女性に片思いでもしてるんですか!?」
「おい、落ち着け。別に候補から除外っていうわけ…でも…ない。」
「…!」
しどろもどろな言い方をしたが、どうやら誤解しているようだ。まぁいい、放置しておこう。
*
その後、俺たちは夕食を済ませた。
「本当よくあんな量食べるな。俺の知り合いに他でそういうヤツはいないから珍しい」
「へへ。それで、こんな時間ですがまた私の部屋に泊まっていきます?」
「今日はやめとく。あの時あやむを得ずだったし、何よりさ、お前気づくと脱いでるじゃん!!」
「だって、基本部屋では服着ないので…」
「お前、同室はいないのか?」
「まだ話してなかったですけど、私の同室、私が入団する2日前に亡くなっているそうで…。同室の顔も知らないんですよ。なので、たまに寂しくなります。来てくれませんか?」
「はぁ…。分かった。その代わり、明日俺が起きた時に脱いでたら二度と泊まらないからな」
「でも先輩、よく手出さずにいられますね。多分他の奴らならイチコロでしょうけど」
*
『緊急、緊急!!国境を突破された!!総員、ただちに出撃せよ!!』
けたたましく響く要請の音で目を覚ました。
「おいトニ、出撃だぞ!おい!」
起こす為に体をゆすった。しかし…
「お、先輩…。やっと手を出してくれるんですか…」
「何寝ぼけてるんだよ!さっさと服着ろ!」
「…え?出撃?反対勤務の奴らは何してるんだよ?」
こうして俺たちは慌ただしく出撃したが、そこで俺は恐ろしい光景を目にすることになる。
続く
「ソル・クランベルは二股野郎」
誰がそんな噂を立てたのかは言うまでもない。そこまでして俺をレインから引きはがしたいのは分かるけど、噂される側のこともしっかり考えてもらいたかった。
「レミア中佐、こんな噂立ててでも俺をレインから引きはがすつもりですか?」
「え?何の話?」
「とぼけないでください。こんな噂作るなんてレミア中佐くらいしかいないじゃないですか」
「いくら私でも君に汚名を着せるようなことは絶対にしないよ」
「え?じゃ、じゃあ、もう一回確認ですが、『ソル・クランベルは二股野郎』っていう噂を作ったのは…」
「何それ?どうしてそうなったか知らないけど、とりあえず私じゃないよ」
「そ、そうですか」
「もしかして、私が強制的にソル兵長の運命を引き裂こうとしてるとでも思ったの?そんなにあの娘のことが好きなのかぁ。でも、もし終戦の時にあの娘が生きてなかったり行方不明だったりしたら私と結婚してよね。…じゃない、私、諦めてないからね!?」
「分かりました」
あの噂の発端がレミア中佐じゃないなら一体誰が?
「あの、先輩。ちょっとお話いいです?」
「どうしたエッデル?」
「苗字じゃなくて名前の方で呼んでくださいよ!」
「分かったよ。で、トニ。話って何だ?」
「実はですね…、新兵器を先行で買えそうなんですよ!」
「お、エッデル重工はまたどんなアイテムを造ったんだ?」
トニ・エッデル。黒髪でくせ毛ロング、アホ毛と2つの爆弾が目立つ。俺の傘下で入団たった2ヶ月、俺と1カ月違いだが、コイツもコイツで上等兵だ。
服のサイズは合ってないし少しだらしなく見えるけど、俺の昇格はコイツ無しでは不可能だっただろうし、本当に心強い部下だ。国内有数の兵器開発を行っているエッデル重工の長女で、工場長である祖父に頼めばいつでも最新の兵器が手に入る。それに、コイツはその関係で色々あり、実際プライベートに関してはレインのことよりも知っている。
「今回はですね、蓋が開けやすい使用の手榴弾を…」
「それ、何かの衝撃で簡単に爆破したりしないな?」
「大丈夫ですよ。実は、ここに1つだけこっそり持ってきてるんですよ。使ってみます?」
「ならば是非とも…」
*
「いやぁ、バカみたいな威力でしたねぇ」
「でも危なかっただろ?破片当たったあの人が温厚な人じゃなかったりしたら…。もし人が死んでたら始末書書くだけじゃ済まなかったぞ」
「そもそもあの始末書って意味あるんですかねぇ。…もう日沈みそうですし、始末書書いてた所為でお昼ご飯食べれてないですし、兵器提供の報酬で奢ってくださいよ」
「またか…。本当にそれでいいのか?」
「いいじゃないですか。まだ市場価格は分かってないですけど、この手榴弾できるだけ提供するんで」
「…分かった」
俺はトニといつもの店へ行った。
「まさかだけど俺が二股野郎呼ばわりされてるのって…」
「どうかしました?」
「いや、最近どうも俺が二股野郎だ、っていう噂が立ってるらしいんだ。何か知ってるか?」
「…特には知りませんね。それで、何かに気づいたみたいですが、一体何を?」
「お前とこうやって飯食いに来てるのを誰かがデートだと勘違いした上に…」
そして、昨日のレミア中佐との会話をレインのことに触れずに少しごまかして話した。すると、目がガチになった。そして言葉はマシンガンのように乱射された。
「それって私は候補から完全除外っていうことですか!?私、先輩の昇格に一番協力しましたよね?それなのにどうしてですか?まさか、本当にレミア中佐が好きなんですか?それとも、他の女性に片思いでもしてるんですか!?」
「おい、落ち着け。別に候補から除外っていうわけ…でも…ない。」
「…!」
しどろもどろな言い方をしたが、どうやら誤解しているようだ。まぁいい、放置しておこう。
*
その後、俺たちは夕食を済ませた。
「本当よくあんな量食べるな。俺の知り合いに他でそういうヤツはいないから珍しい」
「へへ。それで、こんな時間ですがまた私の部屋に泊まっていきます?」
「今日はやめとく。あの時あやむを得ずだったし、何よりさ、お前気づくと脱いでるじゃん!!」
「だって、基本部屋では服着ないので…」
「お前、同室はいないのか?」
「まだ話してなかったですけど、私の同室、私が入団する2日前に亡くなっているそうで…。同室の顔も知らないんですよ。なので、たまに寂しくなります。来てくれませんか?」
「はぁ…。分かった。その代わり、明日俺が起きた時に脱いでたら二度と泊まらないからな」
「でも先輩、よく手出さずにいられますね。多分他の奴らならイチコロでしょうけど」
*
『緊急、緊急!!国境を突破された!!総員、ただちに出撃せよ!!』
けたたましく響く要請の音で目を覚ました。
「おいトニ、出撃だぞ!おい!」
起こす為に体をゆすった。しかし…
「お、先輩…。やっと手を出してくれるんですか…」
「何寝ぼけてるんだよ!さっさと服着ろ!」
「…え?出撃?反対勤務の奴らは何してるんだよ?」
こうして俺たちは慌ただしく出撃したが、そこで俺は恐ろしい光景を目にすることになる。
続く
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