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第1話 出会いと別れ
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帝西暦1889年、カーム共和国の少年複数人がマスカ帝国13代目皇帝ラウター・グラフ・マスカを銃殺したことでマスカ帝国が宣戦布告、3日以内にカーム共和国の
どこかを爆撃すると発表。3日後、予想外の地域であった国境付近の農村が爆撃されたことを皮切りに戦争が始まった。
それから8年、今でも国境が両国の砦となり、今日の日も銃撃戦が続いていた。が、そんな戦場に似つかわしくない者たちがいた。それは、軍服を着たカップルだった。しかも、それぞれ違う柄の…。
「あ、また雪だね」
「なんか、今日みたいな雪の降り方はあの日のことを思い出すなぁ。まだ1ヶ月しか経ってないんだね、ソル君」
「嬉しいのは分かるけど声が大きいよ、レイン」
「えへへ。ねぇ、あの日の私たちってどうしてお互い好きになったんだっけ?」
「あれは…」
*
俺は遠距離射撃で戦果を挙げ、砦に駆り出されることになった。すると、そこには戦場にいるはずのない背丈の14歳くらいに見える少女が軍服を着て泣いていた。
「おい、そこの君。兵隊の恰好でこんなところにいたら撃ち殺されるぞ」
「わっ、私、敵軍の兵士ですよ!?」
「そうか。だが、徴兵できる年齢は15歳からだぞ。まだ徴兵できる年齢じゃないだろ?」
「私、こう見えて21歳なんです…」
「は!?俺より年上…」
「あ、あなたは何故敵兵である私を殺さないんですか?」
「ごめん、つい兵の恰好をしているただの子供だと思ったから…」
「もぅ。そんなこと言ってるとこっちから撃ちますよ?」
「分かった、分かったから。それで、何で泣いてたんだ?」
「じ、実は私、ただの百姓の1人娘だったのにお母さまが8年前の爆撃で死んじゃって、そのあと継母に軍に売られちゃったんだよ。でも、どうせ死ぬなら立派に戦死しようと考えてたくさん戦果を挙げてやっと砦まで来れたんだけどその時になったら銃撃戦に参加するのが怖くなっちゃって…」
「じゃあ、なぜ今は泣いていないんだ?」
「え?ほ、本当だ…。もしかすると、あなたがこうやって傍にいてくれるからかもしれないですね」
「そ、そんなこと言われても俺たちは敵同士でしかないし…」
「あなたは今、何歳?さっき、私の方が年上って言ってたけど」
「俺?実は俺も見た目と年齢が合ってないんだ。…じゅ、15だ」
「え!?徴兵して1年も経ってないの!?それでそんなに背が高いなんて…。そういえば、15って結婚も許される年齢だね」
「それはこっちの国も同じだが、何がいいたい?俺たちはあくまでも敵同士だぞ」
「敵かどうかなんて関係ないよ。もし、この戦争が終わったら一生傍にいてもいいかな?」
「しょ、正気か!?」
「うん。だから、戦争中も一緒にいれる時は一緒にいたいな」
「はぁ…。しょうがない」
*
「そういえばそうだったね」
「まあ、俺もお前のことは好きにはなってるし」
「じゃあ、私の好きな食べ物は?」
「ジャガイモとニンジンのたくさん入った隠し味にカレーパウダーが使ってあるアサリ抜きクラムチャウダー、だろ」
「よろしい。さすがだね」
「おい、ソル、撤退だ!!どこにいる!?」
「おっと、友人からの呼び出しだ。すまない、今日はここまでだ」
「いいよ、また今度ね。できれば次は明日がいいな」
「そうだな。毎日2人でずっと笑い合える世界が来る日を願って。それじゃあ」
「はぁ、ソル君ったら、せっかく私がピアス付けてきたのに何で気づいてくれないんだろう」
「おっと。敵兵がこんなところに1人。捕らえるか」
「…ふぇ?」
*
「おつかれ、ソル・クランベル兵長」
「いえいえ、兵長ごときで声かけてくださらなくてもいいですよ、レミア・ホークアイズ中佐。そちらこそお疲れ様です」
「まったく、私には甘えてくれと何度言わせた?可愛いヤツめ!」
「ちょっと、周りが鬼気迫る表情に…」
「そういえば、ここ1ヶ月くらい殺した敵兵の数が減ってるみたいだけど、何かあった?」
「いえ、特に変わったことは無かったと思いますが」
「そうか。まあ、私がお前を特別扱いしているのは徴兵後たった3ヶ月で兵長に成り上がったからであって、もしもあからさまに落ちぶれるようなことがあれば他のヤツらと同じ扱いにするからな」
「は、はい」
「まあ、今日から数日は本部の方で休んでいいぞ。次の出兵で手柄を立ててくれよ」
「はい」
はぁ、このままだと次の出兵までレインに会えないか。まあ、頻繁に外出すると内通者だと疑われ兼ねないから無理に会いに行くのはやめておくか。
「なあ、聞いたか?敵の女性兵が捕まったってよ」
「ああ、しかも自称21歳の白群色ロングの美少女だってなあ。まったく、これじゃ検査官どもが豚になっちまう」
「まあ、そんなのは滅多に現れないから検査官たちもなぁ」
それを聞いて俺はすぐに理解した。
――レインが捕まった。
続く
どこかを爆撃すると発表。3日後、予想外の地域であった国境付近の農村が爆撃されたことを皮切りに戦争が始まった。
それから8年、今でも国境が両国の砦となり、今日の日も銃撃戦が続いていた。が、そんな戦場に似つかわしくない者たちがいた。それは、軍服を着たカップルだった。しかも、それぞれ違う柄の…。
「あ、また雪だね」
「なんか、今日みたいな雪の降り方はあの日のことを思い出すなぁ。まだ1ヶ月しか経ってないんだね、ソル君」
「嬉しいのは分かるけど声が大きいよ、レイン」
「えへへ。ねぇ、あの日の私たちってどうしてお互い好きになったんだっけ?」
「あれは…」
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俺は遠距離射撃で戦果を挙げ、砦に駆り出されることになった。すると、そこには戦場にいるはずのない背丈の14歳くらいに見える少女が軍服を着て泣いていた。
「おい、そこの君。兵隊の恰好でこんなところにいたら撃ち殺されるぞ」
「わっ、私、敵軍の兵士ですよ!?」
「そうか。だが、徴兵できる年齢は15歳からだぞ。まだ徴兵できる年齢じゃないだろ?」
「私、こう見えて21歳なんです…」
「は!?俺より年上…」
「あ、あなたは何故敵兵である私を殺さないんですか?」
「ごめん、つい兵の恰好をしているただの子供だと思ったから…」
「もぅ。そんなこと言ってるとこっちから撃ちますよ?」
「分かった、分かったから。それで、何で泣いてたんだ?」
「じ、実は私、ただの百姓の1人娘だったのにお母さまが8年前の爆撃で死んじゃって、そのあと継母に軍に売られちゃったんだよ。でも、どうせ死ぬなら立派に戦死しようと考えてたくさん戦果を挙げてやっと砦まで来れたんだけどその時になったら銃撃戦に参加するのが怖くなっちゃって…」
「じゃあ、なぜ今は泣いていないんだ?」
「え?ほ、本当だ…。もしかすると、あなたがこうやって傍にいてくれるからかもしれないですね」
「そ、そんなこと言われても俺たちは敵同士でしかないし…」
「あなたは今、何歳?さっき、私の方が年上って言ってたけど」
「俺?実は俺も見た目と年齢が合ってないんだ。…じゅ、15だ」
「え!?徴兵して1年も経ってないの!?それでそんなに背が高いなんて…。そういえば、15って結婚も許される年齢だね」
「それはこっちの国も同じだが、何がいいたい?俺たちはあくまでも敵同士だぞ」
「敵かどうかなんて関係ないよ。もし、この戦争が終わったら一生傍にいてもいいかな?」
「しょ、正気か!?」
「うん。だから、戦争中も一緒にいれる時は一緒にいたいな」
「はぁ…。しょうがない」
*
「そういえばそうだったね」
「まあ、俺もお前のことは好きにはなってるし」
「じゃあ、私の好きな食べ物は?」
「ジャガイモとニンジンのたくさん入った隠し味にカレーパウダーが使ってあるアサリ抜きクラムチャウダー、だろ」
「よろしい。さすがだね」
「おい、ソル、撤退だ!!どこにいる!?」
「おっと、友人からの呼び出しだ。すまない、今日はここまでだ」
「いいよ、また今度ね。できれば次は明日がいいな」
「そうだな。毎日2人でずっと笑い合える世界が来る日を願って。それじゃあ」
「はぁ、ソル君ったら、せっかく私がピアス付けてきたのに何で気づいてくれないんだろう」
「おっと。敵兵がこんなところに1人。捕らえるか」
「…ふぇ?」
*
「おつかれ、ソル・クランベル兵長」
「いえいえ、兵長ごときで声かけてくださらなくてもいいですよ、レミア・ホークアイズ中佐。そちらこそお疲れ様です」
「まったく、私には甘えてくれと何度言わせた?可愛いヤツめ!」
「ちょっと、周りが鬼気迫る表情に…」
「そういえば、ここ1ヶ月くらい殺した敵兵の数が減ってるみたいだけど、何かあった?」
「いえ、特に変わったことは無かったと思いますが」
「そうか。まあ、私がお前を特別扱いしているのは徴兵後たった3ヶ月で兵長に成り上がったからであって、もしもあからさまに落ちぶれるようなことがあれば他のヤツらと同じ扱いにするからな」
「は、はい」
「まあ、今日から数日は本部の方で休んでいいぞ。次の出兵で手柄を立ててくれよ」
「はい」
はぁ、このままだと次の出兵までレインに会えないか。まあ、頻繁に外出すると内通者だと疑われ兼ねないから無理に会いに行くのはやめておくか。
「なあ、聞いたか?敵の女性兵が捕まったってよ」
「ああ、しかも自称21歳の白群色ロングの美少女だってなあ。まったく、これじゃ検査官どもが豚になっちまう」
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それを聞いて俺はすぐに理解した。
――レインが捕まった。
続く
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