328 / 352
第二十六話
4
しおりを挟む
最近、楓は私と一緒にお風呂に入ってくれない。
夏休みという時期の都合上、基本的にお風呂よりもシャワーの方が多いのだが、それにしたってだ。最近の楓はどこか忙しそうである。
もしかして無理矢理なスケジュールを立てて、やる事を増やしているのかな?
さりげなく本人に訊いても、答えてはくれないだろうし。
どうしよう。
改めて私から誘ってみるべきなのかな。
「ねぇ、弟くん」
「ん? どうかした?」
「最近、一緒にお風呂とかに入ってくれないけど……。なにかあった?」
「別に何も…ないと思うよ」
楓は、一瞬ドキリとした表情を見せたがすぐに落ち着きを取り戻し、そう答える。
なんというかとてもわかりやすい反応だ。
他の女の子と一緒にデートをしてるっていうわけではなさそうだが、そんな反応を見せられたら……。それなりに心配にはなる。
「ウソはダメよ、弟くん。その顔を見たら、すぐにわかっちゃうんだから」
「いや……。ホントになにもないって──」
「なら、なんで一緒にお風呂に入ってくれないの? 今までなら、きちんと言うことを聞いてくれたじゃない」
「それは……。僕は『男』だし。女の子と一緒にお風呂っていうのはさすがに……。ていうか、なんで香奈姉ちゃんと一緒にお風呂に入ることが確定っていう流れになってるの?」
「それはね。弟くんのお世話は姉である私の勤めだからだよ」
「香奈姉ちゃんは、たしかに年上のお姉ちゃんだけど……。僕の幼馴染だよね?」
「そうだよ。私は、弟くんのお世話をするお姉ちゃん的な幼馴染だよ。だから弟くんの成長具合を確認するのも私の勤めなんだ」
「そんなムチャクチャな……」
なにやら文句を言いたいんだろうけど、楓は私の顔を改めて見て口をつぐんでしまう。
こういう時って、つい悪戯をしたくなっちゃうんだよね。
私は、さらに追い打ちをかけるかのように訊いてみる。
「さて。弟くんはどうしたいのかな?」
「それは……」
「お風呂くらい、もちろん一緒に入ってくれるよね?」
「う、うん……。約束したからね」
「さすが弟くん! やっぱり話のわかる人は助かるなぁ」
「ほとんど無理矢理のくせに……」
「なにか言った?」
「いえ、なんでもないです……」
楓は、消沈した様子でがっくりと肩を落としていた。
ちょっとだけ強引だったかな。
──いや。多少、強引な方が楓にとってはいいのかもしれない。
「それじゃ、約束どおり、お風呂に入ろっか?」
「今からなの?」
楓は、家にある掛け時計を見やる。
ちなみに時間はまだ午後の14時くらいだ。
お風呂に入るには、まだ早いくらい。
だけど夕方まで我慢できるかと言われたら、ちょっと難しいかも。
「うん、今からだよ。後にしちゃうと、色々とめんどくさくなっちゃうし。それに──」
「それに?」
「弟くんの成長具合が心配だから」
私は、色々と恥ずかしい気持ちになり、頬を赤くする。
自分がどんな顔をしているのかわからないけど、それだけは実感できた。
「僕は、香奈姉ちゃんの裸の方が刺激が強い気が……」
「それなら大丈夫だよ。バスタオルはしっかりと体に巻くから」
「香奈姉ちゃんの『大丈夫』は、なんとも──」
「私が大丈夫って言ったら大丈夫なの! 私のことをちゃんと信じてよね」
「わかったよ。でも今の時間帯で一緒に入るのはさすがにまずいと思うから、どちらかが先に入っている時にもう1人が乱入するっていうのが最もいいと思うんだ。──どうかな?」
「私は、どっちでもいいけど」
なんか楓の提案が必ずしも良いとは思えないんだけど……。私だけかな。
要はどっちが先に入るかによって、信用できるかどうかが決まるっていうことかな。
順当に行けば楓が先なんだろうけど。
「それじゃ、まずは香奈姉ちゃんから先に入ってもらおうかな」
「どうして? こういうのは、まず男の人が優先なんじゃないの?」
私は、思案げな表情になりそう訊いていた。
普通は、男の人が先に入るものだと思う。
しかし楓は、そうじゃなくて私を先に入らせようとしてきたのだ。
これは、絶対になにかある。
あやしいと思ったら、真っ先に訊いてみるのが解決への早道だ。
「それは……。レディファーストっていう言葉もあるし……」
「ふ~ん。そっか。なるほど……」
私は、わざとそう言ってのける。
楓には、いかにも納得したかのように見えただろう。
私は、ちっとも納得していなかった。
たしかに楓は、いつも優先的に私のことを推してくれる。
これは、彼女さんにしてみれば嬉しいことなんだろう。
しかし私にとっては、これは楓からの好意には見えないのだ。
なにかを計算して言っているように見えてしまうのは私だけだろうか。
「私が先に入ったとしたら、弟くんは私が上がってくるまで待ってるだけだから楽だもんね」
「いや……。そんなことは……」
「そのまま入らないつもりでしょ?」
「入るつもりでいるけど……。香奈姉ちゃんは、大丈夫なのかなって──」
「なにが?」
「香奈姉ちゃんはその…僕の裸を見ても平気なのかなって」
今さらそんなことを訊いてくるあたり、楓はかなり慎重になっている。
たしかに楓の自慢の一品は、見るのは久しぶりになるけど。
「そんなの大丈夫に決まっているじゃない。なにを心配してるのよ?」
「う~ん……。なんとなくだけど、嫌な予感がして……」
「嫌な予感って……。なにもないと思うけど」
一緒にお風呂とかに入ったら、もちろんなにもしないっていう保証はない。
私としては、一回くらいスキンシップを──
そんなことを考えてもバチは当たらないはずだ。
もしかして楓は嫌なのかな?
「香奈姉ちゃんのことだから、なにもないっていうのも不自然な気がして──」
「なにか起きてほしいの?」
「いや……。むしろなにも起きてほしくないような……」
楓は、私の顔をじっと見てそう言った。
どうして、そんな真面目な表情で私を見るの?
お互いに裸なら、少しくらいはエッチなことを考えるものだと思うけど。
「それは無理かな。多少のことは覚悟してもらわないと──」
「多少なんだ……」
「私と弟くんとの間になにもないっていうのは、ないんじゃないかな?」
私は、いつもの笑顔を見せてそう言った。
それと同時に楓の手を握り、安心させる。
頼むから、そんな不安そうな表情はやめてほしい。
これから私たちにとって大事なことをするというのに。
そんな顔をされたら、私が困る。
「香奈姉ちゃんと一緒に入るのは、やっぱり慣れないかなって──」
「それって、絶対にエッチなことをしちゃうから?」
「それもあるけど…やっぱり女の子の裸を見るのはさすがに……」
楓は、私の胸に視線を向けて言う。
お風呂場だと全裸になるから、たぶん胸だけじゃない気がする。色んな箇所を見てるんだろう。
私からしたら、男のアレを見るのもなかなかに慣れないんだけどなぁ。
特にも楓のあそこは、かなり立派だから。
勃った時の大きさは、たぶん私の想像を超えるくらい。
そんなことを言ったら、楓は絶対に怒るだろう。
「今は、誰もいないし。さっさと入ってしまおうよ」
私は、強引なくらいに楓の手を引っ張って、浴室へと向かっていった。
この際、嫌とは言わせない。
夏休みという時期の都合上、基本的にお風呂よりもシャワーの方が多いのだが、それにしたってだ。最近の楓はどこか忙しそうである。
もしかして無理矢理なスケジュールを立てて、やる事を増やしているのかな?
さりげなく本人に訊いても、答えてはくれないだろうし。
どうしよう。
改めて私から誘ってみるべきなのかな。
「ねぇ、弟くん」
「ん? どうかした?」
「最近、一緒にお風呂とかに入ってくれないけど……。なにかあった?」
「別に何も…ないと思うよ」
楓は、一瞬ドキリとした表情を見せたがすぐに落ち着きを取り戻し、そう答える。
なんというかとてもわかりやすい反応だ。
他の女の子と一緒にデートをしてるっていうわけではなさそうだが、そんな反応を見せられたら……。それなりに心配にはなる。
「ウソはダメよ、弟くん。その顔を見たら、すぐにわかっちゃうんだから」
「いや……。ホントになにもないって──」
「なら、なんで一緒にお風呂に入ってくれないの? 今までなら、きちんと言うことを聞いてくれたじゃない」
「それは……。僕は『男』だし。女の子と一緒にお風呂っていうのはさすがに……。ていうか、なんで香奈姉ちゃんと一緒にお風呂に入ることが確定っていう流れになってるの?」
「それはね。弟くんのお世話は姉である私の勤めだからだよ」
「香奈姉ちゃんは、たしかに年上のお姉ちゃんだけど……。僕の幼馴染だよね?」
「そうだよ。私は、弟くんのお世話をするお姉ちゃん的な幼馴染だよ。だから弟くんの成長具合を確認するのも私の勤めなんだ」
「そんなムチャクチャな……」
なにやら文句を言いたいんだろうけど、楓は私の顔を改めて見て口をつぐんでしまう。
こういう時って、つい悪戯をしたくなっちゃうんだよね。
私は、さらに追い打ちをかけるかのように訊いてみる。
「さて。弟くんはどうしたいのかな?」
「それは……」
「お風呂くらい、もちろん一緒に入ってくれるよね?」
「う、うん……。約束したからね」
「さすが弟くん! やっぱり話のわかる人は助かるなぁ」
「ほとんど無理矢理のくせに……」
「なにか言った?」
「いえ、なんでもないです……」
楓は、消沈した様子でがっくりと肩を落としていた。
ちょっとだけ強引だったかな。
──いや。多少、強引な方が楓にとってはいいのかもしれない。
「それじゃ、約束どおり、お風呂に入ろっか?」
「今からなの?」
楓は、家にある掛け時計を見やる。
ちなみに時間はまだ午後の14時くらいだ。
お風呂に入るには、まだ早いくらい。
だけど夕方まで我慢できるかと言われたら、ちょっと難しいかも。
「うん、今からだよ。後にしちゃうと、色々とめんどくさくなっちゃうし。それに──」
「それに?」
「弟くんの成長具合が心配だから」
私は、色々と恥ずかしい気持ちになり、頬を赤くする。
自分がどんな顔をしているのかわからないけど、それだけは実感できた。
「僕は、香奈姉ちゃんの裸の方が刺激が強い気が……」
「それなら大丈夫だよ。バスタオルはしっかりと体に巻くから」
「香奈姉ちゃんの『大丈夫』は、なんとも──」
「私が大丈夫って言ったら大丈夫なの! 私のことをちゃんと信じてよね」
「わかったよ。でも今の時間帯で一緒に入るのはさすがにまずいと思うから、どちらかが先に入っている時にもう1人が乱入するっていうのが最もいいと思うんだ。──どうかな?」
「私は、どっちでもいいけど」
なんか楓の提案が必ずしも良いとは思えないんだけど……。私だけかな。
要はどっちが先に入るかによって、信用できるかどうかが決まるっていうことかな。
順当に行けば楓が先なんだろうけど。
「それじゃ、まずは香奈姉ちゃんから先に入ってもらおうかな」
「どうして? こういうのは、まず男の人が優先なんじゃないの?」
私は、思案げな表情になりそう訊いていた。
普通は、男の人が先に入るものだと思う。
しかし楓は、そうじゃなくて私を先に入らせようとしてきたのだ。
これは、絶対になにかある。
あやしいと思ったら、真っ先に訊いてみるのが解決への早道だ。
「それは……。レディファーストっていう言葉もあるし……」
「ふ~ん。そっか。なるほど……」
私は、わざとそう言ってのける。
楓には、いかにも納得したかのように見えただろう。
私は、ちっとも納得していなかった。
たしかに楓は、いつも優先的に私のことを推してくれる。
これは、彼女さんにしてみれば嬉しいことなんだろう。
しかし私にとっては、これは楓からの好意には見えないのだ。
なにかを計算して言っているように見えてしまうのは私だけだろうか。
「私が先に入ったとしたら、弟くんは私が上がってくるまで待ってるだけだから楽だもんね」
「いや……。そんなことは……」
「そのまま入らないつもりでしょ?」
「入るつもりでいるけど……。香奈姉ちゃんは、大丈夫なのかなって──」
「なにが?」
「香奈姉ちゃんはその…僕の裸を見ても平気なのかなって」
今さらそんなことを訊いてくるあたり、楓はかなり慎重になっている。
たしかに楓の自慢の一品は、見るのは久しぶりになるけど。
「そんなの大丈夫に決まっているじゃない。なにを心配してるのよ?」
「う~ん……。なんとなくだけど、嫌な予感がして……」
「嫌な予感って……。なにもないと思うけど」
一緒にお風呂とかに入ったら、もちろんなにもしないっていう保証はない。
私としては、一回くらいスキンシップを──
そんなことを考えてもバチは当たらないはずだ。
もしかして楓は嫌なのかな?
「香奈姉ちゃんのことだから、なにもないっていうのも不自然な気がして──」
「なにか起きてほしいの?」
「いや……。むしろなにも起きてほしくないような……」
楓は、私の顔をじっと見てそう言った。
どうして、そんな真面目な表情で私を見るの?
お互いに裸なら、少しくらいはエッチなことを考えるものだと思うけど。
「それは無理かな。多少のことは覚悟してもらわないと──」
「多少なんだ……」
「私と弟くんとの間になにもないっていうのは、ないんじゃないかな?」
私は、いつもの笑顔を見せてそう言った。
それと同時に楓の手を握り、安心させる。
頼むから、そんな不安そうな表情はやめてほしい。
これから私たちにとって大事なことをするというのに。
そんな顔をされたら、私が困る。
「香奈姉ちゃんと一緒に入るのは、やっぱり慣れないかなって──」
「それって、絶対にエッチなことをしちゃうから?」
「それもあるけど…やっぱり女の子の裸を見るのはさすがに……」
楓は、私の胸に視線を向けて言う。
お風呂場だと全裸になるから、たぶん胸だけじゃない気がする。色んな箇所を見てるんだろう。
私からしたら、男のアレを見るのもなかなかに慣れないんだけどなぁ。
特にも楓のあそこは、かなり立派だから。
勃った時の大きさは、たぶん私の想像を超えるくらい。
そんなことを言ったら、楓は絶対に怒るだろう。
「今は、誰もいないし。さっさと入ってしまおうよ」
私は、強引なくらいに楓の手を引っ張って、浴室へと向かっていった。
この際、嫌とは言わせない。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる