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第二十五話

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「お邪魔します」

楓君は、緊張した面持ちで家の中に入ってくる。
帰り際の途中で別れようか迷ってしまったが、帰宅デートになるなら家につれていくのも仕方ないと思ったのだ。

「どうぞ。なにもないけど……」

私は、楓君の方を見ないでまっすぐに居間の方に向かう。
今のところ、緊張しているとかはない。
そういえば、楓君を家の中に入れたのは初めてのような気がする。気のせいか。
楓君は、なんて思っているんだろう。
やっぱり女の子の家に来たから、それなりに緊張しているのかな。
こんな時、妹がいなくてよかったと心の底から思う。
いたらなんて言われるかわかったもんじゃないからな。
見たところ、妹はまだ帰ってきてはいないようだ。
その代わりに、居間にその痕跡があった。

「っ……!」

それを見た瞬間、私の体は咄嗟に動いていた。
少なくとも、それは楓君がこちらに来る前に回収しておかなくてはいけないものだ。
それは、上下一式の下着だった。それもピンクの可愛い系のものだ。
ブラジャーに関しては、私のよりかは小さいサイズだけど、それでも男の子を困惑させるには充分すぎる。
なんでこんな物が居間のソファーの上に置いてあるんだろう。
それもソファーのど真ん中に……。
ここまで自分の存在意義を出してるものはない。
中学生が穿くような下着だから、たいしたものではないとは思うのだが。それでも楓君に見られたら恥ずかしいと思うから回収しておく。
そして、すぐに声をあげる。
楓君がそのまま居間に入ってこないようにするために──

「やっぱり、ちょっと待って!」
「あ、うん。わかった」

楓君は、素直に居間に入る手前の廊下で立ち止まる。
私は、これ以外に下着はないか確認するために居間の中を探し回った。
とりあえず、妹の下着類はこれ以外にはないみたいだ。
たぶん着替え用の下着だと思う。
妹は、帰ってきたら必ず下着を穿き替える癖があるから。
オマセさんなところがあるのは結構だけど。男の子に対する抵抗がすごく弱かったりするので、楓君とかがこの場にいたら緊張で動けなくなってしまうだろうな。
まぁ、この下着は浴室の脱衣カゴの中に入れておこう。
そうすれば、誰にも見られることはないだろう。
しかし、下着以外にも妹の服があった。
オシャレな上着に白のショートパンツだ。
これに関しては、見られて困るようなものではないが……。せっかく自分の部屋があるのに、これはどうなんだろう。
ちょっと疑問に思う。
妹のものは、妹自身がなんとかしてほしいのだが……。
ほとんど居間に持ってきてるみたいである。
帰ってきたら、居間で着替えをするつもりなのかな?
そうなると、居間はダメだ。

「ごめん……。私の部屋に行こう。たぶん、その方がいいかも──」
「あ、うん」

楓君は、なにかを察してくれたのか、快く応じてくれた。
どうしてこうなるんだろうとは思ったが、ここは敢えて言わないでおく。
私は、軽くため息を吐いていた。

やっぱり居間の方で待たせるより、私の部屋に迎え入れた方がはやい。
そう思った私は、さっそく楓君を私の部屋につれていく。

「どう? 私の部屋って何もないでしょ?」
「何もないっていうより…しっかり整理されてるから、安心できるような」

楓君は、そう言って安堵の息を吐いていた。
そんな安心していいのかな。
これから着替えをするというのに──
誰も入ってくることができないようにしっかりと鍵はかけておいたから、大丈夫だ。
あとは、私の気持ち次第だ。
男の子の目の前で制服を脱ぐのって、ちょっと勇気がいるかも。
私は、とりあえず半袖のブラウスを脱いでいく。
それに過敏に反応したのは、楓君だ。

「ちょっ……。美沙先輩! 僕がいるんだから──」
「香奈ちゃんの着替えを見てるんだから、大丈夫でしょ? 私のなんか、たいしたことないよ」
「いや……。そういう問題じゃ……」

楓君は、なにかを言いかけてやめていた。
香奈ちゃんの着替えを見ていたのは、間違いないんだろう。それも生着替えを──
女の子の着替えを見ることに、なんの需要があるのか知らないが、これはこれでドキドキしたりはする。
水色のブラジャーが露わになり、楓君は私から視線を逸らす。
私は、楓君の顔に手を添えて、こちらを向かせる。

「しっかり見ていてよね。もちろん香奈ちゃんには内緒だよ」
「美沙先輩……」

楓君は、ゆっくりと私の胸に手を添えてきた。
香奈ちゃんほどではないが、胸の形にはそれなりに自信はある。
さすがにブラジャーを外されたら、嫌だけど……。
まぁ、今日は体育もあったから、どちらにしても脱がないといけないんだけど、それは今ではない。
とりあえず、次はスカートと中の下着だな。
ブラジャーの方はともかく、ショーツの方はさすがに脱がないと色々と問題があるかも。
でもそれは、楓君にやってほしいな。
私は、スカートの中のショーツに手をかけるが、そこから下ろさずに楓君を見る。
それも、甘えるような視線で──

「お願いがあるんだけど……。いいかな?」
「ごめん。さすがにそれは……。僕には、ちょっとできないかも……」

楓君は、私のお願いがなにかわかっているのか、丁重にお断りしてくる。
やっぱり鋭いな。
さすがに香奈ちゃん以外の女の子のスカートや下着を脱がすなんて事は、したくはないか。
私は、別に構わないんだけど。

「大丈夫だよ。香奈ちゃんには、ちゃんと説明するから」
「そういう問題じゃないような気がするんだけど……」
「私にとっては、これはとても重要なことだから。やってくれないと困るかも……」
「え。でもなぁ……」

楓君は、なにやら神妙な表情をうかべている。
香奈ちゃんが近くにいる楓君にとっては、こういうことは日常茶飯事だろうに。
香奈ちゃんから、ちゃんと聞いてるんだから。

「楓君にやってもらえるまで、私もこのままになるのかな? どうしよっかな~?」
「っ……!」

私がこの発言をしたら、さすがの楓君もやらざるを得ないだろう。
別にエッチなことを要求しているわけじゃない。
私のことをちゃんと見てほしいだけだ。できれば体の隅々まで──
たしかに多少の好意はあるから、間違ったことをしちゃうかもしれないけれど。

「楓君なら、私のお願いを聞いてくれたりするよね?」
「あ、その……。美沙先輩のはさすがに……。お姉ちゃんに悪いし……」
「私も、一応は楓君の一つ上のお姉さんになるんだけどな。香奈ちゃんのは良くて、私のはダメって……。一体、どういう基準なの?」
「それは……」
「もう覚悟を決めちゃいなさいよ。楓君は、同い年や年下の女の子よりも、年上のお姉さんに好かれるタイプなんだから。こうなるのは、もう決まってるんだよ」

私も、楓君のどこが好きって訊かれたら、雰囲気や性格だと断言できる。
あの気難しい理恵ちゃんも密かに楓君のことを想っているくらいだから、よほどのことだ。
たぶん、楓君のことを嫌いなバンドメンバーはいないと思う。
これは、またとないチャンスなのだ。

「いいの? このまま下げたらスカートどころかパンツも脱がしちゃうけど……」
「楓君にやってもらえるのならオッケーだよ。ぜひ見てほしいし」
「女の子のあそこは、あんまり見たくないような……」

楓君は、ボソリとなにかを呟く。
なんだろう?
私としても、よく聞こえなかったな。

「なにか言った?」
「ううん。なんでもない。こっちの事──」
「そっか。とにかく、はやくお願いね」
「うん」

楓君は、ゆっくりと私のスカートの中に手を入れ、中のショーツを掴む。
ちょっと……。
スカートからじゃないの?
そうは思ったが、もう遅い。
楓君は、私のショーツをゆっくりと下ろしていく。

「あっ」

私は、羞恥のあまり身を縮こませる。
私の脚は自然と内股になっていき、その場に尻餅をついてへたりこんでしまう。
脱がせている最中のショーツはまだ膝の辺りにある。
このアングルからだと私の秘部が見えているはずだけど……。
楓君は、見ていないのかな?
ちなみに私の秘部は、まだ誰にも見せたことはない。
今回が、初となる。
私は、秘部が見えやすいようにわざと両脚を少し広げていた。

「んっ。よかったら、どうぞ」

楓君以外の男の子なら、絶対に拒絶反応を示していると思う。
しかし楓君は、脱がせている途中のショーツの方が気になっている様子だった。

「………」

特にも、秘部に当たっていた部分を凝視している。
運動した後のものだからなぁ。
もしかして、汗とかの汚れがついてしまっているとか?
生理の周期は過ぎてしまったし、ましてやお漏らしをした覚えはないんだけど……。

「どうしたの、楓君? もしかして、汚れていたりしたかな?」
「ううん。綺麗なショーツだなって思って──」
「そうなんだ。匂いを嗅いじゃったりはしないんだ?」
「それ、前にも誰かさんに言われたような……」
「もしかして、香奈ちゃんかな?」
「それは秘密かな」
「そっか」

私は、そう言って笑みを浮かべる。
秘密もなにも、その人の正体はなんとなくわかっちゃうよ。
楓君がショーツを足元まで下げたところで、私は楓君の手をギュッと掴む。

「このままブラジャーの方も外してみよっか? その方が楓君もいいんじゃない?」
「さすがにそれは……。遠慮しておくよ。美沙先輩のを見れただけでも眼福だし」
「そっか。それは残念だなぁ。香奈ちゃんのものには及ばないけど、私の胸だってなかなかのものだと思うよ」

そうは言ってみたものの、楓君はそんなことは絶対にしてこないだろうな。
そこが楓君のいいところなんだけど……。
いきなり迫るのもちょっと違う気もするし、申し訳ない気持ちにもなるので、今回はやめておこう。
私の胸だって、それなりに発育は良いと思うんだけどな。
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