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第十八話

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──お風呂場にて。
香奈姉ちゃんは、やきもちを妬いているのか少しだけ不満げな表情を浮かべ僕に迫ってくる。

「ねぇ、楓。美沙ちゃんとどんな約束をしたの? お姉ちゃんにもわかるように説明してくれないかな?」
「いや、あの……。約束って言われても……。特にはしてないような気が……」
「そっか。私には、言いづらい事なんだね」
「そんなことは……」
「私って、お姉ちゃん失格なのかな……。楓の弱みを知らないなんて、恋人以前の話だよ」

今にも泣き出しそうな表情で、僕を見てくる香奈姉ちゃん。
お互いに裸でお風呂に入っているのは、どうなんだろうか。
普通は、胸くらい隠すことはするのに、香奈姉ちゃんからは隠す素振りすら見せないし。
今も充分、恋人らしいことはしてると思うんだけど。
それでも、せめて胸くらいは隠そうよ。
はっきり言って、あまり見たいと思えないんだよな。精神衛生上……。
ただでさえ、香奈姉ちゃんのおっぱいは大きいから。

「僕の弱みって言われても、それほどの事は何もない気がするけど……。美沙先輩に知られているのは、香奈姉ちゃんのことだと思うよ」
「私のこと? それって?」
「たとえば、その……。香奈姉ちゃんの……」
「私の? 何よ? はっきり言いなさい」
「いや……。やっぱり、なんでもない。こんなこと言っちゃったら──」

僕は、香奈姉ちゃんから顔を背ける。
きっと、今の僕は赤面しているに違いない。
それにしたってだ。
こんなことは、本人を目の前にして言えることじゃない。

「何を遠慮してるのかな? 私に聞かれたらまずいことなの?」

香奈姉ちゃんは、真面目な表情でそう訊いてくる。
そんな香奈姉ちゃんを見て、僕に言えることはこれだけだ。

「香奈姉ちゃんが気にするようなことは何もないよ。美沙先輩は、香奈姉ちゃんのそういうところが気に入ってると思うから」
「もう! 楓も美沙ちゃんもまわりくどいんだから──。それでも、やっぱり楓の方からでも本心を聞かないとダメだよね」

香奈姉ちゃんは、そう言うとずいっと僕に迫ってきて、そのまま押し倒された。
このままいくと、また僕とセックスをしてしまいそうな勢いだ。
僕は、この状況から脱出しようとするが、またしても香奈姉ちゃんの方が騎乗位になってしまい、それもできない。

「えっと……。香奈姉ちゃん?」
「さぁ、どうしよっか? 楓は、準備ができてるみたいだけど──」
「いや……。やめてくれるとありがたいんだけど……」

僕は、そう言って香奈姉ちゃんから視線を逸らす。
きっと、香奈姉ちゃんの裸を見て、欲情してしまったんだと思う。
僕の大事なあそこは、元気いっぱいに勃っていた。
香奈姉ちゃんは、自分の大事な箇所を僕の大事なあそこにあてがい、後は中に挿れるだけの状態にする。

「このまま中に挿れちゃったら、きっと私の精神は保たないと思うのよね」
「だから、やめにしておこうよ。今は、香奈姉ちゃんの裸を見ているだけでも、耐えられないよ」

僕は、本心を吐露する。
僕としては、したくない。
香奈姉ちゃんはどうなんだろう。
お風呂場でセックスなんて、したいだろうか。
香奈姉ちゃんは、そのまま僕に体を委ねてくる。

「耐えられないなら、このまましちゃおっか? 誰も見ていないことだし──」
「香奈姉ちゃん……」

どうやら僕の理性は、これ以上は保ちそうにない。
だけどそれは、香奈姉ちゃんだって同じはずだ。
僕は、そっと香奈姉ちゃんの体を抱きしめた。
こういう事は、ベッドの上でやってほしいんだけどな。

「ねぇ。楓はもう、充分に温まったの?」

しばらくして香奈姉ちゃんは、唐突にそう訊いてくる。
温まったかと言われれば、そんなことはないかもしれない。
僕は、素直に答えてあげた。

「え、いや……。ちょっと湯冷めしちゃったかも……」
「そっか。それならさ、今度は湯冷めしないように一緒に入ろっか?」
「え、いや……。さすがに、それは……。大丈夫なの?」
「大丈夫に決まってるじゃない。今までだってそうしてきたのに、変なことで気を遣わないでよね」
「ごめん……」
「もう! 謝らないでよ」

香奈姉ちゃんは、恥ずかしいのか頬を赤く染めて僕の手をギュッと握ってくる。
セックスはやめてくれたかと思うと、ちょっとだけホッとした。
それにしても。
いつもの表情だけど、やっぱり可愛いなって思う。
姉的な存在の香奈姉ちゃんにそんな感情を抱いていいのかは、わからないけど……。
恋人同士なら、別にいいのかな。

「さぁ、一緒に入ろう」

香奈姉ちゃんはそう言って、握ってきた僕の手を引っ張っていく。
このまま僕を湯船の中へと導こうとしてるのが、香奈姉ちゃんの態度から見てわかるような状態だ。
こうなると、僕からは何もできない。
香奈姉ちゃんは、僕を先に湯船の中に入れた後、体を這わせるかの様にゆっくりと僕の上に被さっていった。
僕の手は、いつの間にか香奈姉ちゃんの胸を触れている。
僕自身がそんなことをするはずがないから、これは香奈姉ちゃんの仕業だろう。
きっと、そうに違いない。

「あの……。香奈姉ちゃん」
「何?」
「胸…大丈夫なの?」

僕は、恐る恐る訊いてみる。
胸を揉むのって、男からしたら柔らかい感触で気持ちいいけど、女の子からしたら嫌な感じなはずだ。
香奈姉ちゃんは、唐突に僕にキスをした後、答えた。

「ちょっと変な感じだけど、大丈夫だよ」
「そうなんだ」

僕は、不意に力が入ってしまい、香奈姉ちゃんの胸を揉みしだいてしまった。

「あんっ」

香奈姉ちゃんは、頬を赤く染めてビクンと体が反応してしまう。
嫌なら、僕の手を叩いてすぐさま離れるはずなのだが。
香奈姉ちゃんは、そんなことをせずに我慢していた。
我慢をした後に、僕に言う。

「こらっ! 強く揉みしだくのはダメだよ。揉むのなら、もっと優しく…ね」
「ごめん……」

優しく揉めって言われたって、できないよ。
慣れてるわけじゃないんだから。

「謝ってばかりだなぁ。楓は──」
「だって……。一緒にお風呂に入ってたら、逆に申し訳なく思えてきちゃって……」
「お姉ちゃんと一緒にお風呂に入るのが、そんなに申し訳ないって思えてしまうの?」
「いや、それは……。普通に考えたら、一緒にお風呂になんて入らないでしょ」

僕は、ぎこちない表情を浮かべてそう言った。
普通は、一緒には入らないと思う。
いくら僕の姉的存在の幼馴染とはいっても、一定の距離での付き合いは肝心だと思うけどな。

「私は、別に構わないよ。相手が楓──いや、弟くんだったらね。一緒に入っても、なんの問題もないよ」
「そっか」

僕は、そう相槌をうつ。
まぁ、今も実際に入っているわけだし。
香奈姉ちゃんからしたら、なんの問題もないか。
妙に納得できるような答えに、僕は安堵していた。
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