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第十七話
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香奈姉ちゃんの誕生日の2日前。
香奈姉ちゃんへのプレゼントは、ちゃんと考えてある。
ただ、物としてよりも、別の形で渡した方が喜ぶかもしれないなと思い、敢えてプレゼントは買わなかったんだけど。
やっぱり、ちゃんとしたものを渡した方が喜ぶかな……。
僕としては、香奈姉ちゃんをデートに誘おうと思ってるんだけど。
「やっぱり香奈姉ちゃん的には、デートなんかよりちゃんとしたものを贈った方がいいのかな……」
僕は、一人でそう言って軽くため息を吐く。
みんなは、香奈姉ちゃんへのプレゼントをちゃんと考えてくれてるのに、僕だけが何もないっていうのもな。
やっぱり、香奈姉ちゃんに贈るプレゼントを考えてみよう。
「そうと決まれば、ジッとなんてしてられない。ちょっとショッピングモールに行ってこよう」
僕は、さっそく出かける準備をする。
今は、兄も花音もいない。
プレゼントを買いに行くタイミングとしては、バッチリだ。しかし──
「どこへ行くの?」
こんな時に、香奈姉ちゃんが僕の部屋の前で立っていた。
僕が部屋を出る直前に、ここに立っていたということは、香奈姉ちゃんにはなんとなくわかっていたのかもしれない。だけど──
「ちょっと、買い物にね」
僕は、笑みを浮かべてそう言った。
まさか香奈姉ちゃんの誕生日プレゼントを買いに行くために、ショッピングモールに行くなんて言えない。
香奈姉ちゃんは、いつもと変わらない笑顔を僕に向ける。
「そう。それなら、私も一緒に行ってもいいかな?」
「別に構わないけど。何か買い忘れたものでもあった?」
「ううん、特にないよ。ただ楓と一緒に歩きたいなって思っただけ──」
「そっか……」
それって、デートにならないか。
そう思ったが、口には出さなかった。
「ダメ…かな?」
香奈姉ちゃんは、不安そうな表情でそう訊いてくる。
そんな顔しなくてもいいのに。
僕は、笑みを浮かべたまま言った。
「別に構わないよ。香奈姉ちゃんとなら、楽しくなりそうだし」
「よかった。ダメって言われたら、どうしようかと思ったよ」
「ダメだなんて、言わないよ。僕にとって香奈姉ちゃんは、大切な人だから」
「ありがとう、楓」
香奈姉ちゃんは、そう言って頬を赤く染める。
もしかして、僕が買い物に行くことをわかっていて待っていたとか。──さすがにないよね。そんなこと。
ショッピングモールに着くまでの間、香奈姉ちゃんはずっと僕の手を握っていた。
いわゆる恋人繋ぎだ。
ナンパされないための手段なんだろうけど、これじゃかえって目立ちすぎな気もする。
「ところで、楓は何をしにショッピングモールに来たの?」
やはりと言うべきか香奈姉ちゃんは、そう訊いてきた。
香奈姉ちゃんには、『買い物』としか伝えてないから、もっと詳しく聞きたいんだろうな。
だけど、言えない。
誕生日プレゼントくらい、サプライズをしてもバチは当たらないだろうと思う。
「個人的な買い物にね」
「個人的な買い物…ねぇ。それって、私には言えないものなの?」
「香奈姉ちゃんには、ちょっと……。僕にも、プライベートがあるし」
「もしかして、エッチな本とか買うつもりじゃないでしょうね」
香奈姉ちゃんは、訝しげな表情で僕を睨んでくる。
いやいや。エッチな本って……。
僕の趣味じゃないし。
あれは慎吾のものだ。
そんなものを買うつもりなら、真っ先に本屋に向かうはずだけど。
「そんなの買わないよ。今日、ここに来たのは、香奈姉ちゃんの誕──」
僕は、そこまで言いかけて途中でやめる。
危なかった。もう少しで、言ってしまうところだった。
「私の、何?」
香奈姉ちゃんは、思案げに首を傾げ、僕を見る。
予想どおりの反応と言うべきなのか、この場合。
でも、今はまだ言えない。
「なんでもないよ。ただ、ちょっと気が向いたから来てみただけだよ」
「ふ~ん。そっか」
理解してくれたのか、香奈姉ちゃんはそう言っていた。
しかし、香奈姉ちゃんの次の言葉で、プレゼント選びどころじゃなくなってしまう。
「それなら、今日はずっと楓についていこうかな。何を買いに来たのか気になるし」
「えっ」
僕は、思わず声をあげてしまった。
呆気にとられてしまったっていうのが本音で、どう反応していいのかわからなかったのだ。
すると香奈姉ちゃんは、不機嫌そうな表情を浮かべる。
「何よ、その嫌そうな顔は? 私がついていったら、何か都合の悪いことでもあるの?」
「いや……。そんなことはないけど……」
香奈姉ちゃんに見られたら、都合の悪いことなんて……。もしかしたら、あるかもしれないけど。
少なくとも、エッチな本を買うわけじゃない。
なんにせよ、香奈姉ちゃんへのプレゼントは…買えそうにない。
「だったら、いいじゃない」
「うん。まぁ……。ダメってことはないけど……」
僕は、曖昧な態度でそう言っていた。
香奈姉ちゃんは、それをポジティブに取ったんだろう。
僕の腕にしがみついてくる。
「はっきり言っておくけど、私は楓から離れる気はないからね。今日は、責任を持って私をエスコートしてよね」
「う、うん。わかった」
まぁ、出かけると言ったのは僕だから。
最後まで、きちんとエスコートしてあげよう。
もちろん、香奈姉ちゃんへの誕生日プレゼントも忘れないようにしてだが。
正直言って、香奈姉ちゃんへの誕生日プレゼントは、探すのが一番大変だった。
なにしろ、香奈姉ちゃんに悟られないように買わなきゃいけなかったからである。
やっぱり、奈緒さんと一緒に買い物に行った時に、ちゃんとプレゼントを選べばよかったな。そのことに対しては、ちょっとだけ後悔したよ。
買ったのは、香奈姉ちゃんに似合いそうな洋服だ。
洋服屋の中でも一緒に行動していたので、香奈姉ちゃんを引き離すのは大変だったが、なんとか買うことができた。
「何を買ったの?」
と、香奈姉ちゃんは不思議そうな表情で訊いてくるが、僕は安心したような表情を浮かべて
「秘密」
とだけ言う。
香奈姉ちゃんは、僕のその言葉を聞いて関心なさそうに口を開く。
「ふ~ん。そう……」
そうは言ったものの、やはり気になるみたいだ。
チラチラと僕が買ったものを見ていた。
まさかこれが香奈姉ちゃんへの誕生日プレゼントだなんて、夢にも思っていないだろうな。
香奈姉ちゃんへのプレゼントは、ちゃんと考えてある。
ただ、物としてよりも、別の形で渡した方が喜ぶかもしれないなと思い、敢えてプレゼントは買わなかったんだけど。
やっぱり、ちゃんとしたものを渡した方が喜ぶかな……。
僕としては、香奈姉ちゃんをデートに誘おうと思ってるんだけど。
「やっぱり香奈姉ちゃん的には、デートなんかよりちゃんとしたものを贈った方がいいのかな……」
僕は、一人でそう言って軽くため息を吐く。
みんなは、香奈姉ちゃんへのプレゼントをちゃんと考えてくれてるのに、僕だけが何もないっていうのもな。
やっぱり、香奈姉ちゃんに贈るプレゼントを考えてみよう。
「そうと決まれば、ジッとなんてしてられない。ちょっとショッピングモールに行ってこよう」
僕は、さっそく出かける準備をする。
今は、兄も花音もいない。
プレゼントを買いに行くタイミングとしては、バッチリだ。しかし──
「どこへ行くの?」
こんな時に、香奈姉ちゃんが僕の部屋の前で立っていた。
僕が部屋を出る直前に、ここに立っていたということは、香奈姉ちゃんにはなんとなくわかっていたのかもしれない。だけど──
「ちょっと、買い物にね」
僕は、笑みを浮かべてそう言った。
まさか香奈姉ちゃんの誕生日プレゼントを買いに行くために、ショッピングモールに行くなんて言えない。
香奈姉ちゃんは、いつもと変わらない笑顔を僕に向ける。
「そう。それなら、私も一緒に行ってもいいかな?」
「別に構わないけど。何か買い忘れたものでもあった?」
「ううん、特にないよ。ただ楓と一緒に歩きたいなって思っただけ──」
「そっか……」
それって、デートにならないか。
そう思ったが、口には出さなかった。
「ダメ…かな?」
香奈姉ちゃんは、不安そうな表情でそう訊いてくる。
そんな顔しなくてもいいのに。
僕は、笑みを浮かべたまま言った。
「別に構わないよ。香奈姉ちゃんとなら、楽しくなりそうだし」
「よかった。ダメって言われたら、どうしようかと思ったよ」
「ダメだなんて、言わないよ。僕にとって香奈姉ちゃんは、大切な人だから」
「ありがとう、楓」
香奈姉ちゃんは、そう言って頬を赤く染める。
もしかして、僕が買い物に行くことをわかっていて待っていたとか。──さすがにないよね。そんなこと。
ショッピングモールに着くまでの間、香奈姉ちゃんはずっと僕の手を握っていた。
いわゆる恋人繋ぎだ。
ナンパされないための手段なんだろうけど、これじゃかえって目立ちすぎな気もする。
「ところで、楓は何をしにショッピングモールに来たの?」
やはりと言うべきか香奈姉ちゃんは、そう訊いてきた。
香奈姉ちゃんには、『買い物』としか伝えてないから、もっと詳しく聞きたいんだろうな。
だけど、言えない。
誕生日プレゼントくらい、サプライズをしてもバチは当たらないだろうと思う。
「個人的な買い物にね」
「個人的な買い物…ねぇ。それって、私には言えないものなの?」
「香奈姉ちゃんには、ちょっと……。僕にも、プライベートがあるし」
「もしかして、エッチな本とか買うつもりじゃないでしょうね」
香奈姉ちゃんは、訝しげな表情で僕を睨んでくる。
いやいや。エッチな本って……。
僕の趣味じゃないし。
あれは慎吾のものだ。
そんなものを買うつもりなら、真っ先に本屋に向かうはずだけど。
「そんなの買わないよ。今日、ここに来たのは、香奈姉ちゃんの誕──」
僕は、そこまで言いかけて途中でやめる。
危なかった。もう少しで、言ってしまうところだった。
「私の、何?」
香奈姉ちゃんは、思案げに首を傾げ、僕を見る。
予想どおりの反応と言うべきなのか、この場合。
でも、今はまだ言えない。
「なんでもないよ。ただ、ちょっと気が向いたから来てみただけだよ」
「ふ~ん。そっか」
理解してくれたのか、香奈姉ちゃんはそう言っていた。
しかし、香奈姉ちゃんの次の言葉で、プレゼント選びどころじゃなくなってしまう。
「それなら、今日はずっと楓についていこうかな。何を買いに来たのか気になるし」
「えっ」
僕は、思わず声をあげてしまった。
呆気にとられてしまったっていうのが本音で、どう反応していいのかわからなかったのだ。
すると香奈姉ちゃんは、不機嫌そうな表情を浮かべる。
「何よ、その嫌そうな顔は? 私がついていったら、何か都合の悪いことでもあるの?」
「いや……。そんなことはないけど……」
香奈姉ちゃんに見られたら、都合の悪いことなんて……。もしかしたら、あるかもしれないけど。
少なくとも、エッチな本を買うわけじゃない。
なんにせよ、香奈姉ちゃんへのプレゼントは…買えそうにない。
「だったら、いいじゃない」
「うん。まぁ……。ダメってことはないけど……」
僕は、曖昧な態度でそう言っていた。
香奈姉ちゃんは、それをポジティブに取ったんだろう。
僕の腕にしがみついてくる。
「はっきり言っておくけど、私は楓から離れる気はないからね。今日は、責任を持って私をエスコートしてよね」
「う、うん。わかった」
まぁ、出かけると言ったのは僕だから。
最後まで、きちんとエスコートしてあげよう。
もちろん、香奈姉ちゃんへの誕生日プレゼントも忘れないようにしてだが。
正直言って、香奈姉ちゃんへの誕生日プレゼントは、探すのが一番大変だった。
なにしろ、香奈姉ちゃんに悟られないように買わなきゃいけなかったからである。
やっぱり、奈緒さんと一緒に買い物に行った時に、ちゃんとプレゼントを選べばよかったな。そのことに対しては、ちょっとだけ後悔したよ。
買ったのは、香奈姉ちゃんに似合いそうな洋服だ。
洋服屋の中でも一緒に行動していたので、香奈姉ちゃんを引き離すのは大変だったが、なんとか買うことができた。
「何を買ったの?」
と、香奈姉ちゃんは不思議そうな表情で訊いてくるが、僕は安心したような表情を浮かべて
「秘密」
とだけ言う。
香奈姉ちゃんは、僕のその言葉を聞いて関心なさそうに口を開く。
「ふ~ん。そう……」
そうは言ったものの、やはり気になるみたいだ。
チラチラと僕が買ったものを見ていた。
まさかこれが香奈姉ちゃんへの誕生日プレゼントだなんて、夢にも思っていないだろうな。
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