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第十七話
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最近、楓の態度がよそよそしい。
お風呂に一緒に入ろうって言っても、なかなか応じてもらえないのだ。
今までは、そんなことはなかったのに……。
なんとなく避けられてるような気がするのは、私だけかな。
私、何か悪い事でもしてしまったんだろうか。
う~ん……。わからない。
「考えても、仕方ないよね……」
私は、一人でそう呟いていた。
楓に嫌われてしまうのは、正直言って、かなりキツいから、あまり考えないようにしておく。
それにしても、楓ったら、どこに行ったんだろうか。
スマホを見て、どこかに出かけたみたいだけど……。
もしかして、私に秘密で誰かと会う約束をしているとか。
今まで、楓が私に秘密でどこかに行くなんて事、あったかな。しかも誰かと一緒に…である。
この際、どっちでもいいか。
──とにかく。
私に隠し事をするなんて、いい度胸をしているな。
「楓が帰ってきたら、絶対に問い詰めないといけないな」
誰と何をしていたのかをね。
それまでは、勉強でもしていようかな。
今日に限って、楓からの連絡はなかった。
ある程度の予習復習を終えて暇になった私は、気になって楓の部屋にやってきたのだが、肝心の楓はいない。
「もう! どこに行ったのよ。楓ったら──」
私は、不機嫌になりそう言っていた。
この時間になっても帰ってこないのだから、余計に気になって仕方がない。
ちなみに、今の時間は午後の15時だ。
お昼はとっくに過ぎている。
てことは、誰かと一緒に出かけているのは確実だ。
もしかして、私以外の女の子とデートとか……。
そんなこと考えたくはないけど、朝に出かけていって、この時間まで帰ってこない事を考えると、友達か他の女の子と一緒に遊び歩いているって事になるから、私としては気持ちが落ち着かない。
私は、何気なく楓のベッドの上に座り込む。
楓が普段から使っているベッド──。
なんだか心地良い。
しばらくベッドの上で座り込んでいると、下の階の方で物音が聞こえてきた。
もしかして、楓が帰ってきたのかな。
だからといって、ここから動く気はなかった。
楓が帰ってきたのなら、真っ直ぐにここに来ると思うからだ。
「私がここにいたら、楓はびっくりするだろうな」
私は、微笑を浮かべてそう言っていた。
すると案の定というべきか、階段を登ってくる足音が聞こえてくる。
誰なのかは、私にはわからない。
もしかしたら、隆一さんかもしれないし。
固唾を呑んで待っていると、足音がどんどん近づいてくる。
そして、しばらくしないうちにこの部屋のドアが開く。
開けたのは、言うまでもなく楓だった。
私は、呟くように彼の名を呼んだ。
「楓……」
「香奈姉ちゃん」
ベッドの上に座り込んでいる私を見て、楓はホッとしたように息を吐いた。
私は、楓の安心しきったような表情を見ていてムッとなり、口を開く。
「おかえりなさい。今日のデートは、どうだった?」
「デ、デートって、何のこと?」
楓は、焦り気味にそう言う。
これはあきらかに図星を突かれてしまったような態度だ。
あからさまなんだよね。
「やっぱりデートだったんだね」
私は、ゆっくりとベッドにあった枕を手に取って、そのまま楓に向かって投げつけた。
投げつけた枕は、見事に楓の顔に直撃する。
「うわっ! どうしたの、香奈姉ちゃん⁉︎」
「うるさい! 私以外の人を好きになったらダメって言ったのに……。この浮気者!」
「浮気者って……。僕はただ──」
「言い訳なんか、聞きたくないよ!」
「言い訳って……。そんなこと言われたら、何も言えないじゃないか」
「だったら、誰とどこで何をしていたって言うのよ! そのくらいは、聞いてあげるよ」
冷静に考えたら、楓にも言い分というものがある。
まったく聞かないのも、どうかと思う。
それだと、私が心の狭い人間みたいじゃない。
そう思われてしまうのも、なんだか癪だ。
「えっと……。今日は、友達と遊びに行ってて、その……」
「そっか。あくまでもウソをつくんだね」
「ウソって……。僕は、そんなことは──」
「今日ね。楓と奈緒ちゃんに連絡したんだけど、どういうわけか連絡が取れなかったんだよね」
私は、スカートのポケットからスマホを取り出して、楓にそう言っていた。
楓は、案の定というべきか、とてもわかりやすい反応をする。
楓も、ズボンのポケットからスマホを取り出して、確認しだしたのだ。
たぶん、私からのメールと着信履歴がたくさん入っているはずだ。
反応しなかったのは、敢えて消音モードにしてたからだろう。
「………」
楓は、気まずそうな表情を浮かべて、スマホを見ている。
「さて。どういうことかな? 私にも、わかりやすいように説明してくれると助かるんだけど」
私は、笑顔を浮かべて楓を見た。
この笑顔は、たぶん心から出た笑顔ではないと思う。
内心では、怒っているのだ。
楓が奈緒ちゃんとデートに行ったのは、わかりきっている。
多少の付き合いならしょうがないけど、デートともなれば話は別だ。
「これは、その……。偶然というか、何というか……」
楓は、何かを誤魔化すかのようにそう言った。
きっと、私からのメールや着信を見て動揺しているに違いない。
奈緒ちゃんにも送っているから、後で奈緒ちゃんにも問い詰めてみよう。
「へぇ~。奈緒ちゃんに会いに行ったのが『偶然』なんだ。だったら、これから私と一緒にお風呂に入るのも『偶然』になるよね?」
「いや、それは……」
「話の続きは、お風呂場でしましょう。これは、れっきとした『浮気』なんだから。私の体でわからせてあげる」
「わからせるって、何を?」
「楓の彼女は、『私』だってことをだよ」
私の心と体は、楓のためにある。
だから、楓とエッチなことをしたって、体は少しも傷まない…はずだ。
いくら奈緒ちゃんとの付き合いがあるからって、デートはやりすぎだよ。
奈緒ちゃんも奈緒ちゃんだ。
楓とデートをするだなんて、奈緒ちゃんもずいぶんと積極的になったなって思う。
今は、楓しかいないからしょうがないけど、奈緒ちゃんにもしっかりとお説教しないとダメだな。
「あの……。香奈姉ちゃん。これには、ちゃんとした事情があって──」
「どんな事情があったにしろ、奈緒ちゃんとデートをしたのは変わらないでしょ。その制裁は、ちゃんと受けてもらうんだから」
私は、毅然とした態度でそう言った。
そうは言っても、楓のことを怒ることはできないし。
どうしよう。
楓を目の前にすると、きっと甘えちゃいそうだ。
「香奈姉ちゃん。…ひょっとして、ヤキモチ妬いてるの?」
「だったら、何よ。私がヤキモチを妬くのは、いけないことだって言うの?」
「いけないってわけじゃないけど……。香奈姉ちゃんがヤキモチを妬くのは意外だなって……」
「私だって、一人の女の子なんだよ。ヤキモチくらい妬くよ」
私は、恥ずかしい気持ちになりながらもそう言った。
楓にとって私は、姉的存在なのかもしれないけど。
楓のことが大好きな気持ちは、誰にも負けない。
奈緒ちゃんには、絶対に渡さないんだから。
お風呂に一緒に入ろうって言っても、なかなか応じてもらえないのだ。
今までは、そんなことはなかったのに……。
なんとなく避けられてるような気がするのは、私だけかな。
私、何か悪い事でもしてしまったんだろうか。
う~ん……。わからない。
「考えても、仕方ないよね……」
私は、一人でそう呟いていた。
楓に嫌われてしまうのは、正直言って、かなりキツいから、あまり考えないようにしておく。
それにしても、楓ったら、どこに行ったんだろうか。
スマホを見て、どこかに出かけたみたいだけど……。
もしかして、私に秘密で誰かと会う約束をしているとか。
今まで、楓が私に秘密でどこかに行くなんて事、あったかな。しかも誰かと一緒に…である。
この際、どっちでもいいか。
──とにかく。
私に隠し事をするなんて、いい度胸をしているな。
「楓が帰ってきたら、絶対に問い詰めないといけないな」
誰と何をしていたのかをね。
それまでは、勉強でもしていようかな。
今日に限って、楓からの連絡はなかった。
ある程度の予習復習を終えて暇になった私は、気になって楓の部屋にやってきたのだが、肝心の楓はいない。
「もう! どこに行ったのよ。楓ったら──」
私は、不機嫌になりそう言っていた。
この時間になっても帰ってこないのだから、余計に気になって仕方がない。
ちなみに、今の時間は午後の15時だ。
お昼はとっくに過ぎている。
てことは、誰かと一緒に出かけているのは確実だ。
もしかして、私以外の女の子とデートとか……。
そんなこと考えたくはないけど、朝に出かけていって、この時間まで帰ってこない事を考えると、友達か他の女の子と一緒に遊び歩いているって事になるから、私としては気持ちが落ち着かない。
私は、何気なく楓のベッドの上に座り込む。
楓が普段から使っているベッド──。
なんだか心地良い。
しばらくベッドの上で座り込んでいると、下の階の方で物音が聞こえてきた。
もしかして、楓が帰ってきたのかな。
だからといって、ここから動く気はなかった。
楓が帰ってきたのなら、真っ直ぐにここに来ると思うからだ。
「私がここにいたら、楓はびっくりするだろうな」
私は、微笑を浮かべてそう言っていた。
すると案の定というべきか、階段を登ってくる足音が聞こえてくる。
誰なのかは、私にはわからない。
もしかしたら、隆一さんかもしれないし。
固唾を呑んで待っていると、足音がどんどん近づいてくる。
そして、しばらくしないうちにこの部屋のドアが開く。
開けたのは、言うまでもなく楓だった。
私は、呟くように彼の名を呼んだ。
「楓……」
「香奈姉ちゃん」
ベッドの上に座り込んでいる私を見て、楓はホッとしたように息を吐いた。
私は、楓の安心しきったような表情を見ていてムッとなり、口を開く。
「おかえりなさい。今日のデートは、どうだった?」
「デ、デートって、何のこと?」
楓は、焦り気味にそう言う。
これはあきらかに図星を突かれてしまったような態度だ。
あからさまなんだよね。
「やっぱりデートだったんだね」
私は、ゆっくりとベッドにあった枕を手に取って、そのまま楓に向かって投げつけた。
投げつけた枕は、見事に楓の顔に直撃する。
「うわっ! どうしたの、香奈姉ちゃん⁉︎」
「うるさい! 私以外の人を好きになったらダメって言ったのに……。この浮気者!」
「浮気者って……。僕はただ──」
「言い訳なんか、聞きたくないよ!」
「言い訳って……。そんなこと言われたら、何も言えないじゃないか」
「だったら、誰とどこで何をしていたって言うのよ! そのくらいは、聞いてあげるよ」
冷静に考えたら、楓にも言い分というものがある。
まったく聞かないのも、どうかと思う。
それだと、私が心の狭い人間みたいじゃない。
そう思われてしまうのも、なんだか癪だ。
「えっと……。今日は、友達と遊びに行ってて、その……」
「そっか。あくまでもウソをつくんだね」
「ウソって……。僕は、そんなことは──」
「今日ね。楓と奈緒ちゃんに連絡したんだけど、どういうわけか連絡が取れなかったんだよね」
私は、スカートのポケットからスマホを取り出して、楓にそう言っていた。
楓は、案の定というべきか、とてもわかりやすい反応をする。
楓も、ズボンのポケットからスマホを取り出して、確認しだしたのだ。
たぶん、私からのメールと着信履歴がたくさん入っているはずだ。
反応しなかったのは、敢えて消音モードにしてたからだろう。
「………」
楓は、気まずそうな表情を浮かべて、スマホを見ている。
「さて。どういうことかな? 私にも、わかりやすいように説明してくれると助かるんだけど」
私は、笑顔を浮かべて楓を見た。
この笑顔は、たぶん心から出た笑顔ではないと思う。
内心では、怒っているのだ。
楓が奈緒ちゃんとデートに行ったのは、わかりきっている。
多少の付き合いならしょうがないけど、デートともなれば話は別だ。
「これは、その……。偶然というか、何というか……」
楓は、何かを誤魔化すかのようにそう言った。
きっと、私からのメールや着信を見て動揺しているに違いない。
奈緒ちゃんにも送っているから、後で奈緒ちゃんにも問い詰めてみよう。
「へぇ~。奈緒ちゃんに会いに行ったのが『偶然』なんだ。だったら、これから私と一緒にお風呂に入るのも『偶然』になるよね?」
「いや、それは……」
「話の続きは、お風呂場でしましょう。これは、れっきとした『浮気』なんだから。私の体でわからせてあげる」
「わからせるって、何を?」
「楓の彼女は、『私』だってことをだよ」
私の心と体は、楓のためにある。
だから、楓とエッチなことをしたって、体は少しも傷まない…はずだ。
いくら奈緒ちゃんとの付き合いがあるからって、デートはやりすぎだよ。
奈緒ちゃんも奈緒ちゃんだ。
楓とデートをするだなんて、奈緒ちゃんもずいぶんと積極的になったなって思う。
今は、楓しかいないからしょうがないけど、奈緒ちゃんにもしっかりとお説教しないとダメだな。
「あの……。香奈姉ちゃん。これには、ちゃんとした事情があって──」
「どんな事情があったにしろ、奈緒ちゃんとデートをしたのは変わらないでしょ。その制裁は、ちゃんと受けてもらうんだから」
私は、毅然とした態度でそう言った。
そうは言っても、楓のことを怒ることはできないし。
どうしよう。
楓を目の前にすると、きっと甘えちゃいそうだ。
「香奈姉ちゃん。…ひょっとして、ヤキモチ妬いてるの?」
「だったら、何よ。私がヤキモチを妬くのは、いけないことだって言うの?」
「いけないってわけじゃないけど……。香奈姉ちゃんがヤキモチを妬くのは意外だなって……」
「私だって、一人の女の子なんだよ。ヤキモチくらい妬くよ」
私は、恥ずかしい気持ちになりながらもそう言った。
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