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第十七話
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放課後。
いつもどおりに校門前に向かうと、そこには奈緒さんがいた。
彼女は、周りの男子生徒たちの視線など気にした様子もなく、そこに佇んでいる。
下校時に誰が校門前にいようと文句はないが、美少女がそこにいたら、どうしても男子生徒たちの目には入る。
だけど、さすがにフラれるとわかっていて声をかける人はいない。
こうして見てみると、奈緒さんってクールでキツめな印象だけど、普通に美少女なんだよな。
だからといって、奈緒さんに声をかける男子生徒はいないか。そういう意味では、少しだけ嬉しいかも。
僕は、そんなことを思いながら奈緒さんに近づいていく。
「やぁ、奈緒さん。誰を待っているの?」
「遅いよ、楓君。何をしていたのかな?」
「いや……。今日は──」
何をしていたって訊かれても、特に何もしていないけど。
下校時間になったから、いつもどおり帰ろうと思っただけなんだけどな。
そんなことを説明しても、わかってはくれないだろう。
そう思っていたら、奈緒さんは──
「わかってるって。掃除当番だったんでしょ。だから──」
「え、いや……。そういうわけじゃなくて……」
「いいんだよ。あたしなら、全然平気だからさ。待つくらいの事はできる女だから。それに、ここに来たってことは、掃除は終わったってことだよね?」
僕が何かを言う前に、奈緒さんは微笑を浮かべてそう言って僕の腕をギュッと掴んでくる。
これは、いくら説明をしても、奈緒さんの耳には入らないな。
ん……。そういえば……。
「ところで香奈姉ちゃんは? 一緒じゃないの?」
「香奈はね。えっと……。今日は、遅れるからって……。それで──」
しどろもどろになってるところを見ると、たぶん香奈姉ちゃんには何も言ってないな。
これは、この前みたいに奈緒さんのところに連絡がいったりして。
でも奈緒さんなら、平然とした表情で香奈姉ちゃんに言い返しそうな気がする。
「あの……。奈緒さん」
僕は、とりあえず声をかける。
どうするにせよ、決めるのは奈緒さんだ。
「とりあえず、一緒に帰ろう」
「あ……。ちょっと……」
僕が何か言うよりも早く、奈緒さんは僕の腕を引っ張っていく。
たぶん、周りにいる男子生徒たちに見られてしまうのが厄介に思ったんだろう。
それにしても。
これから、どこに向かうつもりなんだろうか。
僕の家かな。
なんか気になるんだけど……。
奈緒さんと一緒にやってきたのは、いつもの公園だった。
さすがに冬の公園には、誰もいないだろうと思っていたんだけど、この時間になると違うらしい。
男女のカップルでいっぱいだった。
なかには、女子校の生徒もいる。
「やっぱり、この季節でもカップルが多いね」
「そ、そうだね」
僕は、奈緒さんの方を見てつい緊張してしまい、そう相槌をうつ。
──それにしても。
女子校の制服は、冬服でもスカートの丈が短い。
おそらく個人差があるんだろうけど、寒くないのかな?
奈緒さん自身は平気そうな顔をしているし、大丈夫なんだろう。
そう思って見ていると、奈緒さんは僕の方を見て微笑を浮かべる。
「どうしたの?」
「あ、いや……。なんでもないです」
僕は、すぐに奈緒さんから視線を逸らす。
脚から冷えてこないのかなって聞くのも失礼だと思うから、やめようと思う。
すると、何を思ったのか奈緒さんは近くにあったベンチに腰掛けた。
僕が黙って立っていると、奈緒さんは一人分のスペースを空けて、僕に座るように言ってくる。
「とりあえず、楓君も座ろう」
「う、うん」
なんか釈然としないけど、とりあえずベンチに座ることにした。
奈緒さんの言うとおりにしたけど、このまま何もしないでいるつもりなんだろうか。
僕がベンチに座ってしばらくしないうちに、奈緒さんが僕の手を握ってくる。
「楓君の手…温かいね」
「そうかな? 少しだけ冷たいかと思うんだけど……」
「そんなことないよ。あたしの脚に比べたら、だいぶ温かいよ。ほら──」
奈緒さんは、そう言って僕の手を奈緒さんの太ももの部分に移す。
途端、奈緒さんの脚の温度と肌の感触が伝わってくる。
奈緒さんの脚は、意外と温かった。だけど──
ストッキングとかは履いていない感じだった。
この季節にストッキング無しは、寒くないのかな?
「あ……。奈緒さん。素足だったの?」
「うん。ちなみに、香奈も素足だよ」
「大丈夫なの? 寒くないの?」
「このくらいは平気だよ。だって、こうすれば楓君の手の温度が直に伝わってくるからね」
奈緒さんは、頬を赤く染めてそう答えた。
その間も、奈緒さんは僕の手を優しく撫でている。
奈緒さんの脚を触るのはいいけど、他の人に見られていると思うとすごく恥ずかしいんだけど。
奈緒さんは、恥ずかしくないんだろうか?
「あ、その……。僕の手をカイロ代わりにしても、温まらないですよ」
「大丈夫だよ。楓君の手は、充分に温かいから」
そう言って、僕の手を離そうとしない奈緒さん。
そんな奈緒さんの態度を見ていると、すごく可愛く思えてしまう。
本人に言ったら絶対に怒ると思うから、言わないけれど……。
奈緒さんは、思いついたかのように口を開いた。
「そうだ。楓君なら、あたしのアレは必要だよね?」
「え? アレって?」
「惚けたってダメだよ。あたしが穿いてるアレだよ。楓君には必要でしょ?」
「いや……。特に必要はないと思いますけど……」
「そっか。いらないか……。やっぱり、これ以上は効果がないのかな……。仕方ない」
奈緒さんは、そう言ってため息を吐く。
アレと言われても何なのかわからなかったが、穿いてるものと聞いて、すぐにわかってしまう。
ショーツの事か。
また穿いているショーツを渡そうとしてくるのかな。
奈緒さんがノーパンになった状態なんて、見たくないんだけど。
それを見越したのか、奈緒さんは鞄を大事そうに持って、言う。
「替えのアレなら持ってきてるから、心配しなくてもいいんだよ。ダメかな?」
「それは、さすがに……」
奈緒さんのショーツは二枚持ってるけど、三枚目はさすがに受け取れない。
ちなみに、ショーツだけじゃなくて、それとセットになるブラジャーも後から受け取っているから、僕としてはどこに仕舞ったらいいのかわからなくなっているのだ。
いつまでも、僕の机の引き出しの中に仕舞っておくわけにはいかないし……。
それに三枚目となると、すでに着替えができてしまうくらいの枚数だ。
香奈姉ちゃんみたく、僕の部屋を更衣室代わりにされたら、たまったもんじゃない。
「遠慮しなくてもいいんだよ。もし、あたしみたいなお姉さんの下着が欲しいのなら──」
奈緒さんは、スカートの中にこっそりと手を入れてもぞもぞとしだす。
もしかして、ショーツを脱ごうとしているのか。こんな場所で……。
しかも、周りの人たちに見られても大丈夫なように、持っている鞄を膝の上に置いて、しっかりとガードしていた。
これなら、周りにはバレそうにない。
僕は、慌てた様子で奈緒さんを止めに入る。
「いや……。奈緒さんのは、もう三枚目になっちゃうから──。その……」
「そっか。三枚目になっちゃうか。それは、とてもいい事だね」
「え……。それって、どういう──」
「わからないかな? あたしの方が、香奈よりも弟くんに対する愛が深いんだよ」
「愛って……。僕は、奈緒さんに好かれるような男じゃないよ……」
奈緒さんから好意を向けられても、僕はそれに応えることができない。
そんな恋愛的な気持ちで奈緒さんの顔を見ていると、どうしても香奈姉ちゃんの顔が思い浮かんでしまう。
奈緒さんは、再び僕の手をギュッと握ってくる。
「それを決めるのは楓君じゃないよ」
「………」
僕は、何も言えなくなってしまう。
その凛とした顔を見れば、奈緒さんの覚悟がひしひしと伝わってくるほどだ。
「楓君は自覚がないのかもしれないけど、楓君って周りの女子生徒たちから結構見られているんだよ」
「うぅ……。それって、香奈姉ちゃんからも言われたような……」
「やっぱりね。香奈は、その辺りは敏感だからね。楓君に悪い虫が憑かないようにしてるんだよ」
「悪い虫……」
「まぁ、本人に言ったってわからないよね。ごめんね」
奈緒さんは、そう言っていつもの微笑を浮かべる。
そのいつもの微笑を守りたいっていうのは、僕のわがままだろうか。
香奈姉ちゃんのことはもちろん大切だけど、奈緒さんのことも同じくらい大切なのだ。
二股って言われたら、どうなんだろう。
僕が抱いている奈緒さんに対しての好意は、恋愛のそれではないし。
奈緒さん自身は、恋愛的な意味で迫ってきているのかな。
僕には、よくわからない。
いつもどおりに校門前に向かうと、そこには奈緒さんがいた。
彼女は、周りの男子生徒たちの視線など気にした様子もなく、そこに佇んでいる。
下校時に誰が校門前にいようと文句はないが、美少女がそこにいたら、どうしても男子生徒たちの目には入る。
だけど、さすがにフラれるとわかっていて声をかける人はいない。
こうして見てみると、奈緒さんってクールでキツめな印象だけど、普通に美少女なんだよな。
だからといって、奈緒さんに声をかける男子生徒はいないか。そういう意味では、少しだけ嬉しいかも。
僕は、そんなことを思いながら奈緒さんに近づいていく。
「やぁ、奈緒さん。誰を待っているの?」
「遅いよ、楓君。何をしていたのかな?」
「いや……。今日は──」
何をしていたって訊かれても、特に何もしていないけど。
下校時間になったから、いつもどおり帰ろうと思っただけなんだけどな。
そんなことを説明しても、わかってはくれないだろう。
そう思っていたら、奈緒さんは──
「わかってるって。掃除当番だったんでしょ。だから──」
「え、いや……。そういうわけじゃなくて……」
「いいんだよ。あたしなら、全然平気だからさ。待つくらいの事はできる女だから。それに、ここに来たってことは、掃除は終わったってことだよね?」
僕が何かを言う前に、奈緒さんは微笑を浮かべてそう言って僕の腕をギュッと掴んでくる。
これは、いくら説明をしても、奈緒さんの耳には入らないな。
ん……。そういえば……。
「ところで香奈姉ちゃんは? 一緒じゃないの?」
「香奈はね。えっと……。今日は、遅れるからって……。それで──」
しどろもどろになってるところを見ると、たぶん香奈姉ちゃんには何も言ってないな。
これは、この前みたいに奈緒さんのところに連絡がいったりして。
でも奈緒さんなら、平然とした表情で香奈姉ちゃんに言い返しそうな気がする。
「あの……。奈緒さん」
僕は、とりあえず声をかける。
どうするにせよ、決めるのは奈緒さんだ。
「とりあえず、一緒に帰ろう」
「あ……。ちょっと……」
僕が何か言うよりも早く、奈緒さんは僕の腕を引っ張っていく。
たぶん、周りにいる男子生徒たちに見られてしまうのが厄介に思ったんだろう。
それにしても。
これから、どこに向かうつもりなんだろうか。
僕の家かな。
なんか気になるんだけど……。
奈緒さんと一緒にやってきたのは、いつもの公園だった。
さすがに冬の公園には、誰もいないだろうと思っていたんだけど、この時間になると違うらしい。
男女のカップルでいっぱいだった。
なかには、女子校の生徒もいる。
「やっぱり、この季節でもカップルが多いね」
「そ、そうだね」
僕は、奈緒さんの方を見てつい緊張してしまい、そう相槌をうつ。
──それにしても。
女子校の制服は、冬服でもスカートの丈が短い。
おそらく個人差があるんだろうけど、寒くないのかな?
奈緒さん自身は平気そうな顔をしているし、大丈夫なんだろう。
そう思って見ていると、奈緒さんは僕の方を見て微笑を浮かべる。
「どうしたの?」
「あ、いや……。なんでもないです」
僕は、すぐに奈緒さんから視線を逸らす。
脚から冷えてこないのかなって聞くのも失礼だと思うから、やめようと思う。
すると、何を思ったのか奈緒さんは近くにあったベンチに腰掛けた。
僕が黙って立っていると、奈緒さんは一人分のスペースを空けて、僕に座るように言ってくる。
「とりあえず、楓君も座ろう」
「う、うん」
なんか釈然としないけど、とりあえずベンチに座ることにした。
奈緒さんの言うとおりにしたけど、このまま何もしないでいるつもりなんだろうか。
僕がベンチに座ってしばらくしないうちに、奈緒さんが僕の手を握ってくる。
「楓君の手…温かいね」
「そうかな? 少しだけ冷たいかと思うんだけど……」
「そんなことないよ。あたしの脚に比べたら、だいぶ温かいよ。ほら──」
奈緒さんは、そう言って僕の手を奈緒さんの太ももの部分に移す。
途端、奈緒さんの脚の温度と肌の感触が伝わってくる。
奈緒さんの脚は、意外と温かった。だけど──
ストッキングとかは履いていない感じだった。
この季節にストッキング無しは、寒くないのかな?
「あ……。奈緒さん。素足だったの?」
「うん。ちなみに、香奈も素足だよ」
「大丈夫なの? 寒くないの?」
「このくらいは平気だよ。だって、こうすれば楓君の手の温度が直に伝わってくるからね」
奈緒さんは、頬を赤く染めてそう答えた。
その間も、奈緒さんは僕の手を優しく撫でている。
奈緒さんの脚を触るのはいいけど、他の人に見られていると思うとすごく恥ずかしいんだけど。
奈緒さんは、恥ずかしくないんだろうか?
「あ、その……。僕の手をカイロ代わりにしても、温まらないですよ」
「大丈夫だよ。楓君の手は、充分に温かいから」
そう言って、僕の手を離そうとしない奈緒さん。
そんな奈緒さんの態度を見ていると、すごく可愛く思えてしまう。
本人に言ったら絶対に怒ると思うから、言わないけれど……。
奈緒さんは、思いついたかのように口を開いた。
「そうだ。楓君なら、あたしのアレは必要だよね?」
「え? アレって?」
「惚けたってダメだよ。あたしが穿いてるアレだよ。楓君には必要でしょ?」
「いや……。特に必要はないと思いますけど……」
「そっか。いらないか……。やっぱり、これ以上は効果がないのかな……。仕方ない」
奈緒さんは、そう言ってため息を吐く。
アレと言われても何なのかわからなかったが、穿いてるものと聞いて、すぐにわかってしまう。
ショーツの事か。
また穿いているショーツを渡そうとしてくるのかな。
奈緒さんがノーパンになった状態なんて、見たくないんだけど。
それを見越したのか、奈緒さんは鞄を大事そうに持って、言う。
「替えのアレなら持ってきてるから、心配しなくてもいいんだよ。ダメかな?」
「それは、さすがに……」
奈緒さんのショーツは二枚持ってるけど、三枚目はさすがに受け取れない。
ちなみに、ショーツだけじゃなくて、それとセットになるブラジャーも後から受け取っているから、僕としてはどこに仕舞ったらいいのかわからなくなっているのだ。
いつまでも、僕の机の引き出しの中に仕舞っておくわけにはいかないし……。
それに三枚目となると、すでに着替えができてしまうくらいの枚数だ。
香奈姉ちゃんみたく、僕の部屋を更衣室代わりにされたら、たまったもんじゃない。
「遠慮しなくてもいいんだよ。もし、あたしみたいなお姉さんの下着が欲しいのなら──」
奈緒さんは、スカートの中にこっそりと手を入れてもぞもぞとしだす。
もしかして、ショーツを脱ごうとしているのか。こんな場所で……。
しかも、周りの人たちに見られても大丈夫なように、持っている鞄を膝の上に置いて、しっかりとガードしていた。
これなら、周りにはバレそうにない。
僕は、慌てた様子で奈緒さんを止めに入る。
「いや……。奈緒さんのは、もう三枚目になっちゃうから──。その……」
「そっか。三枚目になっちゃうか。それは、とてもいい事だね」
「え……。それって、どういう──」
「わからないかな? あたしの方が、香奈よりも弟くんに対する愛が深いんだよ」
「愛って……。僕は、奈緒さんに好かれるような男じゃないよ……」
奈緒さんから好意を向けられても、僕はそれに応えることができない。
そんな恋愛的な気持ちで奈緒さんの顔を見ていると、どうしても香奈姉ちゃんの顔が思い浮かんでしまう。
奈緒さんは、再び僕の手をギュッと握ってくる。
「それを決めるのは楓君じゃないよ」
「………」
僕は、何も言えなくなってしまう。
その凛とした顔を見れば、奈緒さんの覚悟がひしひしと伝わってくるほどだ。
「楓君は自覚がないのかもしれないけど、楓君って周りの女子生徒たちから結構見られているんだよ」
「うぅ……。それって、香奈姉ちゃんからも言われたような……」
「やっぱりね。香奈は、その辺りは敏感だからね。楓君に悪い虫が憑かないようにしてるんだよ」
「悪い虫……」
「まぁ、本人に言ったってわからないよね。ごめんね」
奈緒さんは、そう言っていつもの微笑を浮かべる。
そのいつもの微笑を守りたいっていうのは、僕のわがままだろうか。
香奈姉ちゃんのことはもちろん大切だけど、奈緒さんのことも同じくらい大切なのだ。
二股って言われたら、どうなんだろう。
僕が抱いている奈緒さんに対しての好意は、恋愛のそれではないし。
奈緒さん自身は、恋愛的な意味で迫ってきているのかな。
僕には、よくわからない。
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