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第十四話

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今日は真っ直ぐに自分の家に帰るつもりだったんだけど、香奈姉ちゃんに誘われてしまい、そのまま香奈姉ちゃんの家に向かうことになった。

「今日は、私の部屋で勉強しましょ」
「勉強だけなの?」
「勉強だけじゃ、足りない? それなら、一緒にお風呂に入ろっか?」

香奈姉ちゃんは、魅惑的な笑みを浮かべてそう言ってくる。
もちろん、そんな誘いに乗るような僕ではない。

「いや……。一緒にお風呂はさすがに……。練習とか、そういったことはしないのかなって」
「練習は、みんなが揃わないとできないかも……。でも、楓とのスキンシップなら、いつでもできるよ」
「それも、やっぱりやめておこうかな……」
「そっか。なんか残念だなぁ……。それなら一緒に勉強しますか」
「うん。そうだね」

僕は、笑顔でそう言っていた。
さすがにテストも近いからね。
エッチなことをして楽しむ時じゃない。
香奈姉ちゃんも、やっとそのことに気づいてくれたか。
なんだか、よかった。

やっぱり香奈姉ちゃんの部屋は、男である僕からしたら落ち着かない。
なんというか、雰囲気的にも居心地があんまり良くないかも。
そんな態度が体に出ていたんだろう。
香奈姉ちゃんが、訊いてくる。

「どうしたの、楓? なんだか、ソワソワして落ち着かないみたいだけど」
「なんでもないよ。ちょっと、わからないところがあったから、考えてただけだよ」

僕は、そう言って誤魔化す。

「わからないところって、どこなのよ?」

しかし、それが本気と思ったのか香奈姉ちゃんは、そう言って体を乗り出してくる。
その時に、香奈姉ちゃんのおっぱいがチラリと見えてしまう。ちなみに、今日のブラジャーの色は水色だ。
本人はわざとではないんだろうけど、それでも刺激的な光景だ。

「ああ、いや……。えっと……。香奈姉ちゃんが気にすることじゃないよ。このくらい、自分でなんとか──」

僕は、思わずノートの方に視線を落とす。

「ああ、もう! 遠慮する必要なんかないんだよ。私は、楓の恋人であると同時に、楓のお姉ちゃんなんだからね! わからないことがあるのなら、素直に訊いてくれないと」
「う、うん……。気持ちはありがたいんだけど……」
「変に気を遣われてしまうと、私の方が困ってしまうのよ。それに、一緒に勉強してるんだから遠慮なんてしないの。…どんどん私に聞きなさい」

香奈姉ちゃんは、自信満々な表情を浮かべてそう言った。
ずいっと迫ってくる香奈姉ちゃん。
だから、その体勢で身を乗り出してこられたら、おっぱいがもろ見えなんだって。
ただでさえ、ちょっと大きめなのに……。

「わ、わかったよ。わかったから、身を乗り出して言ってくるのはやめて。…胸が見えてるよ」

僕は、それとなく言ってみた。

「胸?」

香奈姉ちゃんは、自分の胸元に視線を落とす。
そこには、ちゃんと映っていたはずだ。
水色のブラジャーを身につけている状態の香奈姉ちゃんのおっぱいが……。

「きゃっ⁉︎」

香奈姉ちゃんは、慌てて服の襟元を手で押さえ、座り直す。
どうやら、恥ずかしかったみたいだ。
普段、僕に見せても平気な態度を取る香奈姉ちゃんが、そんな仕草をするのはとても新鮮だった。

「香奈姉ちゃんらしくないね。いつもなら『平気だよ』って言って、見せびらかすのに……。今回のは、人に見せちゃダメな下着だった?」
「ううん、そういうことじゃないの。…今回のは、楓のために着用した勝負下着なの……」

香奈姉ちゃんは、恥ずかしげに頬を赤く染め、そう言った。
勝負下着って……。
身につけてるブラジャーからでも、そうなるの?
そう考えてしまうと、もはや勉強どころじゃなくなってしまう。
僕は、誤魔化すかのように教科書に書かれている問題集の答えをノートに書き込んでいく。
でたらめに書いているので、正解なのかどうかはわからないけど。
香奈姉ちゃんは、何を思ったのか僕の傍に寄り添ってきて、僕がやっている勉強を見てくる。

「それ、間違ってるよ。正解は、こうやるんだよ」
「え……」

僕が何か言う前に、香奈姉ちゃんは素早く問題を解いていく。
たしかに間違っていた。
誤魔化すようにやった問題なので、かなりテキトーになってしまったのは、否めない。

香奈姉ちゃんの家にいてしばらくしない時に、香奈姉ちゃんから言われてしまう。

「ねぇ、楓。せっかく私の家に来たんだから、お風呂に入っていきなさいよ」
「それは、さすがに悪いよ……」

僕は、遠慮がちにそう言った。
やっぱり、そうきたか。
香奈姉ちゃんが、僕を家に招く時って大抵、一緒にお風呂などに入りたいと思った時だ。
今回は、タイミングがバッチリすぎて、かえって断りにくい。
香奈姉ちゃんは、僕の手を取ってくる。

「何、遠慮なんてしてるのよ。私たちは、幼馴染でしょ。お風呂くらい、なんてことないじゃない」
「そうだけど……。まさか一緒に入るとかって言わないよね?」
「ん? 一緒に入ったら、何かまずいの?」

一緒に入るつもりだったのか。
僕は、思案げな顔をしている香奈姉ちゃんを見て、言った。

「大いにまずいと思うよ」
「どうして?」
「さすがに間違いが起きたら──」
「『間違い』って何かな?」

香奈姉ちゃんは、悪戯っぽい笑みを浮かべて訊いてくる。
あ……。これは、本人が一番よくわかっている感じだ。

「『間違い』は間違いだよ。ある程度、成長した男女が一緒にお風呂に入ったら、起こることだよ」
「そうなんだ。私、楓との間に起こる『間違い』なら…起きてもいいよ」

そんなこと、頬を染めて言われてしまったら……。
あきらかに香奈姉ちゃんは、そうなることを望んでいるとしか思えないよ。
──いやいや。
さすがに、お風呂に入っている時にそれはないだろう。

「とりあえず。お風呂に入るなら、香奈姉ちゃんから先にどうぞ」
「いやいや……。この場合は、楓が先でしょ。少し後から、私が入るっていうね」
「やっぱり、乱入するつもりなんだね。香奈姉ちゃん」
「当たり前じゃない。一体、何のためにお風呂を沸かしに行ったと思っているのよ」

香奈姉ちゃんは、ずいっと僕に迫ってきてそう言った。
しばらく席を外していたかと思ったら、やっぱりお風呂を沸かしに行ってたのか。
それにしたって──。
またしても、おっぱいが丸見えなんだけど。
しかも今度は、ブラジャーを身につけていない状態なため、おっぱいの先端まで見えてしまっている。

「香奈姉ちゃん⁉︎ 胸が──! 丸見えに⁉︎」
「面倒だったから、ブラジャーとかの下着類は外しちゃったよ」

香奈姉ちゃんは、わざと体をくねらせてそう言った。
よく見れば、着ている服もどちらかというと薄着の方で、おっぱいの先端がうっすらとわかるくらいだ。
僕は、思わずミニスカートの方に視線が向く。
下着類は外したと言っていたので、今は間違いなくノーパンだろう。
香奈姉ちゃんは、僕の視線の先を見て何かを理解したのか、悪戯っぽい笑みを浮かべて言ってくる。

「スカートの中…見たい?」
「見たくない……」

僕は、小声で囁くように答えた。
たぶん、香奈姉ちゃんには聞こえたはずだ。
しかし香奈姉ちゃんは、ただでさえ短いスカートの裾を少し持ち上げて言う。

「え? 今、なんて言ったの? よく聞こえなかったんだけど」

こうなると、僕に対する挑発行為だ。
香奈姉ちゃん自身が、僕に見せたいとしか思えない。
何度もこんなことされたら、僕の純情が汚されてしまう。
いつか本当に僕が香奈姉ちゃんを襲ってしまいそうだ。

「エッチの最中に何度も見てるから、今は見たくないよ。…そんなことより、お風呂は沸いてるの?」
「え、うん。お風呂なら、もう沸いてるけど……」
「それなら、香奈姉ちゃんが先に入ってきなよ」
「でも……。そういうのは、まず楓から……」
「香奈姉ちゃん。下着、脱いじゃってるでしょ?」
「うん。お風呂に入るならちょうどいいかと思って…ね」
「そういうことなら、香奈姉ちゃんが先だよ」

僕は、そう言って香奈姉ちゃんの背を押してあげる。
こうでもしないと、なかなかお風呂に入ってくれないだろう。
香奈姉ちゃんは咄嗟に振り返り、僕の手を取って言ってきた。

「…ダメ。お風呂は、一緒に入るの。これは、決定事項だよ。楓に拒否権はないんだから」
「え……」

僕は、あまりのことに呆然となる。
こういう時の香奈姉ちゃんの行動はかなりはやい。
すぐに浴室前の脱衣所に入るなり、服を脱ぎ始める。
しかも僕の目の前でだ。
恋人同士とはいえ、恥ずかしげもなく裸になるっていうのは、どうなんだろう。
そうは言っても、香奈姉ちゃんのことだから絶対に聞かないんだろうな。

「そういうことなんだから、一緒に入ろう」

香奈姉ちゃんは、そう言って手を差し出してくる。
手で胸を隠してないから言うまでもなく丸見えだ。
頼むからおっぱいの先端くらい隠してほしいんだけどな。
それを見ていると、また指で弄りたくなっちゃうよ。
──とにかく。
そこまで言われたら、僕も一緒に入らないといけないか。
僕に拒否権はないみたいだし。
僕は、迷いながらも服を脱ぎ始めた。
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