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第十二話

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夕飯作りは、もちろん香奈姉ちゃんがやってくれた。
僕も手伝おうと思っていたんだけど、香奈姉ちゃんが「私がやるから」と言って聞かなかったので、やむなく僕は居間のソファーに腰掛けて、テレビを見ている。
やっぱり落ち着かないな。
ここは一つ、何か手伝った方がいいか。
僕はソファーから立ち上がり、エプロンを着用してそのままキッチンに向かっていった。

「やっぱり、僕も手伝うよ」
「いいからご主人様は、座っていてください。ご主人様の作る料理には及ばないけど、それでもきっと満足していただける品を作ってみせますから」

香奈姉ちゃんは、慌てた様子でキッチンの前まで来て、僕が入るのを阻んでくる。
そんなに見られたくないのか。
なんていうか、どんな料理を作ってるんだろう。
まぁ、不味いものを作ってるわけじゃないから、別にいいんだけど。
香奈姉ちゃんの料理の腕は、僕と同等かそれ以上なはずだから、そこは信用してもいい。間違っても僕以下ってことはない。

「わかった。それじゃ、料理は任せたよ」
「はい! 任されました」

香奈姉ちゃんは、嬉しそうにキッチンに戻っていった。
ここで信用しないと、香奈姉ちゃんが怒りだしそうなので、料理は任せるとしよう。
さて、すっかり手が空いてしまった僕は何をすればいいかな。
この時間は普段、キッチンに立って料理してるから、いざ手が空くと何をしていいのかよくわからない。
僕は、居間のソファーに戻る。
──仕方ないか。
料理が出来上がるまでの間、僕はテレビでも観てゆっくりしよう。

香奈姉ちゃんが作ってくれた夕飯は、とても美味しかった。
あれだけ完璧だと、いつ嫁にいってもいいくらいだ。
まぁ、香奈姉ちゃんの結婚相手がどんな人かなんて、その時になってみないとわからないんだけど。

「ねぇ、ご主人様。これからお風呂ですよね?」

皿洗いを終えてキッチンから出てきた香奈姉ちゃんは、僕にそう訊いてきた。
たしかに、これからお風呂に入る予定なので、僕は素直に答える。

「うん。そのつもりだけど。どうかしたの?」
「もし良かったら、私も一緒に入ってもよろしいですか?」
「それは、別に構わないけど……」
「ありがとうございます。それでは、さっそく準備致しますね」

そう言うと香奈姉ちゃんは、真っ直ぐに浴室へと向かっていく。
香奈姉ちゃんがお風呂に入っていくのなら、順番的には、香奈姉ちゃんが先だろうな。
なんだか自分のやろうとする事を香奈姉ちゃんに奪われるのは、どうにも変な気分だ。
これが専属メイドの行動力なのか。
そんな納得している場合じゃない。
自分の着替えと下着類くらいは出さないといけないか。
僕は、香奈姉ちゃんに悟られる前に行動を取った。

どうしてこうなったんだろう。
香奈姉ちゃんを先にお風呂に入れたはずだ。
なのにこんな……。

「さぁ、ご主人様。身体を洗って差し上げますから、ここに座ってください」

香奈姉ちゃんは、ボディスポンジを手に持って僕にそう言った。
お風呂に入っているのだから、お互い全裸だ。
かろうじて、香奈姉ちゃんが身体にバスタオルを巻いている状態だったからセーフかな。
どうしてこうなったかと言うと、香奈姉ちゃんがお風呂に入ったタイミングで呼ばれてしまったのがすべての始まりだった。
僕はてっきり、もうお風呂から上がるのかなって思って、安心して入っていったら、香奈姉ちゃんに出入り口を塞がれてしまい、今に至っているのである。

「いや、そのくらいは自分でできるから──」
「何を言ってるんですか。私はあなたの専属メイドです。だから、これは私の仕事なんです」
「だからって、裸でやることないじゃないか」
「もう私たちは、エッチなことをした仲なんだから平気ですよね?」
「そりゃ、平気だけどさ。でも……」
「ご主人様のあそこはもう、私だけのものなんですから、見ても平気なんです」
「だけど……。せめて胸くらいは隠そうよ」

僕は、隠そうともしていない香奈姉ちゃんの胸を見てそう言った。バスタオル越しでもチラリと見えてしまっているし。
相変わらず、香奈姉ちゃんのおっぱいは大きいな。

「私のおっぱい……。好きなだけ揉みしだいたくせに、そんなこと言うのですか? ご主人様には、もう一度身体でわからせる必要があるみたいですね」

香奈姉ちゃんは、そう言うと問答無用で僕に抱きついてきた。
香奈姉ちゃんの胸の感触が、ダイレクトに身体に伝わってくる。
柔らかいなぁ。
ちょっと待ってよ……。まだ身体を洗っていないよ。

「香奈姉ちゃん。そんなことする前に、やる事があるでしょ」
「それは……。ご主人様が、ジッとしていないからです」
「身体を洗うくらいなら、自分でできるって。香奈姉ちゃんがやる必要はないよ」
「いいえ。これは、私がやらなきゃダメなんです。そうしないとご主人様に尽くすことができないじゃないですか」

香奈姉ちゃんは、ボディスポンジをギュッと握り、そう言った。
そういえば、僕にご奉仕したいって言っていたもんね。
メイド服を脱いでいても、心だけはメイドになりきっているのか。

「わかったよ。それじゃあ、お願いしようかな」

僕は、香奈姉ちゃんに背中を向けてその場に座る。

「うん!」

香奈姉ちゃんは、嬉しそうな表情を浮かべてボディスポンジに石鹸をつけた。
僕の専属メイドになりきっている香奈姉ちゃんを満足させるには、こうするしかないのである。
別にエッチなことをするわけじゃないから、このくらいの事はいいよね。
あまり深くは考えないようにしよう。
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