112 / 355
第十二話
1
しおりを挟む
香奈姉ちゃんの苦手なものってなんだろうか。
見た感じでは、欠点なんてなさそうな感じなので、苦手なものを見つけるのはなかなかに難しそうに思えてしまう。
「どうしたの、楓? 私の顔に何かついてる?」
「え?」
どうやら、ジッと香奈姉ちゃんの顔を見ていたみたいだ。
まぁ、僕の部屋で二人きりだから、他に見るものなんて無いんだけど……。
いつもどおり、学校から帰ってきてまっすぐ僕の部屋に来たからお互い制服姿だ。
香奈姉ちゃんは、訝しげな表情を浮かべ、僕の顔を見てくる。
「その顔は、エッチなことを考えていたでしょ?」
「さすがにそれは……。少しの間、ボーッとしていただけだよ」
「ホントかなぁ~。なんか怪しいな」
そんなジト目で睨まれても、何も出てこないと思うんだけどなぁ。
「何もないって。ホントに、ボーッとしていただけだよ」
「ホントに?」
そう言って、香奈姉ちゃんはズイッと迫ってくる。
「うん。ホントに──」
たとえ香奈姉ちゃんに迫られても、答えられることは何もないからいいんだけどさ。
ただ、ちょっと気になったことがあったから、香奈姉ちゃんを見てしまっただけなんだけど。
「そっか……。ボーッとしていただけか。ちょっと残念だな。でも、何かあったら、すぐに言ってね。楓のリクエストには、できるだけ何でも聞いてあげるから」
香奈姉ちゃんは、そう言ってスカートの裾をつまみ上げる。
「それじゃあ、さっそくいいかな?」
「何かな?」
「香奈姉ちゃんのメイド服姿が見てみたいな」
「私のメイド服姿? そんなの見てどうするの?」
「…無理だったら、別にいいんだ。僕も、冗談で言ってみただけだから──」
普通に香奈姉ちゃんのメイド服姿を見たいって言っても、無理な話だよね。
香奈姉ちゃんにも、羞恥心ってものがあるだろうし。
「わかった。ちょっと待っててね」
香奈姉ちゃんは、スッと立ち上がると僕の部屋を後にした。
僕は冗談で言ってみただけなんだけど。
まさか本気でメイド服に着替えてこないよね。
そもそも香奈姉ちゃんの家に、メイド服ってあるのか?
しばらく経ったころ、誰かが僕の部屋のドアをノックしてきた。
わざわざノックをしてくるのは、律儀なことだ。
「空いてるよ。入ってくるならどうぞ」
「それでは、失礼いたしますね」
そう言って、丁寧な仕草でドアを開けて入ってきたのは、メイド服姿の香奈姉ちゃんだった。
「え……。香奈姉ちゃん」
「お待たせしました、ご主人様」
「いや、お待たせって……。僕は冗談で──。それにご主人様って……」
僕は、香奈姉ちゃんの態度についあたふたしてしまう。
香奈姉ちゃんは、心配そうな表情を浮かべ僕の顔を覗き込んできた。
「どうかなさいましたか? ご主人様」
「いや……。どうって言われても……。香奈姉ちゃんが、その……」
「私のこと…ですか? 私は、いつもどおりですよ」
香奈姉ちゃんは、上品な笑顔を浮かべる。
いや。完璧にメイドの役になりきってるでしょ。
「いつもなら、僕のことを『ご主人様』なんて呼ばないよ」
「あら。そうでしたか? 私のご主人様はあなたしかいないので、よくわかりません」
「そんな……」
なにも、そこまでやれとは言ってないんだけど。
「さぁ、何からしてあげましょうか。肩揉みですか? それとも、ご主人様へのご奉仕がいいですか?」
「ご奉仕って?」
「まぁ! そちらのほうからご希望なのですか? ご主人様って、意外と積極的だったりするんですね」
香奈姉ちゃんはそう言うと、頬を赤く染めて僕の側に寄り添ってくる。
香奈姉ちゃんの胸が、僕の肩に当たっているし。
これは、やっていいことなのかな。
「あの……。香奈姉ちゃん。さすがにこれは……」
「私の精一杯のご奉仕ですよ。何か問題でもありましたか?」
「問題もなにも……。そろそろやめにしようよ。僕の冗談からなったことなんだし」
「やめないよ」
「え?」
「やめるつもりはありません。しばらくの間は、この格好でご奉仕させていただきます」
「そんな……。一日だけじゃないの⁉︎」
「当たり前です。せっかく着替えたのですから、しばらくはこの格好で居させてもらいます」
しばらくの間って、どれくらいだろう。
一週間くらいかな?
もしかして、僕とデートに行く時もその格好なのか。
だとしたら、かなり恥ずかしいかも。
「嬉しくないのですか?」
香奈姉ちゃんは、哀しげな顔をして訊いてくる。
僕は、香奈姉ちゃんのご機嫌を損ねないように注意を払いながら答えた。
「う…嬉しいよ。香奈姉ちゃんが僕のために、やってくれた事だからね。嬉しくないって言われたら、嘘になるよ」
「そうですか。それを聞いて、安心しました。しばらくの間は、ご主人様にご奉仕しますね」
「いや……。僕は、香奈姉ちゃんのご主人様じゃ……」
「ご主人様じゃないんですか?」
香奈姉ちゃんは、今にも泣きそうな顔で僕を見てくる。
そんな顔で見られても……。
返答に困るんですけど。
ここで泣かれても嫌なので、僕は、こう答えた。
「いえ……。ご主人様です……」
「うん。そうですよね」
香奈姉ちゃんは、嬉しそうな表情を浮かべて抱きついてくる。
ここで何を言っても、香奈姉ちゃんは聞きそうにないので、僕は黙って香奈姉ちゃんを優しく抱きしめることにした。
見た感じでは、欠点なんてなさそうな感じなので、苦手なものを見つけるのはなかなかに難しそうに思えてしまう。
「どうしたの、楓? 私の顔に何かついてる?」
「え?」
どうやら、ジッと香奈姉ちゃんの顔を見ていたみたいだ。
まぁ、僕の部屋で二人きりだから、他に見るものなんて無いんだけど……。
いつもどおり、学校から帰ってきてまっすぐ僕の部屋に来たからお互い制服姿だ。
香奈姉ちゃんは、訝しげな表情を浮かべ、僕の顔を見てくる。
「その顔は、エッチなことを考えていたでしょ?」
「さすがにそれは……。少しの間、ボーッとしていただけだよ」
「ホントかなぁ~。なんか怪しいな」
そんなジト目で睨まれても、何も出てこないと思うんだけどなぁ。
「何もないって。ホントに、ボーッとしていただけだよ」
「ホントに?」
そう言って、香奈姉ちゃんはズイッと迫ってくる。
「うん。ホントに──」
たとえ香奈姉ちゃんに迫られても、答えられることは何もないからいいんだけどさ。
ただ、ちょっと気になったことがあったから、香奈姉ちゃんを見てしまっただけなんだけど。
「そっか……。ボーッとしていただけか。ちょっと残念だな。でも、何かあったら、すぐに言ってね。楓のリクエストには、できるだけ何でも聞いてあげるから」
香奈姉ちゃんは、そう言ってスカートの裾をつまみ上げる。
「それじゃあ、さっそくいいかな?」
「何かな?」
「香奈姉ちゃんのメイド服姿が見てみたいな」
「私のメイド服姿? そんなの見てどうするの?」
「…無理だったら、別にいいんだ。僕も、冗談で言ってみただけだから──」
普通に香奈姉ちゃんのメイド服姿を見たいって言っても、無理な話だよね。
香奈姉ちゃんにも、羞恥心ってものがあるだろうし。
「わかった。ちょっと待っててね」
香奈姉ちゃんは、スッと立ち上がると僕の部屋を後にした。
僕は冗談で言ってみただけなんだけど。
まさか本気でメイド服に着替えてこないよね。
そもそも香奈姉ちゃんの家に、メイド服ってあるのか?
しばらく経ったころ、誰かが僕の部屋のドアをノックしてきた。
わざわざノックをしてくるのは、律儀なことだ。
「空いてるよ。入ってくるならどうぞ」
「それでは、失礼いたしますね」
そう言って、丁寧な仕草でドアを開けて入ってきたのは、メイド服姿の香奈姉ちゃんだった。
「え……。香奈姉ちゃん」
「お待たせしました、ご主人様」
「いや、お待たせって……。僕は冗談で──。それにご主人様って……」
僕は、香奈姉ちゃんの態度についあたふたしてしまう。
香奈姉ちゃんは、心配そうな表情を浮かべ僕の顔を覗き込んできた。
「どうかなさいましたか? ご主人様」
「いや……。どうって言われても……。香奈姉ちゃんが、その……」
「私のこと…ですか? 私は、いつもどおりですよ」
香奈姉ちゃんは、上品な笑顔を浮かべる。
いや。完璧にメイドの役になりきってるでしょ。
「いつもなら、僕のことを『ご主人様』なんて呼ばないよ」
「あら。そうでしたか? 私のご主人様はあなたしかいないので、よくわかりません」
「そんな……」
なにも、そこまでやれとは言ってないんだけど。
「さぁ、何からしてあげましょうか。肩揉みですか? それとも、ご主人様へのご奉仕がいいですか?」
「ご奉仕って?」
「まぁ! そちらのほうからご希望なのですか? ご主人様って、意外と積極的だったりするんですね」
香奈姉ちゃんはそう言うと、頬を赤く染めて僕の側に寄り添ってくる。
香奈姉ちゃんの胸が、僕の肩に当たっているし。
これは、やっていいことなのかな。
「あの……。香奈姉ちゃん。さすがにこれは……」
「私の精一杯のご奉仕ですよ。何か問題でもありましたか?」
「問題もなにも……。そろそろやめにしようよ。僕の冗談からなったことなんだし」
「やめないよ」
「え?」
「やめるつもりはありません。しばらくの間は、この格好でご奉仕させていただきます」
「そんな……。一日だけじゃないの⁉︎」
「当たり前です。せっかく着替えたのですから、しばらくはこの格好で居させてもらいます」
しばらくの間って、どれくらいだろう。
一週間くらいかな?
もしかして、僕とデートに行く時もその格好なのか。
だとしたら、かなり恥ずかしいかも。
「嬉しくないのですか?」
香奈姉ちゃんは、哀しげな顔をして訊いてくる。
僕は、香奈姉ちゃんのご機嫌を損ねないように注意を払いながら答えた。
「う…嬉しいよ。香奈姉ちゃんが僕のために、やってくれた事だからね。嬉しくないって言われたら、嘘になるよ」
「そうですか。それを聞いて、安心しました。しばらくの間は、ご主人様にご奉仕しますね」
「いや……。僕は、香奈姉ちゃんのご主人様じゃ……」
「ご主人様じゃないんですか?」
香奈姉ちゃんは、今にも泣きそうな顔で僕を見てくる。
そんな顔で見られても……。
返答に困るんですけど。
ここで泣かれても嫌なので、僕は、こう答えた。
「いえ……。ご主人様です……」
「うん。そうですよね」
香奈姉ちゃんは、嬉しそうな表情を浮かべて抱きついてくる。
ここで何を言っても、香奈姉ちゃんは聞きそうにないので、僕は黙って香奈姉ちゃんを優しく抱きしめることにした。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
イケメン幼馴染に処女喪失お願いしたら実は私にベタ惚れでした
sae
恋愛
彼氏もいたことがない奥手で自信のない未だ処女の環奈(かんな)と、隣に住むヤリチンモテ男子の南朋(なお)の大学生幼馴染が長い間すれ違ってようやくイチャイチャ仲良しこよしになれた話。
※会話文、脳内会話多め
※R-18描写、直接的表現有りなので苦手な方はスルーしてください
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる