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第九話
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まさか、あの香奈姉ちゃんが学校をズル休みするなんて思わなかった。
品行方正で真面目な香奈姉ちゃんが、僕のために学校を休むなんて誰が考えるだろう。
しかも香奈姉ちゃんは今、ホントに下着姿で僕の部屋にいる。ちなみに下着の色は薄いピンクだ。
「ねぇ、楓」
「何? 香奈姉ちゃん」
「今日は、私と二人っきりだね」
「そ、そうだね」
ベッドに横になっていた僕は、おそるおそるそう言った。
母は仕事に行って家にはいないし、兄も学校に行った。
だから、今この家にいるのは、僕と香奈姉ちゃんだけだ。
いくら二人っきりだからって、下着姿でいるのはどうかと思う。
香奈姉ちゃんは、子供を見るような優しい目で僕を見て言った。
「安心して、楓。今日は一生懸命、看病するからね」
「いや、その……」
僕は、お礼を言おうとして口を開くが、ハッキリと言うことができず、そのまま口を閉ざしてしまう。
香奈姉ちゃんの行為は純粋に嬉しいし、ありがたいよ。
だけど、学校をズル休みしてまですることなのか。
「何よ。嬉しくないの?」
「嬉しいとか、そういうことじゃなくて……」
「だったら、何なのよ?」
「学校、休んでよかったの?」
「一日くらいなら、別に休んでも問題ないかな。なにより、楓のことが心配だからね。私は、楓のためなら、何でもするつもりだよ」
「何でも…か」
「さすがにエッチなことがしたいとかは、ちょっと厳しいかもだけど……」
香奈姉ちゃんは、顔を赤くしてそう言う。
ちなみに、僕はそこまでは言ってない。
エッチなことって、何をするつもりなんだ?
香奈姉ちゃんは、どこまで想像したんだろう。
「それは絶対にないから安心していいよ。とりあえず、僕は寝るから、香奈姉ちゃんはゆっくりしてていいからね」
「ゆっくりするなら、私は楓の側がいいの」
そう言うと香奈姉ちゃんは、半ば強引にベッドの中に入ってくる。
「ちょっ……⁉︎ 香奈姉ちゃん」
僕は、思わず声をあげたが、時すでに遅し。
香奈姉ちゃんは、しばらく布団をもぞもぞさせ、次の瞬間には僕に抱きついてきた。
「何も心配しなくていいからね。楓のことは、私が責任を持ってみてあげるから──」
「みるって……。逆にぶり返したら大変なんじゃ……」
そのことは、昨日も話したはずなんだけどな。
「楓の風邪なら、ぶり返したって全然平気だよ。だって楓が看病してくれるんでしょ?」
「そういう問題じゃなくて……」
どうやら香奈姉ちゃんは、僕のベッドから出るつもりはないようだ。
それにしたって、下着姿なのは色々とまずいんじゃ。
香奈姉ちゃんは、思い出したかのように言う。
「あ、そうそう。楓のお母さんから伝言なんだけど」
母からの伝言はめずらしいな。
仕事に行くから、香奈姉ちゃんに頼んだんだろうけど。
きっと、『静かに寝てなさい』とか、そういったものだろう。
「母さんから? 何かな?」
僕がそう聞くと、香奈姉ちゃんの顔がだんだんと赤くなっていく。
香奈姉ちゃんは、恥ずかしそうな顔で言った。
「『香奈ちゃんと二人きりだからって、変なことをしちゃダメだよ』だって──」
「変なこと? それって……?」
何のことかわからず、僕は思案げな顔になる。
しかし香奈姉ちゃんには、わかっているんだろう。母が言う『変なこと』という意味が。
わかっていなければ、そんな顔はしないし。
「楓は、余計なことを考えなくていいの。そんなことよりも、はやく風邪を治さないと」
「それは、そうだけど……」
はやく風邪を治さないといけないのはわかるけど、それでも気になってしまうのは何故だろう。
母の伝言だから、余計に気になるのかな。
香奈姉ちゃんは、僕を優しく抱きしめてきて言った。
「楓のお母さんが言う『変なこと』っていうのはね。風邪を引いている状態だとやりにくいことだから、そこまで気にしなくてもいいんだよ。…それに今、私が楓にしてることが変な──」
後の方は、ブツブツと小声で囁くように言っていたので、よく聞こえなかった。
「香奈姉ちゃん? …どうしたの?」
「ううん、何でもないよ。こっちのことだから。…はやく寝ようよ」
香奈姉ちゃんは、そう言って僕の頭を優しく撫でてくる。
「う、うん……」
僕は素直に頷くと、ゆっくりと目を閉じた。
次に起き上がったのは、香奈姉ちゃんが先だった。
時間は、正午。
「もうお昼かぁ~。お昼ご飯作らないと……」
香奈姉ちゃんは、そう言って下着姿のまま僕の部屋を後にする。
まぁ、この家には、僕と香奈姉ちゃん以外、誰もいないし、問題ないだろうと思うから、香奈姉ちゃんの格好については何も言うまい。
だけど、お昼ご飯の準備くらいは、自分でやらないとダメだろう。
そう思った僕は、すぐにベッドから起き上がり、自分の部屋を後にし、そのまま一階にある台所へと向かう。
「ふんふ~ん」
そこには、鼻歌を歌いながらお昼ご飯を作っている香奈姉ちゃんがいた。
しかも、僕の想像どおりの、下着姿にエプロンという格好でだ。
下着を身につけてさえいなければ、まさに裸エプロンになるんだろうな。
何にせよ、少し惜しい気がするのは僕だけだろうか。
「僕も手伝うよ」
「あ、楓。起きてきたの?」
「うん。さすがにお昼だし。何か食べないとって思って」
「今、卵焼きを作ってるから、ちょっと待っててね」
香奈姉ちゃんは、笑顔でそう言うとフライパンをうまく使って卵焼きを仕上げていく。
僕がやろうと思ったことを、香奈姉ちゃんにやられてしまったか。
仕方ない。
卵焼きを作るのは、香奈姉ちゃんに任せよう。
僕は、茶箪笥から大きめのお皿とご飯を盛るための茶碗を取り出した。
「これを使うといいよ」
「ありがとう」
香奈姉ちゃんは、礼を言うとさっそく作った卵焼きをお皿に盛り付ける。
卵焼きもいいけど、それだけじゃ物足りないだろう。
せっかくだから、お吸い物を作ろうかな。
僕は、中くらいの鍋を取り出して、お吸い物を作り出す。
それを見ていた香奈姉ちゃんは、思案げな表情で聞いてきた。
「何を作るつもりなの?」
「うん。…ちょっとね」
僕は、そう言いながらお吸い物を作っている鍋にワカメを入れる。
僕が作っているのは、誰にでも簡単にできるワカメスープだ。
香奈姉ちゃんも、それに気づいたのか声をあげる。
「ひょっとして、楓特製のワカメスープ?」
「いや、普通のワカメスープだよ」
僕は、冷静にそう答えた。
本当なら出汁をとるための工程やら何やら、色々とやる必要があるのだが、簡単に作るために一手間でできる市販の調味料を使わせてもらった。
なにより、僕の体調がよくないため、余計に手間のかかるものは作りたくないのが、率直な感想だ。
「まぁ、ワカメスープなら簡単だよね」
「風邪さえ引いてなければ、もっと凝ったものを作れると思うんだけど……」
僕は、微苦笑する。
まぁ、元気だったら、料理うんぬんよりも普通に学校に行ってるんだろうけど。
「充分だよ。もう……。無理しなくてもいいのに……」
香奈姉ちゃんは、心配そうに僕を見てそう言った。
僕を心配してくれるのは、正直言って嬉しいことだ。
「はやく食べよう。香奈姉ちゃん」
「うん」
僕の言葉に、香奈姉ちゃんは素直に頷く。
香奈姉ちゃんが作ってくれた卵焼きは、とっても美味かった。
僕が作ったワカメスープとは、歴然の差だ。
隠し味に何を使ったんだろうか。
それが一番気になるところだった。
品行方正で真面目な香奈姉ちゃんが、僕のために学校を休むなんて誰が考えるだろう。
しかも香奈姉ちゃんは今、ホントに下着姿で僕の部屋にいる。ちなみに下着の色は薄いピンクだ。
「ねぇ、楓」
「何? 香奈姉ちゃん」
「今日は、私と二人っきりだね」
「そ、そうだね」
ベッドに横になっていた僕は、おそるおそるそう言った。
母は仕事に行って家にはいないし、兄も学校に行った。
だから、今この家にいるのは、僕と香奈姉ちゃんだけだ。
いくら二人っきりだからって、下着姿でいるのはどうかと思う。
香奈姉ちゃんは、子供を見るような優しい目で僕を見て言った。
「安心して、楓。今日は一生懸命、看病するからね」
「いや、その……」
僕は、お礼を言おうとして口を開くが、ハッキリと言うことができず、そのまま口を閉ざしてしまう。
香奈姉ちゃんの行為は純粋に嬉しいし、ありがたいよ。
だけど、学校をズル休みしてまですることなのか。
「何よ。嬉しくないの?」
「嬉しいとか、そういうことじゃなくて……」
「だったら、何なのよ?」
「学校、休んでよかったの?」
「一日くらいなら、別に休んでも問題ないかな。なにより、楓のことが心配だからね。私は、楓のためなら、何でもするつもりだよ」
「何でも…か」
「さすがにエッチなことがしたいとかは、ちょっと厳しいかもだけど……」
香奈姉ちゃんは、顔を赤くしてそう言う。
ちなみに、僕はそこまでは言ってない。
エッチなことって、何をするつもりなんだ?
香奈姉ちゃんは、どこまで想像したんだろう。
「それは絶対にないから安心していいよ。とりあえず、僕は寝るから、香奈姉ちゃんはゆっくりしてていいからね」
「ゆっくりするなら、私は楓の側がいいの」
そう言うと香奈姉ちゃんは、半ば強引にベッドの中に入ってくる。
「ちょっ……⁉︎ 香奈姉ちゃん」
僕は、思わず声をあげたが、時すでに遅し。
香奈姉ちゃんは、しばらく布団をもぞもぞさせ、次の瞬間には僕に抱きついてきた。
「何も心配しなくていいからね。楓のことは、私が責任を持ってみてあげるから──」
「みるって……。逆にぶり返したら大変なんじゃ……」
そのことは、昨日も話したはずなんだけどな。
「楓の風邪なら、ぶり返したって全然平気だよ。だって楓が看病してくれるんでしょ?」
「そういう問題じゃなくて……」
どうやら香奈姉ちゃんは、僕のベッドから出るつもりはないようだ。
それにしたって、下着姿なのは色々とまずいんじゃ。
香奈姉ちゃんは、思い出したかのように言う。
「あ、そうそう。楓のお母さんから伝言なんだけど」
母からの伝言はめずらしいな。
仕事に行くから、香奈姉ちゃんに頼んだんだろうけど。
きっと、『静かに寝てなさい』とか、そういったものだろう。
「母さんから? 何かな?」
僕がそう聞くと、香奈姉ちゃんの顔がだんだんと赤くなっていく。
香奈姉ちゃんは、恥ずかしそうな顔で言った。
「『香奈ちゃんと二人きりだからって、変なことをしちゃダメだよ』だって──」
「変なこと? それって……?」
何のことかわからず、僕は思案げな顔になる。
しかし香奈姉ちゃんには、わかっているんだろう。母が言う『変なこと』という意味が。
わかっていなければ、そんな顔はしないし。
「楓は、余計なことを考えなくていいの。そんなことよりも、はやく風邪を治さないと」
「それは、そうだけど……」
はやく風邪を治さないといけないのはわかるけど、それでも気になってしまうのは何故だろう。
母の伝言だから、余計に気になるのかな。
香奈姉ちゃんは、僕を優しく抱きしめてきて言った。
「楓のお母さんが言う『変なこと』っていうのはね。風邪を引いている状態だとやりにくいことだから、そこまで気にしなくてもいいんだよ。…それに今、私が楓にしてることが変な──」
後の方は、ブツブツと小声で囁くように言っていたので、よく聞こえなかった。
「香奈姉ちゃん? …どうしたの?」
「ううん、何でもないよ。こっちのことだから。…はやく寝ようよ」
香奈姉ちゃんは、そう言って僕の頭を優しく撫でてくる。
「う、うん……」
僕は素直に頷くと、ゆっくりと目を閉じた。
次に起き上がったのは、香奈姉ちゃんが先だった。
時間は、正午。
「もうお昼かぁ~。お昼ご飯作らないと……」
香奈姉ちゃんは、そう言って下着姿のまま僕の部屋を後にする。
まぁ、この家には、僕と香奈姉ちゃん以外、誰もいないし、問題ないだろうと思うから、香奈姉ちゃんの格好については何も言うまい。
だけど、お昼ご飯の準備くらいは、自分でやらないとダメだろう。
そう思った僕は、すぐにベッドから起き上がり、自分の部屋を後にし、そのまま一階にある台所へと向かう。
「ふんふ~ん」
そこには、鼻歌を歌いながらお昼ご飯を作っている香奈姉ちゃんがいた。
しかも、僕の想像どおりの、下着姿にエプロンという格好でだ。
下着を身につけてさえいなければ、まさに裸エプロンになるんだろうな。
何にせよ、少し惜しい気がするのは僕だけだろうか。
「僕も手伝うよ」
「あ、楓。起きてきたの?」
「うん。さすがにお昼だし。何か食べないとって思って」
「今、卵焼きを作ってるから、ちょっと待っててね」
香奈姉ちゃんは、笑顔でそう言うとフライパンをうまく使って卵焼きを仕上げていく。
僕がやろうと思ったことを、香奈姉ちゃんにやられてしまったか。
仕方ない。
卵焼きを作るのは、香奈姉ちゃんに任せよう。
僕は、茶箪笥から大きめのお皿とご飯を盛るための茶碗を取り出した。
「これを使うといいよ」
「ありがとう」
香奈姉ちゃんは、礼を言うとさっそく作った卵焼きをお皿に盛り付ける。
卵焼きもいいけど、それだけじゃ物足りないだろう。
せっかくだから、お吸い物を作ろうかな。
僕は、中くらいの鍋を取り出して、お吸い物を作り出す。
それを見ていた香奈姉ちゃんは、思案げな表情で聞いてきた。
「何を作るつもりなの?」
「うん。…ちょっとね」
僕は、そう言いながらお吸い物を作っている鍋にワカメを入れる。
僕が作っているのは、誰にでも簡単にできるワカメスープだ。
香奈姉ちゃんも、それに気づいたのか声をあげる。
「ひょっとして、楓特製のワカメスープ?」
「いや、普通のワカメスープだよ」
僕は、冷静にそう答えた。
本当なら出汁をとるための工程やら何やら、色々とやる必要があるのだが、簡単に作るために一手間でできる市販の調味料を使わせてもらった。
なにより、僕の体調がよくないため、余計に手間のかかるものは作りたくないのが、率直な感想だ。
「まぁ、ワカメスープなら簡単だよね」
「風邪さえ引いてなければ、もっと凝ったものを作れると思うんだけど……」
僕は、微苦笑する。
まぁ、元気だったら、料理うんぬんよりも普通に学校に行ってるんだろうけど。
「充分だよ。もう……。無理しなくてもいいのに……」
香奈姉ちゃんは、心配そうに僕を見てそう言った。
僕を心配してくれるのは、正直言って嬉しいことだ。
「はやく食べよう。香奈姉ちゃん」
「うん」
僕の言葉に、香奈姉ちゃんは素直に頷く。
香奈姉ちゃんが作ってくれた卵焼きは、とっても美味かった。
僕が作ったワカメスープとは、歴然の差だ。
隠し味に何を使ったんだろうか。
それが一番気になるところだった。
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