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第九話
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──翌日。
僕の嫌な予感は、見事に的中した。
「母さんに頼まれたから仕方ないことだとはいえ……。何で、僕がこんな目に……」
僕は、手に持った体温計を見て、重いため息を吐く。
見事に高熱だった。
完全に香奈姉ちゃんの風邪が感染ったみたいだ。
「無理しないで、今日は学校を休みなさい。私が、学校に連絡しておくから」
「うん……。そうさせてもらう」
母にそう言われ、僕はそう言って自分の部屋へと戻っていく。
少しだけ意識が朦朧とするし、今日一日くらいは休んだ方がいいかもしれないな。
う~ん……。
この調子じゃ、もしかしたら明日もダメかもしれない。
いや。病は気からって言うし、それはないか。
とりあえず、風邪薬でも飲んで寝るとしよう。
静かに寝ていると、僕の部屋に香奈姉ちゃんが入ってきた。
「風邪を引いてしまったって楓のお母さんから聞いたんだけど、大丈夫なの? 楓」
香奈姉ちゃんは、心配そうな表情を浮かべている。
時間を確認すると、もう午後の三時半だった。
学校から帰ってきたばかりだからなのか、香奈姉ちゃんは制服姿だ。
「香奈姉ちゃん。うん、なんとか平気だよ」
僕は、香奈姉ちゃんに心配させまいと、努めて笑顔でそう答えた。
香奈姉ちゃんには、僕が平気じゃないってわかっているのか、少しだけ怒ったような表情を浮かべて言う。
「全然、大丈夫じゃないじゃない。…ちょっと待ってなさい。私が何か作ってあげるから」
「…ありがとう」
僕は、素直に礼を言った。
ここで断るのは簡単だが、香奈姉ちゃんのことだ。断ったとしても、僕の看病をするんだろうな。
香奈姉ちゃんは、スッと立ち上がると、そのまま僕の部屋を後にする。
時間は、午後の四時。
ちなみに、お昼は何も食べてないから空腹である。
母は、仕事に行ってしまって家にいないし。兄は、その辺りは期待できないしで、お昼ごはんに関してはまさに絶望的だった。
しばらくして、香奈姉ちゃんが料理を持って戻ってきた。
制服にエプロンという格好で、である。
「できたよ。楓の口に合えばいいんだけど……」
香奈姉ちゃんの格好は、見る人が見たらグッとくるものがあるみたいだけど、風邪を引いている僕には、あまり関係のないことだ。
香奈姉ちゃんが作ってきたのも、お粥だった。
蓋を開けて中を見たところ、僕が作った味噌仕立てのお粥よりも簡素に見えるけど。
まぁ、こういうのは内容よりも、作ってきてくれたことに対する感謝の気持ちの方が大事なんだよね。
「ありがとう。香奈姉ちゃん」
僕は、素直にお礼を言ってレンゲを取ろうと手を伸ばす。
しかし、先に香奈姉ちゃんがレンゲを手に取った。
え……。香奈姉ちゃん?
一体、何を?
「あの……。香奈姉ちゃん?」
そんなことを考えていると、香奈姉ちゃんは笑顔でこんなことを言ってくる。
「せっかくだから、私が食べさせてあげるよ」
「え……。いや、このくらいは自分で──」
「ダメ! 楓は、おとなしくして!」
ここで嫌がったら、香奈姉ちゃんの手作りのお粥を食べさせてもらえないか。
仕方ない。
ここは素直に従おう。
「わかったよ」
「素直でよろしい」
香奈姉ちゃんは、そう言うと器に入ったお粥をレンゲで掬う。
そして、それに息を吹きかけて冷ます。
「ふー、ふー。…さぁ、楓。あーんして」
恥ずかしがっちゃいけない。
ここには香奈姉ちゃんと僕しかいないんだから、誰も見ていないはず。
「うん」
僕は、口を『あーん』と開ける。
香奈姉ちゃんは、お粥を掬い取ったレンゲをそっと僕の口の中に入れた。
途端、塩以外の隠し味が口の中に広がる。
「どう? 美味しいかな?」
香奈姉ちゃんは、不安そうな表情で僕を見て、そう聞いてきた。
そんな不安そうな顔をしなくても……。
香奈姉ちゃんが作ったものは、どれも美味しいよ。
「うん。とっても美味しいよ」
僕は、笑顔で答える。
「よかった。楓に美味しいって言ってくれて」
香奈姉ちゃんは、嬉しそうにそう言った。
ちなみに、料理を始めたのは僕が先だ。
だから、料理の先輩は僕なのだ。
香奈姉ちゃんは、最後まで食べさせる気マンマンなのか、再びレンゲでお粥を掬いとる。
「まだまだあるからね。しっかりと栄養を摂って、はやく元気になってもらわないと──」
まぁ、一口だけだし。
まだあるよね。
僕は覚悟を決めて、香奈姉ちゃんがすることに付き合うことにする。
お粥を全部食べ切ると、香奈姉ちゃんは嬉しそうな顔で言う。
「今ので最後だよ」
「うん。ごちそうさまでした」
僕は、そう言って一息ついた。
香奈姉ちゃんは、僕を見て安心したのか笑顔になる。
「お粗末さまでした。それじゃ、次は私が一緒に寝てあげるね」
そう言うと香奈姉ちゃんは、制服のネクタイを緩めブラウスのボタンを外していく。
僕は、慌ててそれを止めに入る。
「いや、それはさすがに……。遠慮しておくよ」
「どうしてよ。もしかしたら、私のフェロモンで治るかもしれないじゃない」
「香奈姉ちゃんのフェロモンって……。特効薬じゃあるまいし……」
「だったら、何してほしいのかな? 添い寝とかならできるよ」
香奈姉ちゃんは僕の制止を聞かず、ブラウスのボタンを全て外し終え、そのまま脱ぎ出していた。
「もうしてもらったから、それで充分だよ。裸になる必要なんてないよ」
「せっかく、人肌で温めてあげようかなって思っていたのに」
気持ちは嬉しいけど、今の季節でそんなことされても暑苦しいだけです。
それに風邪がぶり返したら、どうするつもりなんだよ。
まぁ、風邪が再発するってことはあまり聞かないんだけどさ。
「うん。気持ちだけ受け取っておくよ」
僕は、微苦笑してそう言った。
その後も香奈姉ちゃんは、ずっと僕に寄り添っていて離れようとしなかった。
僕の嫌な予感は、見事に的中した。
「母さんに頼まれたから仕方ないことだとはいえ……。何で、僕がこんな目に……」
僕は、手に持った体温計を見て、重いため息を吐く。
見事に高熱だった。
完全に香奈姉ちゃんの風邪が感染ったみたいだ。
「無理しないで、今日は学校を休みなさい。私が、学校に連絡しておくから」
「うん……。そうさせてもらう」
母にそう言われ、僕はそう言って自分の部屋へと戻っていく。
少しだけ意識が朦朧とするし、今日一日くらいは休んだ方がいいかもしれないな。
う~ん……。
この調子じゃ、もしかしたら明日もダメかもしれない。
いや。病は気からって言うし、それはないか。
とりあえず、風邪薬でも飲んで寝るとしよう。
静かに寝ていると、僕の部屋に香奈姉ちゃんが入ってきた。
「風邪を引いてしまったって楓のお母さんから聞いたんだけど、大丈夫なの? 楓」
香奈姉ちゃんは、心配そうな表情を浮かべている。
時間を確認すると、もう午後の三時半だった。
学校から帰ってきたばかりだからなのか、香奈姉ちゃんは制服姿だ。
「香奈姉ちゃん。うん、なんとか平気だよ」
僕は、香奈姉ちゃんに心配させまいと、努めて笑顔でそう答えた。
香奈姉ちゃんには、僕が平気じゃないってわかっているのか、少しだけ怒ったような表情を浮かべて言う。
「全然、大丈夫じゃないじゃない。…ちょっと待ってなさい。私が何か作ってあげるから」
「…ありがとう」
僕は、素直に礼を言った。
ここで断るのは簡単だが、香奈姉ちゃんのことだ。断ったとしても、僕の看病をするんだろうな。
香奈姉ちゃんは、スッと立ち上がると、そのまま僕の部屋を後にする。
時間は、午後の四時。
ちなみに、お昼は何も食べてないから空腹である。
母は、仕事に行ってしまって家にいないし。兄は、その辺りは期待できないしで、お昼ごはんに関してはまさに絶望的だった。
しばらくして、香奈姉ちゃんが料理を持って戻ってきた。
制服にエプロンという格好で、である。
「できたよ。楓の口に合えばいいんだけど……」
香奈姉ちゃんの格好は、見る人が見たらグッとくるものがあるみたいだけど、風邪を引いている僕には、あまり関係のないことだ。
香奈姉ちゃんが作ってきたのも、お粥だった。
蓋を開けて中を見たところ、僕が作った味噌仕立てのお粥よりも簡素に見えるけど。
まぁ、こういうのは内容よりも、作ってきてくれたことに対する感謝の気持ちの方が大事なんだよね。
「ありがとう。香奈姉ちゃん」
僕は、素直にお礼を言ってレンゲを取ろうと手を伸ばす。
しかし、先に香奈姉ちゃんがレンゲを手に取った。
え……。香奈姉ちゃん?
一体、何を?
「あの……。香奈姉ちゃん?」
そんなことを考えていると、香奈姉ちゃんは笑顔でこんなことを言ってくる。
「せっかくだから、私が食べさせてあげるよ」
「え……。いや、このくらいは自分で──」
「ダメ! 楓は、おとなしくして!」
ここで嫌がったら、香奈姉ちゃんの手作りのお粥を食べさせてもらえないか。
仕方ない。
ここは素直に従おう。
「わかったよ」
「素直でよろしい」
香奈姉ちゃんは、そう言うと器に入ったお粥をレンゲで掬う。
そして、それに息を吹きかけて冷ます。
「ふー、ふー。…さぁ、楓。あーんして」
恥ずかしがっちゃいけない。
ここには香奈姉ちゃんと僕しかいないんだから、誰も見ていないはず。
「うん」
僕は、口を『あーん』と開ける。
香奈姉ちゃんは、お粥を掬い取ったレンゲをそっと僕の口の中に入れた。
途端、塩以外の隠し味が口の中に広がる。
「どう? 美味しいかな?」
香奈姉ちゃんは、不安そうな表情で僕を見て、そう聞いてきた。
そんな不安そうな顔をしなくても……。
香奈姉ちゃんが作ったものは、どれも美味しいよ。
「うん。とっても美味しいよ」
僕は、笑顔で答える。
「よかった。楓に美味しいって言ってくれて」
香奈姉ちゃんは、嬉しそうにそう言った。
ちなみに、料理を始めたのは僕が先だ。
だから、料理の先輩は僕なのだ。
香奈姉ちゃんは、最後まで食べさせる気マンマンなのか、再びレンゲでお粥を掬いとる。
「まだまだあるからね。しっかりと栄養を摂って、はやく元気になってもらわないと──」
まぁ、一口だけだし。
まだあるよね。
僕は覚悟を決めて、香奈姉ちゃんがすることに付き合うことにする。
お粥を全部食べ切ると、香奈姉ちゃんは嬉しそうな顔で言う。
「今ので最後だよ」
「うん。ごちそうさまでした」
僕は、そう言って一息ついた。
香奈姉ちゃんは、僕を見て安心したのか笑顔になる。
「お粗末さまでした。それじゃ、次は私が一緒に寝てあげるね」
そう言うと香奈姉ちゃんは、制服のネクタイを緩めブラウスのボタンを外していく。
僕は、慌ててそれを止めに入る。
「いや、それはさすがに……。遠慮しておくよ」
「どうしてよ。もしかしたら、私のフェロモンで治るかもしれないじゃない」
「香奈姉ちゃんのフェロモンって……。特効薬じゃあるまいし……」
「だったら、何してほしいのかな? 添い寝とかならできるよ」
香奈姉ちゃんは僕の制止を聞かず、ブラウスのボタンを全て外し終え、そのまま脱ぎ出していた。
「もうしてもらったから、それで充分だよ。裸になる必要なんてないよ」
「せっかく、人肌で温めてあげようかなって思っていたのに」
気持ちは嬉しいけど、今の季節でそんなことされても暑苦しいだけです。
それに風邪がぶり返したら、どうするつもりなんだよ。
まぁ、風邪が再発するってことはあまり聞かないんだけどさ。
「うん。気持ちだけ受け取っておくよ」
僕は、微苦笑してそう言った。
その後も香奈姉ちゃんは、ずっと僕に寄り添っていて離れようとしなかった。
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