氷花学園サブカルチャー部!ー学園で人気の美女達が集まる部活だけど、ホントはオタクで残念な彼女たちと楽しいスクールライフを送ります。

荒星

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第六話 「人は嫉妬する時が一番怖い」

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 昼休みに突入すると、竜也が声を掛けてきた。

「おい嶺二! 飯食いに行こうぜ!」

「ごめん、僕ちょっと用事があるから」

 竜也の誘いを断り、嶺二は隣のクラスに向かった。昨日約束したラノベを雪菜に渡すためだ。

「こんにちは~。えっと、雪菜っていますか?」

 扉を開けると、唐突な部外者である嶺二に視線が突き刺さった。嶺二が中を見渡すと、教室の一角に人が集まっているのが見えた。どうやら先ほどからの刺すような視線は、この集団によるものの様だ。

「あ! 嶺二! ナイスタイミング!」

 人混みの中から雪菜の声が聞こえてきた、どうやらこれは雪菜目当ての集まりだったらしい。雪菜は、人混みをかき分けながらこちらまで来ると、嶺二の手を掴んだ。

「え? ちょ、雪菜?」

「ごめん、話は後。今はとりあえず移動させて」

 雪菜と嶺二は、そのまま学食に向かった。





「うーん、中々迷うわね。どれも美味しそうだし」

「僕はこのザンたれ丼頼もうかな」

 現在、嶺二達はタッチパネル式の食券機の前で昼食を選んでいた。

「じゃあ私は豚の生姜焼き定食にする」

 嶺二が現金で支払う傍ら、隣の雪菜はパスポートのようなもので支払いをし終えた。

「ん? 何それ、雪菜」

「ああこれ? 生活の苦しい家庭なら、申請が通るとこれがもらえるのよ。一日一食タダで食べられるからこれホントに助かるのよね」

「へぇ、そういう制度があるんだね」

 食堂のおばちゃんに食券を渡し、品物を受け取り嶺二達は席に着いた。

「で、どうしたのさ雪菜」

 嶺二が質問すると、雪菜はうんざりしたような表情で答えた。

「昼ご飯に誘われたり、ちょっと話しない?だったり、バンドしてるから見に来てくれない? だったり。ああもう! お呼びじゃないのよお呼びじゃ!」

「あはは……災難だったね」

「ホントよ、全く。人が嫌がってるのくらい察しなさいよ! ……だから助かった、ありがと」

「どういたしまして? ああ、そういえばはい、これ」

 嶺二が紙袋を手渡すと、雪菜は嬉しそうに微笑んだ。

「ん、ありがとう! 大事に読ませてもらうわ! ……それじゃあお腹も減ったし食べよ?」

「「いただきます」」





「「ごちそうさまでした」」

「いやー、美味しかった。量もあるし、それなりに安いし。いいね、学食」

「無料で食べられるから舐めてたけど、想定外に美味しくて大満足」

 二人は、食べ終わった後の食器を返却すると、教室のある方へ歩き出した。

「さてと、午後の授業も頑張らないと……」

「ねえ嶺二、アンタがもしよかったらなんだけどさ。明日からもお昼一緒に食べない?」

「いいけど……どうしたのさ、急に」

「い、嫌なら良いんだけど。その、毎日昼休みに下心まみれの男子たちに詰め寄られるって想像するとね。その点、アンタなら……その、趣味仲間で信頼できそうだし」

 出会い方的には最悪だった上、煩悩まみれの嶺二だが多少信頼してもらえたようだ。実際嶺二も、嫌がる趣味仲間にしつこく迫る気はさらさら無い。

「うん、わかった。雪菜も大変そうだね、僕でよければいくらでも付き合うよ」

「ありがとう……ってさっきから私、アンタに感謝してばっかりね」

 嶺二達は笑いあうと、各々教室に戻って行った。




 ーーなんだろう、凄く居心地が悪いんだけど。

 授業中、嶺二は何故か突き刺すような視線を常に感じていた。嶺二が不思議に思いながら授業を受けていると、何かが嶺二の耳の横を通って机に着弾した。

「うわっ! 今度は何!?」

 嶺二が何かが落ちた机を見ると、なんと紙飛行機が机に刺さっていた。
 嶺二は、冷や汗を書きながら紙飛行機を机から引き抜き、広げて見た。

 ーーいやいや、当たってたら大惨事だよ? 死因が紙飛行機の直撃ってカッコ悪すぎる……そんなことで死んだら、耐久値ス〇ランカー並みって笑われる事請け合いだよ!? 
 けど威力が威力だし。というか机に穴が開くって何事!?

「ええっと。訴状……?まあいいや、誰かのおふざけだろうし。見なくてもいいや」

 嶺二は少しだけ中を見ると、そのまま丸めて机の中に放り込んだ。
 その時、嶺二は悪寒を感じたが、気のせいだと思うことにした。



 放課後、嶺二は帰る準備をしていると誰に肩を掴まれその後、目隠しをされて何処かに連れ去られた。

「またここか……で、今度はなにさ」

 嶺二が目隠しを取られ目を開けると、以前も連れてこられた裁判所のような場所だった。
 前回と違う点があるとすれば、傍聴席にも人が一杯な上、皆一様に格好が黒づくめで、仮面をつけている点だ。

「よし、被告も揃ったな。これより、モテない生徒の協会MSKによる裁判を始める。それでは1-A代表、罪状を」

 そう中央の人物が呼びかけると、前方左側に座っている内の一人が立った。

「被告人高月嶺二は、本日昼に協定第四条、新聞部作成の人気生徒リスト及び全校生徒人気ランキング上位者を独占するべからずに違反しました。被告人、相違ないな」

 何の話だかさっぱりである。当然、嶺二は抗議した。

「いやなんの話しさ! そもそもそんなの知らないしやってないよ!」

「ほう、被告人。君は無罪を主張すると?」

 先ほどの、中央のポジションに座っている人物が確認してきた。

「当り前じゃないか!」

「嘘をつくな!! 虚偽の証言はより罪を重くするぞ!」

 実際心当たりがないのだから虚偽もなにもない。そう暫く右側の人物と口論をしていると、左側の人物がおもむろに口を開いた。

 ーーこっちが僕の弁護人かな?

「会長、発言よろしいでしょうか」

「よろしい、許可する」

 そう弁護人(仮)は伺いを立てると、発言をした。

「我々は、被告人が協定第四条に違反した事実を否定したことに対して、違反した事実を証言する録音テープを提示します」

「僕の味方はいないのか!? 弁護士を!? 誰か弁護士を呼んでくれ!?」

「被告人、静粛に。それでは証拠を再生しなさい」

 ーー高月嶺二君が昼休み何をしていたか、お聞きしたいのですがよろしいでしょうか。

 先ほどの右側の人物の声だ。どうやら誰かに聞き込みをしているらしい。

 ーーあー、嶺二なら昼飯誘った時に用事があるからって断ってどっかに行ったんですけど、友達と二人で食堂に行ったら、赤髪ツインテールの滅茶苦茶可愛い子と飯食ってました。マジでアイツ、抜け駆けしやがって。許せねぇ。

「竜也ァァ!!」

「被告人、事実に相違ないな」

 雪菜とお昼を一緒に食べたのは事実である。

「いや、その! 確かに一緒に食べたけど! 下心があったり、僕が無理やり誘ったわけじゃないんだ!!」

「噓をつくな! あれ程の美少女を前に下心がないわけないだろ!?」

「貴様如きがどうやったら、脅す以外にあんな美少女と昼食を共にできるというんだ!」

「美少女は皆のもの、美少女は皆のもの、美少女は皆のモノォォォ」

「「「殺せ! 殺せ! 殺せ!」」」

「静粛に! 被告人、最後に何か反論はあるか」

 もう半ば自棄になりながら、嶺二は反論した。

「たまたま渡すものがあったから、雪菜のところに行ったら雪菜が沢山人に付きまとわれてて、僕は虫よけ替わりになってただけだ!! 皆が羨むことは一切無い!」

「以上か?」

 嶺二は諦めた。恐らくもう二度と日の光を浴びることはできないだろう。

「それでは判決を下す。被告人は有罪、死刑……と言いたいところだが、先ほどの被告の供述と、新入生であって協定を知らなかった事。以上を持って被告を無罪とする」

 その瞬間、場はブーイングの嵐に包まれた。

「ふざけんな!」

「甘すぎる! 何を考えてるんだ会長!」

「Kill……Kill……Kill……Die!!!」

「おい、二番目! 今叫んだの竜也だろ!?」

「沈まれぇい!」

 会長がそう喝を入れると、場は静まった。

「いいか、諸君。我々は別に世のリア充を撲滅したい訳ではない。偶にひっそりと闇討ちはするかもしれんがな。リア充を無差別的に攻撃してしまうと、いつか上手くいった時に跳ね返ってきてしまう」

「ですが会長……」

「聞けば彼は、困っている少女の盾になっただけのようではないか。美人またはイケメンは皆のもの、という我々の理念ではなかったか? なれば彼の行動は、褒められることではあれど咎められるべきではない。それに……彼も我々と同じくあまりモテなさそうではないか」

 ーー余計なお世話だよ。

 嶺二は一瞬カチンときたが、無罪放免になりそうなので余計なことは言わずに、押し黙ることにした。

「そうだな……会長の言う通りだ」

「だな」

「彼みたいなのでも昼食を一緒に出来たんだ、俺にだってチャンスはあんだろ」

 嶺二が解放されるかと思われたその時、後方部にある扉が開いた。

「あのーすいません……ここに嶺二がいるって聞いたんですけど」

 場が静寂に包まれた。

「え、えっと。一緒に帰ろうって誘おうと思ったんですけど、その……」

「お嬢さん、彼には用事があるので、少し待っていては貰えないかな?」

 会場全体が負のオーラに包まれたのを感じてか、気圧されながら雪菜は涙目で言った。

「その、あの! ぁぅ……ごめん、嶺二。外で待ってるね」

 会長は少し息を吸うと、嶺二に明るく言い放った。

「さて、と。彼女を長く待たせるわけにはいかないから、手早く済ませようか」




 ーーあっ、これきっと僕、死ぬな……
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