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イザナギ学院一年生編
第44話 蜘蛛、そして傲慢。
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「気を付けろ二人共! このワイバーン、普通じゃねえぞ!」
俺は即座に腕輪を外して臨戦態勢になる。
「このッ!」
咆哮を上げながら突撃してきたワイバーンを躱し、俺はワイバーンの腹部切りつける。
「なんだ!?」
しっかりと一撃入ったはずなのに浅くしか刃が入らず、俺は困惑した。
――こちとら150レベ超えてんだぞ!? このワイバーン、一体何レべだよッ!
「しかも切りつけた感じ、厚いゴムみたいだし!」
「悠馬君、そこを退いてください!」
花音の声を聴き、俺は咄嗟に回避した。
「行きます! ポイズンアロー・レイン!」
そして花音の矢が刺さり、ワイバーンは毒状態になるハズだったのだが……。
「噓……」
「毒が効いてない? まさか、状態異常無効!?」
ワイバーンは花音を忌々しそうに見つめると、俺から花音に標的を移した。
「クソッ! 和人!」
「わかってる!」
ワイバーンが飛んだかと思うと花音に襲い掛かったので、和人が咄嗟にカバーに入る。
「グッ……」
――あれだけの防御力でも、力はレベル40行ってないハズの和人といい勝負……。どうなってるんだ一体?
「なんなんだよコイツ! おい悠馬! ボサっとしてないで、早く助けてくれ!」
「わ、悪い! すぐ行く!」
俺は和人に向かってブレスを吐くワイバーンの背中を切りつけた。
――入った!
「うおっと」
すると、ワイバーンは慌てて飛ぼうとして失敗し、少し離れた所に墜落する。
「あれ? もうアイツ死に掛けじゃねえの?」
「そうらしいな……それにしても、なんで毒状態にならなかったんだ?」
「さあ……? 花音はどう思う?」
「すみません、私にも……」
その時だった。
「なんだ……?」
暫く地面でもがき苦しんでいたワイバーンが動かなくなると、突然ワイバーンの体ボコボコと波打つ。
そしてワイバーンの体がはじけ飛ぶと、中から小さな蜘蛛たちが飛び出し、こちらに向かって襲い掛かってきた。
――アイホートの雛たちか……。
――なんだそりゃ! つーかコイツら気持ち悪ッ!
「しかもビミョーに強いし!」
俺は二体の蜘蛛を立て続けに倒し和人達の方を向くと、花音が蜘蛛の糸に捕われていた。
――なんだなんだ! サービスシーンですかこの野郎!
「ありがとう……助かったよ悠馬君!」
「気にすんな」
蜘蛛の糸に捕われていた花音を解放し、蜘蛛を潰した後。俺は一人で蜘蛛と戦っている和人を加勢しに行った。
「よう、大丈夫か?」
「大丈夫……と言いたいけど、無理だな。なんだコイツら、すばしっこいし小さいのに力も半端なく強いし……」
俺は和人と蜘蛛の間に割り込むと、ディメンジョンスラッシュ・真で切り捨てた。
「なんだったんだ? このモンスター共」
「アイホートの雛って言うらしいぞ?」
「なんだそれ」
――一刻も早く逃げた方が良いぞ? 悠馬よ。
――俺も同感だ。
――ん? まさか……本体的なのが居る感じか?
――恐らく……な。
「よし、撤退しようぜ」
――邪神との戦いに二人は巻き込めない。
「何言ってんだお前」
「いや、命と点数は流石に変えられないだろ?」
「えっと……」
「急にどうした? 一言も二言も足りなさ過ぎて、わけわからんぞ」
その時、俺は周囲から沢山の気配を感じて身構える。
「お、オイ。急にどうした?」
「……ヤバい、囲まれた」
数秒後。数多のモンスター達が、俺達を取り囲むようにして現れる。
「……ゴブリンにコボルト、ライカンスロープ、レッサーワイバーン、オークに……オイオイオイ。ゴブリンキングとベヒーモス!? なんだこれ、ふざけてろッ!」
「ついでに、さっきのワイバーンと同じ様にもれなく全部が青色の変な奴だ」
俺は怒鳴り散らす和人にそう返すと、剣を構える。
「花音が後衛、和人と俺で前衛。まあさっきと変わらないけど、絶対に花音の所まで突破されないようにするぞ和人。ただ、無茶だけはするな」
「了解」
そして俺は神威と龍装を発動させて、モンスター共を迎え撃った。
「ハァァァァ!」
俺はコボルトを切り裂くと蜘蛛、アイホートの雛達をかえす刃でそのまま切り捨てる。
「クソッ! コボルトだけでも7匹目だぞ! どうなってんだ!」
和人の方を振り返ると、花音の援護を受けながら和人はオークキング相手に健闘していた。
――レベルはどうにもなんないけど、良い動きするな……。
「フッ!」
俺はタラリアを発動させ空中を駆けながら近づき、和人と戦っているオークキングの首を一閃し、魔法スキルで飛び出してきたアイホートの雛達を消し飛ばす。
「おい、まだ戦えそうか?」
「ああ、まあちょっとキツくなってきたけどな」
「な、なんとか……」
「そんじゃあ後一踏ん張り頑張ろうぜ!」
そして、こちらに突進してくるベヒーモスを迎え撃とうとしたその時。
「なんだッ!?」
俺は一筋の光がこちらに向かってくるのが見え、次の瞬間。俺達はその光に吹き飛ばされた。
「おかしいなァ……俺はお前を跡形もなく吹き飛ばすつもりだったんだが」
先程の光が落ちて出来たクレーターの中心に居たのは、邪竜にして邪神教団の幹部。ディートハルトだった。
「ッ……テメエはディートハルト!? 花音を離せッ!」
ディートハルトは、意識を失った花音を抱えたままこちらを見てくる。
――クソッ、ディートハルトは龍斗達の方に行くんじゃなかったのか!? それになんで花音を!
「ん? なんだ? どうして初対面なはずなのに俺様の名前を知ってるんだ? まあ名前つっても偽名の方だがなァ」
――は? 偽名?
「なに! 偽名だったのか!?」
ロトは実体化すると、ディートハルトに向かって叫ぶ。
「これはこれは。力が手に入ると勘違いして主の仇の復活に力を貸した、哀れなアスタロト様じゃねェか! なんだその姿、随分と身の丈に合った姿になったなァ!」
「貴様!」
「まあ、搾りかすのお前なんざどうでも良いや。オイ、居るんだろアウァリティア!」
「よう。見たくもない面をまた見る羽目になるとはな、スペルビア」
「なに言ってるんだ? コイツは……」
「悠馬。今までコイツがどんな名前を名乗ってたのかは知らねえが、コイツの本当の名前はスペルビア。俺と同じ七つの大罪に属する龍、傲慢の龍スペルビアだよ」
アウァリティアがそう言うと、ディートハルト改めスペルビアはニヤリと笑った。
俺は即座に腕輪を外して臨戦態勢になる。
「このッ!」
咆哮を上げながら突撃してきたワイバーンを躱し、俺はワイバーンの腹部切りつける。
「なんだ!?」
しっかりと一撃入ったはずなのに浅くしか刃が入らず、俺は困惑した。
――こちとら150レベ超えてんだぞ!? このワイバーン、一体何レべだよッ!
「しかも切りつけた感じ、厚いゴムみたいだし!」
「悠馬君、そこを退いてください!」
花音の声を聴き、俺は咄嗟に回避した。
「行きます! ポイズンアロー・レイン!」
そして花音の矢が刺さり、ワイバーンは毒状態になるハズだったのだが……。
「噓……」
「毒が効いてない? まさか、状態異常無効!?」
ワイバーンは花音を忌々しそうに見つめると、俺から花音に標的を移した。
「クソッ! 和人!」
「わかってる!」
ワイバーンが飛んだかと思うと花音に襲い掛かったので、和人が咄嗟にカバーに入る。
「グッ……」
――あれだけの防御力でも、力はレベル40行ってないハズの和人といい勝負……。どうなってるんだ一体?
「なんなんだよコイツ! おい悠馬! ボサっとしてないで、早く助けてくれ!」
「わ、悪い! すぐ行く!」
俺は和人に向かってブレスを吐くワイバーンの背中を切りつけた。
――入った!
「うおっと」
すると、ワイバーンは慌てて飛ぼうとして失敗し、少し離れた所に墜落する。
「あれ? もうアイツ死に掛けじゃねえの?」
「そうらしいな……それにしても、なんで毒状態にならなかったんだ?」
「さあ……? 花音はどう思う?」
「すみません、私にも……」
その時だった。
「なんだ……?」
暫く地面でもがき苦しんでいたワイバーンが動かなくなると、突然ワイバーンの体ボコボコと波打つ。
そしてワイバーンの体がはじけ飛ぶと、中から小さな蜘蛛たちが飛び出し、こちらに向かって襲い掛かってきた。
――アイホートの雛たちか……。
――なんだそりゃ! つーかコイツら気持ち悪ッ!
「しかもビミョーに強いし!」
俺は二体の蜘蛛を立て続けに倒し和人達の方を向くと、花音が蜘蛛の糸に捕われていた。
――なんだなんだ! サービスシーンですかこの野郎!
「ありがとう……助かったよ悠馬君!」
「気にすんな」
蜘蛛の糸に捕われていた花音を解放し、蜘蛛を潰した後。俺は一人で蜘蛛と戦っている和人を加勢しに行った。
「よう、大丈夫か?」
「大丈夫……と言いたいけど、無理だな。なんだコイツら、すばしっこいし小さいのに力も半端なく強いし……」
俺は和人と蜘蛛の間に割り込むと、ディメンジョンスラッシュ・真で切り捨てた。
「なんだったんだ? このモンスター共」
「アイホートの雛って言うらしいぞ?」
「なんだそれ」
――一刻も早く逃げた方が良いぞ? 悠馬よ。
――俺も同感だ。
――ん? まさか……本体的なのが居る感じか?
――恐らく……な。
「よし、撤退しようぜ」
――邪神との戦いに二人は巻き込めない。
「何言ってんだお前」
「いや、命と点数は流石に変えられないだろ?」
「えっと……」
「急にどうした? 一言も二言も足りなさ過ぎて、わけわからんぞ」
その時、俺は周囲から沢山の気配を感じて身構える。
「お、オイ。急にどうした?」
「……ヤバい、囲まれた」
数秒後。数多のモンスター達が、俺達を取り囲むようにして現れる。
「……ゴブリンにコボルト、ライカンスロープ、レッサーワイバーン、オークに……オイオイオイ。ゴブリンキングとベヒーモス!? なんだこれ、ふざけてろッ!」
「ついでに、さっきのワイバーンと同じ様にもれなく全部が青色の変な奴だ」
俺は怒鳴り散らす和人にそう返すと、剣を構える。
「花音が後衛、和人と俺で前衛。まあさっきと変わらないけど、絶対に花音の所まで突破されないようにするぞ和人。ただ、無茶だけはするな」
「了解」
そして俺は神威と龍装を発動させて、モンスター共を迎え撃った。
「ハァァァァ!」
俺はコボルトを切り裂くと蜘蛛、アイホートの雛達をかえす刃でそのまま切り捨てる。
「クソッ! コボルトだけでも7匹目だぞ! どうなってんだ!」
和人の方を振り返ると、花音の援護を受けながら和人はオークキング相手に健闘していた。
――レベルはどうにもなんないけど、良い動きするな……。
「フッ!」
俺はタラリアを発動させ空中を駆けながら近づき、和人と戦っているオークキングの首を一閃し、魔法スキルで飛び出してきたアイホートの雛達を消し飛ばす。
「おい、まだ戦えそうか?」
「ああ、まあちょっとキツくなってきたけどな」
「な、なんとか……」
「そんじゃあ後一踏ん張り頑張ろうぜ!」
そして、こちらに突進してくるベヒーモスを迎え撃とうとしたその時。
「なんだッ!?」
俺は一筋の光がこちらに向かってくるのが見え、次の瞬間。俺達はその光に吹き飛ばされた。
「おかしいなァ……俺はお前を跡形もなく吹き飛ばすつもりだったんだが」
先程の光が落ちて出来たクレーターの中心に居たのは、邪竜にして邪神教団の幹部。ディートハルトだった。
「ッ……テメエはディートハルト!? 花音を離せッ!」
ディートハルトは、意識を失った花音を抱えたままこちらを見てくる。
――クソッ、ディートハルトは龍斗達の方に行くんじゃなかったのか!? それになんで花音を!
「ん? なんだ? どうして初対面なはずなのに俺様の名前を知ってるんだ? まあ名前つっても偽名の方だがなァ」
――は? 偽名?
「なに! 偽名だったのか!?」
ロトは実体化すると、ディートハルトに向かって叫ぶ。
「これはこれは。力が手に入ると勘違いして主の仇の復活に力を貸した、哀れなアスタロト様じゃねェか! なんだその姿、随分と身の丈に合った姿になったなァ!」
「貴様!」
「まあ、搾りかすのお前なんざどうでも良いや。オイ、居るんだろアウァリティア!」
「よう。見たくもない面をまた見る羽目になるとはな、スペルビア」
「なに言ってるんだ? コイツは……」
「悠馬。今までコイツがどんな名前を名乗ってたのかは知らねえが、コイツの本当の名前はスペルビア。俺と同じ七つの大罪に属する龍、傲慢の龍スペルビアだよ」
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