自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!

荒星

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イザナギ学院一年生編

第35話 学園祭二日目。 其の一。

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 学園祭二日目の朝。俺は家のソファでぐったりしていた。

「もう悠馬! 昨日はどこ行ってたの? 冬香とエミリーヌと探したんだから!」

「あー、悪い。レベル上げにちょっとダンジョン潜ってた」

「何も学園祭期間中に行かなくてもいいじゃない」

 ちなみに姉さんは学園祭の委員会で早めに出て行っている。尚、昨日帰ってこなかった事はこっぴどく𠮟られた。

「ごめんごめん、これから気を付けるよ」

 俺は一瞬だけ顔を上げてそう言うと、再び寝そべった。

「で、どうすんのよ。私達もう出るけど」

「もう少し後になったら出る。今日はイアも連れてってやりたいしな」

「ずっと留守番も可哀想だもんね、私はいいと思うな」

「今日、私達SクラスとA-1クラスの交友を深めるっていう名目で班作って行動してるから。何かあったら直ぐに来なさいよ」

 そうして学校に向かう二人を見送り、暫くまどろんだ後俺はソファから降りた。

「よし、行こうかイア」

「良いの? 主」

 そう言ってゲームのコントローラーを握ったまま首を傾げるイアに、俺は微笑んだ。

「良いんだよ、俺がイアと行きたいんだ。それともイアは行きたくないか?」

「主と遊びには行きたい、だけど……なんでもない」




「さて、着いたぞ。イアは何か食べたいものとか気になってるブースとかあるか?」

「この、コソラvsメカコソラのショーが見たい」

 ――えぇ……あの映画、無駄に人気あるのか? なんだってヒーローショーモドキがあるんだ。

「わかった。ただ、ショーまでまだ時間があるからな……屋台にでも寄って時間を潰そう」

 そして俺達は屋台エリアに移動していた。

「なにあの子滅茶苦茶可愛くない?」

「ホントだー」

「また鈴木悠馬か……クソ、アイツばっかりいい思いしやがって!」

 ――どうやら、イアは美男美女だらけのこの世界でも飛びぬけてるみたいだな。ま、当たり前か。人外の美貌っていうか人外そのものだし。分身はちゃんと生物学的には人間らしいけど。

「なんか食べたいものあるか?」

「ん」

 イアが指さしたのは、リンゴ飴だった。

 ――リンゴ飴かぁ、子供って何故か祭りに来るとリンゴ飴食べたがるよな。俺も昔良く親にせがんだな……別段好きでも無いのに頼むもんだから食べきれなくて、結局最後は親が処理してくれたもんだ。

「すいませーん、リンゴ飴一つ……って」

「はいはーい、只今……あれ? 師匠? 師匠じゃないですか!」

 俺がリンゴ飴を頼むと、屋台の奥から兵藤が出てきた。

「ああ、そうか。ここC-1クラスの屋台か」

「はい、ところで師匠。その可愛らしいお子さんは? まさか師匠の……」

「いや違うから、コイツはえっと……えっと……俺の妹だよ」

 ――咄嗟に妹って言っちゃったけど無理あるよなぁ……。

「なるほど! 妹さんでしたか! 僕はお兄さんの弟子の兵藤理玖と言います! よろしくお願いします!」

 ――通じた、だと?

「ん、よろしく」

「師匠の妹さんならサービスしちゃいますよ! と言ってもお面位しかありませんが。どれか欲しいものありますか?」

 イアはそう言われた瞬間、メカコソラのお面を指さした。

 ――ホント好きだな、それ。

「毎度ありがとうございましたー!」

「主は何か食べないの?」

「そうだなあ、フランクフルトでも食うかな……」

 そして屋台でフランクフルトを買い、ぶらぶらと散策し始めたその時。

「主?」

「なんでもない」

 少し先に、例の班行動であろう龍斗とソフィア、そして冬香とエミリーヌの姿が見えたので、俺は来た道を引き返す。

「良いの?」

「ああ」

「それが主の選択なら、私は付いて行く。ただ……」

「ただ?」

 イアはそう言うと、俺の手を強く握る。

「私は主から一生離れない、何があっても」

「……ありがとな、イア」

「ん」

 俺がイアの頭を撫でると、イアは気持ちよさそうに目を細めた。




「コソラ! メカコソラ! 貴様らよくも!!」

 俺達はあのC級トンチキ映画、コソラvsメカコソラ、俺たちの世界は俺たちで守る! 喰らえアルマゲドン! のショーを見に来ていた。

 ――一体俺は何を見せられてるんだ。

 だが俺には死ぬほどつまらないが、どうやらイアは違うようで物凄く目を輝かせている。

「よくも、よくもジュリエットを! 許さない……コソラも、コソラに対抗するためにメカコソラを作った世界も!! 世界は俺達人間の手で守る! そうだろ皆!」

「ああ!」

「ええ! ブチかましましょう三郎!」

 ――ジュリエット、メカコソラのビーム砲直撃したのにピンピンしてんだけど。つーかさっき主人公の腕の中で息絶えてただろ、なんで死んだ奴が5秒後には平然と会話の中に混ざってんだ。

「喰らえ! コソラ、メカコソラ! これが俺たちの答えだ! 最大禁術魔法、アルマゲドン!!」

 そしてコソラとメカコソラに向かって赤い光が降り注ぎ、舞台は暗転した。

『この一撃によりコソラとメカコソラ諸共人類も滅亡し、環境汚染を引き起こす要因がなくなり地球に平和が訪れました。ありがとう三郎! ふざけるな三郎! お前の事は死んでも忘れないからなぁぁぁぁ!?』

 ――マジでなんだこれ。

「面白かった、もう一回」

「勘弁してくれ!」



 そして、金魚すくいや射的を堪能した後。午後の部。

「それじゃあイア、行ってくるよ」

「頑張って、主」

 そう言うと、イアは家にテレポートした。

「それじゃあ頑張りますか」

 Cブロック第二回戦がいよいよ始まる!
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