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イザナギ学院一年生編
第32話 学園祭一日目。 其の一。
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そして迎えた学園祭当日。
「うらめしやァァァァ!」
「ギャァァァァ!?」
「え? ちょ、ちょっと待ってよぉ!」
血涙を流しながら凄まじい表情をしているであろう俺が、触手を背から出現させながら飛び出してくるのを見て、お化け屋敷に侵入してきたカップルの男は彼女を置いて真っ先に逃げ出す。その後慌てて置いて行かれた彼女も走り去ってくのを、俺はため息をつきながら見送った。
「はぁ……どうして俺はこんな事をしてるんだ」
現在俺はクラスの出し物のお化け屋敷で、一時間お化け役をしていた。
ちなみに学園祭は午前の部と午後の部分かれており、試合があるのは午後の部からである。
――この恨み、ここに来たリア充共にぶつけてやる……。
「誰か来たな……!」
俺は誰かが来たことを知らせるランプが点灯するのを見て、勢いよく飛び出した。
「うらめし……どわッ!?」
「のわッ! び、ビックリした」
俺が飛び出すと、そこには白い服を着てウィッグを付け化粧もバッチリ決めた女の幽霊の格好をした、俺と同じ幽霊役で離れた所に待機していたはずの和人がそこにいた。
「なんだよ和人か……お前その格好怖いというよりグロイぞ」
「お前こそ、なんだその触手。どうやって出してんだ? なんか蠢いてるし……」
「企業秘密だ」
ちなみに、この触手はイアに頼んで出してもらったものである。ちゃんと戻す魔法も教わってるから安心して欲しい。
「もうそろそろ交代の時間だから、次のお客が終わったら出て来いってさ」
「了解……やっとこのクソ狭い場所からおさらばできる……」
「だな」
「ゲボラッ!?」
「せ、先輩。怖いです! まさかお化けじゃなくて変質者が出てくるなんて」
「そうだね……女装した男のすね毛なんて見たくなかったな……」
また定位置に戻って暫く。会話と何かが倒れる音が聞こえるのと同時にやっとランプが点灯したのを見て、俺は勢いよく飛び出した。
「うらめしゴヘッ!?」
「う、うわぁぁ!?」
そして暗闇の中カップルを視認したその瞬間、俺は腹部に鈍い衝撃が走りうずくまった。
「お、おうふ……」
「あれ? 悠馬?」
俺が顔を上げると、龍斗と如月美優が居た。
「先輩。お化け役の人を殴っちゃダメですよ……」
「い、いや。さっきの変質者の事もあるし、モンスターかと思って咄嗟に……」
「失礼な奴だな! 俺のどこがモンスターだ!」
俺が叫ぶと、龍斗は後ろめたそうに頭を掻いた。
「あはは……ごめんごめん」
「そういえば変質者って……まさか!」
――もしかしてさっきの鈍い音は!
「ん?」
「その変質者、白い服で長い髪の女の幽霊っぽい姿してなかったか?」
「え? うん」
「そいつどうした?」
「咄嗟に殴り飛ばしちゃって伸びてると思うよ?」
「あちゃー……」
――和人よ、安らかに眠れ。そういや龍斗はお化け屋敷が苦手って設定あったな、ヒロインかよ。まあそれはそれとして……。
「龍斗。お前、出禁な」
そしてぶっ倒れている和人を周りからドン引かれがら保健室まで送り届け、俺はやっと手にした自由時間でSクラスに向かっていた。
「よっ」
「あ! 悠馬! じゃなくお帰りなさいませご主人様! こちらの席へどうぞ!」
俺はソフィアに窓際の席へ案内されると、メニュー表を開いた。
「それでは今お冷を持ってきますね! ご主人様!」
そう言ってお冷を取りに行ったソフィアを眺めていると、冬香が注文を聞きに来た。
「ご主人様、ご注文は?」
「冬香が俺にご主人様って言ってるのを聞くと、なんかちょっと不思議な気分になるな」
「う、うるさいわね! いいから注文!」
「へいへい……なんだこれ、なんでメイドカフェでから揚げ?」
「……あぁ、それね。ソフィアがどうしてもって言うから」
「なるほど」
「私としては勿論そのから揚げがオススメだよ!」
お冷を持って戻ってきたソフィアがから揚げを勧めてくるが、俺は苦笑いでやんわり断る。
「悪い、今はそんなに重いもんの気分じゃねえんだ。このオムライスを頼む」
「かしこまりました、ご主人様」
「あ、そうだ悠馬! 私、もうそろそろ交代の時間だからちょっと待ってて!」
「ん、了解」
そして出てきたオムライスを完食し、待つこと数分。
「お待たせー」
「おう」
「それじゃあレッツゴー!」
俺がボーっと待っているとメイド服から着替えたソフィアが来たので、俺達はメイドカフェを後にしてまずは屋台へと繰り出した。
「それにしても、色々な店があるな……」
俺はパンフレット片手に、ホットドッグ片手に呟く。
「うん、なんでも企業のブースとかもあるらしいし。もう学園祭って言うより、ただのお祭りだよね。一般客の人たちも多いし」
「確かにな……で、何処に向かってるんだ?」
俺がから揚げ串片手にどこかを目指すソフィアに聞くと、ソフィアは答えた。
「ん? テュポ君特製から揚げが売ってるらしいから、テュポパークの特設ブースに行こうかなって」
「今から揚げ食べてるだろ」
「から揚げはから揚げでも、これとそれとは別なの!」
「太るぞ?」
「う……そんなに簡単に太らないもん!」
「そう言ってるやつほど気がつけば……」
「もう! 悠馬の意地悪!」
「悪い悪い」
――何十年ぶりだけどやっぱり良いな、学園祭って。
「悠馬ー! 早く早く!」
「おう! 今行く!」
そんな事を考え、俺は少しワクワクしながら少し先で待つソフィアの元へ足を向けた。
「うらめしやァァァァ!」
「ギャァァァァ!?」
「え? ちょ、ちょっと待ってよぉ!」
血涙を流しながら凄まじい表情をしているであろう俺が、触手を背から出現させながら飛び出してくるのを見て、お化け屋敷に侵入してきたカップルの男は彼女を置いて真っ先に逃げ出す。その後慌てて置いて行かれた彼女も走り去ってくのを、俺はため息をつきながら見送った。
「はぁ……どうして俺はこんな事をしてるんだ」
現在俺はクラスの出し物のお化け屋敷で、一時間お化け役をしていた。
ちなみに学園祭は午前の部と午後の部分かれており、試合があるのは午後の部からである。
――この恨み、ここに来たリア充共にぶつけてやる……。
「誰か来たな……!」
俺は誰かが来たことを知らせるランプが点灯するのを見て、勢いよく飛び出した。
「うらめし……どわッ!?」
「のわッ! び、ビックリした」
俺が飛び出すと、そこには白い服を着てウィッグを付け化粧もバッチリ決めた女の幽霊の格好をした、俺と同じ幽霊役で離れた所に待機していたはずの和人がそこにいた。
「なんだよ和人か……お前その格好怖いというよりグロイぞ」
「お前こそ、なんだその触手。どうやって出してんだ? なんか蠢いてるし……」
「企業秘密だ」
ちなみに、この触手はイアに頼んで出してもらったものである。ちゃんと戻す魔法も教わってるから安心して欲しい。
「もうそろそろ交代の時間だから、次のお客が終わったら出て来いってさ」
「了解……やっとこのクソ狭い場所からおさらばできる……」
「だな」
「ゲボラッ!?」
「せ、先輩。怖いです! まさかお化けじゃなくて変質者が出てくるなんて」
「そうだね……女装した男のすね毛なんて見たくなかったな……」
また定位置に戻って暫く。会話と何かが倒れる音が聞こえるのと同時にやっとランプが点灯したのを見て、俺は勢いよく飛び出した。
「うらめしゴヘッ!?」
「う、うわぁぁ!?」
そして暗闇の中カップルを視認したその瞬間、俺は腹部に鈍い衝撃が走りうずくまった。
「お、おうふ……」
「あれ? 悠馬?」
俺が顔を上げると、龍斗と如月美優が居た。
「先輩。お化け役の人を殴っちゃダメですよ……」
「い、いや。さっきの変質者の事もあるし、モンスターかと思って咄嗟に……」
「失礼な奴だな! 俺のどこがモンスターだ!」
俺が叫ぶと、龍斗は後ろめたそうに頭を掻いた。
「あはは……ごめんごめん」
「そういえば変質者って……まさか!」
――もしかしてさっきの鈍い音は!
「ん?」
「その変質者、白い服で長い髪の女の幽霊っぽい姿してなかったか?」
「え? うん」
「そいつどうした?」
「咄嗟に殴り飛ばしちゃって伸びてると思うよ?」
「あちゃー……」
――和人よ、安らかに眠れ。そういや龍斗はお化け屋敷が苦手って設定あったな、ヒロインかよ。まあそれはそれとして……。
「龍斗。お前、出禁な」
そしてぶっ倒れている和人を周りからドン引かれがら保健室まで送り届け、俺はやっと手にした自由時間でSクラスに向かっていた。
「よっ」
「あ! 悠馬! じゃなくお帰りなさいませご主人様! こちらの席へどうぞ!」
俺はソフィアに窓際の席へ案内されると、メニュー表を開いた。
「それでは今お冷を持ってきますね! ご主人様!」
そう言ってお冷を取りに行ったソフィアを眺めていると、冬香が注文を聞きに来た。
「ご主人様、ご注文は?」
「冬香が俺にご主人様って言ってるのを聞くと、なんかちょっと不思議な気分になるな」
「う、うるさいわね! いいから注文!」
「へいへい……なんだこれ、なんでメイドカフェでから揚げ?」
「……あぁ、それね。ソフィアがどうしてもって言うから」
「なるほど」
「私としては勿論そのから揚げがオススメだよ!」
お冷を持って戻ってきたソフィアがから揚げを勧めてくるが、俺は苦笑いでやんわり断る。
「悪い、今はそんなに重いもんの気分じゃねえんだ。このオムライスを頼む」
「かしこまりました、ご主人様」
「あ、そうだ悠馬! 私、もうそろそろ交代の時間だからちょっと待ってて!」
「ん、了解」
そして出てきたオムライスを完食し、待つこと数分。
「お待たせー」
「おう」
「それじゃあレッツゴー!」
俺がボーっと待っているとメイド服から着替えたソフィアが来たので、俺達はメイドカフェを後にしてまずは屋台へと繰り出した。
「それにしても、色々な店があるな……」
俺はパンフレット片手に、ホットドッグ片手に呟く。
「うん、なんでも企業のブースとかもあるらしいし。もう学園祭って言うより、ただのお祭りだよね。一般客の人たちも多いし」
「確かにな……で、何処に向かってるんだ?」
俺がから揚げ串片手にどこかを目指すソフィアに聞くと、ソフィアは答えた。
「ん? テュポ君特製から揚げが売ってるらしいから、テュポパークの特設ブースに行こうかなって」
「今から揚げ食べてるだろ」
「から揚げはから揚げでも、これとそれとは別なの!」
「太るぞ?」
「う……そんなに簡単に太らないもん!」
「そう言ってるやつほど気がつけば……」
「もう! 悠馬の意地悪!」
「悪い悪い」
――何十年ぶりだけどやっぱり良いな、学園祭って。
「悠馬ー! 早く早く!」
「おう! 今行く!」
そんな事を考え、俺は少しワクワクしながら少し先で待つソフィアの元へ足を向けた。
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