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イザナギ学院一年生編
第9話 小さな一歩、されど偉大な一歩。
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「ハハハ! 恐れるがいい哀れな虫けらども! 偉大なる我らが神は復活なされる! さあその頭を垂れよ! さすれば我が下僕として貴様らを生かすこともやぶさかではない!」
下級眷属、邪神より力を賜りし者達。ぶっちゃけほぼ二週目プレイ状態の俺からしたらザコキャラだし、ダンジョンによってはワラワラ湧いてる場所もある。
ちなみに眷属全般は、この男の様に吸血鬼然とした奴もいれば、獣人みたいなのや悪魔に似たやつもいて千差万別である。稀にネームドも居たりする。
コイツは推奨レベル40で今の俺はレベル100を超えている。しかし、今の俺にはそんな格下のモンスターでも死神に見えた。
「え……? 何? アレ……」
「アレは、まさか眷属!? 神様達の加護でダンジョンから出られないハズじゃ!?」
そして冬香とソフィアは臨戦態勢になり、攻撃を仕掛けようとしたが俺は手で止めた。
「悪い、ココは俺に任せてくれないか?」
「は? 何を……」
「そうだよ! 三人で戦った方が……」
「頼む」
そう言うと、俺は二人を真剣な眼差しで見つめた。
「あぁ、もう。どうしてそこまで一人でやることにこだわる訳?」
「……ごめん、だけど頼むよ。俺にとってこれは大事な事なんだ」
「ハァ……」
俺の言葉を聞き、冬香は頭を搔きながら溜息をついた。
「訳は話せないわけね」
「……ごめん」
「あーもう、わかったわよ! 但し! 代わりに絶対に生きてアイツをぶちのめして来なさい!」
「本当は止めたいけど……それだけ覚悟を決めた顔されたら止められないよ。それだけあの眷属と戦うことは悠馬にとって大事な事なんだもんね。わかった、私も冬香と待ってる。だからお願い……無事に帰って来て」
「ありがとう……必ず無事に戻る」
俺はそう言うと、二人に背を向けた。
しかし二人にはそう言ったものの、内心では冷や汗を掻いていた。
ーーやっぱゲームの中とは言え、自分の事殺した相手ってのはヤベェな。気を抜いたら手が震えちまいそうだ……
ーー何を怯えている、悠馬。あのような虫けらに負けるオマエではあるまい?
ーー分かってるんだよ、んな事は……
「なんだコイツ?」
「いきなり下僕にしてやるとか何とか生意気言いやがって」
「ちょっと痛い目に合わせてやる」
ーーあのバカ野郎ども! レベル10も無いお前らが突っ込んだって! ……原作の俺も突っ込んでたな。
「待つんだ! 康太! 和人! 健介!」
佐々木康太、遠山和人、山田健介が眷属に向かって魔法を撃つ。
正直、この時俺の心の弱い部分はあの三人を見捨てて逃げろと囁いていた。
ーーだけど、それじゃ何も変わんねぇし変えんねぇ! それに和人は友達だし、二人も大事なクラスメイトだ! もうあの三人はよく知らないゲームのモブじゃない! だから!
眷属が腕を一振りし三人が放った魔法が眷属の攻撃で消滅し、そのまま三人も切り裂かれるかと思ったその時。
「はい、ストップ」
腕輪を外した俺は持っていた木刀で眷属の放った風の刃を防ぎ、三人を庇うようにして眷属の前に立ちはだかった。
「ったく、あぶねえなぁ! この三人と一緒に、暇潰しに俺と冬香とソフィアで作ってた実寸大テュポ君の絵が吹き飛ぶところだったじゃねえか!」
俺は強がりながらそう眷属に向かって言い放つ。
「Eクラスの君に下級眷属相手は無理だ悠馬! Eクラスのみんなは下がって! ここはSクラスの僕たち全員で……!」
ーー悪いな龍斗。コレは俺がこの先進んでいくためにも大事な戦いなんだ。
「ほう? その棒切れ一本で私と戦う気か? 勇敢と無謀を履き違えているようだな」
「さあな? まぁアレだ、テメエ如きにはこの棒切れ一本で十分だ」
「フ、フフフ。ハハハハハ! 貴様、正気か? ならば貴様の手足を引きちぎり貴様を生かしたまま、仲間が一人一人殺されていく光景を見せてやろう。そうすれば貴様も我を舐めた事を泣きわめきながら後悔するだろうよ!」
「そうかい、口だけなら何とでも言えるだろ。さっさとやろうぜ、こっちはアイツらに無事に戻るって約束してんだ」
そう言って真っ直ぐな眼差しをこちらに向ける二人を見てから、俺は木刀を構えた。
ーーあの二人が見てんだ、負けられるわけねぇよなぁ!
「その減らず口! いつまで続くかみものだなァ!」
そうしてその長い爪で俺を切り裂こうと迫ってくる男を眺めながら、俺は疾風迅雷・真を発動させた。
疾風迅雷・真。元々疾風迅雷はムラサメ専用スキルだが、呪いが解けて進化したおかげでより強力になった。更にムラサメを装備していなくても使用できるというおまけつきだ。無論、その場合効果は半減するが。
そして俺は同じくムラマサが進化したおかげで、装備していなくても放てるようになった紫電一閃・真を発動させて眷属の右腕を切り飛ばす。
「貴様ッ!!? 何者だァ!?」
眷属が怯えながら俺に吠えてくるが関係ない。俺は維持したままの紫電一閃・真で眷属の首を切り落とした。
進化した紫電一閃・真は紫電一閃と違い、五連撃まで可能である。もっとも、今回は二連撃で片が付いてしまったが。
ーーうわぁ……容赦ないな、悠馬。我もドン引きだぞ。
ーーうるせぇ。
俺は木刀を振って血を落とし、徐々に魔力へ還っていく下級眷属の死体を後目で見て、木刀を肩で担いで言い放つ。
「俺か? 俺の名前は鈴木悠馬。テメエらみたいなクソッたれな理不尽を打ち砕く男だ」
「「悠馬!」」
「グエッ!?」
俺がそう言った次の瞬間、冬香とソフィアの二人がタックルして俺は押し倒された。
「バカ……勝つって信じてても怖いものは怖いんだから……」
「うん……もし悠馬が私を助けてくれた時みたいに大けがしたらって思うと……」
ソフィアがそう言った瞬間、冬香が顔を上げた。
「え? ソフィアもそんなことあったの?」
「も、ってことは冬香も?」
二人は顔を見合わせて笑いあうと、満面の笑みで俺を見た。
「ねえ悠馬?」
「勿論、説明してくれるよね」
ーーあぁ、空が青いなぁ……だけど、やっと一歩踏み出せた気がする。皆の運命を変えて、助ける為の一歩を。
「悠馬ー! 無事かー!?」
生徒から報告が来て駆けつけてきたのだろう。猛スピードでこちらに迫る姉さんと、置いて行かれ気味の茜を見ながら、俺は笑った。
下級眷属、邪神より力を賜りし者達。ぶっちゃけほぼ二週目プレイ状態の俺からしたらザコキャラだし、ダンジョンによってはワラワラ湧いてる場所もある。
ちなみに眷属全般は、この男の様に吸血鬼然とした奴もいれば、獣人みたいなのや悪魔に似たやつもいて千差万別である。稀にネームドも居たりする。
コイツは推奨レベル40で今の俺はレベル100を超えている。しかし、今の俺にはそんな格下のモンスターでも死神に見えた。
「え……? 何? アレ……」
「アレは、まさか眷属!? 神様達の加護でダンジョンから出られないハズじゃ!?」
そして冬香とソフィアは臨戦態勢になり、攻撃を仕掛けようとしたが俺は手で止めた。
「悪い、ココは俺に任せてくれないか?」
「は? 何を……」
「そうだよ! 三人で戦った方が……」
「頼む」
そう言うと、俺は二人を真剣な眼差しで見つめた。
「あぁ、もう。どうしてそこまで一人でやることにこだわる訳?」
「……ごめん、だけど頼むよ。俺にとってこれは大事な事なんだ」
「ハァ……」
俺の言葉を聞き、冬香は頭を搔きながら溜息をついた。
「訳は話せないわけね」
「……ごめん」
「あーもう、わかったわよ! 但し! 代わりに絶対に生きてアイツをぶちのめして来なさい!」
「本当は止めたいけど……それだけ覚悟を決めた顔されたら止められないよ。それだけあの眷属と戦うことは悠馬にとって大事な事なんだもんね。わかった、私も冬香と待ってる。だからお願い……無事に帰って来て」
「ありがとう……必ず無事に戻る」
俺はそう言うと、二人に背を向けた。
しかし二人にはそう言ったものの、内心では冷や汗を掻いていた。
ーーやっぱゲームの中とは言え、自分の事殺した相手ってのはヤベェな。気を抜いたら手が震えちまいそうだ……
ーー何を怯えている、悠馬。あのような虫けらに負けるオマエではあるまい?
ーー分かってるんだよ、んな事は……
「なんだコイツ?」
「いきなり下僕にしてやるとか何とか生意気言いやがって」
「ちょっと痛い目に合わせてやる」
ーーあのバカ野郎ども! レベル10も無いお前らが突っ込んだって! ……原作の俺も突っ込んでたな。
「待つんだ! 康太! 和人! 健介!」
佐々木康太、遠山和人、山田健介が眷属に向かって魔法を撃つ。
正直、この時俺の心の弱い部分はあの三人を見捨てて逃げろと囁いていた。
ーーだけど、それじゃ何も変わんねぇし変えんねぇ! それに和人は友達だし、二人も大事なクラスメイトだ! もうあの三人はよく知らないゲームのモブじゃない! だから!
眷属が腕を一振りし三人が放った魔法が眷属の攻撃で消滅し、そのまま三人も切り裂かれるかと思ったその時。
「はい、ストップ」
腕輪を外した俺は持っていた木刀で眷属の放った風の刃を防ぎ、三人を庇うようにして眷属の前に立ちはだかった。
「ったく、あぶねえなぁ! この三人と一緒に、暇潰しに俺と冬香とソフィアで作ってた実寸大テュポ君の絵が吹き飛ぶところだったじゃねえか!」
俺は強がりながらそう眷属に向かって言い放つ。
「Eクラスの君に下級眷属相手は無理だ悠馬! Eクラスのみんなは下がって! ここはSクラスの僕たち全員で……!」
ーー悪いな龍斗。コレは俺がこの先進んでいくためにも大事な戦いなんだ。
「ほう? その棒切れ一本で私と戦う気か? 勇敢と無謀を履き違えているようだな」
「さあな? まぁアレだ、テメエ如きにはこの棒切れ一本で十分だ」
「フ、フフフ。ハハハハハ! 貴様、正気か? ならば貴様の手足を引きちぎり貴様を生かしたまま、仲間が一人一人殺されていく光景を見せてやろう。そうすれば貴様も我を舐めた事を泣きわめきながら後悔するだろうよ!」
「そうかい、口だけなら何とでも言えるだろ。さっさとやろうぜ、こっちはアイツらに無事に戻るって約束してんだ」
そう言って真っ直ぐな眼差しをこちらに向ける二人を見てから、俺は木刀を構えた。
ーーあの二人が見てんだ、負けられるわけねぇよなぁ!
「その減らず口! いつまで続くかみものだなァ!」
そうしてその長い爪で俺を切り裂こうと迫ってくる男を眺めながら、俺は疾風迅雷・真を発動させた。
疾風迅雷・真。元々疾風迅雷はムラサメ専用スキルだが、呪いが解けて進化したおかげでより強力になった。更にムラサメを装備していなくても使用できるというおまけつきだ。無論、その場合効果は半減するが。
そして俺は同じくムラマサが進化したおかげで、装備していなくても放てるようになった紫電一閃・真を発動させて眷属の右腕を切り飛ばす。
「貴様ッ!!? 何者だァ!?」
眷属が怯えながら俺に吠えてくるが関係ない。俺は維持したままの紫電一閃・真で眷属の首を切り落とした。
進化した紫電一閃・真は紫電一閃と違い、五連撃まで可能である。もっとも、今回は二連撃で片が付いてしまったが。
ーーうわぁ……容赦ないな、悠馬。我もドン引きだぞ。
ーーうるせぇ。
俺は木刀を振って血を落とし、徐々に魔力へ還っていく下級眷属の死体を後目で見て、木刀を肩で担いで言い放つ。
「俺か? 俺の名前は鈴木悠馬。テメエらみたいなクソッたれな理不尽を打ち砕く男だ」
「「悠馬!」」
「グエッ!?」
俺がそう言った次の瞬間、冬香とソフィアの二人がタックルして俺は押し倒された。
「バカ……勝つって信じてても怖いものは怖いんだから……」
「うん……もし悠馬が私を助けてくれた時みたいに大けがしたらって思うと……」
ソフィアがそう言った瞬間、冬香が顔を上げた。
「え? ソフィアもそんなことあったの?」
「も、ってことは冬香も?」
二人は顔を見合わせて笑いあうと、満面の笑みで俺を見た。
「ねえ悠馬?」
「勿論、説明してくれるよね」
ーーあぁ、空が青いなぁ……だけど、やっと一歩踏み出せた気がする。皆の運命を変えて、助ける為の一歩を。
「悠馬ー! 無事かー!?」
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