色づく世界の端っこで

星夜るな

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第一章

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軽音部に入部させられて、初めての土曜日。朝七時に寮を出ようとすると玄関には虎田さんがいた。
「おー。おはようさん。朝早いな。どっか出かけるのか。」
「はい。」
と短い返事をした。(流石に、朝はそこまで元気は出ないか。)すると、虎田さんは、少し困った風に笑いながら、
「気をつけていくんだぞ。」
と言ってくれた。歩きで三十分経つと今日目指していた場所についた。そこは、『星井児童施設』と書かれている。ここは、僕が育った施設だ。もう施設と言うより、家と言ってもいいと思う。すると、中から人が出てきた。
「おはよう。彩人兄。久しぶり!少し痩せたかな?」
と気遣ってくれる。
「おはよう。大丈夫だよ。あおい。」
というと、碧は、プゥ~と頬を膨らませ
「彩人兄の大丈夫は。全然信用ならないんですけど。」
と言ってきた。碧は、短い黒髪で、体が細くよく女の子に間違われるらしく、服装は、シンプルが多いが、言葉遣いが可愛いので、意味があるのか。と疑問に思っているが、秘密だ。
ちなみに、十四歳で、中学二年生だ。まだ、彼女はいないらしい。ボーッとしていると、碧が、
「彩人兄はさ。もう施設出ていったんだし、手伝いに来なくても大丈夫なのに。」
と真剣な顔で話した。
「うん。でもね。今までお世話になったし、ここをほんとの家だと思ってるから。そう思ってるんだけど、もうここに来たら駄目?」
と聞くと、頭をすごい速さで横に振った。
「それは嬉しいよ。ありがとう。」
「いえいえ。」
と返す。唯一、こうして長く喋ったり、言葉遣いが和らぐのは、碧だけで、喋っていると、ストレスから開放されて、心がポカポカになる。ただ変わらないのは、無表情だけだ。
「そういえば、碧。今日僕ここに来ると入ってないはずなんだけど、なんで起きてるの?休みは、起床、八時でしょう?」
と、疑問に思ったことを、尋ねると
「うん。、言ってないよ。ただ、彩人兄が来る気がして、早く起きちゃった。」
と笑いながら。あー癒やされる。と、平和だな。なんて思っていた。しかし、数分後まさか。この人たちが、ここに居るなんて。想像していなかった。そして、朝、虎田さんが困っているような、笑顔を見せた理由を聞いとけばと思った瞬間だった。
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