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女性がワンピースを着るのを待って、有聖が茜に二人を連れていくように指示した。
「じゃ、ショウちゃんはここで待っててね。縄は新しいのあるから、カラビナとフックの確認と床とか少し拭いておいて」
小さな声でそう言った茜は、翔の返事を待たずに二人を連れて部屋から出ていった。
二人きりになって、なんだか気まずい。
「どうしたの、翔くん?」
「あ、いや、なんでも……。あ、これ、新しい縄、です」
あたふたと差し出すと、「ありがとう。そこに置いて」とキャスター付きのワゴンを指差した。
翔は言われた通りに、有聖の近くに置いてあるワゴンの上にそっと縄の束を置く。ワゴンの上には大きなハサミやカラビナなどの補助具も置いてあった。
「あ、あの、お疲れ様」
「うん、翔くんもね。床はそこのモップで拭いてくれる? あの子、あんまり汗かいてないから汚れてはないと思うけど」
鏡の前だけでいいよ、と言われたので、鏡の横の棚に立てかけてあったモップでざっと床を拭き上げる。
その間に、有聖が折りたたみ式の大きめな踏み台を持ってきた。そして、それに登って、フックに体重をかけるように引っ張った。
それを不思議そうに見ていたのがわかったのか、有聖の声が降ってくる。
「大丈夫とは思うけど、念のために確認しとかないとね。耐用重量とかもきちんと考えてあるし、定期的に点検もされてるから安全だとは思うけど、万が一このフックを止めてるボルトが弛んでると困るから、毎回確認した方がいいんだよ」
そう言って、有聖は場所を移動しながら天井についたフックを一つずつ確認していく。
なるほど。
確かにフックを固定しているボルトが弛んでいると怖い。
(本当、しっかりしてる、んだよな……)
そうこうしているうちに茜が次のカップルを連れてきた。
男性の二人組。二人ともカジュアルスーツを着て、スタイリッシュだ。二人とも背が高い。
茜に手招きされ、折りたたみ式の踏み台を持って部屋の隅に移動した。
「チェックした?」
「有聖さんがほとんどやってくれた。フックとカラビナも大丈夫。床はモップで拭いたよ」
「オッケ。えらいね」
わしゃわしゃと頭を掻き回され、翔はくすぐったくて首をすくめた。
有聖が客に声をかける声が聞こえる。
「何かご希望はありますか?」
「俺、あまりよくわかってないんですが、……裸でも縛ってもらえます?」
「構いません。緊縛以外のプレイはしませんが、それでもよければ」
話している方の男が頷く。
「吊りとかも? きつめに吊ってもらいたいのかなって思うけど……、どう?」
男がパートナーの顔を覗き込む。
「いや? でも、好きなんだよね?」
聞かれた方はやや顔が引き攣っていて、何かを言いかけたのか口が少し動いたが、結局何も言わずに小さく頷いた。
その様子をみながら、有聖は淡々と客の希望を確認し、体重や緊縛の経験なども聞き出していく。
「ショウちゃん、廊下行くよ」
邪魔をしないようにこそりと囁いた茜について、一旦部屋を出た。
「大丈夫?」
「あ、うん。なんか……思ってたのと違った」
にこりともせず淡々と対応している有聖はまるで別人みたいだった。淫猥な雰囲気もなく、本当に冷淡で事務的に縛っているだけに見えた。
「そか、そか。じゃ、また十五分後くらいに同じように交換ね。ホールがちょっと忙しそうだから、私がみてくるね。ショウちゃんはここで待機っていうか見ててもいいよ。はい、これインカム持ってきたからつけて。あと、カード渡しとくから」
「え、あ、でもっ――」
「大丈夫、大丈夫。コトリさんも慣れてるし、何か困ったことがあったらすぐインカムしてくれたらいいからさ。あと、今の二人が終わったら、インカムちょうだい」
茜がひらひらと手を振ってフロアの方に出ていってしまった。
-------
いつも読んでいただきありがとうございます。
風邪をひいてしまって、なかなか書く時間がとれないでいます。
2~3日に1回くらいのペースで少しずつ更新します。
「じゃ、ショウちゃんはここで待っててね。縄は新しいのあるから、カラビナとフックの確認と床とか少し拭いておいて」
小さな声でそう言った茜は、翔の返事を待たずに二人を連れて部屋から出ていった。
二人きりになって、なんだか気まずい。
「どうしたの、翔くん?」
「あ、いや、なんでも……。あ、これ、新しい縄、です」
あたふたと差し出すと、「ありがとう。そこに置いて」とキャスター付きのワゴンを指差した。
翔は言われた通りに、有聖の近くに置いてあるワゴンの上にそっと縄の束を置く。ワゴンの上には大きなハサミやカラビナなどの補助具も置いてあった。
「あ、あの、お疲れ様」
「うん、翔くんもね。床はそこのモップで拭いてくれる? あの子、あんまり汗かいてないから汚れてはないと思うけど」
鏡の前だけでいいよ、と言われたので、鏡の横の棚に立てかけてあったモップでざっと床を拭き上げる。
その間に、有聖が折りたたみ式の大きめな踏み台を持ってきた。そして、それに登って、フックに体重をかけるように引っ張った。
それを不思議そうに見ていたのがわかったのか、有聖の声が降ってくる。
「大丈夫とは思うけど、念のために確認しとかないとね。耐用重量とかもきちんと考えてあるし、定期的に点検もされてるから安全だとは思うけど、万が一このフックを止めてるボルトが弛んでると困るから、毎回確認した方がいいんだよ」
そう言って、有聖は場所を移動しながら天井についたフックを一つずつ確認していく。
なるほど。
確かにフックを固定しているボルトが弛んでいると怖い。
(本当、しっかりしてる、んだよな……)
そうこうしているうちに茜が次のカップルを連れてきた。
男性の二人組。二人ともカジュアルスーツを着て、スタイリッシュだ。二人とも背が高い。
茜に手招きされ、折りたたみ式の踏み台を持って部屋の隅に移動した。
「チェックした?」
「有聖さんがほとんどやってくれた。フックとカラビナも大丈夫。床はモップで拭いたよ」
「オッケ。えらいね」
わしゃわしゃと頭を掻き回され、翔はくすぐったくて首をすくめた。
有聖が客に声をかける声が聞こえる。
「何かご希望はありますか?」
「俺、あまりよくわかってないんですが、……裸でも縛ってもらえます?」
「構いません。緊縛以外のプレイはしませんが、それでもよければ」
話している方の男が頷く。
「吊りとかも? きつめに吊ってもらいたいのかなって思うけど……、どう?」
男がパートナーの顔を覗き込む。
「いや? でも、好きなんだよね?」
聞かれた方はやや顔が引き攣っていて、何かを言いかけたのか口が少し動いたが、結局何も言わずに小さく頷いた。
その様子をみながら、有聖は淡々と客の希望を確認し、体重や緊縛の経験なども聞き出していく。
「ショウちゃん、廊下行くよ」
邪魔をしないようにこそりと囁いた茜について、一旦部屋を出た。
「大丈夫?」
「あ、うん。なんか……思ってたのと違った」
にこりともせず淡々と対応している有聖はまるで別人みたいだった。淫猥な雰囲気もなく、本当に冷淡で事務的に縛っているだけに見えた。
「そか、そか。じゃ、また十五分後くらいに同じように交換ね。ホールがちょっと忙しそうだから、私がみてくるね。ショウちゃんはここで待機っていうか見ててもいいよ。はい、これインカム持ってきたからつけて。あと、カード渡しとくから」
「え、あ、でもっ――」
「大丈夫、大丈夫。コトリさんも慣れてるし、何か困ったことがあったらすぐインカムしてくれたらいいからさ。あと、今の二人が終わったら、インカムちょうだい」
茜がひらひらと手を振ってフロアの方に出ていってしまった。
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いつも読んでいただきありがとうございます。
風邪をひいてしまって、なかなか書く時間がとれないでいます。
2~3日に1回くらいのペースで少しずつ更新します。
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