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「なんで急に、こんなこと聞いたの?」
「颯斗さんが……アドバイスくれたんだ。有聖さんはなんでも答えてくれるから、ちゃんと聞けって。あと、全部曝け出して泣いたりするのも悪くないって言ってた」
「ああ、彼、穂仁原さんの奴隷だからね」
「……やっぱり、そうなの?」
未だに信じられないでいる事実を、なんでもないことのようにさらりと言われてしまった。
「そうだよ。穂仁原さんに支配されてる。普段はそういうそぶりは見せないけどね」
「そっか……」
「気になる? 今度、穂仁原さんに頼んでみようかな。颯斗くんを調教しているところを見せてもらえませんかって。見てみたくない?」
颯斗さんとオーナーの……。
颯斗も翔がされたようにお尻を叩かれると言っていた。他のことも。でも、穂仁原のためなら我慢できると。
穂仁原はどんな風に颯斗を叩いたりするのだろうか。パドルも使われたことがあるようだった。他の鞭も、きっと使われたことがあるだろう。颯斗も泣いて許しをこうのだろうか。
見てみたい。
「……っ」
ごくりと喉がなった。
「――翔くん?」
呼びかけられて、はっと目をしばたく。
なんてことを想像してしまったのだろう。
「颯斗くんが虐められてるの想像しちゃったのかな? 穂仁原さんは経験豊富だから、颯斗くんも大変だろうね。ストレートだし、根っからのMじゃないし。この前食事に行ったときのこと覚えてる? あれは筋肉痛なんかじゃなかったと思うよ」
ふふ、と有聖の手が優しい手つきで翔の太ももからお尻にかけての側面を撫で上げた。
二週間ほど前に初めて有聖と出会ったときの夜のことだ。颯斗と穂仁原は遅れてきて、そのときには颯斗の様子がおかしかった。座ろうとしたとき顔を顰めて――。
「まさか!」
「そのまさかだよ。ちょっと前までの翔くんと一緒だ。時間がなかっただろうから、そこまで酷くはされなかったのかもしれないけどね」
二人が遅れてきたのは、ほんの二十分か三十分というところだ。翔たちが店をでた後に、あの店には颯斗と穂仁原の二人だけ。そこで、二人だけの淫靡な時間を過ごしたというのだろうか。
「颯斗くんは、穂仁原さんに言われたらどこでもそれを受け入れる。翔くんならわかるだろう? 颯斗くんの辛さが。チノパンの下は真っ赤で、座ってじっとしているのも辛い。本当だったら、夕食なんてキャンセルして休みたかったはずだ。でも、彼は穂仁原さんと一緒に来たよね」
颯斗はどんな思いであの場に来たのだろうか。あの時、翔は何も知らなかった。けれど、今はもうあの痛みと熱を知っている。
どれほど叩かれたのかはわからないが、おそらくは翔と同じくらい、いやそれ以上かもしれない。だとしたら、とてもみんなで食事なんて気分ではなかったにちがいない。
だけど、穂仁原に連れられて、約束どおりに来たのだ。それは、単なるプレイではない。お尻をぶたれるまではプレイだったとしても、レストランまで颯斗が来たのはプレイとは言えないような気がした。もっと違うところで、縛られている――支配されているのだ、穂仁原に。
「……そういう、関係が、有聖さんが望むものなの?」
「どうだろう。そういうのも悪くないけどね。……具体的にこうだって言うのは難しいから。でも、まぁ、一つのいい主従関係ではあると思うよ」
「……SMって難しい」
ただ鞭で打たれたりするだけじゃない。いじめて、いじめられるだけの単純な関係じゃないんだ。
「そうだね。一口にSMといってもプレイ内容は多岐にわたるし、パートナーとの関係性もいろいろな形があるからね」
プレイだけのドライな付き合いを好む人もいれば、生活のすべてを共有しようとする人もいるらしい。
「仕事を辞めちゃう人もいるよ。部屋でペットみたいに飼われるのがいいって、裸で過ごす人もいるし。セックスとかそういう性的なことは一切しないっていう人もいる」
「そうなんだ」
「鞭が好きな人でも、痛みに耐える姿に興奮する人もいるし、鞭そのものに興奮する人もいるから、希望が全部マッチする相手はなかなかいないね」
「有聖さんは?」
鞭のどこ好きなの、と問いかければ、有聖はしばし考え込んだ。
「僕は、……痛みに耐える姿が好きだよ。さっきも言ったけど、僕は翔くんが我慢してくれる姿に興奮するんだ。鞭に限らず、どんなことでも僕のために僕が与えたものを受け止めてほしい」
「それって、言いなりになれってこと……?」
有聖は困ったように眉尻を下げた。
「いいつけは守ってほしいけど、言いなりにしたいわけじゃないんだよ」
それはどう違うのだろうか。
頭がこんがらがってきた。
「颯斗さんが……アドバイスくれたんだ。有聖さんはなんでも答えてくれるから、ちゃんと聞けって。あと、全部曝け出して泣いたりするのも悪くないって言ってた」
「ああ、彼、穂仁原さんの奴隷だからね」
「……やっぱり、そうなの?」
未だに信じられないでいる事実を、なんでもないことのようにさらりと言われてしまった。
「そうだよ。穂仁原さんに支配されてる。普段はそういうそぶりは見せないけどね」
「そっか……」
「気になる? 今度、穂仁原さんに頼んでみようかな。颯斗くんを調教しているところを見せてもらえませんかって。見てみたくない?」
颯斗さんとオーナーの……。
颯斗も翔がされたようにお尻を叩かれると言っていた。他のことも。でも、穂仁原のためなら我慢できると。
穂仁原はどんな風に颯斗を叩いたりするのだろうか。パドルも使われたことがあるようだった。他の鞭も、きっと使われたことがあるだろう。颯斗も泣いて許しをこうのだろうか。
見てみたい。
「……っ」
ごくりと喉がなった。
「――翔くん?」
呼びかけられて、はっと目をしばたく。
なんてことを想像してしまったのだろう。
「颯斗くんが虐められてるの想像しちゃったのかな? 穂仁原さんは経験豊富だから、颯斗くんも大変だろうね。ストレートだし、根っからのMじゃないし。この前食事に行ったときのこと覚えてる? あれは筋肉痛なんかじゃなかったと思うよ」
ふふ、と有聖の手が優しい手つきで翔の太ももからお尻にかけての側面を撫で上げた。
二週間ほど前に初めて有聖と出会ったときの夜のことだ。颯斗と穂仁原は遅れてきて、そのときには颯斗の様子がおかしかった。座ろうとしたとき顔を顰めて――。
「まさか!」
「そのまさかだよ。ちょっと前までの翔くんと一緒だ。時間がなかっただろうから、そこまで酷くはされなかったのかもしれないけどね」
二人が遅れてきたのは、ほんの二十分か三十分というところだ。翔たちが店をでた後に、あの店には颯斗と穂仁原の二人だけ。そこで、二人だけの淫靡な時間を過ごしたというのだろうか。
「颯斗くんは、穂仁原さんに言われたらどこでもそれを受け入れる。翔くんならわかるだろう? 颯斗くんの辛さが。チノパンの下は真っ赤で、座ってじっとしているのも辛い。本当だったら、夕食なんてキャンセルして休みたかったはずだ。でも、彼は穂仁原さんと一緒に来たよね」
颯斗はどんな思いであの場に来たのだろうか。あの時、翔は何も知らなかった。けれど、今はもうあの痛みと熱を知っている。
どれほど叩かれたのかはわからないが、おそらくは翔と同じくらい、いやそれ以上かもしれない。だとしたら、とてもみんなで食事なんて気分ではなかったにちがいない。
だけど、穂仁原に連れられて、約束どおりに来たのだ。それは、単なるプレイではない。お尻をぶたれるまではプレイだったとしても、レストランまで颯斗が来たのはプレイとは言えないような気がした。もっと違うところで、縛られている――支配されているのだ、穂仁原に。
「……そういう、関係が、有聖さんが望むものなの?」
「どうだろう。そういうのも悪くないけどね。……具体的にこうだって言うのは難しいから。でも、まぁ、一つのいい主従関係ではあると思うよ」
「……SMって難しい」
ただ鞭で打たれたりするだけじゃない。いじめて、いじめられるだけの単純な関係じゃないんだ。
「そうだね。一口にSMといってもプレイ内容は多岐にわたるし、パートナーとの関係性もいろいろな形があるからね」
プレイだけのドライな付き合いを好む人もいれば、生活のすべてを共有しようとする人もいるらしい。
「仕事を辞めちゃう人もいるよ。部屋でペットみたいに飼われるのがいいって、裸で過ごす人もいるし。セックスとかそういう性的なことは一切しないっていう人もいる」
「そうなんだ」
「鞭が好きな人でも、痛みに耐える姿に興奮する人もいるし、鞭そのものに興奮する人もいるから、希望が全部マッチする相手はなかなかいないね」
「有聖さんは?」
鞭のどこ好きなの、と問いかければ、有聖はしばし考え込んだ。
「僕は、……痛みに耐える姿が好きだよ。さっきも言ったけど、僕は翔くんが我慢してくれる姿に興奮するんだ。鞭に限らず、どんなことでも僕のために僕が与えたものを受け止めてほしい」
「それって、言いなりになれってこと……?」
有聖は困ったように眉尻を下げた。
「いいつけは守ってほしいけど、言いなりにしたいわけじゃないんだよ」
それはどう違うのだろうか。
頭がこんがらがってきた。
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