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目をあけると、翔は見覚えのない部屋にいた。ころんと寝返りを打つと、お尻がシーツに擦れて痛みが走った。
「いっ! ……」
俯せに戻って、ふかふかの枕に顔を埋める。
「起きたの、翔くん?」
優しい声が遠くから聞こえてきた。聞き覚えがある声だ。
「んー、誰?」
「まだ寝ぼけてるの? 今日は学校はいいの?」
――学校?
「……ゼミはあるけど……」
「けど?」
「休もうかな」
「ずる休みはだめだよ。そろそろ起きなさい。八時半だよ」
「んー、まだ八時半?」
まだ眠い、と足をぱたぱたさせる。
ベッドの端がしずみこんで、声の主が翔の頭を撫でた。
「もう八時半。ご飯出来てるよ」
声がする方に振り向くと、有聖が翔の顔を覗き込んでいる。
「有聖、さん?」
「うん。気分は?」
――あ、そっか……俺、あのまま……
「わあー!!」
昨夜の一部始終を思い出して、がばっと体を起こす。シーツの感触が心地よいと思ったのは、翔が素っ裸で包まっていたからだった。
「いってぇー!」
ぺたんとベッドの上に座り込んで、尻の痛みに飛び上がった。慌てて四つん這いの格好になって体を支える。
「おはよう。目が覚めたみたいだね」
「有聖、さん……や、触らない、で!」
大きな手が翔の尻にふれる。さわさわと感触を確かめるようになでられて痛い。
「そんな格好するから、触ってほしいのかと思って。痛む?」
痛いに決まってる。あれだけひどく叩かれたのだ。まだすこしじんじんしている。
「どうなってんの?」
自分で見るのはちょっと怖い。
「ん、紅くなってる。しばらくはイスに座るのも大変かもね。柔らかいクッションひくといいよ」
「……ひどい」
同意の上でのことだが、思わず恨み言が口をついた。全裸で四つん這いというのもマヌケすぎるので、薄いシーツを体に巻きつけてそろりと腰を下ろす。
「そうだね。手加減はしたんだけど、初めてだったから辛かったね」
「あれで、手加減してるの?」
あれ以上したらお尻が壊れてしまう。あれでもよく我慢できたと思うのに。
「もちろん。ウォームアップもしたし、乗馬鞭は無しにしてあげたよね。最後のパドルも二十回だけだったでしょ?」
「ウォームアップって……。有聖さんは、もっと叩くのがいいの?」
お尻叩きにウォームアップは必要なのか、というのは愚問なのだだろうか。SMの世界では当たり前なのかもしれない。
「いや、昨日のはあれで満足してるよ。泣きながら、必死に我慢してたし、今の翔くんにはあれが限界だったと思う」
「有聖さんは、何が……どうして叩きたいの?」
「翔が痛いこと、辛いこと、嫌だ、やりたくないって思うことを、僕のために我慢してる姿に興奮する。僕の膝にしがみついて耐えてて、すごく可愛かったよ。セーフワードも言わなかったね。木のパドルであんなに頑張れるとは、正直思ってなかった」
褒められて、少し嬉しかった。今もひりつくお尻の痛みは全然嬉しいものではないのに、彼に褒められると我慢できてよかったと言う気分になる。
「すごく、痛かった」
「うん、知ってるよ。もし翔くんが絶対に嫌ならもうしない」
「俺がいいよって言ったら、またするの?」
「うん、またする。……もっとひどいこともするかもしれない。洗濯ばさみで乳首を挟んだり、アナルの拡張とかペニスに尿道ブジーを入れるのもいいね。たくさん虐めてあげる。付き合いきれないと思ったらそう言って。無理強いするのは趣味じゃない」
「それって、……すごい矛盾してる」
翔が嫌がることをしたいのに、無理強いはしたくないなんて。今有聖が言ったことをされるとなったら、翔は泣いて嫌がるにちがいないのに。
「そうだね、ごめんね」
ほんの少し悲しそうな顔をして、有聖がそっと翔を抱きしめた。額に柔かなキスをして、大きな手が頭をまさぐる。
「……だからこそのお試しなんだろ? 俺……あんなことされたけど、まだ有聖さんのこと知りたいと思うよ」
「ありがとう、翔」
翔は有聖の背中に腕を回して、そっと触れるだけの口づけをした。
「いっ! ……」
俯せに戻って、ふかふかの枕に顔を埋める。
「起きたの、翔くん?」
優しい声が遠くから聞こえてきた。聞き覚えがある声だ。
「んー、誰?」
「まだ寝ぼけてるの? 今日は学校はいいの?」
――学校?
「……ゼミはあるけど……」
「けど?」
「休もうかな」
「ずる休みはだめだよ。そろそろ起きなさい。八時半だよ」
「んー、まだ八時半?」
まだ眠い、と足をぱたぱたさせる。
ベッドの端がしずみこんで、声の主が翔の頭を撫でた。
「もう八時半。ご飯出来てるよ」
声がする方に振り向くと、有聖が翔の顔を覗き込んでいる。
「有聖、さん?」
「うん。気分は?」
――あ、そっか……俺、あのまま……
「わあー!!」
昨夜の一部始終を思い出して、がばっと体を起こす。シーツの感触が心地よいと思ったのは、翔が素っ裸で包まっていたからだった。
「いってぇー!」
ぺたんとベッドの上に座り込んで、尻の痛みに飛び上がった。慌てて四つん這いの格好になって体を支える。
「おはよう。目が覚めたみたいだね」
「有聖、さん……や、触らない、で!」
大きな手が翔の尻にふれる。さわさわと感触を確かめるようになでられて痛い。
「そんな格好するから、触ってほしいのかと思って。痛む?」
痛いに決まってる。あれだけひどく叩かれたのだ。まだすこしじんじんしている。
「どうなってんの?」
自分で見るのはちょっと怖い。
「ん、紅くなってる。しばらくはイスに座るのも大変かもね。柔らかいクッションひくといいよ」
「……ひどい」
同意の上でのことだが、思わず恨み言が口をついた。全裸で四つん這いというのもマヌケすぎるので、薄いシーツを体に巻きつけてそろりと腰を下ろす。
「そうだね。手加減はしたんだけど、初めてだったから辛かったね」
「あれで、手加減してるの?」
あれ以上したらお尻が壊れてしまう。あれでもよく我慢できたと思うのに。
「もちろん。ウォームアップもしたし、乗馬鞭は無しにしてあげたよね。最後のパドルも二十回だけだったでしょ?」
「ウォームアップって……。有聖さんは、もっと叩くのがいいの?」
お尻叩きにウォームアップは必要なのか、というのは愚問なのだだろうか。SMの世界では当たり前なのかもしれない。
「いや、昨日のはあれで満足してるよ。泣きながら、必死に我慢してたし、今の翔くんにはあれが限界だったと思う」
「有聖さんは、何が……どうして叩きたいの?」
「翔が痛いこと、辛いこと、嫌だ、やりたくないって思うことを、僕のために我慢してる姿に興奮する。僕の膝にしがみついて耐えてて、すごく可愛かったよ。セーフワードも言わなかったね。木のパドルであんなに頑張れるとは、正直思ってなかった」
褒められて、少し嬉しかった。今もひりつくお尻の痛みは全然嬉しいものではないのに、彼に褒められると我慢できてよかったと言う気分になる。
「すごく、痛かった」
「うん、知ってるよ。もし翔くんが絶対に嫌ならもうしない」
「俺がいいよって言ったら、またするの?」
「うん、またする。……もっとひどいこともするかもしれない。洗濯ばさみで乳首を挟んだり、アナルの拡張とかペニスに尿道ブジーを入れるのもいいね。たくさん虐めてあげる。付き合いきれないと思ったらそう言って。無理強いするのは趣味じゃない」
「それって、……すごい矛盾してる」
翔が嫌がることをしたいのに、無理強いはしたくないなんて。今有聖が言ったことをされるとなったら、翔は泣いて嫌がるにちがいないのに。
「そうだね、ごめんね」
ほんの少し悲しそうな顔をして、有聖がそっと翔を抱きしめた。額に柔かなキスをして、大きな手が頭をまさぐる。
「……だからこそのお試しなんだろ? 俺……あんなことされたけど、まだ有聖さんのこと知りたいと思うよ」
「ありがとう、翔」
翔は有聖の背中に腕を回して、そっと触れるだけの口づけをした。
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