のんびりガーデニング

ノコノコ

文字の大きさ
上 下
31 / 65

31 今日やったこと

しおりを挟む
「………どうですか。思い出しましたか?宰相閣下」

 肩を激しく上下させながら、息も絶え絶えな宰相閣下の姿に同情する気は一切起きない。体を拘束され口を塞がれては魔法も使えない。未だに困惑して目を彷徨わせている宰相閣下に溜息が出る。彼は前回の事が蘇っても自分の何が悪かったのか全く理解していなかった。それどころか、後悔すらしていないときた。

「あの大公家にしてやられましたね。いや、今回の貴方は喜々として大公家に尻尾を振って協力してましたね。その結果がコレだ。貴方の大事な国は内乱で滅亡寸前だ。ああ、国じゃない。王家と現政権が、でした」

 あからさまな皮肉が効いたのか、宰相の目は怒りで血走っていた。そんな目で睨まれても怖くもなんともないし、むしろ滑稽だった。
 その怒りは自分が馬鹿にされたというものだ。どこまでも自分が可愛いのだ。それに無自覚なのが余計に質が悪い。

 前回で、ブリジット様を失った原因の一つがこの男の存在に有る。

 真実を知った時は『被害者の父親』に早変わりだ。面の皮が厚いにも程がある。
 当時、宰相という立場と共にまだ公爵でもあった。ブリジット様の実父であり公爵家当主でありながら娘を糾弾する側に立つとはどういう了見だろうか。
 
 この男は被害者側ではなくだ。
 
 ミゲル様は情に厚い。
 悪く言うと情に脆い処があった。義父として涙ながらに謝罪すれば許されると本気で思っていたようだが、謝罪する時期はとっくに過ぎていた。しかもその事に気付かなかった。寧ろ、終わった頃に言われたせいで逆にミゲル様の怒りを買ってしまった。
 そもそも、娘が冤罪を掛けられてそれを鵜呑みにした男だ。
 ブリジット様を信じず、追い込んだ人間の一人だろうに。
 理解に苦しむ。

 結果的にそれらの行動が仇となったわけだ。

 宰相の地位も公爵の地位も何もかも取り上げられた。

 ブリジット様の件が起こる前から何かと「父親」として思うところはあったようだ。

 それでもブリジット様の実父。
 他の者達と同類にはできなかった。
 ミゲル様は義父を屋敷の地下牢に幽閉した。

 普通の幽閉では飽き足らなかったのだろう。
 日の光が当たらない場所で生涯を閉じる事を望んだ。
 親子として和解など以ての外だという考えは心の中をのぞくまでもなかった。
 


 
 今回は、ブリジット様を王家にとられる事なく無事だ。
 内乱が終結すれば、ミゲル様とブリジット様の双方がこの国の頂点に立たれる。

 都合の悪いことは直ぐに忘れる男は、「父親」という名目を恥ずかしげもなく晒すだろう。若い二人を支えるとか何とかいって。
 自分が裏切って踏みにじってきたという事すら忘れて――

「実の娘を裏切っておいて、義理の息子が許すと本気で思っているところは今も昔も変わらない。未来のある二人のために貴方は邪魔なんです」

 この男は今度こそ報いを受けるべきだ。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【画像あり】八重山諸島の犬猫の話

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
八重山の島々の動物たちの話。 主に石垣島での出来事を書いています。 各話読み切りです。 2020年に、人生初のミルクボランティアをしました。 扉画像は、筆者が育て上げた乳飲み子です。 石垣島には、年間100頭前後の猫が棄てられ続ける緑地公園がある。 八重山保健所には、首輪がついているのに飼い主が名乗り出ない犬たちが収容される。 筆者が関わった保護猫や地域猫、保健所の犬猫のエピソードを綴ります。 ※第7回ほっこり・じんわり大賞にエントリーしました。

ユーチューバーランキング

採点!!なんでもランキング!!
エッセイ・ノンフィクション
ランクマスターのランク野郎が、ユーチューバーをSランクなみの独断と偏見で採点していきます。

愛猫が癌になりまして。

べりーべりー
エッセイ・ノンフィクション
愛猫が癌(扁平上皮癌)になった飼い主の吐き出しエッセイもどきです。他サイトに掲載をしていたものを再掲しています。完結済みでリアルタイムで動いているわけではないです。他サイトのものは非公開済みです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

リアル男子高校生の日常

しゅんきち
エッセイ・ノンフィクション
2024年高校に入学するしゅんの毎日の高校生活をのぞいてみるやつ。 ほぼ日記です!短いのもあればたまに長いのもだしてます。 2024年7月現在、軽いうつ状態です。 2024年4月8日からスタートします! 2027年3月31日完結予定です! たまに、話の最後に写真を載せます。 挿入写真が400枚までですので、400枚を過ぎると、古い投稿の挿入写真から削除します。[話自体は消えません]

処理中です...