上 下
103 / 105
番外編・青年カインの年上の恋人

10

しおりを挟む
 服を着替えてから一階に降りて身繕いをし、遅い朝食兼昼食にパンケーキを作ることになった。

 カインが焼いたパンケーキにはボイルしたソーセージが添えられ、ニーナが用意したチーズクリームがかかっている。

 チーズクリームにはニーナが働く雑貨店で貰ったというナッツが練り込まれ、ナッツの香ばしさがチーズの風味を引き立てる工夫がされていた。

(一人の食事を作るのは億劫なのに、ニーナと作る食事はどうしてこんなに楽しいのだろうか)

 カインは自然と顔が綻ぶのを感じた。ニーナは食器棚からカラトリーを取り出して食卓に運んでいる。

「あー、緑色が無いよね。ハーブを引っこ抜いて来るよ」

 ニーナは食卓に並べたパンケーキを見て、思いついた風に言った。

「ニーナ、俺が行こう」
「ううん、大丈夫。カインはお茶を淹れてくれたら嬉しいかな」

 パタパタとニーナは外に出て行き、カインが湯を沸かして茶を淹れているとニーナがすぐに帰って来た。青々とした新鮮なハーブを手一杯に持っている。

「すぐにサラダにするから」

 楽しそうに尻尾をゆっくりと振ってハーブをサラダに仕立て上げている。ピンと耳が立っていて可愛らしいなとカインは愛しさを感じた。

「カイン、サラダはこの量で足りる?」

 カインの方がよく食べるので、カインのパンケーキの皿に溢れそうな程ハーブサラダを載せながらニーナが尋ねて来た。

「ああ、十分だ」
「足りなかったらオレの分をあげるね」
「……そこまで食い意地ははっていない」
「はははっ、そんな風に思ってないよ」

 そう言ってニーナがカインを肘で突いた。いたずらっぽく上目遣いで見つめて来る表情に胸が高鳴り、カインが屈んで顔を近づけるとニーナがきょとんとした後に笑って唇を合わせてくれた。

「ん……」
「ニーナ……」

 ニーナの腰に手を回し、ねだる様にして何度も唇を合わせた。シャツの裾から手を入れ、背中を撫でるとニーナは身をよじった。

「こーら、服の中に手を入れるなぁ」
「……ダメなのか」
「パンケーキが冷めるだろ」

 ニーナがカインをグッと押し退けたので、カインは渋々手を離した。

「そんなにオレとイチャイチャしたいんだ」
「ああ」
「ふっ……素直。また今夜、ね?」

 ニーナが頬を染めてニコリと笑った。

(やはり、俺はニーナの前では余裕が無い年下だな)

 カインは反省はしたが、後悔はしていなかった。今日もニーナと愛を確かめ合えると思うと、胸が張り裂けそうな程幸せだった。

「ニーナといると幸せだ」
「も、もう、早くご飯食べようよ!」
「ああ、そうだな」

 カインはくつくつと笑い、食卓に向かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

僕の王子様

くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。 無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。 そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。 見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。 元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。 ※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。

倫理的恋愛未満

雨水林檎
BL
少し変わった留年生と病弱摂食障害(拒食)の男子高校生の創作一次日常ブロマンス(BL寄り)小説。 体調不良描写を含みます、ご注意ください。 基本各話完結なので単体でお楽しみいただけます。全年齢向け。

sugar sugar honey! 甘くとろける恋をしよう

乃木のき
BL
母親の再婚によってあまーい名前になってしまった「佐藤蜜」は入学式の日、担任に「おいしそうだね」と言われてしまった。 周防獅子という負けず劣らずの名前を持つ担任は、ガタイに似合わず甘党でおっとりしていて、そばにいると心地がいい。 初恋もまだな蜜だけど周防と初めての経験を通して恋を知っていく。 (これが恋っていうものなのか?) 人を好きになる苦しさを知った時、蜜は大人の階段を上り始める。 ピュアな男子高生と先生の甘々ラブストーリー。 ※エブリスタにて『sugar sugar honey』のタイトルで掲載されていた作品です。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

ぼくの太陽

真木もぐ
BL
夏休みに田舎から出て来たティムは、叔父の経営するカフェでバイト中、太陽みたいに笑う青年に出会う。自らを「クッキー」と名乗る陽気な青年に惹かれるティム。この恋を、ひと夏の思い出にしてたまるか! 大型犬×子犬のボーイズラブ。 ※本編完結済みの「箱庭の子ども」スピンオフ作品ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。 ※この作品は、小説家になろう、エブリスタ等にも掲載します。 表紙は「フリー素材ぱくたそ」様より。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

聖女召喚でなぜか呼び出された、もう30のお兄さん(自称)ですが、異世界で聖人することにしました。

藜-LAI-
BL
三十路のお兄さん(自称)ですが聖人出来ますか? 夜の街で王子として崇められるホストのリイトこと網浜依斗は、依斗の店のオーナーである白石秋成をストーカーから庇った瞬間、眩しい光に包まれて異世界であるサーチェスに召喚されてしまった!? 『俺がエロいんじゃない!これのせいでムラムラするんだ!!』 攻め→網浜依斗(聖人)30 受け→ジレーザ(神官)28 ※受け攻め固定はなかなか書かないのでドキドキ。

処理中です...