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番外編・青年カインの年上の恋人
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御者に飛ばして欲しいと伝えると、カインが考えていたよりも一時間程早く王都の城門前に到着した。
王都は城郭都市となっており、出入りに関しては毎回出入管理の審査を受ける必要がある。夜勤の門番達は夜遅くに王都に着いた馬車を訝しげに見つめたが、カインがA級冒険者であることが分かるとすんなりと審査が通った。
そのまま家の近くまで馬車を走らせ、あともう少しで家に着くという辺りでカインは馬車を降りた。
(ニーナは耳が良いから、馬車が家の前まで来れば起こしてしまうかもしれない)
もう日付が変わる頃合いだろうか。ニーナはカインの家に来てから規則正しい生活をしているので眠っているだろうとカインは考えていた。
御者に礼を言い、多めに料金を渡すと盛大に感謝され、御者は鼻歌を歌いながら帰って行った。「出来るだけ飛ばして欲しい」との要望に応えてくれたので感謝したいのはこちらの方だった。
(ここから歩けば十五分程か)
周囲には魔法で灯っている街灯が点々とあり、密集とまではいかない距離感の民家が並んでいる。整備された石畳の道路や切り揃えられた街路樹が閑静な雰囲気を生み出していた。
カインは久々の王都の空気にほっと息をついた。A級冒険者になってからは遠征の魔獣討伐を主に行っていたため、王都にいる時間の方が短くなっている。
カインが魔獣討伐の遠征に進んで参加していたのは、単純に報酬が高いのと、自分以外誰もいない家にずっといても寂しいという理由からだった。
(だが、今はそうではない)
今は家にはニーナがいてくれる。誰もいない家で寝起きする寂しさはもう随分と昔の思い出になってしまった。カインは一抱えの荷物と得物が入った革製の筒袋を背負い、石畳を歩き出した。
(遠征先でもニーナのことを思い出しては、早く帰りたくて仕方なかった)
今回の遠征先の地方は王都から馬車で一晩程の距離だったので、すぐに馬車を手配出来たが毎回そうだとは限らない。
(今後しばらくは遠征を控えて……ダンジョンの補助役や剣術指南を増やしていくべきだろうか)
カインは今でこそA級冒険者だが、元々は教師かギルド職員を目指していた。姉が危なっかしい人間だったこともあってか、カインは誰かを手助け出来る人間になりたかった。
(後日、盾狼の事務方に相談してみよう)
今は姉と同じ冒険者団体『盾狼』に所属して生計を立てているが、ニーナと結婚するとなれば今後の人生設計を考えていく必要がある。
(……そもそもニーナは俺と本当に結婚してくれるのか?)
カインははっとして歩みを止めた。
ニーナ――ニナルヤ・ジオは儚げな風貌をした獣人の青年だ。涼やかな青い目は澄んだ海の色をしており、見つめられるだけでカインの胸は騒がしくなってしまう。そんな儚げな見た目をしているのに明るく世話焼きな性格で、カインは初めて出会った時からニーナに夢中になってしまった。
(恋や愛がよく分かっていなかった俺のような人間を夢中にさせるくらい……ニーナは魅力的だ。そんな魅力的なニーナが、図体ばかり大きくて仕事しか取り柄のない俺と一緒になってくれるのだろうか……)
空に浮かぶ月が雲で陰り、夜が更に暗く深くなっていく。カインは遠征の疲労から感情が後ろ向きになっていた。
(ダメだ。気持ちが暗くなっている……早く帰ってベッドに潜り込んで寝てしまおう)
カインはふるふると首を振り、また石畳の道を歩き出した。
王都は城郭都市となっており、出入りに関しては毎回出入管理の審査を受ける必要がある。夜勤の門番達は夜遅くに王都に着いた馬車を訝しげに見つめたが、カインがA級冒険者であることが分かるとすんなりと審査が通った。
そのまま家の近くまで馬車を走らせ、あともう少しで家に着くという辺りでカインは馬車を降りた。
(ニーナは耳が良いから、馬車が家の前まで来れば起こしてしまうかもしれない)
もう日付が変わる頃合いだろうか。ニーナはカインの家に来てから規則正しい生活をしているので眠っているだろうとカインは考えていた。
御者に礼を言い、多めに料金を渡すと盛大に感謝され、御者は鼻歌を歌いながら帰って行った。「出来るだけ飛ばして欲しい」との要望に応えてくれたので感謝したいのはこちらの方だった。
(ここから歩けば十五分程か)
周囲には魔法で灯っている街灯が点々とあり、密集とまではいかない距離感の民家が並んでいる。整備された石畳の道路や切り揃えられた街路樹が閑静な雰囲気を生み出していた。
カインは久々の王都の空気にほっと息をついた。A級冒険者になってからは遠征の魔獣討伐を主に行っていたため、王都にいる時間の方が短くなっている。
カインが魔獣討伐の遠征に進んで参加していたのは、単純に報酬が高いのと、自分以外誰もいない家にずっといても寂しいという理由からだった。
(だが、今はそうではない)
今は家にはニーナがいてくれる。誰もいない家で寝起きする寂しさはもう随分と昔の思い出になってしまった。カインは一抱えの荷物と得物が入った革製の筒袋を背負い、石畳を歩き出した。
(遠征先でもニーナのことを思い出しては、早く帰りたくて仕方なかった)
今回の遠征先の地方は王都から馬車で一晩程の距離だったので、すぐに馬車を手配出来たが毎回そうだとは限らない。
(今後しばらくは遠征を控えて……ダンジョンの補助役や剣術指南を増やしていくべきだろうか)
カインは今でこそA級冒険者だが、元々は教師かギルド職員を目指していた。姉が危なっかしい人間だったこともあってか、カインは誰かを手助け出来る人間になりたかった。
(後日、盾狼の事務方に相談してみよう)
今は姉と同じ冒険者団体『盾狼』に所属して生計を立てているが、ニーナと結婚するとなれば今後の人生設計を考えていく必要がある。
(……そもそもニーナは俺と本当に結婚してくれるのか?)
カインははっとして歩みを止めた。
ニーナ――ニナルヤ・ジオは儚げな風貌をした獣人の青年だ。涼やかな青い目は澄んだ海の色をしており、見つめられるだけでカインの胸は騒がしくなってしまう。そんな儚げな見た目をしているのに明るく世話焼きな性格で、カインは初めて出会った時からニーナに夢中になってしまった。
(恋や愛がよく分かっていなかった俺のような人間を夢中にさせるくらい……ニーナは魅力的だ。そんな魅力的なニーナが、図体ばかり大きくて仕事しか取り柄のない俺と一緒になってくれるのだろうか……)
空に浮かぶ月が雲で陰り、夜が更に暗く深くなっていく。カインは遠征の疲労から感情が後ろ向きになっていた。
(ダメだ。気持ちが暗くなっている……早く帰ってベッドに潜り込んで寝てしまおう)
カインはふるふると首を振り、また石畳の道を歩き出した。
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