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素直になって側にいたい

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 カインの腕の中は温かく心地良い。ニーナはカインに抱きしめられたままポツリポツリと呟いた。

「オレの初恋はカインなんだ。今更素直になるなんて虫が良すぎるかもだけど……カインが不安にならないように、気持ちをちゃんと伝えるから……」
「俺も……こんなに人を好きになって、独占したいと感じるのはニーナが初めてだ。好きだ、ニーナ。俺はニナルヤが心の底から好きなんだ」
「嬉しいよ。カイン……オレも」

 本当の名を呼ばれ、見つめ合って唇を触れ合わせると、お互いを想い合っているのがより深く分かるような気がする。

(ああ……もっと、カインを感じたい……)

 カインの薄い唇に舌を這わせると、驚いたのか口が少しだけ開いたのでニーナはスルリと舌を口内に侵入させた。

「ッ……!」
「はぁ……ん……は……」
「ニー……ナ……」

 カインは驚いたようにビクッと体を震わせたが大人しくニーナの舌を受け止めてくれた。ニーナはカインの髪や耳を撫でさすり、舌をゆっくりと動かしていく。

「ん……んぅ……はぁ……カイン……」
「ッ……はぁ……はぁ……」

 熱い口内で舌を絡めると、カインはどうして良いか分からずにニーナをギュウギュウと抱きしめた。

 ニーナは力強く抱きしめられるのが堪らなくなり、カインの舌を吸い、上顎を舌先でスリスリとなぞり――

「はぁ……ニーナ……待って……くれ」

 カインはグイッとニーナの肩を掴んで引き剥がした。唇からツッと唾液の糸が伸びたのを舌で舐め取ると、真っ赤な顔をしたカインが微かに震えた。

(可愛い……カインは本当に可愛いな……)

 ジッと見つめていると、カインは何か言おうとしたが上手く言葉が出てこないようだった。

「ごめん。ちょっと止まらなくなっちゃった」
「大丈夫だ……謝らなくていいんだ……」
「病室の続きのキスを、カインとずっとしたかったんだ。恋人同士でしかしないようなキス……」
「俺も……したくなかったと言えば嘘になる。ただ……」

 言い難そうに口を閉じかけたが、何かを思い直すように首を振って言葉を続けた。

「……こういったキスに、どのように応じれば良いのか分からないので……ニーナに何かしてしまいそうな気分になるんだ」

 はぁっと甘いため息を漏らした。

「オレは何かされても構わないけど」
「……ニーナは俺に甘いな」
「カインに言われたくないよ」

 カインもニーナをだいぶ甘やかす傾向があるので、口を尖らせて言い返した。

「じゃあさ、一緒に……ゆっくりキスのやり方を勉強したいな。オレはさっきみたいにならない様に気をつけるから」
「……そんなことを、してもらっても良いのか?」
「カインが嫌じゃなければ」
「嫌なわけがないだろ……」

 肩を掴んでいた手が離され、ニーナの腰に手が添えられた。ニーナはカインの手をフサフサの尻尾で触れた。

「カインと勉強するの久しぶりだね」
「……そうだな」

 初めて出会った日も生真面目な大型犬と顔を突き合わせて性教育のような話をした。あの時の続きのようだなとニーナはクスクスと笑った。

「今日はいきなり実技だけど大丈夫?」
「その方が嬉しい」

 膝の上のニーナを赤い顔のまま暗い瞳が見つめた。ニーナはカインの顔を引き寄せ、チュッと音を立てて軽く唇を合わせた。

「ね、口開けて」
「分かった……」

 カインが軽く口を開くと、ニーナは舌でチロリとカインの唇を舐めた。

「勉強って言っても、あんまり教えることないかも。カインはすぐ上手になると思うし……だから……ゆっくりするから、今はオレのことを感じて欲しい」

 ニーナはカインの開いた唇に軽くキスをすると、上唇を優しく舌で舐め、何度か焦らすように食んだ。

 カインを戸惑わせないよう気をつけながら、ゆっくりとカインの唇を味わうように舐め、ゆるゆると舌を口内に侵入させた。

「ッ……ニーナ……」
「ん……んぅ……カ……イン、好き……」

 カインがピクンと震え、熱い口内で舌先がぶつかるとそっとお互いの舌を合わせた。

 舌同士を柔らかくと押し付け、ゆっくりと擦り合わせると、気持ちが昂ってつい性急に動きたくなってしまったが、カインの子犬のような表情を思い浮かべてニーナは何とか我慢した。

「は……あっ……ぁむ……」

 カインの熱い舌を吸い、唾液を絡めてジワジワと口内を動き回り、上顎を舌先でスリスリと撫でる。

「は……んん……カイン……」

 堪らなくなったのか、腰に回されていたカインの手がニーナの背中を撫でた。ニーナはゾクゾクとした快感を感じて、身をよじった。

「んぅ……ん……はぁ……」

 カインもおずおずと舌を動かし、お互いの粘膜がヌルヌルと擦れ合った。柔らかく、温かく、心地良くて、内側から熱い快楽が湧き上がっていった。

「んッ……んん……」
「ニー……ナ……はぁ……」

 大きな手がニーナの背中を這うように撫でる。尻尾をゆらゆらと降ってカインの手に触れると、キュッと尻尾を強く掴まれ、ニーナは驚いて唇を離した。

「ぅんッ……は……はぁ……はぁ……ん、カイン、いきなり……そんな掴んだら、びっくりしちゃうから」
「すまない……つい……」

 カインは慌てて尻尾を離すと、ニーナをジッと見つめた。

「これ以上は……確実にニーナに何かしてしまう」
「じゃあさ……する?」

 首を傾げて甘い声色で囁くと、カインの喉がゴクリと鳴った。

「今日はカインと一緒に眠りたいと思ってたし。一緒に眠るのなら、色んなことしたいなって思ってたんだけど……」

 途中から自分で言っていて恥ずかしくなって来たので自然と早口になった。もし断られても軽く流せば良い――ニーナは言葉を続けた。

「……まあ、昼間だし。カインもいきなりそんなこと言われたら困っちゃうよね! まだ恋人になったばっかりだし、そういうことはゆっくりでも良いって言うかさ」
「ニーナ……」

 カインはあわあわとしているニーナの頬に手を添えた。暗い瞳に真っ直ぐに見つめられ、ニーナはたじろいだ。

「……外が、まだ明るい」
「う、うん。そうだよね! ちょっと、堪らなくなっちゃってさ。オレ……カインの前だとはしゃぎ過ぎちゃうんだよね……んんッ!?」

 言い終わらない内に唇が塞がれ、舌先で唇を撫でられたので口を開くと、カインの舌がヌルリと入り込んで来た。

「あ! んん……ぁ……」
「ニーナ……ん………」

 カインの舌はニーナの口内を探り、歯列をなぞり、大きな手が優しく背や腰を撫でてくる。覚えたての動きを確認するようなキスにニーナは体を震わせた。

「ッ……ん……カイ……ン……」

 途切れ途切れに名を呼ぶと、カインの舌はスッと引き抜かれ、ニーナはぼんやりとしながらカインを見た。

「外は明るいし、夕食もニーナと食べていない。だから、その……」

 カインの瞳の奥では愛情と欲望がせめぎ合っている。自分を律するように少しの間目を閉じ、深呼吸をするとニーナに向き直って口を開いた。

「日が落ちてから続きをしたいと言うか……つまり、ニーナと眠る時間になってからが良いと言うか……」
「……うん」

 カインはトロンとした表情のニーナを見て、堪えるようにため息を漏らし、軽くキスをしてから顔を離した。

「……今夜、ニーナを抱きたい」

 ニーナはカインの言葉を聞き終えると、返事代わりにギュッと抱きつき、カインの赤くなった耳にそっと唇を落とした。

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