【完結/BL/R18】獣人のオレは娼館で働いているのに初心な大型犬に絆されて、それから

テルマ江

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素直になって側にいたい

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 辻馬車で王都の居住区に向かい、馬車を降りてからしばらく歩くとカインの家に辿り着いた。

 白い壁に橙色の屋根、ニーナの背より少しだけ低めの柵に囲まれたキレイで可愛らしい家だ。

「ニーナ」

 カインが柵の扉を開けて手招きをしたので、ニーナは中に入った。

「お邪魔しまーす……」
 
 柵の中に入ると、家の玄関に続く通路は灰色や茶色の石が模様を描く様に埋め込まれ石畳になっている。

 ニーナは足元の石畳の模様や庭を興味深く見渡しながら通路を歩いた。

(可愛い上に丁寧な造りの家だなあ)

 玄関近くの石畳の通路の両脇には花壇があったが何も植えられてはいない。だが土だけはきちんと耕されているようだった。

(カインは仕事で遠くに行くことがあるから、花を植えている場合じゃないんだろうな)

 姉の遺した大事な家なので、せめて土だけは耕しているのだろうか。おとぎ話のような家なのに生真面目なカインらしさを感じて、ニーナは玄関前でクスリと笑った。

「どうした?」

 柵の扉を閉めていたカインがいつの間にか隣に来ていたのでニーナは慌てた。

「えっと、王都の家っておとぎ話に出てくるみたいですごく可愛いなって」
「ああ、姉さんがこういった王都の伝統的な家が好きでな」
 
 カインは懐かしむように目を細めた。

「俺が住むには少々可愛らし過ぎるが、住心地はとても良いんだ」
「カインも負けないくらい可愛いよ」
「……そんなことを言うのはニーナくらいだからな」

 カインは困り顔で苦笑し、玄関の扉に鍵を差し込んで開けた。

「さあ、どうぞ入ってくれ」

 開けられた扉の中へ入るよう促され、ニーナは緊張しつつ家の中に入った。後からカインも続いて入り、パタリと扉が閉められた。

「ここがカインとお姉さんの家かあ……」

 ニーナは紙袋を抱きしめて周囲を見回した。扉を入ってすぐは応接間のようになっていて瀟洒しょうしゃなソファーセットと暖炉がある。壁際には風景画と物入れの棚があり、窓は刺繍が入ったカーテンが取り付けられていた。

(ゆったりしていて落ち着く部屋だなあ。レオナさんの趣味かな)

「ここは来客や団欒用の部屋で、衝立の向こうの扉を入ると廊下になっている」

 カインがニーナの旅行鞄をソファに置きながら言った。

「廊下の右手側には手洗いと風呂があって、突き当りに台所と食卓がある。階段を上がると二階だ。後でちゃんと案内しよう」

 カインはニーナの紙袋をスッと取り上げた。

「こちらは食卓に運んでおく。ニーナはソファに座っていてくれ。茶を淹れて来る」
「う、うん。ありがとう」

 ニーナがソファに座ると、カインが紙袋を持ったままこちらをまじまじと見つめた。

「どうしたの?」

 ニーナが首を傾げるとカインはフイと目をそらした。

「この家にニーナがいるのは良いものだなと感慨深くなっていた」
「そ、そうなんだ」
「……茶を淹れなくてはな」

 カインは照れくさそうに言って衝立の奥に消えた。ニーナは改めてカインの家に来たんだなと胸の音が騒がしくなった。

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