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キスは好きな人と
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「ね、こんな風に話すのってさ、久しぶりだよね」
「そうだな。久々だ」
最後のデートから二週間は経っている。告白したことをどう切り出そうかともじもじしていると、カインは切った果物を皿に載せ、一切れを自らの口に放り込んだ。
「え……それオレにくれるんじゃないの!?」
「ニーナは起きたばかりだ。固形物は止めた方が良い」
検査中、ニーナは医者に空腹を訴え、昼食にと重湯を出されたが全く足りなかった。治療術の影響なのか、ニーナは病み上がりなのにやたらと空腹だった。
「ちょっとくらいなら、食べてもバレないんじゃないかな……」
我ながら意地汚いことを口走ったなと頬を染め「今のは忘れて」と小さな声で付け足すと、カインは口元を押さえてくつくつと笑った。
「ふふ……すまない、冗談だ。先生にも少量の果物なら食べても良いと聞いている」
「な、何だよ! もうっ」
カインは果物が載った皿を差し出した。ニーナは「ありがとう」と言い、一切れ摘むと果肉にシャリリとかじりついた。甘酸っぱい味が口内に広がり、目が覚める様に瑞々しい。
「はぁ……美味しい……」
「そうか、良かった」
ニーナがあっという間に一切れ平らげ、もう一切れに手を伸ばすとカインは愛しそうにその光景を眺めている。
こうして普通にしているとカインは優しく穏やかな大型犬だ。あの日、魔獣を腕力で殴り抜いた姿は今のカインからは想像出来ない。
「……やっぱり、ギャップがあるよなあ」
「何の話だ?」
「んーん、何でもない……」
ニーナは果物をかじりつつ、首をふるふると振った。
「ニーナ、俺はそろそろ行く」
「え、もう?」
「ああ、名残惜しいが」
カインは果物の皿をベッド脇の小さな机に置き、手甲をつけ直した。
「平原に野営するので、次に会うのは二日後になる」
「そっか……二日後かぁ……」
ニーナがシュンとしているとカインは苦笑した。
「そんな顔をされると、後ろ髪引かれてしまうな」
「……ごめん。カインはお仕事なのに」
「もうひと息で平原の厄介事は落ち着く。きっとニーナの退院までには……それで、その……」
ニーナの手を取ると、深呼吸してから真剣な顔になった。
「全て終わったら、一緒に王都へ帰ろう」
「カイン……」
ニーナがコクリと頷くとカインは満足そうに微笑んだ。
「では、行って来る」
手を離して立ち上がろうとしたカインをニーナはグッと引き寄せた。
「ニーナ?」
「もうちょっとだけ、こっち来て」
「ああ、分かっ……」
返事を聞く前にニーナはカインの唇に自分の唇を重ねた。
「い、行ってらっしゃい」
「…………あ」
すぐに顔を離すと、カインは何が起こったのか分からないといった表情で唇を押さえている。
「今のは……」
「ほら、もう行かないとなんだろ!」
「あ、ああ、そうだな……」
カインは狼狽えているのか、よろよろと立ち上がった。
「……怪我しないで帰って来てね。絶対だよ」
ニーナは自分のことを棚に上げてそう言った。カインは唇を押さえたままニーナを見て目を細めた。
「ニーナ、顔が今までにないくらいに真っ赤だな」
「う、うるさいなぁ! ほら、遅刻しちゃうよ!」
カインは吐息を漏らし、手甲越しにニーナの髪を優しく撫でた。
「帰って来たら、またして欲しい」
「……ん」
ニーナは病室を出て行くカインを見送り、一人になると気恥ずかしさからベッドの上をゴロゴロと転げ回った。
「そうだな。久々だ」
最後のデートから二週間は経っている。告白したことをどう切り出そうかともじもじしていると、カインは切った果物を皿に載せ、一切れを自らの口に放り込んだ。
「え……それオレにくれるんじゃないの!?」
「ニーナは起きたばかりだ。固形物は止めた方が良い」
検査中、ニーナは医者に空腹を訴え、昼食にと重湯を出されたが全く足りなかった。治療術の影響なのか、ニーナは病み上がりなのにやたらと空腹だった。
「ちょっとくらいなら、食べてもバレないんじゃないかな……」
我ながら意地汚いことを口走ったなと頬を染め「今のは忘れて」と小さな声で付け足すと、カインは口元を押さえてくつくつと笑った。
「ふふ……すまない、冗談だ。先生にも少量の果物なら食べても良いと聞いている」
「な、何だよ! もうっ」
カインは果物が載った皿を差し出した。ニーナは「ありがとう」と言い、一切れ摘むと果肉にシャリリとかじりついた。甘酸っぱい味が口内に広がり、目が覚める様に瑞々しい。
「はぁ……美味しい……」
「そうか、良かった」
ニーナがあっという間に一切れ平らげ、もう一切れに手を伸ばすとカインは愛しそうにその光景を眺めている。
こうして普通にしているとカインは優しく穏やかな大型犬だ。あの日、魔獣を腕力で殴り抜いた姿は今のカインからは想像出来ない。
「……やっぱり、ギャップがあるよなあ」
「何の話だ?」
「んーん、何でもない……」
ニーナは果物をかじりつつ、首をふるふると振った。
「ニーナ、俺はそろそろ行く」
「え、もう?」
「ああ、名残惜しいが」
カインは果物の皿をベッド脇の小さな机に置き、手甲をつけ直した。
「平原に野営するので、次に会うのは二日後になる」
「そっか……二日後かぁ……」
ニーナがシュンとしているとカインは苦笑した。
「そんな顔をされると、後ろ髪引かれてしまうな」
「……ごめん。カインはお仕事なのに」
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ニーナの手を取ると、深呼吸してから真剣な顔になった。
「全て終わったら、一緒に王都へ帰ろう」
「カイン……」
ニーナがコクリと頷くとカインは満足そうに微笑んだ。
「では、行って来る」
手を離して立ち上がろうとしたカインをニーナはグッと引き寄せた。
「ニーナ?」
「もうちょっとだけ、こっち来て」
「ああ、分かっ……」
返事を聞く前にニーナはカインの唇に自分の唇を重ねた。
「い、行ってらっしゃい」
「…………あ」
すぐに顔を離すと、カインは何が起こったのか分からないといった表情で唇を押さえている。
「今のは……」
「ほら、もう行かないとなんだろ!」
「あ、ああ、そうだな……」
カインは狼狽えているのか、よろよろと立ち上がった。
「……怪我しないで帰って来てね。絶対だよ」
ニーナは自分のことを棚に上げてそう言った。カインは唇を押さえたままニーナを見て目を細めた。
「ニーナ、顔が今までにないくらいに真っ赤だな」
「う、うるさいなぁ! ほら、遅刻しちゃうよ!」
カインは吐息を漏らし、手甲越しにニーナの髪を優しく撫でた。
「帰って来たら、またして欲しい」
「……ん」
ニーナは病室を出て行くカインを見送り、一人になると気恥ずかしさからベッドの上をゴロゴロと転げ回った。
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