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愛しさと逃げ出したい気持ち・後編
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御者と護衛が話し合いを始めてしばらく経ち、話がまとまったのか御者から「通過予定の集落が魔獣に襲われたと伝令が届いた」と説明を受けた。
それを聞いたニーナと乗客達は「やっぱりな」と思いつつも、皆青ざめた顔になった。すでに別の集落に避難出来るよう伝令を出したらしく、馬車は別のルートを通り、予定外の宿泊を伴うこととなった。
(仕方ないとはいえ、最さきが悪いスタートになっちゃったな~)
集落に着くと、乗客達は小さな宿屋に案内された。宿屋というよりは宿泊出来るように改築した民家のような印象だ。
客室には箱を並べたような固いベッドと小さな机と照明くらいしかない。ニーナはやることもないので、ベッドに大の字に寝転び、埃っぽい天井を見つめて目を細めた。
(本来なら平原を抜けた先にある宿場町に着いている頃合いだ。オレってもしかして……けっこう運が悪いのかな?)
窓の外を見るともう夕暮れ時だ。宿代は王都から補填されるらしく、路銀が減ることはなかったのでほっとしたが、いつまで足止めになるかは未定だった。
(避難先がもうちょっと大きな集落なら良かったな。この規模の集落だと、足止めされている間に出来る仕事とかなさそうだし)
身動きがとれない間、日雇い仕事でもあれば路銀の足しになるのになとニーナはため息を漏らした。
避難先は平原に点在する集落の一つだったが、宿屋と民家を合わせても建物はかろうじて三十軒あるかといった規模だ。
(まあ、一応明日にでも仕事がないか聞いてみよう。皿洗いでも掃除でも何でも……体を動かしていないと良くないこと考えちゃいそうだし)
魔獣から離れているとはいえ、この集落が襲われないとは言い切れない。そんな風に考えると胸がザワザワと落ち着かなくなった。
(この国は平和だし、紛争から避難しているわけじゃないけど、何だかここに来てからずっと落ち着かない……)
小さな集落に自分の故郷を重ねているのかもしれない。ニーナはゴロリと横を向き、枕元に置いている旅行鞄から絵葉書を取り出した。
(手紙書いて、気を紛らわせようかな)
絵葉書には国境沿いの町の風景が可愛らしく描かれている。しばらく絵葉書を見つめたり、便箋を数枚取り出してはベッドの上で転がった。
(葉書と便箋どっちにしよう。まずは近況と……あとはカインは元気にしているかとか……それから、カインの話がまた聞きたいって書いて……)
書くことをまとめようと考えているのに、カインの顔を思い出すと胸が切なくなった。ニーナは自分のふさふさの尻尾を捕まえて唸った。
(うぅ……胸がまたキュンて鳴って……ちょっと寂しくて苦しい。カインにまた、撫でてもらいたいって思ってしまう)
そんな風に唸りながらも、これは本当に「恋心」なのかとニーナはまだ自分の気持ちを疑っていた。
それを聞いたニーナと乗客達は「やっぱりな」と思いつつも、皆青ざめた顔になった。すでに別の集落に避難出来るよう伝令を出したらしく、馬車は別のルートを通り、予定外の宿泊を伴うこととなった。
(仕方ないとはいえ、最さきが悪いスタートになっちゃったな~)
集落に着くと、乗客達は小さな宿屋に案内された。宿屋というよりは宿泊出来るように改築した民家のような印象だ。
客室には箱を並べたような固いベッドと小さな机と照明くらいしかない。ニーナはやることもないので、ベッドに大の字に寝転び、埃っぽい天井を見つめて目を細めた。
(本来なら平原を抜けた先にある宿場町に着いている頃合いだ。オレってもしかして……けっこう運が悪いのかな?)
窓の外を見るともう夕暮れ時だ。宿代は王都から補填されるらしく、路銀が減ることはなかったのでほっとしたが、いつまで足止めになるかは未定だった。
(避難先がもうちょっと大きな集落なら良かったな。この規模の集落だと、足止めされている間に出来る仕事とかなさそうだし)
身動きがとれない間、日雇い仕事でもあれば路銀の足しになるのになとニーナはため息を漏らした。
避難先は平原に点在する集落の一つだったが、宿屋と民家を合わせても建物はかろうじて三十軒あるかといった規模だ。
(まあ、一応明日にでも仕事がないか聞いてみよう。皿洗いでも掃除でも何でも……体を動かしていないと良くないこと考えちゃいそうだし)
魔獣から離れているとはいえ、この集落が襲われないとは言い切れない。そんな風に考えると胸がザワザワと落ち着かなくなった。
(この国は平和だし、紛争から避難しているわけじゃないけど、何だかここに来てからずっと落ち着かない……)
小さな集落に自分の故郷を重ねているのかもしれない。ニーナはゴロリと横を向き、枕元に置いている旅行鞄から絵葉書を取り出した。
(手紙書いて、気を紛らわせようかな)
絵葉書には国境沿いの町の風景が可愛らしく描かれている。しばらく絵葉書を見つめたり、便箋を数枚取り出してはベッドの上で転がった。
(葉書と便箋どっちにしよう。まずは近況と……あとはカインは元気にしているかとか……それから、カインの話がまた聞きたいって書いて……)
書くことをまとめようと考えているのに、カインの顔を思い出すと胸が切なくなった。ニーナは自分のふさふさの尻尾を捕まえて唸った。
(うぅ……胸がまたキュンて鳴って……ちょっと寂しくて苦しい。カインにまた、撫でてもらいたいって思ってしまう)
そんな風に唸りながらも、これは本当に「恋心」なのかとニーナはまだ自分の気持ちを疑っていた。
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