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出会い
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カインとベッドの上で顔を突き合わせて向かい合っているのは、客観的に見ても中々面白い光景だなとニーナは内心呆れた。ニーナもカインもお互い下着姿なのに真面目に性教育の様な話をしている。
(さっきは良い雰囲気だったのに、どうしてこうなったんだ。まあ、面白いけど……)
カインは思った以上に初心で、おまけに素直で紳士的だった。
(若さに任せて色々して来るかなと思ってたのに、ちゃんと『待て』が出来るんだから、偉いよな)
ニーナはカインのことをもうはっきりと大型犬だと思うようになっていた。
(獣人はこっちの方だってのに……これも笑えるポイントだな)
カインの質問に答えつつそんな風なことを考えた。5年程娼館で働いていたが、カインの様な色々な意味で面白い客は初めてだ。
「……と、こんな感じかなあ。ちょっとだけ話が長くなっちゃったね」
「とても勉強になった。ありがとう。ニーナ」
カインは真面目に礼を言った。先程からニーナは『良い雰囲気の作り方』やら『そういう雰囲気になった時の触り方』をカインに教え込んでいる。カインは職業見学にでも来たつもりなのか始終興味深そうにしていた。
「ふふっ、カインがすごく真面目に話を聞いてくれるから、オレ、ちょっと楽しくなっちゃったよ」
「すまない。そういったことの知識があまり無かったので、とても為になるなと……」
カインはハッとした顔をして目をそらした。
「照れなくて良いよ。じゃあ、ほら」
カインの側ににじり寄りギュッと抱きしめた。
「習ったことを実践してみよう」
「……分かった」
カインもニーナを抱きしめ返し、大きな手でおっかなびっくり髪の毛を撫でてくる。
ニーナはカインに『相手の反応を見つつ撫でる』だとか『良さそうな所を探す』といったことを教えたばかりだ。カインはちゃんとそれを覚えておりニーナの反応を探りつつ実践している。
(こういうことを真面目にやられると、どんな顔をして良いか分からなくなる……)
自分が教えたことをやらせるのは楽しいには楽しいが、妙な気恥ずかしさがあった。ニーナはこれまで娼館で色々なことをしてきたが、自分がやらせる側ではなかったからだ。
(く……ダメだ。集中しないと……客はカインの方なんだからな)
そもそも娼館に来る客は性的な欲求を発散しに来る者がほとんどなので、こんな恋人同士がするような触れ合いはあまり望まれない。もっと分かりやすい体の欲求の満たし方を教えた方が良かったかなとニーナは少しだけ後悔した。
(いや……そんなことをこの初心な大型犬に教えるのもなあ。何が何だかよく分からないまま娼館で欲望に任せて初体験が終わるのも虚しそうだし)
ニーナ自身のお節介さもあり、出会って間もないカインに対して情の様なものが芽生えていた。
「ニーナ、もっと触れて良いか?」
「うん、良いよ。おいで」
カインはニーナをそっとベッドに押し倒した。
(さっきは良い雰囲気だったのに、どうしてこうなったんだ。まあ、面白いけど……)
カインは思った以上に初心で、おまけに素直で紳士的だった。
(若さに任せて色々して来るかなと思ってたのに、ちゃんと『待て』が出来るんだから、偉いよな)
ニーナはカインのことをもうはっきりと大型犬だと思うようになっていた。
(獣人はこっちの方だってのに……これも笑えるポイントだな)
カインの質問に答えつつそんな風なことを考えた。5年程娼館で働いていたが、カインの様な色々な意味で面白い客は初めてだ。
「……と、こんな感じかなあ。ちょっとだけ話が長くなっちゃったね」
「とても勉強になった。ありがとう。ニーナ」
カインは真面目に礼を言った。先程からニーナは『良い雰囲気の作り方』やら『そういう雰囲気になった時の触り方』をカインに教え込んでいる。カインは職業見学にでも来たつもりなのか始終興味深そうにしていた。
「ふふっ、カインがすごく真面目に話を聞いてくれるから、オレ、ちょっと楽しくなっちゃったよ」
「すまない。そういったことの知識があまり無かったので、とても為になるなと……」
カインはハッとした顔をして目をそらした。
「照れなくて良いよ。じゃあ、ほら」
カインの側ににじり寄りギュッと抱きしめた。
「習ったことを実践してみよう」
「……分かった」
カインもニーナを抱きしめ返し、大きな手でおっかなびっくり髪の毛を撫でてくる。
ニーナはカインに『相手の反応を見つつ撫でる』だとか『良さそうな所を探す』といったことを教えたばかりだ。カインはちゃんとそれを覚えておりニーナの反応を探りつつ実践している。
(こういうことを真面目にやられると、どんな顔をして良いか分からなくなる……)
自分が教えたことをやらせるのは楽しいには楽しいが、妙な気恥ずかしさがあった。ニーナはこれまで娼館で色々なことをしてきたが、自分がやらせる側ではなかったからだ。
(く……ダメだ。集中しないと……客はカインの方なんだからな)
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(いや……そんなことをこの初心な大型犬に教えるのもなあ。何が何だかよく分からないまま娼館で欲望に任せて初体験が終わるのも虚しそうだし)
ニーナ自身のお節介さもあり、出会って間もないカインに対して情の様なものが芽生えていた。
「ニーナ、もっと触れて良いか?」
「うん、良いよ。おいで」
カインはニーナをそっとベッドに押し倒した。
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