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幼馴染との夜ふかし(ルイス視点)
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「ハル、お待たせ」
ルイスは両手に木のカップに入った茶を持ち、ベンチに座っているハルに歩み寄った。
「おかえり、ルイス」
ハルはルイスの姿を見てふっと表情を柔らかくした。
「ただいま。ねえ、ハルはさっぱりしたのとまろやかなの、どっちが良い?」
「味が違うのか? そうだな……じゃあ、さっぱりした方で」
「じゃあ、こっち」
片方の木のカップを渡すと、ルイスはハルの隣に腰掛けた。
「これは何味なんだ?」
「そっちはお茶に柑橘で風味付けしてある方。まろやかな方は牛乳が入ってるよ。クッキーが甘いから、両方とも砂糖は入ってなくて……」
ルイスはそう言いながらベンチに自分の木のカップを置き、鞄の中から紙袋を取り出した。そして鞄を台のようにして紙袋を開いて中身を出した。
「キレイに作ってあるな」
二人の間にあるクッキーを見てハルは感心した風に呟いた。薄桃色のクッキーは可愛らしい花の型で抜かれ、果物で色付けをしたのかふわりとベリーの良い匂いが香って来る。
「マーガレットは最近クッキー作りに凝っているんだ。今度カミラおばさんのパン屋にも並べるって張り切っててさ」
ルイスは自分のことのように嬉しそうに言うと、一つ手に取ってハルの口元に運んだ。
「食べてみてよ。美味しいから」
「……うん、ありがとう」
ハルはルイスの行動に一瞬固まったが、口元に運ばれたクッキーにサクリと齧りつき、そのままたいらげた。
「……美味い」
「美味しいよね! マーガレットのお菓子はお店が持てるくらい一級品だし、お菓子作りだけじゃなくて料理だって僕が作るよりずっと美味しいし。今日も出掛けるって言ったらクッキーを持たせてくれて……あの子は本当に思い遣りのある優しい良い子なんだ」
ルイスがマーガレットについて滔々と語り始めると、ハルは「相変わらずだな」と息をついた。
「相変わらずって何だよ」
「相変わらずシスコ……妹を大事にしているなって」
「そりゃあ大事だよ。年の離れた可愛い良く出来た妹だからね」
「マーガレットが可愛いか……まあ、そうだよな」
「マーガレットはすごく可愛いよ」
「うん……ルイスのそういう家族思いな所って好きだな」
「え、な、何……」
ハルはクッキーを齧りながら何気ない風にサラリと言うので、ルイスは摘んだクッキーを落としそうになった。
「照れてる顔も可愛いな」
ルイスの様子を窺いながらハルはくつくつと笑った。
「……そういうこと言われたら誰だって照れるよ」
「ルイスだって色々なことをサラッと俺にして来るからお互い様だ」
「色々って……僕なりに恋人らしいことをしているだけだし!」
「ふふっ、そういう真面目に考えてくれる所も好き……大好き」
「っ……また言った」
とめどない好意が漏れ出る瞳に見つめられ、ルイスは逃げ出したいような、ハルを抱きしめたいような複雑な気持ちにソワソワした。
「ハル……人の多い所でそんな風なこと言われたら困っちゃうからさ、もう少し手加減してよ」
ルイスは木のカップを両手で持ち、ふうっと甘いため息をついた。
「ん……悪い。ルイスを困らせるつもりはなかったんだけど。どうも今日の俺はものすごく浮かれているみたいなんだ」
ハルは頬を染めて目を細めると気まずそうに茶を啜った。
「浮かれているって言うか……デートを喜んでくれているのが分かって僕は嬉しいよ!」
反省しているのかハルがシュンとしてしまったので、ルイスは慌ててそう言った。
「……俺はそんな顔に出ていたのか」
「ハルは嬉しいと目がキラキラして可愛いくなるから、すぐに分かるよ」
「ルイスの言う可愛いは基準がよく分からないな」
「ハルの目がキラキラしているのが可愛いくて……僕の好みってことだよ!」
「好みなのか……それなら、まあ、良いけど」
ハルは「可愛い」という言葉が腑に落ちてはいない様子だったが、好みだと伝えると分かりやすく表情が明るくなった。
「ルイスは本当に俺を喜ばせるのが上手いよな」
「思っていることを言っただけだよ」
「ルイスはいつも俺を喜ばせてくれる最高の恋人だよ」
「……さ、最高って」
傍目から見れば惚気たやり取りにしか見えないのだろうなとルイスは恥じらうように目を泳がせた。
ルイスは両手に木のカップに入った茶を持ち、ベンチに座っているハルに歩み寄った。
「おかえり、ルイス」
ハルはルイスの姿を見てふっと表情を柔らかくした。
「ただいま。ねえ、ハルはさっぱりしたのとまろやかなの、どっちが良い?」
「味が違うのか? そうだな……じゃあ、さっぱりした方で」
「じゃあ、こっち」
片方の木のカップを渡すと、ルイスはハルの隣に腰掛けた。
「これは何味なんだ?」
「そっちはお茶に柑橘で風味付けしてある方。まろやかな方は牛乳が入ってるよ。クッキーが甘いから、両方とも砂糖は入ってなくて……」
ルイスはそう言いながらベンチに自分の木のカップを置き、鞄の中から紙袋を取り出した。そして鞄を台のようにして紙袋を開いて中身を出した。
「キレイに作ってあるな」
二人の間にあるクッキーを見てハルは感心した風に呟いた。薄桃色のクッキーは可愛らしい花の型で抜かれ、果物で色付けをしたのかふわりとベリーの良い匂いが香って来る。
「マーガレットは最近クッキー作りに凝っているんだ。今度カミラおばさんのパン屋にも並べるって張り切っててさ」
ルイスは自分のことのように嬉しそうに言うと、一つ手に取ってハルの口元に運んだ。
「食べてみてよ。美味しいから」
「……うん、ありがとう」
ハルはルイスの行動に一瞬固まったが、口元に運ばれたクッキーにサクリと齧りつき、そのままたいらげた。
「……美味い」
「美味しいよね! マーガレットのお菓子はお店が持てるくらい一級品だし、お菓子作りだけじゃなくて料理だって僕が作るよりずっと美味しいし。今日も出掛けるって言ったらクッキーを持たせてくれて……あの子は本当に思い遣りのある優しい良い子なんだ」
ルイスがマーガレットについて滔々と語り始めると、ハルは「相変わらずだな」と息をついた。
「相変わらずって何だよ」
「相変わらずシスコ……妹を大事にしているなって」
「そりゃあ大事だよ。年の離れた可愛い良く出来た妹だからね」
「マーガレットが可愛いか……まあ、そうだよな」
「マーガレットはすごく可愛いよ」
「うん……ルイスのそういう家族思いな所って好きだな」
「え、な、何……」
ハルはクッキーを齧りながら何気ない風にサラリと言うので、ルイスは摘んだクッキーを落としそうになった。
「照れてる顔も可愛いな」
ルイスの様子を窺いながらハルはくつくつと笑った。
「……そういうこと言われたら誰だって照れるよ」
「ルイスだって色々なことをサラッと俺にして来るからお互い様だ」
「色々って……僕なりに恋人らしいことをしているだけだし!」
「ふふっ、そういう真面目に考えてくれる所も好き……大好き」
「っ……また言った」
とめどない好意が漏れ出る瞳に見つめられ、ルイスは逃げ出したいような、ハルを抱きしめたいような複雑な気持ちにソワソワした。
「ハル……人の多い所でそんな風なこと言われたら困っちゃうからさ、もう少し手加減してよ」
ルイスは木のカップを両手で持ち、ふうっと甘いため息をついた。
「ん……悪い。ルイスを困らせるつもりはなかったんだけど。どうも今日の俺はものすごく浮かれているみたいなんだ」
ハルは頬を染めて目を細めると気まずそうに茶を啜った。
「浮かれているって言うか……デートを喜んでくれているのが分かって僕は嬉しいよ!」
反省しているのかハルがシュンとしてしまったので、ルイスは慌ててそう言った。
「……俺はそんな顔に出ていたのか」
「ハルは嬉しいと目がキラキラして可愛いくなるから、すぐに分かるよ」
「ルイスの言う可愛いは基準がよく分からないな」
「ハルの目がキラキラしているのが可愛いくて……僕の好みってことだよ!」
「好みなのか……それなら、まあ、良いけど」
ハルは「可愛い」という言葉が腑に落ちてはいない様子だったが、好みだと伝えると分かりやすく表情が明るくなった。
「ルイスは本当に俺を喜ばせるのが上手いよな」
「思っていることを言っただけだよ」
「ルイスはいつも俺を喜ばせてくれる最高の恋人だよ」
「……さ、最高って」
傍目から見れば惚気たやり取りにしか見えないのだろうなとルイスは恥じらうように目を泳がせた。
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