【BL/R18】元勇者の幼馴染は故郷の村に想い人がいるらしい【異世界転生描写有り】

元勇者のためらい(ハル視点)

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　森の開けた場所に到着してから、魔法石ランプとアルベルトが魔法で灯した明かりの下でハルとアルベルトは三十分程打ち合った。

「そろそろ小休止としましょうか」
「ああ、助かる……」

　額の汗を袖口で拭った。体力に自信はあったが現役の騎士隊長は一筋縄ではいかない。容赦ない打ち込みにハルは防戦一方となり、三回は木刀を弾き飛ばされた。

「アルベルトとの稽古はとても勉強になるよ」

　ハルは村長からしか剣を習ったことがなかったので、アルベルトのような騎士が使う正統派の剣術からは学ぶ所が多い。

　近くにあった大きな岩の上に腰掛けると、アルベルトも隣に並んだ。アルベルトも汗をかいていたが、まるでスポーツ後のような爽やかな様子だ。

「私も『剣に選ばれし勇者』と稽古出来るとは誉れ高いことです」
「勇者って言ってもほんの少し前まではただの一般平民だったし、アルベルトの誉れになるかな？」
「何を仰いますか。ハル殿は数百年以上グラステラに現れなかった勇者ですよ？　そんな稀有な方と稽古が出来るとは騎士としてこの上ない名誉です！」
「……なら良いんだけど」

　アルベルトはにこやかに言った。嫌味が無く心底そう思っているのが伝わって来る。ハルは完璧な騎士からそんな風に言われて居た堪れない気分がしたが、ありがたく言葉を受け取ることにした。

「もう少し打ち合ってから戻りましょうか」
「そうだな。アルベルト、また時間があれば稽古してもらっても良いか？」
「ええ、もちろん！」
「ありがとう。俺はもっと強くならないといけないから助かるよ」

　そう言うとアルベルトは眉を下げて気遣わしそうな表情になった。

「オズワルド殿のことを気にされているのですか？」
「まあ……それもあるけど」

　ハルは言い淀んだ。この3ヶ月は本当に様々なことがあった。オズワルドのこともその一つだ。

　オズワルドはゲームのイベントにあったように、結界の修繕中魔族によって強大な魔力を封じられてしまったのだった。