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元勇者の朝帰り(ハル視点)
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ルイスと二人で赤く染まる空の下、魔族の襲撃に逃げ惑う村人を逃がして回っていたが、護符が底を尽きかけ、建物の影に身を潜めてからけっこうな時間が過ぎた。
「ルイス……人を背負ったまま、どのくらい早く走れる?」
「……ハルよりはだいぶ遅いと思う」
ルイスは気を失った村人を背負い、ハルの側に座り込む村人は腹の傷を押さえて荒い呼吸を繰り返している。
様子を窺うと、狼人間が通りに六体彷徨いているのが見える。霧でよく見えないが、まだ後ろにも潜んでいる気配をハルは感じた。
(護符はあと何枚だ? 剣もボロボロだから、いつ折れてもおかしくない)
一度防衛魔法の陣に戻って体勢を立て直すのが最善だと判断し、ハルは撤退しようとルイスに告げた。
「とにかく残りの護符全部使って、防衛魔法の陣まで走り抜く」
「そうだね……寄合所まで着けば援護して貰えるかもしれないし」
ハルは気を張っていないと情けなく声が震えそうになっていた。本当は寄合所を出てからずっと怖くて仕方なかったが、ルイスが傍にいるお陰でいつも通りの「負けず嫌いのハル」として立ち振る舞うことが出来ていた。
「村長達も学舎から無事に戻ってるかな」
「あのじじいならきっと大丈夫だよ。本当に……ちゃんと強いから」
村長の全盛期のことは知らなかったが、剣術ならば右に出る者はいないことは弟子であるハルが一番分かっていた。
「ん……ハルが言うなら、きっと大丈夫だね」
ルイスは眉を下げて、気を失った村人を背負い直して斧と護符を片手に纏めて持った。
「護符はあと二枚しかない……」
「大丈夫だ。二枚もあるって考えた方がマシな気分になるよ」
「ふっ……ハルと一緒にいて良かったよ」
苦笑してから「行こう」とルイスは呟いた。ハルも腹に怪我をした村人を背負った。
「元来た道を隠れながら行こう。追って来る狼人間は俺が引きつけるからルイスは前を走って。護符は残数は気にせず、危なくなったら使って」
ルイスは頷くと踵を返して勢い良く駆け出し、ハルも後ろを警戒しながら後を追った。狼人間は物音に反応して顔を上げ、ガシャガシャと鎧を揺らして追いかけて来る。
(集団でかかって来られたら厄介だ、出来るだけ数を減らさないと)
とはいえハルも村人を背負っているので囮にはなれない。そのためルイスより少し間隔を空けて後方を走り、一番近くに来た狼人間の喉を突き刺しては距離を空け、目を突き刺しては距離を空け――一撃離脱を繰り返すことで魔族の戦力を削いでいった。
ハルはルイスの背中を追いかけながらひたすらに狼人間達を牽制し、辺りを少しだけ見回した。濃い霧が漂い、獣の匂いがして、いくつかの建物は燃えているが、夕暮れのベギン村の見知った建物ばかりだ。
(絶対にこれ以上この村を壊されたくない……!)
もう少しで寄合所という所で、防衛魔法の陣を張っている老人が片膝をつき、村長達が寄合所を守るように攻防を繰り広げている姿が見えた。
「ハル、寄合所が!」
ハルはルイスに追いつき、二人は顔を見合わせて頷き合うと更に速度を上げて寄合所に駆け出した。
そこには狼人間と村人達の戦いをつまらなさそうに見物する異様な雰囲気の男――ハルの両親の敵の姿もあった。
「ルイス……人を背負ったまま、どのくらい早く走れる?」
「……ハルよりはだいぶ遅いと思う」
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「ん……ハルが言うなら、きっと大丈夫だね」
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「護符はあと二枚しかない……」
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苦笑してから「行こう」とルイスは呟いた。ハルも腹に怪我をした村人を背負った。
「元来た道を隠れながら行こう。追って来る狼人間は俺が引きつけるからルイスは前を走って。護符は残数は気にせず、危なくなったら使って」
ルイスは頷くと踵を返して勢い良く駆け出し、ハルも後ろを警戒しながら後を追った。狼人間は物音に反応して顔を上げ、ガシャガシャと鎧を揺らして追いかけて来る。
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「ハル、寄合所が!」
ハルはルイスに追いつき、二人は顔を見合わせて頷き合うと更に速度を上げて寄合所に駆け出した。
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