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幼馴染との約束・前編(ルイス視点)
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広場の古本市を周って二人で目当ての本を吟味し、小腹が空いたので屋台の料理を食べ歩き、大道芸人の披露する芸を観覧し、また骨董市を巡り――気づけば夕方になっていた。
ルイスは屋台で買った揚げ菓子をハルと分けて食べ歩きながら空を見上げた。灰色の雲が空を覆い、今にも雨が降り出しそうだ。
「雲行きが怪しくなってきたね」
「うん、そろそろ村に帰るか」
「街の酒場にも行きたかったなあ」
夜はミラスの街の酒場でハルと酒を酌み交わそうかと考えていた。
「ミラスの名物料理をハルと食べたかったんだ」
「また今度来れば良いよ」
「そうだね。また二人で遊びに来よう」
ニコニコと笑いかけるとハルはしばらくルイスをジッと見つめてから「うん」と言って、頭を掻いた。
「ね、残りはハルが食べてよ」
持っていた揚げ菓子の袋の中身が一つしか残っていなかったので、ルイスはハルに声をかけた。
「袋を片付けたいから、食べてくれたら嬉しい」
揚げ菓子は屋台でよく売られている定番で、甘い味付けの小麦粉を棒状にしてカリッと揚げ、砂糖とスパイスをまぶした物だ。
村の祭りでもよく売られており、子どもの頃は大袋を買ってハルとマーガレット達とおやつ代わりに分け合って食べていたこともある。
「ん……貰う。ありがとう」
ハルはルイスが持つ袋から揚げ菓子を抜き取ってサクサクと食べた。
「ルイスはいつも菓子やら飴を人に分けて、自分ではあまり食べないな」
「そう?」
ルイスが歩きながら袋を畳んで鞄に仕舞っていると、菓子を食べ終えたハルが話しかけて来た。
「そうだよ。いつもマーガレットか俺に食べろ食べろって勧めて来る。自分が独り占めしても良いのに」
「独り占めって……皆で分けた方が楽しいし、僕はお菓子が大好物ってわけでもないから、好きな人が食べた方が良いかなって」
首を傾げながら「ハルがこの揚げ菓子を好きなのは知っているし」と言った。
「うん……好き。覚えていてくれたんだ」
「好きな人が食べるのが一番だよ」
「そうか……」
ハルは何か考え込むような表情になった。
「なあ、ルイスが独り占めしたくなるような好きな物って無いの?」
「食べ物でってこと?」
「食べ物でも物でも……人間でも良いよ」
「範囲が広過ぎない? あ!」
そんな話をしていると、パラパラと小雨が降って来た。
「ハル、取り敢えず、馬車まで急ごう!」
「そうだな……」
ルイスとハルは鞄を抱え込むようにして小走りになり、広場を後にした。
ルイスは屋台で買った揚げ菓子をハルと分けて食べ歩きながら空を見上げた。灰色の雲が空を覆い、今にも雨が降り出しそうだ。
「雲行きが怪しくなってきたね」
「うん、そろそろ村に帰るか」
「街の酒場にも行きたかったなあ」
夜はミラスの街の酒場でハルと酒を酌み交わそうかと考えていた。
「ミラスの名物料理をハルと食べたかったんだ」
「また今度来れば良いよ」
「そうだね。また二人で遊びに来よう」
ニコニコと笑いかけるとハルはしばらくルイスをジッと見つめてから「うん」と言って、頭を掻いた。
「ね、残りはハルが食べてよ」
持っていた揚げ菓子の袋の中身が一つしか残っていなかったので、ルイスはハルに声をかけた。
「袋を片付けたいから、食べてくれたら嬉しい」
揚げ菓子は屋台でよく売られている定番で、甘い味付けの小麦粉を棒状にしてカリッと揚げ、砂糖とスパイスをまぶした物だ。
村の祭りでもよく売られており、子どもの頃は大袋を買ってハルとマーガレット達とおやつ代わりに分け合って食べていたこともある。
「ん……貰う。ありがとう」
ハルはルイスが持つ袋から揚げ菓子を抜き取ってサクサクと食べた。
「ルイスはいつも菓子やら飴を人に分けて、自分ではあまり食べないな」
「そう?」
ルイスが歩きながら袋を畳んで鞄に仕舞っていると、菓子を食べ終えたハルが話しかけて来た。
「そうだよ。いつもマーガレットか俺に食べろ食べろって勧めて来る。自分が独り占めしても良いのに」
「独り占めって……皆で分けた方が楽しいし、僕はお菓子が大好物ってわけでもないから、好きな人が食べた方が良いかなって」
首を傾げながら「ハルがこの揚げ菓子を好きなのは知っているし」と言った。
「うん……好き。覚えていてくれたんだ」
「好きな人が食べるのが一番だよ」
「そうか……」
ハルは何か考え込むような表情になった。
「なあ、ルイスが独り占めしたくなるような好きな物って無いの?」
「食べ物でってこと?」
「食べ物でも物でも……人間でも良いよ」
「範囲が広過ぎない? あ!」
そんな話をしていると、パラパラと小雨が降って来た。
「ハル、取り敢えず、馬車まで急ごう!」
「そうだな……」
ルイスとハルは鞄を抱え込むようにして小走りになり、広場を後にした。
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