18 / 21
幼馴染のアプローチ(ルイス視点)
6
しおりを挟む
「――それで、村長が街道を新しく整備するよう領主様に直談判するって張り切ってしまってな」
「ふふ、村長はいつまでも元気だよね」
他愛ない話をし、楽しく酒を酌み交わしてけっこうな時間が経った。
果実酒は甘みが強く、飲む度に一緒に漬け込まれたハーブの風味を感じる。飲みやすいとはいかないが中々クセになる味だった。
「はぁ……この果実酒、不思議な味で美味しいねえ……」
ルイスが何杯目かになる酒を硝子コップに継ぎ足しながらため息混じりに呟いた。
「村長がハーブと果実を色々混ぜ合わせてこの味にたどり着いたらしい」
ハルはちびちびと酒を飲み「美味いかもしれないが、まだ残り4本もある」とげんなりして言った。
「一人暮らしの人間に渡す量じゃない」
「村長はハルのことを昔から気にかけてるんだよ」
「……そうかもな」
どこか嬉しそうにハルが言った。ベギン村の村長は元冒険者で一言で言うと『元気なお年寄り』だ。負けず嫌いでよく喧嘩をしていた子どものハルを叱ったり、剣術の稽古をつけたりと、何かにつけて気にかけていた。
「あのじいさんには感謝しているんだ」
「ん……そうなんだね」
「子どもの頃の俺は……体も小さくて、自分に自信がなくて、いつも周りと衝突ばかりで……村長に力の使い方を教えて貰えなかったら、きっと……今の俺はいない」
「村長、昔からハルのこと『気骨のある奴だ』って褒めてたよ」
「……俺はそんなこと村長に言われたことないぞ」
「あのじじいめ」とハルは苦笑した。
「悪い。何だか湿っぽい話をしたな」
「ううん、色々話してくれて僕は嬉しいよ」
「そうか……ありがとう」
ハルはグイッと硝子コップに残っていた酒を飲み干しふうっと息をついた。
「……けっこう飲んだな。ルイスはまだ飲むか?」
瓶の中の果実酒は底の方に少しだけ残っている。
「飲むなら新しいのを持って来るが、どうだ?」
「僕はもうこの一杯で止めておくよ。明日も店を開けるし……」
「分かった。それじゃあ、水を持って来るよ」
ハルは立ち上がって水を取りに台所へ向かった。ルイスは継ぎ足した酒を啜り、ぼんやりとした頭で台所のハルを見た。
(ハルってあんまり酔わないよな。前にオズワルドさんと飲んでいた時に前後不覚なくらい酔い潰れていたのは、何だったんだろう……?)
ジッと見ているとハルが視線に気づき「どうかしたか」と尋ねて来たのでルイスは「何でもないよ」と首を振った。
「ふふ、村長はいつまでも元気だよね」
他愛ない話をし、楽しく酒を酌み交わしてけっこうな時間が経った。
果実酒は甘みが強く、飲む度に一緒に漬け込まれたハーブの風味を感じる。飲みやすいとはいかないが中々クセになる味だった。
「はぁ……この果実酒、不思議な味で美味しいねえ……」
ルイスが何杯目かになる酒を硝子コップに継ぎ足しながらため息混じりに呟いた。
「村長がハーブと果実を色々混ぜ合わせてこの味にたどり着いたらしい」
ハルはちびちびと酒を飲み「美味いかもしれないが、まだ残り4本もある」とげんなりして言った。
「一人暮らしの人間に渡す量じゃない」
「村長はハルのことを昔から気にかけてるんだよ」
「……そうかもな」
どこか嬉しそうにハルが言った。ベギン村の村長は元冒険者で一言で言うと『元気なお年寄り』だ。負けず嫌いでよく喧嘩をしていた子どものハルを叱ったり、剣術の稽古をつけたりと、何かにつけて気にかけていた。
「あのじいさんには感謝しているんだ」
「ん……そうなんだね」
「子どもの頃の俺は……体も小さくて、自分に自信がなくて、いつも周りと衝突ばかりで……村長に力の使い方を教えて貰えなかったら、きっと……今の俺はいない」
「村長、昔からハルのこと『気骨のある奴だ』って褒めてたよ」
「……俺はそんなこと村長に言われたことないぞ」
「あのじじいめ」とハルは苦笑した。
「悪い。何だか湿っぽい話をしたな」
「ううん、色々話してくれて僕は嬉しいよ」
「そうか……ありがとう」
ハルはグイッと硝子コップに残っていた酒を飲み干しふうっと息をついた。
「……けっこう飲んだな。ルイスはまだ飲むか?」
瓶の中の果実酒は底の方に少しだけ残っている。
「飲むなら新しいのを持って来るが、どうだ?」
「僕はもうこの一杯で止めておくよ。明日も店を開けるし……」
「分かった。それじゃあ、水を持って来るよ」
ハルは立ち上がって水を取りに台所へ向かった。ルイスは継ぎ足した酒を啜り、ぼんやりとした頭で台所のハルを見た。
(ハルってあんまり酔わないよな。前にオズワルドさんと飲んでいた時に前後不覚なくらい酔い潰れていたのは、何だったんだろう……?)
ジッと見ているとハルが視線に気づき「どうかしたか」と尋ねて来たのでルイスは「何でもないよ」と首を振った。
15
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
凶悪犯がお気に入り刑事を逆に捕まえて、ふわとろま●こになるまで調教する話
ハヤイもち
BL
連続殺人鬼「赤い道化師」が自分の事件を担当する刑事「桐井」に一目惚れして、
監禁して調教していく話になります。
攻め:赤い道化師(連続殺人鬼)19歳。180センチくらい。美形。プライドが高い。サイコパス。
人を楽しませるのが好き。
受け:刑事:名前 桐井 30過ぎから半ば。170ちょいくらい。仕事一筋で妻に逃げられ、酒におぼれている。顔は普通。目つきは鋭い。
※●人描写ありますので、苦手な方は閲覧注意になります。
タイトルで嫌な予感した方はブラウザバック。
※無理やり描写あります。
※読了後の苦情などは一切受け付けません。ご自衛ください。
【R18】元騎士団長(32)、弟子として育てていた第三王子(20)をヤンデレにしてしまう
夏琳トウ(明石唯加)
BL
かつて第三王子ヴィクトールの剣術の師をしていたラードルフはヴィクトールの20歳を祝うパーティーに招待された。
訳あって王都から足を遠ざけていたラードルフは知らない。
この日がヴィクトールの花嫁を選ぶ日であるということを。ヴィクトールが自身に重すぎる恋慕を向けているということを――。
ヤンデレ王子(20)×訳あり元騎士団長(32)の歪んだ師弟ラブ。
■掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
【BL】カント執事~魔族の主人にアソコを女の子にされて~
衣草 薫
BL
執事のローレンスは主人である魔族のドグマ・ダークファントム辺境伯にアソコを女性器に変えられてしまった。前に仕えていた伯爵家のフランソワ様からの手紙を見られて怒らせてしまったのだ。
元に戻してほしいとお願いするが、「ならば俺への忠誠を示せ」と恥ずかしい要求をされ……。
<魔族の辺境伯×カントボーイ執事>
俺の番が変態で狂愛過ぎる
moca
BL
御曹司鬼畜ドSなα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!!
ほぼエロです!!気をつけてください!!
※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!!
※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️
初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀
潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
あかさたな!
BL
潜入捜査官のユウジは
マフィアのボスの愛人まで潜入していた。
だがある日、それがボスにバレて、
執着監禁されちゃって、
幸せになっちゃう話
少し歪んだ愛だが、ルカという歳下に
メロメロに溺愛されちゃう。
そんなハッピー寄りなティーストです!
▶︎潜入捜査とかスパイとか設定がかなりゆるふわですが、
雰囲気だけ楽しんでいただけると幸いです!
_____
▶︎タイトルそのうち変えます
2022/05/16変更!
拘束(仮題名)→ 潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
▶︎毎日18時更新頑張ります!一万字前後のお話に収める予定です
2022/05/24の更新は1日お休みします。すみません。
▶︎▶︎r18表現が含まれます※ ◀︎◀︎
_____
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる