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元勇者の秘密(ハル視点)

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 ベギン村は王都から見て南東の端の方に位置する集落だ。ハル・グリーンウッドは20年前にこの村で生まれた。

 生まれつき体は小柄だったが、元冒険者の両親はスラリとしていて背が高い人達だったので、自分もきっと大きくなると信じて毎日運動をしては牛乳を飲み卵を食べた。

 両親と同じく元冒険者の村長から「運動して牛乳と卵を食べると背が伸びる」と言われたのを小さかったハルは信じたのだった。

 ある日、小柄なことを年上の子ども達にからかわれ掴み合いの喧嘩になった際、幼馴染のルイスに庇われたことがあった。

 当時8歳だったハルは同い年の幼馴染に「余計なことをするな」と毒づいてしまった。年上の子ども達は体が大きい以外は喧嘩はさほど強くない。ルイスに庇われなくともハルならば勝つことが出来る――そんな風な自信がハルにはあったのだ。

「ハルが強いのは知っているよ。でも僕はね、ハルが叩かれて怪我するのなんて見たくないんだ」

 村近くの小川で喧嘩で出来た傷を冷やしているハルを見てルイスは困った風に笑い、膝に乗せた妹のマーガレットを抱きしめた。マーガレットは何も分かってはいないのか、きょとんとして首を傾げた。

「ふん……俺はこんな怪我、なんてことないよ」

 子ども時代のハルは、負けず嫌いの性格が影響してか周りと衝突することが多かった。ルイスは同い年で家が近いのもあり、そんなハルを心配しては一緒にいてくれた。

「でもね、小さい傷でも体が弱っていると病気になったりするんだよ? 向かいの家のおばあちゃんも転んだ怪我が酷くなって寝込んじゃったことがあるし……」
「俺は元気だから大丈夫だよ!」

 何故か「病気」という言葉に過剰に反応してしまう自分にハルは内心困惑した。この頃のハルはまだ前世の記憶を取り戻してはいなかったので、奇妙な感覚だけが頭の中に残った。

「……ルイスも俺といると、またあいつらにちょっかいかけられるぞ」
「僕はけっこう逃げ足が速いから平気だよ」

 ルイスがのほほんとした口調で言うので、ハルはすっかり毒気を抜かれてしまった。


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