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エピローグ 恋人として今日から続いていく日々
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ひたすらに荷物の片付けをしているととうとう日が暮れた。敬久さんと夕食は食べに行こうか、どうしようかと二人して悩み、せっかくだからと出前で蕎麦を注文することにした。
出前アプリで注文を行い、近隣の蕎麦屋から蕎麦が届くと片付け作業を一旦中断した。
台所にある新しい食卓に蕎麦を運んで、敬久さんと向かい合って座り、引っ越し蕎麦を談笑しながら楽しく二人で食べた。明日から毎日こういう生活が出来ると思うと、幸せだなと、オレは不意に涙が出そうになった。
その後、夜遅くまで片付け作業をしていると近所迷惑になりかねないので、残り作業は明日に持ち越そうということになった。敬久さんが「今日は早く寝て明日に備えよう」と言い、オレもそれに同意した。
風呂に湯を張ったので先に使ってねと彼に言われ「一緒に入らないんですか」と返すと「そういうのは片付けが終わったらね」と困った風に言われた。確かにその通りなのでオレは大人しく一人で湯船に浸かり、新生活に思いを馳せた。
二人の同棲を決めた時――来年の夏までには物件が見つかって引っ越せれば良いかなと思っていた。だが、決まる時は考えていた以上に何もかもがトントン拍子に決まり、恋人になって2年目を迎える頃合いを少しだけ過ぎた春に敬久さんと一緒に暮らすことになった。
2年目の区切りで同棲が始まったようで、オレは何だかむず痒い気分になっている。今もむず痒い気分で夢心地だが、浮かれ過ぎないように気をつけなければならない。
湯船を出て新しいリビングに向かうとソファに座っていた敬久さんが立ち上がり「僕も入って来るね」と言うので、抱きついて頬にキスをした。敬久さんは照れくさそうな表情で「寝室で先に寝てて良いからね」とあやすように髪を撫でてくれたので、オレは寝室に向かった。
新しい寝室には新しいベッドが2つ並んでいる。仕事があると眠る時間はバラバラになるので2つ買ったのだが、今日は敬久さんと眠りたいのでオレは迷わず彼のベッドに潜り込んだ。
部屋にはまだ段ボールが積まれていたが、敬久さんの言う通り土日中に片付けられるような気がする。
明日は敬久さんと近所の喫茶店へ朝食を食べに行き、戻ってからひたすらに作業だ。終わらない作業に心が折れるんじゃないかと思っていたが、オレは敬久さんと一緒に作業をすることに密かに楽しみを見出し始めていた。
一人敬久さんのベッドで丸まっていると湯上がりの敬久さんが寝室に入って来たので、ガバッと起き上がり「おかえりなさい」と言った。
「遥君、一緒に寝てくれるの?」
「はい!」
「ふふ、嬉しいなあ」
敬久さんは微笑んでそう言うと、隣に来てギュウッとオレの体を抱きしめてから一緒に寝転んだ。
「遥君は抱きしめると温かくて気持ち良いね」
「敬久さんだって、湯上がりで温かいです……」
敬久さんに抱きしめられるととても安心するし、胸がキュンと鳴ってしまう。オレはこの人のことが本当に好きなんだなと、そんな風に改めて考えて、またむず痒い気分になった。
「……敬久さん、好きです」
「ん……? どうしたの、急に」
そんな風に言いながらも「僕も好きだよ」と優しく撫でてくれる。
「遥君、これから先もよろしくね」
「はい……二人で、一緒に……ずっとずっと……ずーっと、よろしくお願いします」
オレは敬久さんの唇にチュッとキスをすると、敬久さんも啄むようなキスで応えてくれた。
「早く片付けを終わらせて、敬久さんとの生活を楽しみたいです……」
「……遥君は、本当、可愛いことを言ってくれるよね」
あむあむと唇を食むと、敬久さんは「それくすぐったいよ」と楽しそうに笑った。
今日から恋人として敬久さんとの新しい日々が始まって行く。オレはそれが嬉しくて楽しみで、幸せで、胸がいっぱいで――敬久さんと唇を合わせながら、また涙が出そうになるのを堪えていた。
出前アプリで注文を行い、近隣の蕎麦屋から蕎麦が届くと片付け作業を一旦中断した。
台所にある新しい食卓に蕎麦を運んで、敬久さんと向かい合って座り、引っ越し蕎麦を談笑しながら楽しく二人で食べた。明日から毎日こういう生活が出来ると思うと、幸せだなと、オレは不意に涙が出そうになった。
その後、夜遅くまで片付け作業をしていると近所迷惑になりかねないので、残り作業は明日に持ち越そうということになった。敬久さんが「今日は早く寝て明日に備えよう」と言い、オレもそれに同意した。
風呂に湯を張ったので先に使ってねと彼に言われ「一緒に入らないんですか」と返すと「そういうのは片付けが終わったらね」と困った風に言われた。確かにその通りなのでオレは大人しく一人で湯船に浸かり、新生活に思いを馳せた。
二人の同棲を決めた時――来年の夏までには物件が見つかって引っ越せれば良いかなと思っていた。だが、決まる時は考えていた以上に何もかもがトントン拍子に決まり、恋人になって2年目を迎える頃合いを少しだけ過ぎた春に敬久さんと一緒に暮らすことになった。
2年目の区切りで同棲が始まったようで、オレは何だかむず痒い気分になっている。今もむず痒い気分で夢心地だが、浮かれ過ぎないように気をつけなければならない。
湯船を出て新しいリビングに向かうとソファに座っていた敬久さんが立ち上がり「僕も入って来るね」と言うので、抱きついて頬にキスをした。敬久さんは照れくさそうな表情で「寝室で先に寝てて良いからね」とあやすように髪を撫でてくれたので、オレは寝室に向かった。
新しい寝室には新しいベッドが2つ並んでいる。仕事があると眠る時間はバラバラになるので2つ買ったのだが、今日は敬久さんと眠りたいのでオレは迷わず彼のベッドに潜り込んだ。
部屋にはまだ段ボールが積まれていたが、敬久さんの言う通り土日中に片付けられるような気がする。
明日は敬久さんと近所の喫茶店へ朝食を食べに行き、戻ってからひたすらに作業だ。終わらない作業に心が折れるんじゃないかと思っていたが、オレは敬久さんと一緒に作業をすることに密かに楽しみを見出し始めていた。
一人敬久さんのベッドで丸まっていると湯上がりの敬久さんが寝室に入って来たので、ガバッと起き上がり「おかえりなさい」と言った。
「遥君、一緒に寝てくれるの?」
「はい!」
「ふふ、嬉しいなあ」
敬久さんは微笑んでそう言うと、隣に来てギュウッとオレの体を抱きしめてから一緒に寝転んだ。
「遥君は抱きしめると温かくて気持ち良いね」
「敬久さんだって、湯上がりで温かいです……」
敬久さんに抱きしめられるととても安心するし、胸がキュンと鳴ってしまう。オレはこの人のことが本当に好きなんだなと、そんな風に改めて考えて、またむず痒い気分になった。
「……敬久さん、好きです」
「ん……? どうしたの、急に」
そんな風に言いながらも「僕も好きだよ」と優しく撫でてくれる。
「遥君、これから先もよろしくね」
「はい……二人で、一緒に……ずっとずっと……ずーっと、よろしくお願いします」
オレは敬久さんの唇にチュッとキスをすると、敬久さんも啄むようなキスで応えてくれた。
「早く片付けを終わらせて、敬久さんとの生活を楽しみたいです……」
「……遥君は、本当、可愛いことを言ってくれるよね」
あむあむと唇を食むと、敬久さんは「それくすぐったいよ」と楽しそうに笑った。
今日から恋人として敬久さんとの新しい日々が始まって行く。オレはそれが嬉しくて楽しみで、幸せで、胸がいっぱいで――敬久さんと唇を合わせながら、また涙が出そうになるのを堪えていた。
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