70 / 70
想いは滔々と、滔々と(終)
(終)
しおりを挟む
「もういい? だめ?」
真っ白な世界にちょこんと立ち、首を傾いで雪也を見上げている。その様を眺め、雪也が困ったように笑う。
「まだ、だめ?」
亮が下唇をきゅっと噛む。まだ傍に言ってはだめなのかと切れ切れに問う。
雪也の唇が僅かに動き、亮の身体はすぐさまそれに反応した。跳ね上げるように面を上げ、自分を見下ろす双眸を期待を込めてじっとみつめる。
歯軋りするように、お願いと呟いた。
雪也の手が、燕に刺された箇所をゆっくりとなぞる。
「俺にはもう治せないよ?」
「治す必要はないから」
傷などどうでもいい。今は雪也の傍に行くことしか考えられない。後は、雪也の許しをもらうだけ。
雪也の視線が横に逸れる。戸惑っているようにも見えた。
「もう、誰もぼくを傷つけることはできない。ここは……そういうところなのでしょう? だから安心して。雪也さんも、ぼくを傷つけることはできないんだから」
雪也は眩しそうに目を細め、脂下がったように口元を緩ませる。初めて見る表情だった。改めてこちらを向いた彼は「おいで」と言いながら両手を広げて見せた。
亮は甘えるように飛びついた。ふわりと全身を包み込む雪也の香りを胸いっぱいに吸い込む。自分を支配する雪也の存在を確かめるように身体をすり寄せた。
耳元で、切なく自分を呼んでくれる雪也が愛しくて恋しくて堪らなくなる。
「もっと、強く──。酷くしていいから。もっと強く抱き締めて。二度と離れてしまわないように」
懇願するように呟いた。
その言葉に応えるように雪也の顔が近づいてくる。柔らかな唇が恐る恐る触れてくる。
亮の頬に温かいものが零れ落ちてきて、それが雪也の涙だとわかると亮の頬も涙で濡れた。
互いに欲するものが闇の中にしかないと喘いだ二人の口づけは、静かに合わさっていった。
了
真っ白な世界にちょこんと立ち、首を傾いで雪也を見上げている。その様を眺め、雪也が困ったように笑う。
「まだ、だめ?」
亮が下唇をきゅっと噛む。まだ傍に言ってはだめなのかと切れ切れに問う。
雪也の唇が僅かに動き、亮の身体はすぐさまそれに反応した。跳ね上げるように面を上げ、自分を見下ろす双眸を期待を込めてじっとみつめる。
歯軋りするように、お願いと呟いた。
雪也の手が、燕に刺された箇所をゆっくりとなぞる。
「俺にはもう治せないよ?」
「治す必要はないから」
傷などどうでもいい。今は雪也の傍に行くことしか考えられない。後は、雪也の許しをもらうだけ。
雪也の視線が横に逸れる。戸惑っているようにも見えた。
「もう、誰もぼくを傷つけることはできない。ここは……そういうところなのでしょう? だから安心して。雪也さんも、ぼくを傷つけることはできないんだから」
雪也は眩しそうに目を細め、脂下がったように口元を緩ませる。初めて見る表情だった。改めてこちらを向いた彼は「おいで」と言いながら両手を広げて見せた。
亮は甘えるように飛びついた。ふわりと全身を包み込む雪也の香りを胸いっぱいに吸い込む。自分を支配する雪也の存在を確かめるように身体をすり寄せた。
耳元で、切なく自分を呼んでくれる雪也が愛しくて恋しくて堪らなくなる。
「もっと、強く──。酷くしていいから。もっと強く抱き締めて。二度と離れてしまわないように」
懇願するように呟いた。
その言葉に応えるように雪也の顔が近づいてくる。柔らかな唇が恐る恐る触れてくる。
亮の頬に温かいものが零れ落ちてきて、それが雪也の涙だとわかると亮の頬も涙で濡れた。
互いに欲するものが闇の中にしかないと喘いだ二人の口づけは、静かに合わさっていった。
了
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる