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【俺くんShort Short 第6話】ついに彼女とセックス!でも非処女でビッチ!?童貞男の哀しい話

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【1】

当時俺は大学一年生の19歳。まだ童貞だった。
ハルカは同い年の19歳。出会ったのはバイト先の
池袋のカフェだった。
お互いアニメ好きで意気投合、とても清楚で清潔感あふれる
ハルカに一目惚れし、夢中になってしまったのだ。
でも告ってもなかなかはっきりとした返事がもらえず、
ずいぶんと一喜一憂したのだが、
OKしてくれた時の、泣きそうになるくらいの嬉しい気持ちは
今でもはっきり覚えている。

デートは主に池袋だった。
デートでアニメショップ巡りは
俺が夢見ていたことのひとつだった。
俺はぼっちか同性グループで店に来ているやつらに対して
ちょっとした優越感を味わっていた。

お台場にもよくデートに行った。
観覧車ではいいムードになってついに初キスに成功。
それに味をしめて関東近郊の観覧車にずいぶんと乗ったのだが、
それ以上の行為はなかなか難しく、進展はなかった。

ハルカと会えない時間はスマホでの電話だ。
俺はハルカの一挙手一投足を身近に感じていたくて
要件はラインでもスマホでの長電話を好んだ。
「気持ちは電話じゃなきゃ通じないよね」と
二人でよく話していた。
ハルカも布団をかぶってお互いヒソヒソ話に花を咲かせていた。

付き合い始めて3ヶ月、そろそろセックスが気になる時期に
さしかかっていた。
今までキス、そして服の上からオッパイを触る関係までには
なっていた。だが、そこからはなかなか進まない。
ハルカは池袋近隣の高級住宅地の自宅住まい。
俺は寮生なので、セックスはなかなかハードルが高い行為である
ことは間違いない。
泊まりはハルカの両親が許すはずもなく、
かといってラブホはちょっと・・・。
青姦はどこにでも防犯カメラがあるご時世ではまず無理。
それに初セックスはやっぱりムードにもこだわりたい。
そう考えるとなかなか現実は厳しいな、と思い始めていた。

ところが、ついに俺はハルカの自宅にお呼ばれされてしまった!
両親がどちらも不在のチャンスが巡ってきたのだ。
俺はやっとこの日が来たと思って張り切って準備をした。
ゴムを準備し、身体中くまなくチェックした。
陰毛もちゃんと手入れした。
もちろん前日にオナニーで一本抜くのも忘れなかった。

当日、ハルカは最寄り駅まで迎えにきてくれた。
「小さい家だから」と言っていたが、確かに豪邸ではないが
庭付きの一戸建て、ガレージに停めてある外車は
ハルカの家のステータスを感じさせるには十分だった。

俺はハルカの部屋に通された。
ハルカが好きな色のブルーで統一された女の子らしい部屋だった。
壁の一面はフィギュアとマンガ本、アニメのDVDやBDで
埋め尽くされていた。
俺はアニメの話をしながらどうやってムードを作ろうか、
そればかりを考えていた。
だが、その瞬間は突然訪れた。

会話がなんとなく途切れた瞬間に、ハルカが突然キスをしてきた。
そして、申し訳なさそうに語り始めた。

「あの、俺くんに知っておいて欲しいことがあるの」
「私、高三の時、部活の同級生とちょっとおつきあいをしていた
 時期があって・・・」
「で、その時に・・・あの・・・」

俺はちまたでよく言われていた処女・非処女には
あまりこだわりがなかった。
俺は童貞だけど、前カノとキスまではしたことがあるわけだし、
状況によってはセックスだってする可能性だってあった。
だからハルカがそういう状況になったのなら、
経験済みだとしても何の問題もないと思っていた。

「ハルカが正直に言ってくれて嬉しいよ」
「俺は気にしないんだ、そういうの」
「俺は今が大切」
「だから過去のことなんて気にしない」

ハルカは「ありがとう」と言って抱きついてきた。
俺はハルカにキスをしながらベッドに押し倒した。
リボンをほどき、ブラウスのボタンを外す手が震えていたが、
なんとかごまかしてすべてのボタンを外した。
ハルカの可愛い青色のブラが露わになった。
俺はブラウスの裾をスカートから抜いて、それを脱がせた。
そしてブラのホックを外した。
ハルカが外しやすいように少し背中を向けてくれたのだ。
ハルカのオッパイが目の前に現れた。
ぷるんとした、かわいいオッパイだった。
俺は両手でオッパイを持ち上げるように揉み、
乳首をペロっと舐めた。

「あん・・・」

ハルカが可愛らしく喘いだ。
俺はだんだん興奮が止まらなくなり、
チンポが勃起し、カウパーが滲んでくるのがわかった。
でもハルカにそれを知られたくなかったので、
服を脱ぐのはセックスの準備が整ってからに
しようと思った。

俺はスカートの裾からから手を入れて、
膝、太ももまで、さするように手を動かした。

(パンツまでもう少しだ・・・)

そう思った瞬間。ハルカが「ごめんなさい」と言った

「?」
「今日はダメなの」
「えっ?」
「急に・・・ダメになっちゃって・・・」
「あ・・・」
「本当にごめんなさい」
「ああ・・・うん、いいよ、気にしないで」

俺はがっかりしたが、まあしょうがないとも思った。
女の子の事情は知っているつもりだった。
ハルカは「そのかわり」と言って俺の顔を胸で抱きしめてくれた。
俺はハルカの生オッパイと生乳首を思う存分堪能した。

・・・堪能しすぎてパンツがカウパーで
ベトベトになってしまったけど。

バイト先で会って、デートして、長電話して、
ラインで常に連絡を取り合う・・・。
セックスはおあずけになってしまったが、
そんな日々に俺は満足していた。
とても充実していると思っていた。

あの日が来るまでは。

【2】

いつものようにハルカと次のデートの約束をしようと、
メッセージを送った。
しかしすぐに返信がない。
やっと帰ってきた返信には、その日は高校の部活の同窓会が
あるということだった。
高校の部活・・・同窓会・・・。
俺は嫌な予感がした・・・いや、嫌な予感しかしなかった。

それからハルカに何度連絡しても会おうとはしてくれなかった。
カフェのバイトも休んでいる。
俺は何かあったんだと確信した。そう「浮気」だ。

3日後、ハルカは俺に「話したいことがある」と言ってきた。
その様子から痴話喧嘩は避けられないと思い、
会うのは他人に迷惑がかからない公園がいいと判断、
池袋西口公園でハルカと会うことにした。
俺はもうこの時点で浮気を覚悟した。
そしてそれは現実となった。

ハルカの話はこうだった。
同窓会が終わり、その同級生が車で送ると言い出した。
いったんは断ったけど、絶対襲ったりしないからと約束した。
でも、工事現場そばの薄暗い路地に車を止められ、
そこで・・・ヤッてしまったと。

「どうしてもそいつの誘いを断れなかったの?」
「家に挨拶に行くと脅されて・・・」

ハルカの両親は厳格だ。娘をヤッた男が家に爽やかに挨拶に行けば
ハルカがどうなるか、容易に想像つく。

「つまり、その部活の同級生が最初の・・・」
「・・・うん・・・」
「好きだったのか?そいつのこと」
「・・・ううん・・・高校卒業でみんな一気に捨て始めて
 焦ってて・・・」
「じゃ、どうして同窓会でまたそうなっちゃったのさ」
「一度も二度も同じだろって・・・」
「それだけ?」
「・・・・」
「それだけなんだ・・・」
「・・・ごめんなさい・・・」

俺はめちゃくちゃ腹が立った。
一度も二度も同じ?
じゃあ、一度もしていない俺はなんなんだ?
俺はピエロか?
いつまでも童貞を捨てられず、モタモタしている間に
女を寝取られる大間抜けか?
とんだ茶番だ・・・クソ茶番だ、クソ!、クソ!!、クソっ!!!

怒りがMAXに達した俺はハルカの手首をひっつかみ、
北口のラブホ街へ早足で向かった。
ハルカは「痛いよ」「やめて、ねえ」「離してよ」と抵抗したが、
目的地がラブホだと気づくと観念したのか
何も言わなくなった。
お嬢様のハルカに似つかわしくない、薄汚れたラブホ街だ。
でも今のハルカにはお似合いだと思った。

俺は目についたホテルの、目についた部屋の鍵をもらい、
部屋に入り、ハルカをベッドに突き飛ばした。
ハルカは何も言わない。ただ耐えてるだけで何も言わない。
俺は悔しかった。情けなかった。
ハルカは俺を好きでいてくれたんじゃないのか?
こいつの本性はヤリマンビッチだったのか?
ならいいさ、俺もヤッてやる。ヤリ捨ててやる!
それがお嬢様面したクソビッチ、ハルカにふさわしい扱いだ!!

「脱げよ」
「・・・」
「全部脱いで股開けよ、このクソアマ!!」

俺は服を脱ぎながらハルカに怒鳴った。
すると驚いたことにハルカは素直に服を脱ぎ始めた。
そして全裸になってベッドで横になり、股を開いた。
まるで商売女がするかのように。
ハルカは惨めな自分の姿に手で顔を覆って泣いていた。
声を出さず、肩を震わせて泣いていた。
そんなハルカを見ても、俺はいっさい同情しなかった。
何も言わず、キスも前戯もなく、
ハルカのマンコにチンポを一気に突っ込んでやる!
そう考えていた。

全裸になった俺はハルカの膝をガバッと開き、股の間に座った。
・・・だが何もできなかった。
勃たなかったのだ。
俺は好きな女の子をレイプできるほどヤリチンではない。
俺は童貞だ。童貞なのにこの状況でセックスができるのは
二次元の世界だけだ。
現実には無理だ・・・。

顔も知らない浮気相手の声が聞こえてきた

(ケッ、童貞野郎が!萌えアニメで死ぬまでマスかいてろ!!)

「・・・・・・ざけんなあああああああああ!!!」

俺は更に叫んだ。

「くそっったれええええええええええええっ!!!」

ラブホの部屋で暴れる俺を止めるため、
ハルカは抱きとめようとした。
俺はその手を払いのけ、拳を・・・拳を振り上げた。
怒りの形相でハルカに向けて。
ハルカは何も言わず、泣き腫らした顔を俺に向けた。
そして目を閉じた。まるで覚悟を決めたかように・・・。

そんなハルカの姿を見て俺は泣いた。
泣いているがバレるのが嫌でシャワーに駆け込んだ。

「うがああああああああああああああああっ!!!!!!」
「うげおおおおおおおおおおおえっっっっっ!!!!!!」
「ぐあぁあーーーーっ、ぎあぁあーーーーっ!!!!!!」

俺はシャワーを浴びながら
大声で意味不明な言葉をわめき散らしていた。
風呂場で意味もなく暴れまわっていた。
叫びすぎてゲロを吐きそうになっていた。

やり場のない怒りを本当はハルカにぶつけたかった。
だが、童貞の俺には怒りでセックスする精神力はなかった。
どうすればいいのかわからなかった。
何を言えばいいのかわからなかった。
気がすむまで叫び続けるしかなかった。
ただシャワーの水で涙を誤魔化すしかなかった。

シャワーから出ると、ハルカが裸のままぼうぜんと立っていた。
ハルカは俺にレイプされることを覚悟していたのだ。
俺はハルカの服を掴んで投げつけた。

「服を着ろ、早く!」
「とっとと服着て、俺の目の前から消えてくれ!!」
「頼むから!!!」

俺は体を拭くのもそこそこに服を着た。
早くここから出て行きたい。
早く一人になりたい。
それだけしか考えなかった。
ハルカのことは全く考えなかった。
いや、正確に言えば考える余裕がなかった。

俺はホテルを出た。ハルカは何も言わずついてくる。
俺はハルカの存在を意図的に消した。
あえてそこにいないように振る舞った。

(俺の後ろを亡霊のようについてくるこの女は
 俺とは関係ありません)
(全然知らない人です。みなさん勘違いしないでください)

俺は一切ハルカを気遣わず、一度も振り返らなかった。
俺は急ぎ足で池袋駅南口にある改札口へ向かい、
電車に乗って寮に帰った。
北口改札が最寄のハルカがそれからどうしたかは、
俺が知る由もなかった。

【3】

それから一週間が過ぎたが、まだ呆然としていた。
何もする気になれなかった。
ハルカから連絡はなかった。
俺にとってはどうでもよかった。終わった話だ。
そう、もうどうでもよくなっていた。

ハルカのことは気にならなかった。
なぜか気にならなかった。
多分、あのラブホでの一件が、遠い過去の出来事ように
思えていたからだろう。
それともあまりにも日常とかけ離れた体験だったため、
現実感が感じられなかったせいかもしれない。
俺はハルカという人間がこの世に存在しているのかどうかさえ
確信が持てなくなっていた。

スマホが鳴った。見慣れない番号だった。
俺は訝しがりながら電話に出た。
ハルカだった。
着信で拒否られることを考え、
友達のスマホから電話をかけてきたのだ。

「あの件については言い訳しません」
「本当にごめんなさい」
「でもこのままお別れするのは本当に辛すぎます」
「お願いです、一度でいいから会って話をさせてください」
「お願いします」
「お願いします」
「お願いします・・・」

俺は会うことを了解した。
なぜなら、ラインではなく電話だったからだ。
ハルカは俺の「気持ちは電話じゃなきゃ通じないよね」
という言葉を覚えていてくれたのだ。
だから会うことにした。
池袋サンシャインシティ横の階段で。

本来ならハルカと一緒に楽しくデートしているはずだった
池袋東口界隈。
俺はあえてそこを選んだ。
数多くある楽しい思い出が、彼女を苦しめると思ったからだ。
それほどまでに、俺の怒りは大きく、深かったのだ。

「あの・・・同級生とはあれ以来会っていません」
「付き合えばいいのに」
「好きじゃないです」
「お似合いだと思うよ、会ったことないけど」
「・・・・・・」
「まあ、もう俺には関係ないけどな」
「本当に好きじゃないんです・・・」

俺はこれ以上責めるのはやめることにした。
こんなんじゃ、俺もつらくなる。
このまま自然消滅させることもできたのに
ハルカはあえて俺に会うという選択をした。
最低限その思いには報いなければならない。

「それで、話って何?」
「私の、俺くんに対する気持ちです」
「あの時・・・その、ホテルの時に思ったの
 やっぱり私、俺くんのこと好きだって」

(何をいまさら・・・)

「だって、あの時もし殴られても抵抗しないって思ったから」
「死んでもいいって」
「好きな人に殺されるならそれでもいいって」

俺は、あの時一瞬その考えが浮かんだことを思い出していた。
そして、その瞬間ハルカが抵抗しなかったことも。
「それは嘘じゃないかもな・・・」
俺はそう思った。

「好きだからできないんです」
「好きだから恥ずかしいんです」
「好きだから言えないんです」
「それだけのこと、たったそれだけのことを知っていてください」
「分かってほしいんじゃない、理解してほしいんじゃない」
「知っていてくれればそれだけで十分です」
「それだけで、私には十分すぎます」
「私は俺くんのことが好き」
「このことだけは本当です。知っていてください・・・」

俺はたまらず言った

「ハルカが俺のことを好きなのは知ってるよ」

ハルカは突然涙声になった。

「私がどんな気持ちで俺くんとデートしていたと思いますか?」
「三日前から服を選び、化粧品を選ぶんです」
「俺くんの喜ぶ顔が見たいから」
「俺くんが私を抱きたがっていたのは知っています」
「でもあの時はだめだったんです」
「俺くんと素敵な思い出を作りたい」
「だって俺くんのこと好きだから」
「私を可愛い女の子だと思って欲しい」
「だって俺くんのこと好きだから」
「私の綺麗なところだけ見て欲しい」
「だって俺くんのこと好きだから」
「私・・・裸なんて見られたくない・・・」
「だって俺くんのこと好きだから」
「私・・・俺くんとエッチなんて・・・」
「だって俺くんのこと好きだから!」
「だって俺くんのこと好きだから!!」
「だって俺くんのこと好きだからっ!!!」

俺は神様はなんて残酷なんだろうと思った。

「好きだからこそ自分の恥部をさらしたくない」
「好きだからこそ好きな人の前では綺麗な自分でいたい」
「好きだからこそ裸を見られたくない」
「好きだからこそセックスできない」

なんという二律背反、なんという皮肉。
どうして神様はそんな試練を人間に与えたんだ?
そうすることで神様にメリットってあるのか?

「好きだから好きな人とセックスできない」

全世界的人口爆発の抑制のためか?
理由なんて分かりようもない。
でも・・・残酷だ・・・残酷すぎる現実だ。
くそ!くそ!!くそ!!!

俺は自分の気持ちを優先させるあまり、
ハルカの想いに気がついてあげられていなかったんだ。
たしかに浮気したハルカが悪い。
でも、それは俺への想いを大切にするあまりに、
結果として悪い方向に行ってしまっただけではないのか?

・・・だが、今の話だけでそれを信じていいのだろうか?

(一度も二度も同じ)

それを試す方法はひとつだ。
俺は何も言わず立ち上がり、池袋の駅に向かって歩き出した。

【4】

池袋駅北口改札まで来て、俺は口を開いた。

「ここでこのままさよならすることもできるけど、
 やっぱり俺もわだかまりはあるんだ」
「俺もハルカのこと・・・好きだった・・・
 いや、今でも好きかもしれない」
「でも、俺はもうハルカと付き合う気にはなれない」
「他に好きな人がいるわけでもない、でも付き合えないんだ」
「・・・それはもう、変えられないんだ」

「だから今日が俺とハルカの最後の日だ」
「このままバイバイするか、それともその階段を
 俺と一緒に上がってからバイバイするか
 ハルカが決めてくれ。俺はそれに従う」

ハルカはそれを聞いて、何も言わず階段の方に歩き出した。
ハルカもやっぱり同じことを考えていた。
ケジメをつけることを。
階段を上がった先には池袋北口のラブホ街がある。
俺たちはそこに向かった。

部屋に入ると、ハルカは躊躇なく服を脱いだ。
そしてシャワーを浴びに行った。
脱いだハルカの下着はかわいい青色の下着だった。
ブルーはハルカの好きな色だったことを思い出した。

(綺麗な私を見て欲しい・・・か・・・)

俺もシャワーを浴びて、タオル姿になった。
ハルカはベッドに腰掛け、タオルを巻いて待っている。
この時点で俺には二つの選択肢があった。
このセックスを「セックス」としてやるか、
「レイプ」としてやるかだ。
もちろんどちらも精神的な意味で、だ。

俺は最初、黙って押し倒し、普通にセックスをして、
童貞を卒業して、そしてお別れするつもりだった。
でも、それは違うと考えを改めた。

(それは恋人たちのセックスだ。俺たちはもうそうじゃない)
(それにそんなことしたら、浮気の事実がうやむやになり
 結局情の部分で交際を続けるか、未練を残した別れになる)
(・・・それだけは嫌だ、絶対に嫌だ!!)

(絶対に嫌だ!!!!)

俺はハルカを部屋の中央に立たせ、バスタオルを剥いだ。
そして俺もその正面に立ってバスタオルを外した。
まるで禁断の園のアダムとイブだ。
でも、そこにいるのは、少しずつ硬くなりつつあるチンポを
だらしなく垂らした俺と、
むだ肉が垂れて腹にシワを作り、太いふとももに挟まれた恥丘に
大量のちじれ毛の陰毛を生やしたハルカだ。
これが現実。悲しいけど、惨めだけど、
アニメやマンガには描かれない
しみったれたくそったれの俺たち人間の悲しい現実。
メシを食い、クソをし、小便を撒き散らし、ゲロを吐きながら
地べたを這い回る、汚れた糞袋の俺たち人間の愚かな現実。
その汚物っぷりをお互い直視するために、
しばらく裸で見つめあった。

ハルカも覚悟を決めているようだ。
俺はハルカと抱き合い、キスをした。

【5】

そのキスは最初軽いものから始まった。
だがすぐにお互いの舌を絡めあい、引きずり出すような
激しいものになっていった。

“ぐっちゅう、じゅりゅう・・・”

お互いの口の中で唾液が混ざり合う。
俺がハルカの唇を舐め回すと、ハルカも俺の唇を舐め回す。
興奮し、すぐにでもフェラをしてほしくなった俺は
ベッドの縁に座り、ハルカに「舐めて」と言って股間を見せた。
ハルカは何の躊躇もなくカーペットに正座し、俺のチンポを咥えた。

“くゅちゅ、くゅちゅ、くゅちゅ、くゅちゅ”

ハルカの口の中で俺のチンポがみるみる大きくなる。
ハルカの顔が俺の股間にあるというこの状況だけで
俺は感動していた。

「ふぅーっ・・・・はぁーっ・・・・」

俺はため息を漏らして快楽の波に耐えている。
夢にまで見たフェラチオを俺は今体験している。

(こんなにフェラってあったかいんだ・・・)

女の子にチンポを口に入れてもらうと言うこと自体、
ものすごく背徳的な行為だ。
それを今、ハルカにさせている。
そう思うと俺は恍惚としつつも、支配的な感情に包まれていた。

“ぐゅちゅ、ぐゅちゅ、ぐゅちゅ、ぐゅちゅ”

ハルカは唾液をたっぷりと口の中に蓄えている。
その唾液が潤滑油となり、俺のチンポをやわらかく包んでいる。
しかし、その瞬間気がついた。これはレイプではない、ご奉仕だ。
主導権は完全にハルカに握られている。

(ヤバい!冷静になれ!!考えるんだ!!)

俺は自宅に招かれた時のことを思い出そうとしていた。
なぜハルカはあの時フェラをしてくれなかったんだろう?
そういえば非処女をカミングアウトしたのもあの時だった。
そのタイミングでフェラすればビッチと思われる・・・。
そう考えたのかも知れない。

(「綺麗な私を見て欲しい」とこの違いはなんなんだ?)
(どっちが本当のハルカなんだ?)
(それともどっちも本当のハルカなのか?)
(同級生のヤリチンと俺との違いはなんなんだ?)

“ぐゅちゅ、ぐゅちゅ、ぐゅちゅ、ぐゅちゅ”

ハルカはチンポを口で必死でシゴき、必死で舐め回している。
顔は真っ赤だ。
俺を口でイカせることに必死だ。

(よし、ハルカの口の中に出してやる)
(精子を飲ませるんだ、強制的に)
(なぜならこれはレイプだからだ)
(レイプなんだ!!)

俺は少しペースを上げろと言いたくて
ハルカの頭を掴んで強制的に上下させた。
ハルカはファラのペースを上げた。

“ぐゅちゅぐゅちゅぐゅちゅぐゅちゅ”

唾液はとめどなく竿から睾丸へ流れ落ち、
正座したハルカのふとももを濡らしてゆく。

“ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ・・・”

(そうだ、その速さだ。いいぞ、いいぞ)

“ぐちぐちぐちぐち・・・”

(そろそろイキそうだっ・・・)

“ぐちぐちぐちぐちぐちぐちぐちぐち・・・”

「イクよ・・・・・イ・・・ク!!!!」

(うっ!!!!!)

俺はその瞬間、ハルカの頭を掴んでチンポを口から
離させないようにした。

“どくっ!どくっ!どくっ!どくっ!・・・とくっ・・・”

ハルカは呼吸を止めて俺の精子を全て喉の奥で受け止め、
涙をぼろぼろとこぼしている。

「ふーっ・・・・・・」

俺は精子が全て出し終わった感覚があってから
ハルカの口からチンポを抜いた。
すると長くドロッと大きなヨダレが糸を引いた。
その瞬間、ハルカは激しくゴホゴホ咳き込んだ後、
はあー、はあー、ぜえー、ぜえーと荒い呼吸をし、
おえっ!おえっ!とえずきはじめた。

おれはそんなハルカの姿を見て、心地よい満足感に浸っていた。

【6】

俺はこの際だからとことんこれまで蓄えたセックスの知識を
駆使するつもりでいた。
ハルカの感情や心情は一切無視だ。
ハルカは「俺くんのことが好き」と言った。
その言葉ももう俺には響かない。
響かないどころかそんな言葉を聞くことさえ苦痛だ。
だから尚のこととことんヤッて、とことんハルカに嫌われるんだ!

俺はまだおえっ!、おえっ!と言って床にへたり込む
ハルカの腕を掴まえて立たせ、ベッドの上に放り投げた。
そして仰向けにさせて乱暴に膝を開き、マンコを見た。
あれだけ見たかったハルカのマンコをじっくり見てやった。

ハルカのマンコは毛深かった。
恥丘にはちぢれた陰毛がどっさり載っていて、
マンコの存在を隠していた。
しかしその陰毛をかき分けると割れ目の先端が現れ、
それにはクリがぷにっとくっついていた。
ビラは左右にぴろっと開いていて、すでにヌメヌメと
妖しい光を放っている。
そのビラはすでに黒ずんでいた。
ビラの周りには黒々とした陰毛がびっしり覆っていた。
その毛には水滴が付着し、すでにびっしょりと濡れていた。
洗い残しの恥垢がビラの裏側に付着している。
尿道口から膣口までもすでに濡れていて、
その膣口からは透明なマン汁がこぼれ、
会陰を伝わって肛門に溜まっていた。
シーツまで到達するのは時間の問題だった。

俺は「こんなグロテスクな物体がこの世に存在するのか・・・」
と考えていた。
ハルカが俺にこれを見せたがらないわけだ。
写真や動画とは違い、その禍々しい牡蠣にも似た生命体は
女の股間に寄生する異世界から転生した魔物に見えた。

しかしもうそんなことは気にしていられない。
俺はハルカの股間に顔を突っ込んでマンコ舐め始めた。

「あっ!!・・・」

ハルカが声を上げた。
俺は構わず舐め続けた。いや「舐めた」というより
「むさぼった」という方が正しいと思う。
マンコの各部位のことなど考えず、
ただひたすら口と舌とでぐちゃぐちゃにしただけだ。
ただ一点、膣口の位置だけは確認していた。
この後控えるセックスのために。

“ずずっ・・・ずちょ・・・ずっ・・・ずちょ・・・”

俺は唾液をマン汁と混ぜつつマンコに水分を与え続けた。

「ああっ・・・あ・・・あ・・・ああ・・・あっ」

ハルカは快感のポイントに俺の唇や舌がヒットするたびに
声を上げる
その声を聞いた俺のチンポは再び勃起を始めた。

俺はマンコに指を入れたいと思った。
マンコの中がどうなっているのか知りたかったからだ。
俺はまず中指をマンコに入れた。
それをズボズボと出し入れする。
すると中からマン汁がじわっと溢れてきた。
俺は中にまだスペースの余裕があるのを感じ、
次に人差し指、そして薬指を入れた。
そして激しくグチュグチュと出し入れを始めた。

「あっ・・ああ・・あ・・ああ・・あっ・・あ・・」

ハルカが声を上げる頻度が上がった。
だが、俺はだんだんこの行為がバカバカしくなってくるのを
感じていた。

(これじゃただハルカを悦ばせてるだけじゃないか・・・)

その反面、俺のチンポはハルカの喘ぎ声に反応し、
痛くなるほどの勃起をしていた。
冷静な思考と欲望を溜め込んだ下半身・・・。

(今度こそセックスを完遂し、童貞を捨てられる!!)

俺はそう確信した。

【7】

ハルカのマンコを十二分に堪能し、
いよいよ童貞を卒業する時が来た。
チンポにゴムをはめ、正常位になり、
位置を確認していた膣口に俺はチンポをぐちゅっと差し込んだ。

(!!!祝・童貞卒業!!!)

・・・だが、想像していたような感慨はなかった。
ハルカのマンコは濡れすぎてズブズブだったからだ。

(ずいぶんとあっさりとはいっちゃったな・・・)

というのがその瞬間の感想だった。
だが次の瞬間、チンポにハルカの胎内の温もりがじんわりと
伝わってきたのがわかった。
それは満ち足りた、とても幸せを感じる瞬間だった。
この瞬間だけハルカを彼女だと思えた。
おそらくハルカもそう感じたに違いない。

(だがもう遅い、もう遅いんだよ!)

俺はそんな多幸感を振り払って、ハルカのレイプを続行するため
激しく腰を動かし始めた。

“パン・・パン・・パン・・パン・・”

腰を動かす・・・というより、下半身全体を使って
チンポで突くという動作だ
まるで下半身だけの腕立て伏せをしているみたいだ。
どういう腰の動きをすればAVで見るような突く動作ができるのか
よくわからなかった。
以前から布団を丸めて密かに練習はしていた。
だが、この時はうまく腰を動かせなかった。
戸惑った俺は「激しく突く」ということだけに集中して、
形にはこだわないことにした。

“パン!、パン!、パン!、パン!”

俺の下半身とハルカの下半身とぶつかって
小気味いい音がしている。
ぶつかるたびにハルカの太い太ももが揺れる。
だらしなく左右に垂れ下がったオッパイも揺れる。
その先端には黒ずんで大きめの乳輪と乳首がある。
かつて美しく、可愛らしく思えたあのオッパイだ。

(醜い・・・まるで豚だな)

俺はそのオッパイを揉んでみた。
揉みながら乳首もさわってみた。
あまり反応はない。
俺はオッパイ揉みに気をとられると
腰の動きがおろそかになっているのに気づき、
とりあえずオッパイの攻略は断念することにした。

俺はハルカに対する恋心が完全に消滅するのを感じていた。
もうあの頃のハルカはいない。
生オッパイで感動できたあの頃のハルカはもういないんだ。
俺が好きだった「聖女ハルカ」はこの豚に喰われてしまった。
いや、喰い殺されたんだ!

「いい・・・いい・・・・いい・・・・・・いい・・・」

ハルカが悦がって声を出している。
本気なのか演技なのか俺にはわからない。
だがとにかく続けるしかない。
俺はある種の単調さを感じながら腰を振りつづけた。

俺はバックを試してみたくなり、
いったんチンポを抜いてハルカの腰を掴み、身体を右に回した。
ハルカをうつ伏せにさせるとケツをぐっと持ち上げた。
マンコの位置が一瞬わからず、ちょっと戸惑ったがすぐに穴を見つけ
バックでチンポをズボっといれた。
そして今度はケツをつかんで、
膝を起点に腰を前後させて「パン!パン!」と突き始めた。

「ああっ!!ああっ!!ああっ!!ああっ!!」

俺がひと突きするたびにハルカが悦びの声を上げる。
おれの下半身がでかいケツに当たるたびにプルプルと揺れる。
垂れ下がった腹の周りにまとわりついている贅肉も揺れる。

「同級生のことは好きじゃない」
「・・・でもしちゃった」
「俺くんのことが好き」
「・・・だからセックスできない」

ハルカは本当のことを言ってた。
ただし、言わなくていいことは言っていない。
おそらく部活の同級生以外にセックスの経験があること。
そして例の同級生にセックスを迫られた時、
「男のチンポが欲しい」と思ったことだ。

俺は最初ハルカが浮気を断固拒否しなかった理由が
わからなかった。
俺のこと好きなら、どんな誘いにも絶対断るはず。
たとえ脅されていたとしてもだ。
だがハルカはヤッてしまった。
今ならその理由がわかる。
それは「男のチンポが欲しかった」からだ。
性欲を持て余していたからだ。
だから好きでもない男とセックスができた。
好きな男には「セックスで悦がる醜い自分」や
「グロテスクに変形した自分のマンコ」を
見られたくなかったからだ。
だから好きな男とはセックスができなかった。

俺は悟った。
俺があのとき・・・浮気が発覚した時セックスができなかったのは
「聖女ハルカ」がまだそこにいたからなんだ。
俺が好きだったのはその「聖女ハルカ」だ。
ここで布団に突っ伏して身悶えている豚ではない。
俺はバックという動物的な体位で、その現実を痛感していた。

俺はチンポを抜き、親指でガバッと開いてハルカのマンコを見た。
ビラの周りの陰毛はマン汁で濡れ、
白いカスがまとわりついている。
肛門は締まったり緩めたりを繰り返している。
膣口はだらしなく口を開いて、マン汁と白い分泌物で汚れている。
尿道口あたりには何か得体の知れない黄金色の液体がたまり、
その下にはクリトリスがぷるっとむき出しになっている。
縮れた陰毛はマン汁を蓄えてヌメヌメと光り濡れている。

この世のものとは思えないおぞましい光景だ。
俺は再度ハルカをひっくり返し、正常位でチンポを入れた。
そして激しく突き始めた。フィニッシュはもう決めていた。

“パンパンパンパンパンパンパンパン・・・・・・”

早いリズムでチンポをマンコに送り込む。
ハルカは髪の毛を振り乱し

「はあっ!・・あっ!・・・・はあ・・・・・ああっ!」

と快楽の声を上げている。
俺はどうしてもハルカに言わせたい言葉があった。
快楽に身悶えるこの期に及んでも言わない言葉だ。
もちろん普段のハルカからは想像もできない言葉だ。

「何が入ってる?」
「・・・」
「ハルカ、今何が入ってる?」

首を振って言わないと言っている

「欲しくないのか?」
「・・・」
「欲しいんだろ?これが」
「う・・・ん・・・」
「じゃあ言ってみな」
「ちん・・・・ぽ」
「どこに?」
「・・・」
「どこに入ってる?」
「・・・」
「どこに入ってんのか聞いてんだよ!」
「お・・」
「お?」
「・・・」
「言えよ!」
「お・・まんこ・・」
「大きい声で」
「おまんこ!」
「ハルカのおまんこだろ?」
「ハルカのおまんこっ!!」
「もっと!!」
「ハルカのおまんこっ!!!!!!」

ハルカの口から一番聞きたかった言葉を聞いた俺は、
更にチンポを激しく突いてハルカを攻め立てる。

“ぶちょ!ぶちょ!ぶちょ!ぶちょ!ぶちょ!ぶちょ!ぶちょ!”

ゴムがハルカのマン汁を絡めてすごい音を出している。

「イキそう・・・イキそう・・・イキそう・・・イキそ・・・」

ハルカがエロく呟きはじめた。
ハルカは女の悦びを知っている。
ハルカは男を味を知っている。それも複数。
俺はこの時点でそれを確信した。

「俺もイキそうだ・・出すよ!」
「うんいいよぉ・・・」
「どこに?」
「・・・」
「どこがいい?」
「・・・」
「顔に出してって言え」
「・・・」
「精子顔に出してって言えよ!」
「・・・」
「言え!!」
「せ・・し・・・かおに出して」
「もっと!」
「精子顔に出して!!」
「ほら!」
「精子顔に出してっ!!」

「精子顔に出してよ!!出して!!出して!!出してっ!!」

俺はいく直前マンコからチンポを抜き、ゴムを外して
ハルカの顔の下で激しくチンポをシコった。

(うっ!!・・・・イクっ!!・・・・)

その瞬間、精子がハルカの顎に飛び、前髪にも飛び散った。
目に、鼻に、ほおに、耳にまで飛んだ。
絞り出した精子は唇の上に乗せて強制的に舐めさせた。
そして口を開けさせ、残りは全部口で吸い取らせた。
精子の悪臭がハルカの顔から、もあっと立ち上っていた。
俺は精子まみれのハルカの顔を見て
「こんな醜い女の顔、初めて見たな」と思っていた。
俺は征服感でいっぱいだった。

と同時に、こんな結末を迎えることになった
運命の皮肉を呪った。

(どうして・・・どうしてこうなるんだよ・・・)
(こんなはずじゃなかったのに・・・)

俺は少しだけ後悔していた。

【8】

シャワーを浴び、身支度をしてホテルを出た。
ハルカは心なしかホッとしたような、
少し嬉しいような表情をしていた。
女としての性欲が満たされたから?
元彼とヨリを戻せそうだから?
俺はそんなハルカの安易な態度の変化に、
冷たい感情が沸き起こってくるのを感じていた。

池袋駅に向かって歩いている間、俺はずっと考えていた。
ハルカとの童貞卒業セックスが終わった瞬間、
俺はハルカとのカレカノ関係が完全に終わったことを
確信していた。
そして、自分の中のハルカに対する感情が
完全に変化していることにも気がついていた。
それはあの「同級生のヤリチン男」と同じ感情だ。

(ハルカとヨリを戻しても、もうハルカという女に興味はない)
(ただヤれるだけの女)
(一度も二度も同じだけの女)
(デートも興味ない。興味があるのはセックスだけ)
(肉オナホ、人間ダッチワイフ)

対してハルカの考えはおそらくこうだろう。

(自分の不用意な浮気で彼を傷つけてしまったけど、
これで大丈夫)
(女としての私で彼をつなぎとめることができそう)
(これからも楽しくデートして、エッチする)
(そんな甘い生活が送れそう)

俺は決めた。ハルカが好きだったから、
好きだった過去があるからこその選択をすると。
もう迷いはなかった。

池袋駅北口改札に着いた。俺とハルカは黙って向かい合っていた。
俺はおもむろに

「じゃあ、約束通りここでサヨナラだね」

と言った。
その言葉にハルカの顔がみるみるうちに青ざめていく。
俺は構わず続けた。

「今まで俺と付き合ってくれてありがとう」
「それじゃあ元気で」

俺は握手しようと一瞬思ったが、なんだかアニメの見過ぎのような
気がしてそれはしなかった。
俺は踵を返し、池袋駅南口にある改札へ向かって歩き出した。
後ろは振り返らなかった。
ひょっとしたらハルカは泣いていたかもしれない。
「ちっ!なーんだ残念!」と舌打ちしただけで
さっさと改札を通り抜けたかもしれない。
俺はどっちでもいいと思っていた。
ハルカが浮気した結果だから、自業自得だと思っていた。
ざまあみろとさえ思っていた。

復讐は果たせたと、そう思っていた。

【9】

以上が俺の童貞喪失物語の全てだ。
俺はハルカを好きになり、付き合って、裏切られて、
復讐を遂げつつ童貞を捨てた・・・。
そんな話だと思われただろうか?
でも真実はそうじゃなかった。
真実はもっと単純で、言ってみればもっとバカバカしいものだ。

俺は最初からハルカのことが好きでもなんでもなかったのだ。
単に共通の話題で盛り上がれる女の子がいる、
それを「恋」と勘違いしていただけだったのだ。
それにより身近にいる女の子の存在が出現し、
セックスをしたいと思った。
その性欲を「愛」と勘違いしていただけだったのだ。

聖女ハルカなどはじめから存在していなかったのだ。
それは俺が勝手に作り上げた偶像。
恋に恋するあまり作り出した妄想が生み出したものなのだ。

そしてそれはハルカも同じだった。

ハルカも最初から俺のことを好きでもなんでもなかったのだ。
自分にたくさんの愛情を注いでくれるから嬉しいと感じる。
それを「恋」と勘違いしていただけだったのだ。
それにより汚れ、穢れている本当の自分を見せられないと思った。
それを「愛」と勘違いしていただけだった。

大好きな俺くんなどはじめから存在していなかったのだ。
それは好きと言われ、清楚と言われ、偶像に祭り上げられた高揚感。
美化された偶像をその男に見せ続けさせてあげたいという自己愛。
故にそれを裏切れないという義務感が生み出したものだったのだ。

その反面、そんな美化された偶像を見せなくてもいい相手には
性欲の赴くままに行動したのだ。

そこには「恋」も「愛」もなかった。
あったのは身勝手な妄想と性欲。たったそれだけだったのだ。

結局俺もハルカも間違っていた。
何から何まで、最初から間違っていた。
相手のことが何一つとしてわかっていなかったのだ。
でも、それに気づくのは全てが終わったあと。
全てが終わらないと何一つ気づけないことばかりだ。

そう、これが「恋愛」によく似た「恋愛もどき」の実態。
俺たちはその「恋愛もどき」の罠に
まんまとはまってしまっていたのだ。
俺が悪いわけでもない。
ハルカが悪いわけでもない。
「恋愛もどき」に振り回された二人が迎えた、
間違い続けたのあげくの果てにたどり着いた
当然の帰結というだけだ。

池袋の街は今も大量の若者たちを抱え込んで、
「恋愛もどき」を大量発生させていることだろう。
それを「恋」や「愛」という名の「勘違い」が
妄想と性欲を暴走させ、言動を狂わせ、悲劇を生んでいる。
だがそれは一種の、皮肉めいた喜劇でもある。
この街はそんなトチ狂ったなにかで成り立っているんじゃないかと、
俺はそんな気さえしていた。

今もサンシャイン60ビルの近くを通ると、
このビルのあまりの高さに、ふと見上げてしまうことがある。












あのハルカ彼方にある空と、そこにあるブルー(憂鬱)を
思い出して。

~おしまい~
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